授業が終わり蓮は帰ろうとした。

ふと奈美を見るとずっと座っていた。

「どうしたんだ?」蓮は声をかける。

「明日、合格発表の日なの」

「そうだったな。明日合格発表か…でも早いな」

「指定校推薦だからね」

そして奈美と別れ蓮は剛と月美と帰っていた。

「そうか、合格発表明日か」

「合格していたらみんなで祝ってあげよう」月美は提案した。

「そうだね…でも月美、成長したね。自分から祝おうだなんて」蓮は言う。

「そうかな…」

「俺は将来医者になりたいと思う」剛は話す。

「医者?」

「そうだ。そして多くの人の命を救いたいと思っている」

剛は亡き兄の力を思い出す。

「月美は何になりたいんだ?」剛は聞く。

「私はまだ決まっていないけどとりあえずまずは大学だね」

ふと蓮は思った。

――俺は何になりたいんだ

夜、蓮は大学について調べていた。

卒業と同時にこの世界から消えるものの蓮は元の世界に帰ったときの自分の将来が心配になっていた。

「俺は何になりたいんだ…」蓮は混乱する。

翌日、蓮は千、美羽、修に聞く。

「何になりたいか?」

「俺は何になりたいのか分からない」蓮は悩む。

「俺はサッカー関係の仕事だ。多少は出来るだろうし俺の代わりに誰かを一流のサッカー選手にしたい」修は教えた。

「私は教師かな。まだ未定だけど」美羽は言う。

「俺は家電関係を希望している。特にテレビをもっと進化させたい」千も教えた。

「みんな夢とかあるんだな」

「お前にはないのか?」千は聞く。

「俺はみんなより先に社会人になった人間だ」

3人はパラレルトラベラーを思い出した。

「俺は夢とかそんなのどうでも良かった。収入さえ良ければなんでも良い。別に誰になんと思われようが」

「でも今思うと高校大学なんか行かなくてもなんとかなるなんて考え甘かった」

蓮は空を見上げる。

「俺が元の世界に帰ったら23歳、そこからやり直せるのかな」

「元の世界に帰る?」千は聞き返した。

蓮はその事を伝えていない事を思い出した。

「……帰るよ…卒業と同時に」

「じゃ大我も?」美羽は恐る恐る聞く。

「帰ると思う」

3人は虚しく感じた。

蓮も遠いようで現実になってきた別れが少し寂しく感じた

一方、大我が教室にいると嬉しそうな奈美がいた。

「どうした?」

「指定校推薦合格したの」

「そうか…良かったな」

「これで来年から大学生だわ」

「……奈美は将来何になりたいんだ?」

「私は不登校の子供達を支える職員になりたいかな」

「この学校の生徒達みたいな人を支えるのか」

「この学校の経験を生かしてね」

大我は未練を乗り越えたとはいえまた来る奈美との別れに心を痛めた。

「大我は?」

「呼び捨てになったのか」

「良いじゃない」

「俺は特に決まっていないさ」

「そう」

蓮が帰ろうとすると目の前に鎧がいた。

「鎧」

「蓮か」

「受験どうだ?」

「大変さ。毎日勉強勉強で昨日は10時間やってね」

「お前も意外と頑張ってるんだな」

ふと蓮は思った。

「でもお前、御曹司だから別に大学行かなくても」

「その事だがやっぱり俺は俺のやりたい事をやろうと思う」

「やりたい事?」

「花火職人だ」

「何があったんだ?」蓮は思わず聞いた。

「日本の花火の美しさを改めて知ってね。だから日本の花火をもっと世界に広めたいと思って」

蓮は面白く感じた。

そして同時に何もない自分に絶望を感じたようだった。

ふと蓮は思った。

