加奈は図書室で調べものをしていた。

「何を調べている?」時が話しかけた。

「過去の光島の事件の事よ」

「光島? 初めて聞く名前だな」

加奈は必死に調べるが出てこない。

「どんな事件なんだ?」

加奈は海斗の話を伝えた。

「馬鹿馬鹿しいな。医療ミスで家族が犯罪者一家だなんて」

「でも」

「そんな医療ミスで大事になるんだったら簡単に見つかると思うしネットでも光島関連で検索ワードに引っ掛かるだろう」

時の指摘に加奈は落ち着きを取り戻す。

――もしかして海斗は本当に別世界から

翌日、先生が生徒たちにお知らせをする。

「1週間後の授業で実際に医者として活動している現役のドクターが来てくれるから失礼のないように」

放課後、海斗は龍人と加奈と帰ろうとした時、そこに胡桃がやってきた。

「私も一緒に帰っていい」胡桃が聞く。

「いいよ」

しかし加奈と胡桃は海斗の話を聞いて何が嫌な気分になっていた。

そしてまさか別世界の兄の天都がこの世界でも同じ事をしているのではないかと考えると恐怖を感じた。。

「今日は眠かったな」龍人はのんきに言う。

「そうだな。今日は良い天気だったからな」

そんな会話をしている一方、ある不気味なマンションであるやり取りがされていた。

「どうやらこいつは今、この病院にいるらしい。そして一週間後に花式高校で講義をするらしい。そこにあんたらが一斉になだれ込んで訴えれば良いだろう」

「待ってくれ、俺の考えていたやつとは違うじゃないか」

「自分で訴えなければ説得力もないだろ。それに俺はそいつの病院から今後の予定まで短期間で調べてやったし大人数でやれば問題ないだろ。横断歩道、みんなで渡れば怖くないはず」

依頼者は納得がいかなかったがやる事にした。

1週間後、その医者が学校にやってきた。

そしてその医者は自分の体験や医者としての心得を教えたりする。

加奈と龍人は真剣に聞き海斗は何言っているか分からず胡桃と湖南、楽人、時は話を理解しているようで理解していない感じだった。

この時も加奈は医者になる事に迷いがあった。

その時、教室に10人の青年が苦しみながら入ってきた。

周りのクラスメイトはざわつく。

「大丈夫か」龍人が側に行き声をかける。

「あいつだ」青年達は医者に指をさした。

「あいつは入院している俺を毎日虐待していた」1人は叫びながら抗議する。

みんなその医者に思わず注目する。

先生もあまりの出来事に動揺していた。

「違います、私は…その…」

「あいつは怪我で動けない俺を毎日殴ったり蹴ったりして侮辱した。看護士に言ってもみんな聞いてくれなかった。何故ならみんなあの人を信用しきっていたから。そして俺にあざが出来ないぐらいにうまく調節して暴行した」

