海斗と龍人、湖南が手芸部で作品を制作していると教室に楽人が入ってきた。

「楽人、お前も入部したのか?」海斗は聞く。

「おぉ…なんか楽しそうだし」

しかし本当は片想いの湖南がいたからだった。

「じゃ道具出すね」

湖南は道具を集めて楽人に渡す。

「ありがとう」楽人はドキドキしていた。

すると時も教室に入って来た。

「あなたも入部するの?」湖南は悪い噂もあって警戒した。

「いや、ちょっと暇だから海斗達と話に来た」

「しかし胡桃って何を考えているのか?」時は何となく言った。

「俺も分からない、彼女が一体どういう人なのか……でも驚いた。まさか彼女が楽人の不登校のきっかけをつくったとはね」海斗は言う。

「そういえば今日は加奈休みなんだな」

「そういやそうだな」

その頃、加奈はお墓参りをしていた。

お線香を焚きお墓の前で手を合わせる。

「あれから1年経つんだね」加奈は悲しそうだった。

その頃、胡桃は学校で飼っているウサギを見ていた。

楽人に対し惜しい事をしたという感情の方が強く恋心など抱いていなかった。

そこに時がやってきた。

「この間の話、偶然聞いたがお前随分酷いこと言うな~命に価値がないのは駄目だろ。俺でもそんな事言わないのに」

「うるさいわね」

胡桃は怒り気味に言いながらもウサギを見ていた。

「最近このうさぎ元気ないんだけど」胡桃は心配する。

「……そのウサギ、もうすぐ病気で死ぬらしい」

胡桃は驚く。

どうりで最近元気がないと思った。

「獣医に見てもらったがもう手の施しようがないらしい」

時の言葉に胡桃はショックを受ける。

嫌な事があって傷ついた時いつもウサギに励ましてもらっていたそんなウサギがもうすぐ死ぬ頃を胡桃は受け入れたくなかった。

そこに墓参りから帰って来た加奈がやってきた。

「いつもここにいるよね」加奈は何となく話しかけた。

「別にいいじゃない」

「あなたは誰が好きなの? 海斗だと思えば楽人に変わってでも所詮物扱い、あなたは何がしたいの?」

「だからあなたに関係ないでしょう」

しかし胡桃は気付いた。

その時、ウサギがさっき以上に動かなくなった。

胡桃は慌てて小屋の中に入ってウサギに触る。

そして何とか治療しようと考える。

「下手に動かさないで」加奈は止める。

「何言っているの」

「私達は医者ではないし獣医でももう助からないと言っていたのよ、それなのにあなたに何が出来るの?」

胡桃は信じたくなかった。

「みんな命があるのよ、だから助かる命もあれば助からない命もある。でもそれを受け止めていかないと」

加奈の言葉を聞いた胡桃は受け入れる事にした。

そしてウサギはその日の内に亡くなった。

胡桃は気軽に命の価値がないと言った自分を深く攻めた。

翌日、胡桃は屋上で落ち込んでいた。

そこに海斗と龍人、加奈、楽人、湖南、時がやってきた。

「これ以上1人になる事なんてないよ、そんなのただ苦しいだけじゃない。それに……あなたはちゃんと命の価値が分かっているんじゃないの」加奈は言う。

胡桃は加奈の説得に迷う。

「命に大きいも小さいもないのよ、ただ一緒にいて楽しければそれでいいんじゃないの」

「……私はまだ誰かと手を取りあえるかな」胡桃は聞いた。

「出来るよ」加奈は笑顔で言った。

楽人は迷う。

「お前に酷い事言われて俺は傷付いた。でももしお前が酷い事言ってくれなかったら俺は痩せでもいなかったしずっと1人だったと思う。ある意味感謝している」

その時、海斗が口を開いた。

「胡桃、お前は酷い事を言って人を傷付けたかもしれない。でもお前はその事に対し反省しているならまだやり直せる。それに俺の兄も胡桃と同じだった。だから胡桃にはそうなってほしくない」

「どういう事?」加奈が気になった。

「別に大したことではない」

龍人達も聞きたかったが敢えて聞かなかった。

そして胡桃は決めた。

「いいわよ、あなたたちと友達になってあげる」

加奈は喜ぶ。

そして海斗たちも笑顔になる。

しかし加奈は海斗が気になった。

放課後、海斗が帰っているとそこに加奈がやって来た。

「加奈」海斗は気付いた。

「海斗……この前のお兄さんの話だけど」加奈は勇気を出して聞こうとする。

「…いいやなんでもない」

すると胡桃もやって来た。

「海斗、この前の話教えて」

加奈は思った。

――なぜ胡桃も聞きたいの?