――俺はこの世界で新しい物をたくさん見てきた…もしかしたらこれを生かせたりしないのか

翌日の下校時間、蓮よ剛、奈美が海神公園で話しているとそこにボロボロの沙紀がやってきた。

「どうしたんだ」剛は駆け寄る。

「もう耐えられない助けて」沙紀は弱っていた。

「あれから健の家に監禁されて他の男と関わらないように見張られていた。でも健がいない隙に逃げてきたの」

沙紀は怖がっているようだった。。

「あいつ…」剛は怒りが湧いた。

「何をしている?」

そこに大我がやって来た。

「大我…」

大我は沙紀を見る。

「御曹司の家に匿ってもらうとするか」

夜、沙紀は鎧の家にいた。

話を聞き美羽と千、修、月美も駆け付けた。

「山内健…あいつは俺の世界にもいた。だがこの世界と同じく危険人物だった」大我は言う。

「そしてこの世界に来てあいつの家とか調べてみたら俺のいた世界とほとんど変わっていない。つまりほぼ本人そのものだ」

蓮達は深刻に感じる。

「何であなたがそんなことを知っているの? というより世界とか何?」沙紀は不思議に感じる。

「ちょっと複雑な事情があるのよ」美羽は言う。

月美は思った。

「沙紀さんがいなくなれば男は剛の家に来るんじゃない?」

蓮達はそれに気付き凍り付いた。

「そうか。仮に剛の家に行かなくても学校で待ち伏せする可能性もある」千は言う。

大我は鎧を見る。

「御曹司、頼みがある」

「その呼び方やめろよ」

「でもどうするつもり?」奈美は聞く。

「1つ考えがある」

そして大我が家を出ると奈美が追いかけてきた。

「奈美…」

「大我君、もしかして死ぬつもり?」

「何を言っている?」

「だって下手したら死ぬじゃん」

大我は失った奈美を思い出す。

「……別にもう死んでも良いと思っている…生きる事の意味がないから」

奈美は大我が苦しんでいるのに何も出来ない自分が情けなく感じた。

翌日、剛と沙紀、大我は待っているとそこに健がやってきた。

影では蓮と奈美、月美が待機していた。

「やっぱり今の彼氏のところに来ていたとはな。だがお前は誰だ?」建は大我に聞く。

「こいつら2人を守るために来た」

「部外者か…だったらとっととくたばれ」

大我は建に駆け寄るがしかし建は大我の顔面を殴り倒した。

さらに倒れる大我を何度も蹴りつけ大我は血を吐いた。

そして大我は酷く殴られ苦しんでいた。

「大我…」剛は怯えていた。

「沙紀、行くぞ」

建は沙紀に手を出そうとした。

しかし剛が目の前に立った。

「…沙紀は渡さない」剛は建を睨む。

蓮達は注目する。

「弱っちいくせに粋がってんじゃねぇ」

建は剛の腹をパンチし剛は床に倒れる。

「剛!」

しかし建は沙紀の腕を掴み連れていった。

蓮達は駆け寄る。

「おい! 大丈夫か?」蓮は剛に声をかける。

「俺は大丈夫だが大我が」

大我は血を流し意識朦朧となっていた。

「大我君!」

月美は体を叩くが大我は意識が遠のいていた。

一方、建は家に到着し沙紀を再び家に閉じ込めようとした。

そして中に入り鍵をかけるがしばらくするとインターホンが鳴った。

建が出るとそこには蓮と剛がいた。

「お前ら…あいつらの仲間」

すると鎧とその後ろから正常な大我が現れた。

「お前、さっきの」

鎧はビデオカメラを見せる。

「ここにはさっきお前が大我をボコボコにした映像が映し出されている。それと他の仲間に頼んでお前が沙紀を家に監禁する映像も撮影している」