次から次へと青年達は暴露していく。

「これは間違いです。信じてはいけません」

医師は否定するがみんな信用できなかった。

そして医師の話は急遽中断し緊急下校となった。

帰り道、海斗は龍人と加奈に話をする。

「しかし本当にあの医者がそんな事したのかな」龍人は疑っていた。

「分からない。でも人は見かけによらないからな。だが本当だとしたら大問題だけどな」海斗は返答した。

「君達、花式高校の生徒か」

1人の男が話しかけてきた。

それは鉄中椿だった。

彼は海斗と同じ歳の青年だった。

「今日学校どうだった?」

「大変だったぞ。先生達は慌ただしかったし」

椿も満足した。

「これで依頼は達成した。報酬も最近の中では結構良い額を稼いだ」

「あんた何が面白いんだ?」龍人が聞く。

「あれは俺が仕掛けたからな」

椿の言葉に海斗達は衝撃を受ける。

そこに胡桃、時、楽人、湖南がやってきた。

「まぁそもそもはその医者が招いた事だがな」

椿はそう言い残し去ってしまった。

「あいつ誰だ?」時は聞く。

「分からない、でも何かあると思う」海斗は何故が警戒する。

海斗と龍人、湖南が手芸部で作品を制作していると教室に楽人が入ってきた。

「楽人、お前も入部したのか?」海斗は聞く。

「おぉ…なんか楽しそうだし」

しかし本当は片想いの湖南がいたからだった。

「じゃ道具出すね」

湖南は道具を集めて楽人に渡す。

「ありがとう」楽人はドキドキしていた。

すると時も教室に入って来た。

「あなたも入部するの?」湖南は悪い噂もあって警戒した。

「いや、ちょっと暇だから海斗達と話に来た」

「しかし胡桃って何を考えているのか?」時は何となく言った。

「俺も分からない、彼女が一体どういう人なのか……でも驚いた。まさか彼女が楽人の不登校のきっかけをつくったとはね」海斗は言う。

「そういえば今日は加奈休みなんだな」

「そういやそうだな」

その頃、加奈はお墓参りをしていた。

お線香を焚きお墓の前で手を合わせる。

「あれから1年経つんだね」加奈は悲しそうだった。

その頃、胡桃は学校で飼っているウサギを見ていた。

楽人に対し惜しい事をしたという感情の方が強く恋心など抱いていなかった。

そこに時がやってきた。

「この間の話、偶然聞いたがお前随分酷いこと言うな~命に価値がないのは駄目だろ。俺でもそんな事言わないのに」

「うるさいわね」

胡桃は怒り気味に言いながらもウサギを見ていた。

「最近このうさぎ元気ないんだけど」胡桃は心配する。

「……そのウサギ、もうすぐ病気で死ぬらしい」

胡桃は驚く。

どうりで最近元気がないと思った。

「獣医に見てもらったがもう手の施しようがないらしい」

時の言葉に胡桃はショックを受ける。

嫌な事があって傷ついた時いつもウサギに励ましてもらっていたそんなウサギがもうすぐ死ぬ頃を胡桃は受け入れたくなかった。

そこに墓参りから帰って来た加奈がやってきた。

「いつもここにいるよね」加奈は何となく話しかけた。

「別にいいじゃない」

「あなたは誰が好きなの? 海斗だと思えば楽人に変わってでも所詮物扱い、あなたは何がしたいの?」

「だからあなたに関係ないでしょう」

しかし胡桃は気付いた。

その時、ウサギがさっき以上に動かなくなった。

胡桃は慌てて小屋の中に入ってウサギに触る。

そして何とか治療しようと考える。

「下手に動かさないで」加奈は止める。

「何言っているの」

「私達は医者ではないし獣医でももう助からないと言っていたのよ、それなのにあなたに何が出来るの?」

胡桃は信じたくなかった。

「みんな命があるのよ、だから助かる命もあれば助からない命もある。でもそれを受け止めていかないと」

加奈の言葉を聞いた胡桃は受け入れる事にした。

そしてウサギはその日の内に亡くなった。

胡桃は気軽に命の価値がないと言った自分を深く攻めた。

翌日、胡桃は屋上で落ち込んでいた。

そこに海斗と龍人、加奈、楽人、湖南、時がやってきた。

「これ以上1人になる事なんてないよ、そんなのただ苦しいだけじゃない。それに……あなたはちゃんと命の価値が分かっているんじゃないの」加奈は言う。

胡桃は加奈の説得に迷う。

「命に大きいも小さいもないのよ、ただ一緒にいて楽しければそれでいいんじゃないの」

「……私はまだ誰かと手を取りあえるかな」胡桃は聞いた。

「出来るよ」加奈は笑顔で言った。

楽人は迷う。

「お前に酷い事言われて俺は傷付いた。でももしお前が酷い事言ってくれなかったら俺は痩せでもいなかったしずっと1人だったと思う。ある意味感謝している」

その時、海斗が口を開いた。

「胡桃、お前は酷い事を言って人を傷付けたかもしれない。でもお前はその事に対し反省しているならまだやり直せる。それに俺の兄も胡桃と同じだった。だから胡桃にはそうなってほしくない」