「……まぁ教えてあげても良い」

海斗は光島で育った日々を思い出す。

その島は少し都会要素が少ないだけで人はたくさんいて生活に不便に感じる事も少なかった。

海斗の父親の亮は光島のドクターであり街の人々からも信頼を寄せられていた。

母の静香も看護婦だったが結婚を機に仕事をやめ長男の高馬、次男の天都、妹の柚子の育てていた。

海斗は兄弟の中では三男であり家族は平和に暮らしていた。

しかしある日、父親の亮は手術に失敗し患者を死なせてしまった。

光島では医療に対する偏見が厳しく医者は絶対に間違いが許されない、医療ミスをした医者は殺人犯と同類の扱いを受ける事となっていた。

その手術が原因で世間からの信頼は失い水崎家は批判される事となった。

海斗と柚子は毎日来る批判に怯え電話も出る事が出来なくネットも使えなかった。

――わざとじゃないのに何でここまで

海斗の中で強い憎しみがこみ上げていた。

「大丈夫だ。俺が側にいる」

長男の高馬は海斗と柚子を励ます。

しかし高馬は考えていた。

――これから天都達は幸せになれるのだろうか

高馬は3人の事を思うと不安だった。

静香も疲れ切っていた。

「母さん、大丈夫だよ。きっとすぐに収まるよ」高馬は優しく励ます。

「どうかな?」天都はやさぐれていた。

「あいつら毎日毎日しつこく嫌がらせしやがって殺したくもなるよ」

「天都、そんな事言うもんじゃねぇ」

「ただ励ましているだけじゃ何も変わらない」

「お前」

「やめようよ」海斗は仲裁する。

それが数日間続いたある日亮への処分が決定した。

それは1年間の医療活動の停止だった。

医師免許剥奪を期待していた街の人々は納得がいかず前よりまして批判は悪化した。

「私、学校に行きたい」柚は呟く。

「学校に行ったっていじめられるだけだ」天都は冷たかった。

「そんな言い方ないだろ?」高馬は思わず声を出す。

「やっぱりこの世には復讐屋というものが必要だな」天都はなんとなく言う。

亮は黙っていた。

「そもそも父さんのせいでこんな事になったんだ」天都は亮を責める。

「やめろよ、家族じゃないか」「天都落ち着きなさい」高馬と静香は天都を宥める。

そのとき、インターホンが鳴った。

天都がドアを開けるとそこには井波訪花がいた。

訪花は天都の恋人であり島の人々から批判されても彼女だけは水崎家の味方だった。

そして海斗達の面倒も見てくれた。

海斗達にとっては姉のような存在だった。

「訪花、何している?」

「ケーキ買って来たよ」訪花は笑顔だった。

「今、こんなときに俺の家に来るなんて」天都は呆れた。

「こんなときだから来るんだよ。それに私たち付き合っているんだしそれにお母さんとか疲れているんでしょ」

「確かに疲れているけど…」

「だったら私も何が出来る事をやってあげるよ。お父さんがいつも天都のお父さんに優しくしてくれているし」

「訪花」

天都は内面嬉しかった。。

そして訪花は周りからの批判も無視し毎日水崎家に来て家事をする。

柚子は訪花をお姉さんのように甘え海斗は訪花に勉強を見てもらっていた。

「訪花さん本当は嫌なら来なくてもいいんだよ。俺が天都達の面倒を見るから」高馬は訪花を気にかける。

「いいえ、私は天都の事を愛しています。だから天都と同じぐらいに天都の家族の皆さんも守っていかないと」

それを聞いた高馬は有難く思った。

天都も同じだった。

結婚もしていないしそれどころか自分と別れても良いのにそれでも自分の事を思ってくれていて天都は嬉しかった。

しかしある日、高馬が道路を歩いていると突然トラックが突っ込んできて高馬は亡くなった。

ただでさえ精神的ショックを受けていた海斗達は憔悴しきってしまう。

しかし一方で批判や嫌がらせは収まらないでいた。

「あいつらが殺したんだ!」天都は包丁を握りしめ外に飛び出そうとする。

「やめろ兄貴!」

「あいつらが兄を殺したんだ」天都は正気を保つ事が出来ない状態だった。

海斗は辛くなりそれ以上の続きは話せなかった。

その話を聞いて加奈と胡桃は言葉が出なかった。

「俺はあの島の人間が嫌いだ…全て」海斗は辛そうだった。

「光島は知っているけどでもそんな話聞いたことない」胡桃は言う。

「俺は別世界から来ている。だからその光島もこの世界ではなく別世界の事だ」海斗は説明する。

「別世界だなんてそんな」胡桃は海斗がふさげていると思う反面、本当かもしれないとも考えた。

「そんな事が」

加奈は海斗が別世界から来た事は信じていないがしかし海斗が味わった惨劇は信じた。

「でも私は海斗がどんな人であっても関係ない」

加奈の言葉を聞いて海斗は思わず振り返る。

「だって海斗は私の友達だから。だから海斗がどんな人であっても関係ない」加奈は海斗の顔を見て言う。

「ありがとう、加奈」海斗は嬉しかった。

最初は自分を拒否していた加奈が自分にこんな事を言ってくれるときが来たからだった。

しかし胡桃が言った

「でもその出来事、私が住んでいた町にもあった。」

「どういう事?」海斗が聞く。

「私の住んでいた町でも同じような事件があったの。大火事によって多くの人が負傷した事件が」胡桃は辛そうに言った。

海斗は思いたくないがある事が頭をよぎった。

――もしかしてこの世界の兄貴がいるのか

それを思うと海斗は怖くなった。