すると美羽と千、修が現れた。

「私がこの家の前で待機して撮影していたわ」

「これ以上お前に剛を傷つけさせないため」千は怒りが湧いていた。

鎧は言う。

「この映像をネットなどで拡散すればマスコミは騒ぎ出し警察は動きだす。そうすればお前は今までの罪とは桁が違う重さを味わう事になる。恐らく刑務所行きだろうね」

建は動揺する。

「この映像の消去と引き換えに2度と沙紀に近づかないことを要求する」

健は悔しがりながらその場を去っていった。

そして問題は解決した。

蓮と剛、奈美、月美が待っていると沙紀を連れた鎧達が戻って来た。

「沙紀は無事だ」

沙紀は剛を見る。

「沙紀…俺…」

「かっこよかったよ…剛」沙紀は笑顔になる。

剛は嬉しく感じた。

「でも大我ボコボコにされていたのになんで無事なんだ?」剛は不思議に感じた。

大我は前日の天使とのやり取りを思い出す。

「つまり体を無敵状態にしてほしいと」

「無敵じゃなくても通常より耐えられるぐらいでも良い」

天使は考える。

「どうせ俺には失うものは何もない。だから今死んでも後悔はない」

「……いいでしょう。あなたがどんな決断をしようが私はただ見守るだけだから」

しかし天使は一応蓮にも知らせていた。

蓮は危険に感じていたもののしかし大我の決断を信じ受け止めた。

 

「なんでそれを教えなかったんだ?」修は聞く。

「リアリティを出すだめだ」大我は言う。

そして大我は行こうとする。

「……でも本当は死んでも良かったという気持ちには変わらなかったんでしょ?」奈美は問う。

「前にも言った…俺は死んでも構わない」

「……もし大我が自ら死を選ぶんだったら私は許さない」

その言葉に大我は忘れていた過去を思い出した。

「……そうだった…あの時、奈美にも言われたんだ」

蓮達は注目する。

「俺はずっと奈美を取り戻したい思っていた。普通ならそんな事は不可能なはずなのに。でもパラレルトラベラーとしてこの世界に来た時、もしかしたら奈美を取り戻せるんじゃないかと。でも違っていた。もう俺の知っている奈美はいないんだ、死者の事をいつまでも追っていてももう戻ってこない」大我は気付いたようだった

大我は奈美を見る。

「……俺は奈美を諦め未来に進む方が良いかもしれないな」

剛は大我の側に行く。

「だったら俺達友達になろうじゃないか」

「3年の10月になっても遅いだろう」

「そんな事ないさ」鎧が言う。

「そうだよ。それに卒業しても友情は変わらないと思う」

そして蓮達は千を見る。

「……めんどくさい。すぐにお前を友達と認めようとは思わない。だが許してやっても良い」

「感謝してやる」

大我の言葉に千は気に食わなかったがしかし許してあげる事にした。

そして大我とも分かり合う事が出来た。

 

夕方、千は美羽に手当を受けていた。

「あの野郎、次見つけたらただじゃおかない」修は怒りを抑えられなかった。

「やめとけ」千は言う。

「やり返したらそれこそ退学処分になるかもしれないぞ」

「でもなんであんなに勇気を出して立ち向かえたの?」奈美は聞く。

「俺は美羽と付き合っているから恋人を奪われる気持ちになれるからだ」

月美は剛を見る。

「大丈夫、剛」

「俺は助けてあげられなかった」剛は悲しい表情だった。

「自分が恐怖したために沙紀は奴に連れて行かれ修は怪我を負った。あの時、俺が沙紀の手を掴む事が出来たらもしかしたら沙紀は連れていかれなかったかもしれない。それなのに俺は……」