「どういう事?」加奈が気になった。

「別に大したことではない」

龍人達も聞きたかったが敢えて聞かなかった。

そして胡桃は決めた。

「いいわよ、あなたたちと友達になってあげる」

加奈は喜ぶ。

そして海斗たちも笑顔になる。

しかし加奈は海斗が気になった。

放課後、海斗が帰っているとそこに加奈がやって来た。

「加奈」海斗は気付いた。

「海斗……この前のお兄さんの話だけど」加奈は勇気を出して聞こうとする。

「…いいやなんでもない」

すると胡桃もやって来た。

「海斗、この前の話教えて」

加奈は思った。

――なぜ胡桃も聞きたいの?

「……まぁ教えてあげても良い」

海斗は光島で育った日々を思い出す。

その島は少し都会要素が少ないだけで人はたくさんいて生活に不便に感じる事も少なかった。

海斗の父親の亮は光島のドクターであり街の人々からも信頼を寄せられていた。

母の静香も看護婦だったが結婚を機に仕事をやめ長男の高馬、次男の天都、妹の柚子の育てていた。

海斗は兄弟の中では三男であり家族は平和に暮らしていた。

しかしある日、父親の亮は手術に失敗し患者を死なせてしまった。

光島では医療に対する偏見が厳しく医者は絶対に間違いが許されない、医療ミスをした医者は殺人犯と同類の扱いを受ける事となっていた。

その手術が原因で世間からの信頼は失い水崎家は批判される事となった。

海斗と柚子は毎日来る批判に怯え電話も出る事が出来なくネットも使えなかった。

――わざとじゃないのに何でここまで

海斗の中で強い憎しみがこみ上げていた。

「大丈夫だ。俺が側にいる」

長男の高馬は海斗と柚子を励ます。

しかし高馬は考えていた。

――これから天都達は幸せになれるのだろうか

高馬は3人の事を思うと不安だった。

静香も疲れ切っていた。

「母さん、大丈夫だよ。きっとすぐに収まるよ」高馬は優しく励ます。

「どうかな?」天都はやさぐれていた。

「あいつら毎日毎日しつこく嫌がらせしやがって殺したくもなるよ」

「天都、そんな事言うもんじゃねぇ」

「ただ励ましているだけじゃ何も変わらない」

「お前」

「やめようよ」海斗は仲裁する。

それが数日間続いたある日亮への処分が決定した。

それは1年間の医療活動の停止だった。

医師免許剥奪を期待していた街の人々は納得がいかず前よりまして批判は悪化した。

「私、学校に行きたい」柚は呟く。

「学校に行ったっていじめられるだけだ」天都は冷たかった。

「そんな言い方ないだろ?」高馬は思わず声を出す。

「やっぱりこの世には復讐屋というものが必要だな」天都はなんとなく言う。

亮は黙っていた。

「そもそも父さんのせいでこんな事になったんだ」天都は亮を責める。

「やめろよ、家族じゃないか」「天都落ち着きなさい」高馬と静香は天都を宥める。

そのとき、インターホンが鳴った。

天都がドアを開けるとそこには井波訪花がいた。

訪花は天都の恋人であり島の人々から批判されても彼女だけは水崎家の味方だった。

