胡桃は校庭で考えていた。

――これから先、自分は獣医の道に進んで良いのかな

高馬の件以降ずっと胡桃は高馬の消滅にトラウマを感じていた。

――私、本当に医療の現場でやっていけるのかな

――目の前で消える命と真正面から向き合えるのかな

胡桃は不安だった。

「どうした?」そこに時がやって来た。

「別に何でもない」

「無理しなくても良いぞ。何が心配事か?」

「別に…」胡桃は立ち去った。

帰り道、胡桃が落ち込みながら帰っているとそこに自転車から転倒してケガをしている青年を見つけた。

「大丈夫」胡桃は持っていたハンカチを包帯にして巻いてあげる。

「ありがとう」

胡桃の前にいたのは谷月千、泉蓮の友人の1人だった。

胡桃は千のバックを拾うと中に家電関係の資料が入っている事に気付く。

とりあえず胡桃は千を休める場所まで連れて行く。

歩いている途中、バイクに乗った青年が前に現れる。

それは純崎剛、同じく蓮の友人の1人だった。

「千じゃないか」

「剛」千は驚く。

「久しぶりだな」剛は喜ぶ。

胡桃は少し混乱した。

そして自然緑川公園で休む。

剛は薬を塗り処置をする。

「ありがとう、剛」千は感謝する。

「あなたも医療関係の人?」胡桃は聞く。

「そうだよ。君は何をしている人なのかな?」

「私も医療関係の高校に通っているわ」

「でも良かった無事そうで」胡桃は安心する。

「ありがとう、君のおかけで助かったよ」千は胡桃にお礼を言う。

そこに海斗と時がやってきた。

「どうした?」海斗が話しかける。

「うんちょっとね」

「君、花式高校の生徒」剛は海斗に話しかける。

「そうだけど」

「そうか、この前蓮という奴と久しぶりに会ったんだけどそこで花式高校に通う青年が恋愛相談をしていたんだよ」

海斗は思った。

――間違いなく自分だな、でもまさか蓮の知り合いにも会うとは

「しかし卒業から3年経つな、いつも一緒に会っていたのに気付けば会う回数も減ったな」剛は写真を取り出す。

海斗が覗き込むとそこには蓮と奈美そして剛と千、その他5人が写っていた。

「この人達友達?」海斗は聞く。

「そうだ。俺にとって大切な仲間達だ」剛は高校生活を振り返る。

「今はそれぞれ別の道を進んでいるがしかし俺達は繋がっている。いつまでも」

海斗は何故が感動した。

「じゃ俺は行く」

「おう、またな」

千は行く前に胡桃に言った。

「ありがとう、君みたいに優しい人に助けてもらえて良かった」胡桃は嬉しい気持ちになった。

「じゃ俺も帰る」

剛も帰っていった。

胡桃が行こうとした。

「胡桃、何があったら相談にのるぜ」時は言う。

「どうしたの? 時らしくない」

「龍人と約束したからな。人の役に立つような事をすると」

胡桃は笑顔になった。

――そうだね…命とはこれから前向きに向き合っていけば良い

翌日、胡桃は昨日と同じように悩んでいた。

すると加奈がやってきた。

「どうしたの?」

「何でもない…というよりみんな同じ事言うね」

「心配なんだよみんな」

しかしみんなから大事に思われていると考えると胡桃は嬉しかった。

放課後、胡桃は自然緑川公園にいた。

「君昨日の」

顔を上げると剛が話しかけてきた。

「あなた昨日の」胡桃は少し驚く。

「なんか昨日より顔つきよくなったじゃないか」剛は言う。

「医療について深く考えていたけれどでもみんな最初から優秀なわけない」

「その通り。大切なのは自分は恐怖を乗り越えられると信じる事だ、そしてそのためには強くなることだ。俺はそんな事しか言えないがでも俺はそれが一番大事な事だと信じている」

しかし胡桃の心には響いたようだった。

「まぁ俺の仲間たちはみんな君みたいにそれぞれ苦悩していた。恋の問題もあれば恨みの問題などもあった。でもみんなそれを乗り越え未来を手に入れた。君だって出来るよ」

剛は自転車にまたがる。

「じゃあね」剛は帰っていく。

「自分を信じる…そうだよね」

胡桃はそう呟きながら笑顔になる。

そして胡桃はまだ改めて獣医を目指そうと考えた。

 

 

 

 