「しょうがないだろ。状況が状況だからな」

蓮はそう言ってやる事しか出来なかった。

それ以降、数日間、剛はずっと元気がないままだった。

ある日の昼休み、剛以外の7人が集まっていた。

「剛のことだけどどうしたらいいと思う?」美羽は聞く。

「どうすると言っても俺たちに何が出来るんだ」千は下を向いたままだった。

「でもなんとか励ましてあげないと」

「下手に励ます必要もないだろう」蓮は冷たく言う。

「蓮…」奈美は顔を上げる。

「でも」

「声援だけ送っても何の意味もない。形にしないと」

「蓮は剛が嫌いなの?」奈美は問う。

「別にそういうわけじゃない」

放課後、剛が校庭にいると美羽と千、月美がやって来た。

「彼女の事、考えていたのか?」千は聞く。

「俺は沙紀を守れなった。それがとても情けなくて恥ずかしくてここ数日、どうしたら沙紀を助けられるのか考えていた」

「誰だって怖くて逃げてしまう事もあるよ、恥ずかしがることはない」月美は励ます。

「でも俺は……」

「剛、今の私があるのはあなたのおかけ、あなたが1年生の時、声をかけてくれなかったら私はずっと1人だった」月美は珍しく声を上げる。

「この前は救えなかっただけ。だから次守れば良いよ」

「月美」剛は元気が出た。

その頃、蓮は奈美と鎧と屋上にいた。

「なんだよ、みんな暗い雰囲気になって」鎧はため息をつく。

「だって剛が傷付いているのよ」

奈美は蓮を見る。

「なんであんな事言ったの?」

「よく人間声援で励まされ立ち直れたというドラマがあるけど現実その声援が逆に心を傷つける事もある」

蓮は社会に出て学んだ大人の世界を思い出す。

「俺は知っている。中身のない応援や声援、良い事して満足しただけのありがた迷惑の人間も」

奈美は話についてこれなかった。

「剛はこの学校で始めて出来た仲間だ。だからこそ信じている。たとえ俺達の声援がなくてもあいつは立ち上がれると」

奈美は自分の考えの甘さを思い知ったようだった。

「そうだな」鎧は言う。

「剛は俺達より強いと思う。何故ならあいつが俺達を1つに集めるきっかけの1つでもあると思う…」

蓮と奈美は思い出す。

「……そうだな。よく考えたら剛がいなかったら千も修も月美も鎧も仲間じゃなかったかもしれない」

「そうだろ」

「お前、ただの馬鹿かと思っていたら珍しく良い事言うな」

「おい! 俺は馬鹿じゃない」

「でも可愛い子目当てで高校転校しようとしたじゃないか」

「それは人生的に見れば賢い選択であり」

「とにかく良かったという事で」奈美は強引に話を閉めた。

しかし蓮と奈美は今まで気付かなかった事に気付いたようだった。

 

 