そして海斗達の面倒も見てくれた。

海斗達にとっては姉のような存在だった。

「訪花、何している?」

「ケーキ買って来たよ」訪花は笑顔だった。

「今、こんなときに俺の家に来るなんて」天都は呆れた。

「こんなときだから来るんだよ。それに私たち付き合っているんだしそれにお母さんとか疲れているんでしょ」

「確かに疲れているけど…」

「だったら私も何が出来る事をやってあげるよ。お父さんがいつも天都のお父さんに優しくしてくれているし」

「訪花」

天都は内面嬉しかった。。

そして訪花は周りからの批判も無視し毎日水崎家に来て家事をする。

柚子は訪花をお姉さんのように甘え海斗は訪花に勉強を見てもらっていた。

「訪花さん本当は嫌なら来なくてもいいんだよ。俺が天都達の面倒を見るから」高馬は訪花を気にかける。

「いいえ、私は天都の事を愛しています。だから天都と同じぐらいに天都の家族の皆さんも守っていかないと」

それを聞いた高馬は有難く思った。

天都も同じだった。

結婚もしていないしそれどころか自分と別れても良いのにそれでも自分の事を思ってくれていて天都は嬉しかった。

しかしある日、高馬が道路を歩いていると突然トラックが突っ込んできて高馬は亡くなった。

ただでさえ精神的ショックを受けていた海斗達は憔悴しきってしまう。

しかし一方で批判や嫌がらせは収まらないでいた。

「あいつらが殺したんだ!」天都は包丁を握りしめ外に飛び出そうとする。

「やめろ兄貴!」

「あいつらが兄を殺したんだ」天都は正気を保つ事が出来ない状態だった。

海斗は辛くなりそれ以上の続きは話せなかった。

その話を聞いて加奈と胡桃は言葉が出なかった。

「俺はあの島の人間が嫌いだ…全て」海斗は辛そうだった。

「光島は知っているけどでもそんな話聞いたことない」胡桃は言う。

「俺は別世界から来ている。だからその光島もこの世界ではなく別世界の事だ」海斗は説明する。

「別世界だなんてそんな」胡桃は海斗がふさげていると思う反面、本当かもしれないとも考えた。

「そんな事が」

加奈は海斗が別世界から来た事は信じていないがしかし海斗が味わった惨劇は信じた。

「でも私は海斗がどんな人であっても関係ない」

加奈の言葉を聞いて海斗は思わず振り返る。

「だって海斗は私の友達だから。だから海斗がどんな人であっても関係ない」加奈は海斗の顔を見て言う。

「ありがとう、加奈」海斗は嬉しかった。

最初は自分を拒否していた加奈が自分にこんな事を言ってくれるときが来たからだった。

しかし胡桃が言った

「でもその出来事、私が住んでいた町にもあった。」

「どういう事?」海斗が聞く。

「私の住んでいた町でも同じような事件があったの。大火事によって多くの人が負傷した事件が」胡桃は辛そうに言った。

海斗は思いたくないがある事が頭をよぎった。

――もしかしてこの世界の兄貴がいるのか

それを思うと海斗は怖くなった。

 

