ハイチ大統領殺害による治安悪化で九死に一生 | Travel is Trouble 109カ国目

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「何でいまハイチに来たんだ?!」
大統領が暗殺された!?
前途多難過ぎたハイチ旅

2022年10月にハイチを訪問。ハイチといえば、大阪ナオミの親父の故郷ってことと、英語の発音だとハイチを「ヘイティ」と発音すること以外は何も知らない…。知らな過ぎた男の末路は一体どうなるのやら。
降り立ったのはハイチの首都・ポルトープランス。いつも通り平然と空港から外に出ると衝撃の光景だった。道の両側が燃えている…。意味不明過ぎるにも程がある。燃え盛る道、異常に臭い川、ずっと後をつけてくる子供達。
キャオス!
燃えているのはゴミ。なんでもゴミの回収などないため、自分達で焼却処分しているのだとか。川には下水を流し、貧困に喘ぐ子供達が到着早々に物乞い。何とも衝撃的なファーストインプレッション。私は無事にハイチを抜けれるのか…。

中南米最貧国とされるハイチなのだが宿代金が最低でも3000円という七不思議。何でも電気代が高騰しているのが原因なのだとか。恐らくホテルは蓄電できるジェネレーターを使用しているのだろうが、それがないと毎日18時から20時までの2時間しか電気が使えないというおぞましき事態。それでも3000円は払いたくないので一度も試したことがなかったが、無料で宿泊させてくれるcouchsurfinを使い、何とか宿泊に漕ぎ着けることに成功。しかし私の初めてのカウチは最悪な思い出となった。

「この部屋で寝ていいよ」
とコンクリート打ちっぱなしの部屋に案内された。普段からテント生活をしている身としては何ら悪くない。しかし夜に事件が勃発。トイレへ向かおうとスマホのライトをふと点けると、おぞましい数のゴキブリ!
そしてさらに驚いたことに、使っていいと言われた部屋に他に2人の現地人! そうか。きっと夜更かしが好きなタイプなのだろう。音楽も爆音にしているしそういうことだよな…
ってそのまま部屋で寝てるけどー! 
カウチサーフィンって雑魚寝なの?! しかも爆音の音楽はずーっとそのままだし意味不明なんだけどハイチ。あとモゾモゾするなと思ったら
ゴキブリが足這ったんだけど! 
カウチサーフィン過酷すぎるわ! 翌日にこの家を去ったことは言うまでもない。
airbnbで宿泊先を探すしていると一泊$10を発見。試しに行ってみると何とも大豪邸。しかも豪邸にも関わらず、一人で使っていいと言うではないか!
airbnbのホストは身長は低いがガッシリとした体系のハイチ人・ベントゥル。なんでも祖母がアメリカに住んでいたことから金持ちになったとか。この豪邸は祖母が購入したものなのだとか。子供3人と姉と一緒に暮らすベントゥルなのだが、奥さんは一体…。そして親もいないのだが、何か理由でもあるのだろうか。
「ところで、なんでいまハイチに来たんだ?!」
神妙な面持ちのベントゥル。
「ハイチに来るのに時期とか何かあるのか」
と返すと
「大統領が殺されて不在なんだよ!」
大統領が殺された?! そんな話一切耳に入ってこなかったのだけれど。
ハイチのジョブネル・モイーズ大統領は2021年7月7日、武装集団に銃撃されて死去。実行犯はコロンビア人を主体とした28人。現在も大統領不在の状態がしばらく続いていた。
その混乱に乗じてハイチのギャング達が暴れに暴れまくり、殺人や誘拐、デモなどがひっきりなしに行われているというのだ。これは一刻も早く隣国のドミニカ共和国に抜けようと、バス会社に連絡すると
「先週のバスジャックによるアメリカ人とカナダ人の宣教師と家族ら17人が誘拐された事件からドミニカ共和国行きのバスは現在運行していません」
先月のバスジャック!
終わった。一体どうやってドミニカ共和国に行けるのか。