下校時、蓮達は校庭にいた。

剛はあれから立ち直り蓮達は安心していた。

しかし沙紀がどうなったか聞く事が出来ず全員が心配していた。

「じゃ帰ろうか」

蓮達が行こうとするとそこに大我がやってきた。

「大我……」

「相変わらず仲良くやっているようだな」大我は挑発的だった。

「お前、いい加減喧嘩腰はやめろよ」修は言う。

「お前に関係ない」

大我は蓮を見る。

「まさかお前もパラレルトラベラーだったとはな」蓮は動揺した。

「なんの話だ?」剛は戸惑う。

「こいつは別世界から来た人間、つまりパラレルトラベラーだ」大我は言う。

「馬鹿か? そんな漫画みたいな話あるわけないだろ」千は呆れた。

すると目の前にオーロラが現れた。

そして天使が現れた。

「え? 何このイリュージョン」鎧は興奮する。

「天使? まさか」奈美は動揺した。

「でもなんで」

「天使か」大我は無表情だった。

「大我…いい加減過去にとらわれないで未来に」

「過去に連れてきたのはお前だろ。まぁあくまで別世界だが」

大我は去っていった。

そして場所を海神公園に移し蓮達は天使に聞いた。

「あんた喋ったな」

「いいえ話していませんよ」

「でも現れたじゃん」蓮は突っ込む。

「だがまさかお前が別世界の人間だったとはな」鎧は驚いていた。

「でもなんでこの世界に」月美は聞く。

「……俺は高校生活を味わう事なく社会に出た人間だ。だから高校生活を知りたいと思ってきたんだ」

奈美は時々あった蓮の意味不明な言動の理由を理解した。

おして天使は落ち着き説明した。

「実は大我は泉蓮さんよりも先に別世界から来た人間、つまりパラレルトラベラーでした」

「元々は穏やかで優しい好青年だでしたがしかし大切な彼女を病気で失った事で心が乱れてしまいました」

天使は奈美を見る。

「そして大我の彼女だった人は別の世界の海野奈美さんです」

その事実に全員が衝撃を受けた。

「奈美が…大我の彼女?」

「あくまで別世界の話ですが」

奈美は動揺していた。

「もしかして」

「大我は別世界とはいえもう一度失った彼女を取り戻したくてこの世界にやってきました」

「待てよ、でも失った奈美と今いる奈美は顔が違うだけの別人じゃん」鎧は指摘する。

「それでも良かったんです」

さらに天使は説明する。

「村上さんと佐野さんが大我に殴られた事を忘れていたのは私が記憶を消したからです。大我がちゃんと立ち直れるよう」

ふと蓮は気付いた。

「もしかして村上や佐野、羽野洋二などあいつが関わった人間達は元いた世界でも関わりがあった」

「そして何かしらの事情で彼らに対して何かしら恨みがあった。だからあんな好戦的だったのかもしれない」蓮はそう推測した。奈美は気付いた。

「青井さんの件も大我君は病気に関して辛い経験をしたから」奈美は理解した。

剛は天使を見る。

「別世界とはいえ死んだ人間に会わせるのは残酷じゃないんですか?」

「……それで彼が立ち直れたらと思ったのですが逆効果でした」

天使は罪悪感を抱いた。

夕方、蓮が学校に戻ると大我がいた。

「天使から全て話を聞いたぞ」

「あの天使、勝手に話したか」

「大我、これ以上変に付き惑わないでくれ」

「別に付き惑っていないさ」

「仲良くやりたいならそういえば良いじゃないか。こんな中途半端に関わらないで」

「ふさげるな。お前達と仲良くなんかしたいとも思わない」

大我は思い出す。

「……奈美しか興味はない」

「あぁ聞いたぜ。別世界で辛い経験をしたようだな。そしてきっと俺にも絡んでいるんだろ?」

「分かっているくせによく友達になろうと言えるな」大我は感情的になる。

そして雨が降る。

「だが俺は未来に歩んでいるがお前は過去に戻ろうとしているだけじゃないか。それに過去に歩んだってもう彼女は戻ってこない」

大我は認めたくなかった。

「余計なお世話なんだよ。それに落ちこぼれだったからパラレルトラベラーとなったくせに人を励ましてるんじゃねぇ」

大我は歩いて帰っていった。

蓮は悲しくただ立っているだけだった。

放課後、蓮達7人は海神公園にいた。

「そういえばこの前、みんなで遊園地行けなかったからもう一度行かないか?」鎧は提案する。

「いいね。行こう」美羽は賛成する。

「そうだな。行こうじゃないか」修も同じだった。

「だが前に蓮と奈美、2人で行ったようだが2人で楽しめたのか?」千は気になった。

「楽しめたよ。2人だったけど」奈美は答えた。

すると剛がやってきた。

その横には滝沙紀という女がいた。

――何なんだこの人は?