夏休みが近くなったある日1人の生徒が登校した。

そして海斗と龍人、加奈の教室に入るとクラスメイトはざわついていた。

「あいつ誰だ?」

「もしかしてあいつなのか?」

しばらくすると湖南もやってきた。

「湖南、あれ誰だ、みんなざわついているけど」海斗が聞く。

「光君だよ」

しかし海斗は誰だが分からなかった。

そこに胡桃も慌ててやってきた。

「嘘でしょう」

それはかつて自分が見下だしていた光楽人だったがその姿はメタボ体形から細身の体系になり清潔でイケメンとなり同一人物とは思えないほど変わっていた。

性格も前は弱久しさがあったのに対し明るく爽やかな好青年になっていた。

そしてその日以降楽人は女の子から注目の的となった。

数日後、屋上で海斗と龍人、加奈が集まっていた。

「しかし楽人、凄い人気者だね」

「いいな、あの人、あんなにモテて」海斗は羨ましかった。

そこに楽人がやってきた。

「久しぶりだね龍人、でも君は」

楽人は海斗と初対面だった。

龍人は海斗について説明した。

「そうなんだね。よろしく」

「しかし君いいね、凄いモテて」

「まぁね。ダイエットとか大変だったけど」

「みんな何しているの?」

振り返ると湖南がいた。

湖南を見た楽人は一瞬にして心が麻痺した感覚に襲われた。

楽人は湖南に一目惚れしてしまった。

湖南とはクラスが違う事やすぐ不登校になったため湖南の顔を覚えていなかったための一目惚れだった。

一方、胡桃は後悔していた。

「まさか自分が見下していた楽人があんな風になるなんて」

「今度は楽人を狙うの?」加奈は声をかけた。

「別に。今更遅いし」

「あなたは本当に人を好きになった事あるの?」

「あるわよ。そんなの」

「でもあなたが好きになる人ってただ側に置きたいだけの物扱いに感じる」

「あなた不愉快ね」

胡桃は去っていった。

翌日、海斗と加奈、龍人が屋上にいるとそこに楽人がやって来た。

「あれ? 風凪さんは」楽人が聞く。

「今日は休みだよ」

「そうか…」楽人はがっかりだった。

そこに時がやって来た。

「お前誰だ?」時も楽人を覚えていなかった。

「俺は光楽人だ。まぁしばらく学校休んでいたから覚えていないのも仕方ないけど」楽人は笑顔で言った。

「そうか…まぁ別にいいけど」時は理解した。

そこに胡桃もやってきた。

楽人は前回の事もあって胡桃に威圧感を覚える。

「楽人君、この前の返事だけど…」胡桃は馴れ馴れしく話しかける。

「お断りだよ」楽人は冷たかった。

「君は告白した僕に対して酷い事を言ったじゃないか、それで僕はとても傷ついた。それがきっかけで僕は学校に行けなくなった、君は僕にあなたの命に価値がないと言ったじゃないか」

楽人は自分の受けた苦痛を伝えた。

初めて知った海斗と龍人、時は驚く。

「酷いな…胡桃」海斗は冷めた表情となる。

「流石に擁護出来ないな」龍人も同じだった。

しかし加奈は前から知っていたため驚かなかった。

「あの時はごめん…でも今は」

「言い訳なんて聞きたくないさ」

楽人は胡桃から去っていった。

加奈は胡桃が何かしたいか分からなくなっていた。

 