ベントゥルの家は空港から歩いて30分程で、ダウンタウンまでは徒歩1時間はかかる。ダウンタウンではガソリン価格高騰によるデモが頻発していて
「ダウンタウンに行ったら殺される」
とベントゥルに念押しされていた。しかしせっかくポルトープランスに来たのだから一瞬だけでもダウンタウンを見てみたいとベントゥルに内緒で行くことにした。言ってもそこまで大したことになってないのだろう。今までの経験上そうだったのだから絶対に大丈夫…。
ベントゥルの家の近所はよく歩いていたのでもはや何の心配もなかった。今日はさらにいつもとは違うダウンタウンへの道。ダウンタウンに通じる大通りまで来ると人通りが激しい。思った通り、観光客など一人もおらず、アルビノの人以外は全員が黒人。それだけで注目の的になりかねないなと厳重に歩みを進めた。ようやくダウンタウンの端っこに来たかなと思ったところだった。何かガソリンスタンドに人が集まってるなとカメラを構えた。すると集団の中で誰かが私に向かって叫んでいる。手には…
ショットガン!
「危ないからこっちに来なさい」
道行く人に手を引かれて移動。
「彼等はガソリン価格高騰に反対デモでガソリンスタンドを占拠してるんだ。写真を撮ろうとしていた君に怒ってたんだ」
間一髪
まさかあれが噂のデモだとは思いもよらなかったぞ。普通に撃たれて殺されてたかもしれない…。今日は大人しく帰ろう。

ベントゥルの家は3階建てで、3階テラスから街を見渡すことができた。夕方頃になると決まってダウンタウンの方から銃声がポツポツ聞こえてくる。こんな地獄のようなハイチの日常だがベントゥルは一体何を思っているのだろうか。
ベントゥルの奥さんはキューバ人。このハイチの治安悪化を受けてキューバに一時帰国しているのだとか。特に気になったのは両親のこと。なぜ一緒に住んでいないのかを訪ねると
「父親は亡くなったが、母親は数年前にアメリカに船で行った」
亡命だ!
それも親族を残して単身アメリカに亡命するという荒業をやってのけたというのだ。とうのベントゥルも
「早くハイチを抜け出したい」
とうつむく。2023年になってからもギャングが躍動し、約2400人が殺害、900人以上が誘拐されているという。多国籍部隊が出動することも決まったのだとか。私もここまでやばい国は100カ国以上行った中でも初めて。地元民達には申し訳ないが、一刻も早くドミニカ共和国に行くことに決めた。

ドミニカ共和国に向けて出発

ドミニカ共和国行きの直通バスは不通だということで、ローカルのバスに乗って現地人に成りすましてドミニカ共和国付近まで行くことに決めた。露店が立ち並ぶ辺りで近くまで行くバスを見つけて乗車。ふとメールをチェックすると
「明日のみドミニカ共和国行きのバスが運行されます」
直前過ぎるのよ! もうバス乗っちゃったよ。まあギャングもまさかローカルバスでドミニカ共和国に行く旅行者がいるとは思わんだろう。
向かう途中だった。道路を封鎖している団体。急激なガソリン代の高騰やら物価高騰やらに対しての憤りがあって、どうにか行動で示そうと道を封鎖しているのだろう。そして道を封鎖されていることが人伝で広がり、やがて政府に届くのであろう。流石は元フランスの植民地。フランスを見習ってデモすれば何とでもなうという考えなのだろうな。
国境近くの街に到着し、バイクタクシーに乗車。国境まで約5km走ってくれるという。運転手はまだ10代であろう若造。登り坂の途中で一旦エンストしたのだが、ガソリンがないから止まったようだ。ハイチはもはや国として成り立ってないのではないか。学校に行けずにこんな若いのにバイクタクシーの運転手として生計を立てないといけないなんて。彼の気持ちを察するだけで涙が止まらない。国境へ到着して金を多めに支払った。
入国審査では、日本人は入国ビザがいらないはずなのだが50$払えと言われた。
「日本人は無料だと聞いているが」
と言っても
「駄目だ! 払いなさい!」
と一歩も引かない。こうなったら奥の手である。スマホを取り出し電話。相手はドミニカ共和国の日本大使館。状況を説明すると
「お金を払う必要はないです」
だってよアホンダラ!
それでも謎に一歩も引こうとしないので大使館の方に直接話してもらうと
「無料だ。行っていい」
ヨッシャー! 正義は勝〜つ!
少し高かったがハイチでsim買っといて良かった。
審査が終わり、ドミニカ共和国側に出ると、さっきのバイクタクシーの青年がまだ待っていた。あれ? もう金払ったけどどうしてだろう? 
「サントドミンゴ行きのバスが出てる町まで送るよ」
状況が飲み込めない。だってただでさえハイチ人はドミニカ共和国に入国するのが厳しいはずなのに、一体どうやって国境を容易く越えれるというのか。そういえば彼は中々流暢なスペイン語を話せるのだが…っておい!
お前ドミニカ人だったんかい!
ドミニカ共和国入国後は10回以上も検問があった。
その頻度はベネズエラをも上回る。やはりハイチからの難民を排除したいのだろう。
ようやくドミニカ共和国に到着し、ドミトリーのある安宿にチェックイン。するとそこには1人のフランス人。ハイチから来たというと
「お前はクレイジーなのか!?」
でしょうね。

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