蓮達は注目していた。

「紹介する、彼女は俺の彼女だ」剛は説明する。

「彼女だと…お前…」蓮は何故かショックだった。

「はじめまして沙紀です」

鎧は近づく。

「やぁやぁ俺は湖田鎧、いつも剛がお世話になっているね」

「人の女にナンパはやめろ」千は止める。

そしてしばらく蓮達は沙紀と話した。

「ところで2人はどこで出会ったの?」奈美は聞く。

「夜、帰っているとそこに沙紀がいた。落ち込んでいて話しかけたら意気投合して付き合う事になったんだ」

「つまりナンパみたいな事ね」美羽は理解した。

「いいね。そういうの。俺も彼女が欲しいよ」鎧は言う。

「彼女か…俺は今は良いや」千はあまり興味はないようだった。

そして夕方になり、蓮達は帰る準備をする。

「もしもっと仲良くなったら一緒に遊園地に行かない?」奈美は誘う。

「いいよ。でも今受験だからあまり余裕はないけど」

そして蓮達は別れた。

剛は沙紀と帰っていた。

「よぉ沙紀」

そこに山内健がやってきた。

健は不良の青年で剛より5つ年上だった。

沙紀は目線を逸らす。

「誰だあんた?」剛は聞く。

「沙紀の彼氏だよ」

「え?」剛は戸惑う。

「違う。付き合っていたけど今は別れてる」

「俺はまだ別れていないんだよな」

健は剛の前に立つ。

「お前、こいつと付き合っているようだな。こいつと別れろ。さもないと痛い目に合わせるぞ」健は怒鳴る。

「でも沙紀は別れたと」

「お前に関係ないだろ!」

健は時計を見る。

「この後、用があるんだよ。遅れるわけにはいかない」

健は急いでその場を去る。

「ごめんね。大丈夫?」

「大丈夫だよ」剛は無理していた。

とてもビビっていた。

翌日、蓮達は屋上にいた。

「そういえば彼女、どこの高校なの?」美羽は聞く。

「……岸牧高校だよ」

しかし剛は昨日の事もあり動揺していた。

「でも私より明るい人だったね」月美は言う。

その言葉に剛は尚更沙紀の闇を感じた。

放課後、蓮達がいつもの公園にいるとそこに沙紀がやってきた。

7人は知らないが剛と沙紀は気まずそうだった。

「元気ないようだけどどうしたの?」美羽は聞く。

「いや元気よ。ちょっと気分悪い映画見てただけ」沙紀は誤魔化した。

「それなら良いよ。ところでどこに行く?」鎧は呑気だった。

しかし蓮は何か違和感を覚えていた。

「よぉ沙紀」

そこに健がやってきた。

剛は恐怖を感じた。

「沙紀、俺の所に戻ってくる気になったが」

「私は…」沙紀は目を逸らす。

「おい昨日のガキ、こいつと別れる気になったか」

剛は黙ったままだった。

「お前、さっきから何なんだよ?」

修は近づくが健は顔面にパンチし修を吹き飛ばした。

「大丈夫か?」千と美羽は駆け寄る。

「お前何なんだ」蓮は聞く。

「誰だが知らねぇが引っ込んでろ」

健は剛を見る。

「彼女とは別れていないんだよ。だからむしろ悪いのは浮気しているお前なんだよ」

「別れてくれるか?」

「……はい」

「あなた何言っているの?」美羽は言う。

「沙紀さんはお前の彼女だろ」千は焦る。

沙紀を無理やり連れ去ろうとした。

「おい、待てよ」

修が引き留めようとしたが健は修を床に倒し顔面キックをした。

修は血を流し倒れこむ。

「修‼」蓮達は修の側に行った。

健は沙紀の手を掴む。

剛は沙紀の手を掴もうとしたがためらい掴めなかった。

そして健は沙紀を連れて行ってしまった。

剛は今までにないぐらい恐怖を感じてしまった。

放課後、大我は屋上で何となくギターを弾いた。

大我は過去の事を思い出す。

「何してるの?」

そこに蓮と月美がやってきた。

「今の歌って何?」2人は興味を持つ

「別に大したものじゃない」

大我は去っていった。

大我が花壇に行くとそこにはクラスメイトの青井亜美がいた。

彼女はいつも1人でいた。

彼女は人とどう関わったら良いか分からなく誰とも関われないつまらない毎日を送っていた。

「あなたこの間の?」亜美は大我に気付いた。

数日前、亜美が屋上に行くとそこで演奏が聞こえてきた。

それは大我だった。