帰り道、海斗と龍人、加奈が歩いていると龍人は体験入部について話す。

「2人も何か部活に入らないか?」龍人は提案する。

「いいね、やろう」海斗は賛成する。

加奈は少し考える。

「……分かった、体験入部だけでも行ってみる」

翌日の放課後、海斗と加奈は龍人の提案で手芸部の体験入部に行く事とした。

「でもなんで手芸部なんだ?」

「何となくだ」龍人は適当だった。

「でも手芸部も面白そうだね」加奈は興味を持つ。

そして手芸部の教室に入るとそこには手芸をする風凪湖南がいた。

彼女は上品で優しそうな女子生徒だった。

「君も体験入部?」龍人は話しかけた。

「いやもう入部しているよ、でも私含めて4人らしいよ」湖南は笑顔で答える。

「4人なのか…寂しいものだな、まぁいいか」海斗は言う。

湖南は3人に針と糸などを渡す。

そして試しに作ってみるが海斗は何を作ろうか思いつかずにいた。

龍人は何故かカマキリの袋を作っていた。

「何でカマキリなの?」加奈は疑問に思う。

「何となく思いついて」

すると湖南は聞いた。

「ねぇ…3人は医者になりたいからこの学校に入ったの?」

「まぁそうだけど」

「君は医療の道に進むために入ったんじゃないの?」海斗は聞く。

「私は親に言われて入ったけどでも医療って本当に自分のやりたい事が分からなくて」湖南は今の状況に不満を感じていた。

「俺は別世界から来たからまぁ成り行きで花式高校に入ったっていう感じだな」

海斗はまだ別世界からやってきた事を言ってしまう。

――またこの話か

加奈と龍人はそう思った。

「何それ?」湖南は笑う

湖南も信じていなかったが海斗は湖南とも距離が縮まったように感じた。

夕方4人は部活を終え一緒に帰る。

「どう、入部する?」湖南は3人に聞く。

「面白そうだから入ってみる」海斗は決めた。

「俺も入るか」

「私も入部する」加奈と龍人も同じだった。

「分かったわ」湖南は嬉しそうだった。

そして海斗にまた新しい友達が出来たようだった。

翌日、海斗が入部届けを提出しに行こうとした時、湖南とすれ違う。

海斗は思い出したように湖南に聞く。

「そういえば君はもしドクターになるとしたらどんな事をしたいの?」

「…たぶん助産師かな? まだ分からないけど」

「そうか」

「みんな偉いな。誰かのために働きたいだなんて」海斗は前と同じ事でまだ感心する。

「あなた面白いね。本当に別世界から来たんだね」

するとそこに胡桃がやってきた。

「あなたたちそこで何やっているの?」

海斗と湖南は胡桃に気付く。

「別にただ話しているだけさ」

しかし胡桃は気に食わなかった。

そして胡桃は湖南に対して警戒心を抱いた。

すると加奈がやってきた。

加奈を見た途端、胡桃は立ち去った。

加奈は胡桃を追いかけた。

「あなたもしかして今度は湖南に目をつけているの」

「海斗と付き合うのは私。彼女は私にとってかなりの脅威になる」

胡桃の言葉に加奈は呆れた。

「……あなた勇気がなさすぎるのよ」加奈は呟く。

「何が言いたいの?」

「だって海斗と付き合いたいとかそんな事言っているくせにあなた海斗と関わる事恐れてるように見えるよ」

「それは……」胡桃は動揺を見せる。

「あなたは勇気がないのよ、勇気がないから今の状況が変わらない」

「何偉そうに説教してるのよ」

「説教じゃない。主張だよ」

「似たようなものだよ」

しかし加奈の言葉は胡桃に響いていた。

――自分は海斗に振り向いてもらう事よりも周りの障害を排除しようとしている事を優先している。

胡桃は自分の弱さに気付いたようだった。

 

 

