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保湿剤を塗っても、塗っても、乾燥するのはなぜ?


こんにちは。橋本です。


保湿剤を塗っても、塗っても乾燥肌がよくならない。おさまらない。


アトピーではそういう場合、適切にステロイド外用薬を使ってあげると、


「今までは何だったのか?」


というぐらい、スムーズに肌の乾燥がおさまってくれることがあります。


アトピー:保湿剤


 


乾燥ではなく、軽いアトピー?


ごく普通の乾燥肌なら、うまく保湿剤を使ってあげると、ゆっくりと潤いのある肌を取り戻すことができます。


しかし、アトピーの場合だと、少し事情が違うんですね。


皮膚を見ただけでは、乾燥しているだけのように見える。


そんな肌も、アトピーによる症状の場合、皮膚の内部で、すでに軽い炎症をおこしているケースもあるのです。


いわば、軽いアトピー。


ただの乾燥肌に見える部分も、軽いアトピーの症状である可能性もあるわけです。


アトピーの乾燥肌:保湿


 


乾燥肌に薬なんて使いたくない


「薬をなるべくなら使いたくない」


そういう思いが強いと、乾燥肌にまで、わざわざステロイド外用薬を使って治療するのは、かなり抵抗があるかと思います。


ですが、弱い炎症でも、放置をすれば、肌にダメージを与え続ける場合もあります。


それが、「いくら保湿剤を塗っても、乾燥肌が治らない」という現象につながることがあるわけです。


素人目には、乾燥肌だからといって、皮膚に軽い炎症がおきているなんてことはイメージできません。


でも実際は、軽症のアトピーでは、荒れた乾燥肌になり、内部で弱い炎症がおきているケースがあるのです。


アトピー:軽症


 


アトピーの重症度に合わせた外用薬の選択


ここで少し、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインをみてみましょう。


ガイドラインでは、アトピーの重症度を


重症

中等症(ちゅうとうしょう)

軽症

軽微(けいび)


この4段階にわけています。


そして、それぞれの重症度に合わせて、治療に使用する外用薬を変えることをすすめています。


で、ここで問題なのが、「軽症」と「軽微」の違いです。


「軽症」と「軽微」について、その違いと外用薬の選択をガイドラインでは、こう説明しています 1)


軽微(けいび)

炎症症状に乏しく(とぼしく)乾燥症状主体

ステロイドを含まない外用薬を選択する

軽症

乾燥および軽度の紅斑(こうはん)鱗屑(りんせつ)などを主体とする

ミディアムクラス以下のステロイド外用薬を第一選択とする


このように、同じ乾燥症状でも、炎症症状がほとんどないのが軽微(けいび)のアトピー。


皮膚が赤くなる紅斑(こうはん)や、皮膚がポロポロはがれる鱗屑(りんせつ)といった、すでに炎症がおこっているような症状が軽症のアトピーなんですね。


2つは同じ乾燥症状だとしても、ステロイド外用薬を使うか、使わないかが変わってくるわけです。


しかし、素人が乾燥肌をみても、軽微のアトピーか、軽症のアトピーかは、正しく判断できません。


だからこそ、多くの人の肌を診察して、診断、治療をおこなう経験を積んできたお医者さんに診てもらう必要があるのです。


 


アトピーとは、炎症が何度も繰り返す病気


アトピーの治療のキモ。それは、


絶えず繰り返す皮膚の炎症をどうコントロールするか?


です。


そこで、皮膚の炎症をおさえることのできるステロイド外用薬があれば、アトピーの子どもにとっても、アトピーと戦うための大きな武器を持ったことになるんですね。


アトピーのケアでは、「武器に保湿剤しか持たない」というのは、竹やりを持って戦争に向かうのと同じようなものです。


ただし、ステロイド外用薬という武器は強力なだけに、使い方が大事。


使うときを見極めて、「使う時は使う」というのが大事なんですね。


一見、乾燥肌にしか見えない症状も、軽いアトピーだととらえ、ミディアムクラスのステロイド外用薬を適切に使うと、きれいに治ることがある。


こういったケースも、ステロイド外用薬の適切な使い方を覚える上で、ぜひおさえておいてもらいたいポイントです。


 


炎症のダメージによる乾燥


ひからびた田んぼには、水をまけば元に戻るような気がします。


だから、乾燥肌は保湿すれば治る、と。


しかし、アトピーによる乾燥は、皮膚内部でおこっている炎症、それによる肌へのダメージによってあらわれている場合もあるのです。


軽いアトピーというのは、単なる「ひからびた田んぼ」ではありません。


田んぼの地中では、弱い炎がくすぶっているのかもしれないのです。


乾燥:炎症


 


今まで保湿剤だけを塗っていたのがバカらしい


一週間ほど、ステロイド外用薬をコツコツ塗っていくと、翌週には肌を触るのがうれしくなるほど、モチモチになることも実際にあるんですね。


そうなると、「今まで、延々と保湿剤を塗っていたのは何だったのか?」とバカらしい気持ちになってしまいます。


ですが、この考え方も度を過ぎると、「何でもかんでもステロイドを塗ってしまえ!」というふうになってしまい、ステロイド外用薬の使い過ぎになってしまいます。


ステロイド外用薬の使い過ぎは、やはり、長い目でみると、肌を弱くしてしまいかねません。


 


必要なときに、適切に使う


でもアトピーだと、乾燥肌だからといって、軽く見ることは案外できないんですよね。


単なる乾燥に見える症状でも、適切なケアをせず長く放置すると、象のような肌になる苔癬化(たいせんか)のような状態になりかねないからです。


なかなか治らない乾燥肌は、軽症のアトピーだと疑って、「ステロイド外用薬も使ったほうがいいか?」、お医者さんとよく相談するのがベスト。


もちろん、ステロイド外用薬を使ったら、副作用が出ていないか、再診で肌をていねいに診てもらうことも重要です。


 


 


 


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参考文献:

1) 古江 増隆, 佐伯 秀久, 古川 福実ほか: 日本皮膚科学会編「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」. 日皮会誌 119(8): 1515-1534, 2009.