気配に気付いた大我は去ろうとした。

「今の歌って何?」

「…別に」

「私…その歌…小さい頃から聞いていたんだけどなんの歌が分からなくて」

「俺も知らない。ただ聞いた事があるなとだけで」

大我が行こうとした。

「あなたもずっと1人だよね」

大我は振り返る。

「そうだ。だが俺は1人でいい。無意味な友をたくさん持つよりもただ1の人が俺を愛してくれれば」

「私はずっと1人だった」

大我は注目した。

「私は音楽が好きだった。ギターもピアノも出来たけどやめたわ」

「それ以来私はずっと心が沈んでいつの間にか1人になった」

大我は心が痛くなった。

夜、亜美が歩いていると路上ライブをしている人たちがいた。

しかしその歌は最悪なものだった。

「うるさい、歌下手、歌詞は聞いた事のあるもの、酷いものだ」

振り返ると鎧がいた。

「湖田君」

「まるで雑音みたいだな」

「…でもああいう歌でも意外と売れたりするんだよね」

「お…おう」鎧は動揺した。

翌日、大我が校庭に行くと亜美がいた。

「大我君」亜美は気付いた。

「まだ1人か」

「まぁね」

「なんで楽器を弾くのをやめた?」大我は聞く。

「……内緒よ」亜美は下を向く。

「なら良い。俺にも話したくない事はあるからな」

その後も大我は時々亜美と関わるようになっていった。

ある日、蓮達は屋上にいた

「今日、カラオケ行かない?」美羽は誘った。

「俺は忙しいから」蓮は断る。

「付き合い悪いな。というより今まで一緒にカラオケ行ったことないな」剛は思い出したように言う。

「俺はうるさい音が嫌いなんだ」

「そうだ。昨日うるさいバンドが路上ライブをしていた」

鎧は昨日の事を思い出しながら話す。

「…なんかお前の言う事信用して良いのか分からない」修は疑っていた。

「いやなんでだよ。というより失礼じゃないか」

「なのに青井はなんか庇ってたし」

千は亜美の事を思い出し話した。

「彼女は元々音楽の実力があり将来を期待されていた。しかし子供の頃から練習練習で忙しくその上、病気で指で出来る事に制限が出来、楽器を弾けなくなったと聞いている」

「じゃ夢を失ったという事だね」月美は悲しそうだった。

「その話、本当か?」

振り返ると大我がいた。

「お前、なぜ話を聞いていた?」千は不満気味だった。

「あいつの事は気になっていたんだよ」

大我はある紙を見る。

「病気で夢を失う…だったらせめて何が与えなければ」

「お前、どうしたんだ? いつものクールさは?」蓮は不思議に感じる。

「病気か…それで今までの練習時間が無駄になるなんてね」鎧は何となく言う。

「そんな軽はずみに言うんじゃねぇ」

大我は鎧の胸倉を掴む。

「待てよ。俺なんか言った?」

「鎧…俺も大我の言う通りだよ」

剛は亡くした兄を思い出し真顔だった。

千は話すべきがどうするか考える。

「……後、彼女は病気のため今後聴力も失う可能性があるそうだ」

大我は絶望した。

「大我君…青井さんとそんなに親しかったっけ」奈美は聞く。

「別にそういうわけじゃない…ただそんな病気に心を奪われるのが嫌なだけだ」

大我はその場を去っていった。

「どうしたのかな」月美は不思議に感じる。

放課後、奈美と月美が廊下を歩いていると目の前から大我がやって来た。

「大我君」

「……頼みがある」

大我は紙を渡した。

夕方、奈美と月美が花壇に行くとそこに亜美がいた。

「青井さんだよね?」

亜美は奈美を見る。

「これ」

奈美が渡したのは大我が書いた歌の歌詞だった。

亜美は思い出した。

「そうだった…この歌だったんだわ」亜美は笑顔になる。

そして亜美は事情を話した。

「氷崎君、優しいんだね」月美は言う。

「でもなんで海野さんに頼んたんだろう」亜美は不思議に感じる。

「きっと恥ずかしかったんだと思う。優しさを見せるのが」

翌日、亜美が廊下を歩いていると大我が鉢合わせになる。

大我は目を逸らす。

「ありがとう。大我君」

「あぁ…別に」

大我は照れ臭そうだった。

しかし亜美にとって大我は学校で始めて出来た大切な人となった。