海斗と加奈、龍人は放課後忘れ物をしたため体育館の中に入る。

「しかし3人同時で忘れるとか偶然だね」海斗は面白く感じる。

そして体育館の中に入ると血まみれのクラスメイトの荒木と空川時がいた。

荒木は時に挑むが時は後ろへはじき飛ばす

3人は荒木のそばによる。

「何でこんな事する」龍人は激怒する。

「こいつが先に襲って来た。ただそれだけ」時は悪びれた様子はなかった。

「だからってやり過ぎだぞ」龍人は反論する。

「正当防衛だ。俺は戦わなければやられてたからな」

「そりゃ…そうか」海斗は納得した。

「でもあなた将来医療の道に進むんじゃないの? 明らかにやり過ぎだよ」加奈は強く言う。

「そんなの興味ねぇな」

龍人は怒りがこみ上げる。

「俺に挑むなら相手になってやる。ただし容赦はしないが」時は去っていった。

その後、3人は荒木の手当てをする。

しかし荒木は悔しそうだった。

海斗達は時を危険視する。

3人が手芸部の教室に入るとそこに湖南がいた。

「どうしたの、元気なさそうだけど」湖南は心配する。

海斗は先ほどの出来事を話した。

「彼は強さに執着する人で相手を屈服させ手下にしようとするから嫌っている生徒も多い」

「それに自分を侮辱するような者は誰だろうか容赦せずに圧力をかけたり怖がらせたりするなど力で人をねじ伏せようとする性格よ」

「何でそんな奴がこのチャレンジスクールにいるんだ」海斗は疑問に思う。

「審査が甘いから本来条件に当てはまらない人でも入れたりするのよ」湖南は返答する

「でもそんな人が将来ドクターになると考えるととても嫌だ」加奈は胡桃と同じく時に対しても不快感を持っていた。

「止めるしかないな」龍人は決意する。

「でもどうやって止めるんだ?」海斗が聞く。

「それは内緒だ」龍人にはある考えがあった。

翌日、海斗と龍人が屋上にやってくると時が他の生徒の胸倉を掴んでいた。

「お前、俺を簡単に潰せるらしいな」

時の迫力にその生徒は半泣き状態だった。

周りには女子生徒も何人かいた。

「やめろよ」

海斗が声をかけるとその隙に生徒は逃げていく。

「邪魔するなよ」

「お前、何で人を力でねじ伏せろうとする? 人を傷つけるなんてドクターのする事じゃない」

「ドクターじゃねぇしそもそも興味がない」

時はそう言い残し立ち去った。

「大丈夫か?」海斗は生徒に寄る。

しかし生徒は悲しそうだった。

「好きな子の前で泣きそうになるなんて…」

龍人は怒りに燃える。

――人の心と体の救うのがドクターだ、それなのにあいつがやっている事はドクターどころが人の未来を貶す行為だ。

そして海斗にもその生徒の気持ちは痛いほど伝わった。

「あいつは許せないな。ちょっと懲らしめるか」

放課後、海斗と龍人、加奈は時を体育館に呼ぶ。

「お前、さっきお前のしたことで1人の生徒に深い心の傷が出来た」海斗の言葉にも時は何の反応もしなかった。

「力の強い者が繁栄し弱い者はゴミとして屈服する、それが現実だろ」時の発言に三人も呆れた。

龍人は前に出る。

「俺と勝負しようぜ、もし俺が負けたらお前の手下になってやるからよ、ただし俺が勝ったら俺の言う事を聞け」

それを聞いた時は笑顔になる。

「面白い、いいぜ、瞬殺してやる」

時は不意打ちで龍人にパンチをするが龍人はそれを避けて時を転ばせる。

海斗と加奈、時は驚く。

「まぐれだ」

時は今度は掴みかかるが龍人は時の手首を掴み握り絞める。

時は苦しみ出し龍人が手を離すと時は倒れこむ。

「お前……」時はビビっていた。

「なぜ殴らない?」。

「これは誰かを助けるために鍛えた力で喧嘩のために鍛えた力じゃない、それにドクターを目指す人が血を出させちゃいけないだろ」

「……」

「分かっただろ、今までお前がやってきた事を。やられたみんなはお前と同じがそれ以上の痛みや精神的な傷を負わされたんだよ。」

時は悔しそうだった。

「こんなに早く終わるなんてありえない」

時は続行しようと龍人に殴り掛かるがしかし龍人は華麗にかわす。

「お前は何でそこまで強さにこだわる?」海斗は問う。

「……俺は力が弱いせいでい中学校でいじめられていた」

「不良たちにいじめら毎日殴る蹴るなどの暴行を受けた……それで俺はやがて学校に行くのをやめた。でもせめてそいつだけには復讐をすることに決めた。その日から俺は毎日トレーニングをした。そして学校に行き見事いじめていた奴をボコボコにしてやった。その日以降俺は誰にもいじめられなくなった。そこで力こそが1番大事だと理解した。」

「復讐を成し遂げたという事か」

「そうだ。ついでにいじめていた奴は病人だったし」

「お前、病人を殴ったのか?」

「関係ないだろ? あっちから殴ってきたんだ」

3人は呆れた。

「お前のやっている事はそいつとさほど変わらない」

「俺をあいつらと一緒にするな」時は否定する。

「暴力に暴力は更なる暴力しか生まない」

「そんなありがちなセリフなんか言うなよ。」

時は感情的になり動揺する。

「だったら何が正しいんだよ」時は何を信頼して良いか分からなかった。

「なら俺たちが支えてやるよ、友達として」

「友達? ふさげるな」

「ふさげていない、友達が側にいればお前の心も少しは癒されるんじゃないのか?」

それを聞いた時はしばらく考える

「……まぁ暇つぶしには丁度良いかもしれない、だが俺が負けたことは言うな」

「安心しろ。言わないさ」

海斗と龍人は快く時を仲間にするがしかし加奈は複雑だった。

 

 

海斗は龍人と加奈とキャッチボールをしていた。

加奈は以前に比べ心を開いているようだった。。

「そういえば2人は彼氏や彼女とかいるのか?」龍人は聞く。

海斗はドキッとした。

「私はいないよ。高校生まで恋愛しないと決めていたし」

「俺もいないさ。いつか出来たら良いけど」

加奈の返答を聞いた海斗は安心した。

「そうか、まぁ高校生活の中で彼出来たら良いけどな」

放課後、加奈が屋上で休んでいるとそこに草麦胡桃がやってきた。

彼女は美貌の持ち主だがどこか冷めた性格でもあった。

「火高さん、悪いけど今後海斗とは関わらないでくれないかな」

「何で」加奈は驚く。。

「私は海斗が好きなの、それなのに海斗はあなたとばかり一緒にいて他の女子は気にもとめない、このままじゃ海斗は手に入らない」胡桃はいじめっ子のように話す。

「でも時々関わっているよね?」

「そうだけどでもあなたがいたんじゃ駄目なのよ」

「なんか意味が分からないしそもそも海斗は私の友達だけど恋人関係になりたいとは思っていないわ」

「そうかしら…まぁあなたには楽人の方がお似合いよ」

それは光楽人の事だった。

名前のかっこよさとは裏腹に肥満体質で眼鏡をかけていて不潔だったため入学してすぐにクラスから嫌われその結果、海斗が来る前に不登校になっていた生徒だった。

胡桃はそんな楽人を見下ろしていた。

「あのデブ、あの見た目でよく入学してすぐに私に告白してきたものだね、もう少し自分の身の程を知るべきなのよ。だから『何であなたみたいなゴミと付き合わないといけないの』と言ってやったの」胡桃は面白話として話す。

「あなたドクターを目指している人間じゃないの?」加奈は感情的になる

「何が言いたいの?」

「ドクターは人の命を救い悲しみを消して笑顔にするのが役目、でもあなたは人を平気で傷つけてそして今笑っている。そんな人が将来命を救うとは思えない」

「あなた意外と気強そうだね」胡桃は言う。

「もういいわ」胡桃はその場を立ちろうとした。

「あなた将来何になりたいの?」

「獣医よ、でも何でそんな事聞くの?」

「あなたが何を目指しているのか気になって」

胡桃は立ち去った。

しばらくすると入れ替わりで海斗がやってきた。

「どうした、そんな顔して」海斗は声をかける。

「何でもないよ」

翌日、授業が始まり全員席に着く。

この日は助産師の映像を見る動画だった。

加奈は出産シーンを見て思った。

――なぜ生まれてくる時は可愛いのに大人になると性格が悪くなったりするの

加奈は胡桃の件もあってそう考えてしまう。

――でも医療って人の死も見るんだよね

覚悟していたとはいえ加奈は少し不安になる。

放課後、加奈が校庭にいるとそこに胡桃がやってきた。

「火高さん、あなたに協力してもらいたい事があるんだけど」胡桃は何故が加奈に頼み事をする。

「何」加奈は警戒する。

「あなたが海斗の目の前で私をいじめて。すると海斗は私を助ける。そうすればそれがきっかけで私と海斗は結ばれるのよ」胡桃は笑顔で話す。

「そんな事出来るわけない。第一そんなことしたら私は友達を失うだけじゃないの」加奈は断る。

「あなた、失うものがないからいいじゃないの。それにここにはたくさんの生徒がいるのよ。いくらでもあるんだからいいじゃないの」

「そういう問題じゃない、自分の幸せのために他人を利用しようとしているのが嫌なの。というよりそんなことしてたらいつか海斗どころが誰からも相手にされなくなるよ」加奈はそう反論する。

胡桃は加奈を睨みつける。

「あなた意外と挑発的ね」

「他人を利用して自分が幸せになる、そんなのドクターを夢見るものがする事じゃない」

すると胡桃の態度が変わる。

「あなた勘違いしているけど私は動物の命を救いたいからドクターになりたいんじゃない。ドクターは高収入だから医療の道に進むだけよ」

加奈は呆れた。

加奈は思わずそこに置いてあった空き缶を胡桃に投げつける。

「何するのよ!」

「あなた最低よ! 人の顔を被った化け物だわ!」

そこに海斗と龍人やってきた。

「何しているんだ?」海斗は心配する。

「別に何でもないよ…ところで海斗はどんな女がタイプなの?」胡桃は何となく聞く。

「俺は特にこれといってないな、ただ楽しければいいだけだし」海斗は明るく返答する。

「そう……」

胡桃は去っていった。

「胡桃と友達なの?」龍人は聞く。

「違うよ、あんな人」加奈は否定する。

夕方、胡桃は屋上にいた。

胡桃はどうしたらさらに強い立場になれるのか考えていた。

胡桃は自分の存在価値にこだわっていた。