海斗は加奈に告白したいと思っていたがやはり出来ないで悩んでいた。

何回も2人っきりになってそのたびに告白しようとしたが告白しようとする直前に無意識に別の話をしてしまうため告白できないでいた。

海斗は1人教室の椅子に座りながら落ち込んでいた。

その時、奈美からもらったキーホルダーを見た。

「何で出来ないんだ」海斗は辛くなった。

「どうしたの?」

顔を上げるとクラスメイトの伊藤抗がいた。

「別に何でもない」海斗が去ろうとした。

「困っているなら助けてあげるよ」

海斗はしばらく相談した。

「加奈の事好きなんだ」

「だったら告白できるようにセッチングしてあげるよ」

「セッチング?」

「告白しやすい雰囲気を作ってあげるという事、知り合いの家を提供したり遊びのイベントを用意したり」

「本当か? それなら」

「でもその前に1万円頂戴」

「お金取るのか」

「無料の訳ないだろ」

海斗は考えるが抗を信じお金を抗に払った。

その頃、楽人も悩んでいた。

――どうしたら湖南と付き合えるんだろう。

するとそこに同じように抗がやってきた。

「恋に悩んでいるのか? だったら俺が特別な方法で実らせてあげるよ」

楽人は興味を持ち話を聞く。

「それは本当か?」

「本当だ。15000円払えばね」

「は? お金取るのか?」

「それほどの事をするんだから」

楽人は迷いながらも海斗と同じようにお金を払う。

「本当にこれでやってくれるんだろうな?」楽人は疑う。

「安心しろ。その恋実らせてやる」

抗はそう言い去っていった。

翌日、海斗は加奈に話しかける。

加奈はいつも通りだった。

抗の事を聞こうとしたがしかし話すのはやめた。

その頃、楽人も湖南に話しかけるが湖南もいつも通りだった。

それが数日間続いた。

ある日、龍人は屋上で抗と話をしていた。

そこに胡桃もやってきた。

「ねぇ胡桃、何が恋の悩みない?」抗は聞く。

「別にないよ」

すると海斗と楽人がやってきた。

「抗、準備は出来ているのか?」

「抗、今どういう状況だ?」

「え?」海斗と楽人はお互い顔を見る。

「まだだよ。少し時間がかかるもので」抗は笑顔で言う。

しかし海斗は焦っていた。

「早くしてくれ、こっちはずっとドキドキしているんだ」海斗は焦っていた。

胡桃は何が不信感を感じていた。

そして抗は去っていった。

放課後、胡桃は海斗と楽人を校庭に呼ぶ。

「どうしたんだ?」

「あなた達抗に何を頼んだの?」胡桃が問う。

「別に」海斗は言えなかった。

「俺も別に」楽人は目線を下に向ける。

「何か怪しいのよ、抗」胡桃は疑っていた。

「クラスメイトを疑うのかよ、抗は良い奴だ」海斗は信じていた。

「そうだよ、俺は抗を信じる。15000円払っているんだから」楽人は思わず言ってしまう。

「え? 15000円?」海斗は注目する。

胡桃は察し呆れた。

「あなた達、一体何頼んだの?」

「それは言えない……でも抗は良い奴だし」

「抗の事、どれほど知っているの?」

胡桃の問いに海斗と楽人は黙り込む。

「何を頼んだが知らないけど人を疑うのも大事だよ」胡桃は海斗と楽人に忠告する。

その時、龍人がやってきた。

「海斗、抗がみんなに責められている」

海斗と楽人、胡桃はすぐ教室に駆け寄るとたくさんの生徒たちが抗に抗議していた。。

横を見ると加奈と湖南がいた。

「これって……」海斗は言葉を失う。

「あいつ、色んな人からお金をだまし取っていたらしい。詐欺師みたいに」

海斗と楽人は一瞬にして心が壊れる。

――ずっと信頼していたのに何で。

「こんな事だと思ったよ。馬鹿よ2人とも」胡桃は言う。

その時、海斗は何故が学校を飛び出す。

龍人と胡桃、楽人もついていく。

マンションのドアを叩くとそこに椿が出てきた。

「お前か、抗の件は」

「そうだ、患者が来てお金を騙し取られたから復讐してくれと頼まれたんだ」椿は悪びれていなかった。

海斗は椿の胸倉を掴む。

「やめろって、良かったじゃないか俺のおかけでこれ以上被害が出ないし金だって帰ってくる。ある意味医療だぜ」椿の言葉に海斗は何も言えなかった。

人を救うために人を傷つける椿、誰だろうか人を傷つけるのが嫌な海斗、どちらの正義も間違っていない。

「それなら…それなら俺がお前を治療する」

「どういう意味だ?」

「ドクターが患者を治療するように俺がお前を変えて見せる」海斗の言葉に椿は鼻で笑う。「勝手にしろ」椿は部屋に戻る。

その後先生には報告はなかったものの抗は詐欺師として誰からも相手にされず最終的に学校を退学する事になった。

海斗と楽人は抗に問題があるとはいえ他人とお金任せで恋を叶えようとした自分を責めた。

 

 

 

 

 

一方廃れた廃墟で何者かが刀を磨いていた。

「まさかあいつがこの世界に来るとは面白いものだな」

「あいつをやるのか? お前にとっては大切な人だろ」悪魔が笑顔で聞く。

「誰だろうが邪魔をするならこの刀で斬るしかない」

放課後、海斗が加奈を見つけるが加奈は他の男子と話していた。

海斗は怖くなる。

――もしかして加奈に恋人がいたのか。

男が去っていくと海斗は加奈に話しかける。

「さっきの人は」

「宿題の件を教えてくれたの」

海斗は安心する。

「どうしたの?」

「なんでもないよ」

海斗は思った。

――ここで加奈に告白するべきなのか…1年間ずっと好きだったがずっと言えないでいたし早くしないと誰かに取られてしまう

海斗は友情にヒビが入る覚悟で告白しようと決意した

「よぉ」

そこに時と楽人がやってきた。

「2人とも今帰るの?」楽人は聞く。

「そうだけど」海斗はタイミング悪く感じる。

「じゃ俺たちも一緒に帰ろう」

「みんな」

そこに湖南もやってきた。

「みんなも今から帰るの?」

「そうだよ。湖南も一緒に帰ろう」楽人は誘う。

「私はまだ用があるから」

湖南の返答に楽人はガッカリした。

また楽人は湖南が好きという気持ちは変わっていなかった。

しかしずっとそれを言えずにいた。

「そういえば楽人、不登校の間の単位大丈夫なの?」湖南は聞く。

「大丈夫だよ、その分冬休みの特別授業とか出たから」楽人は緊張していた。

「悪いが俺、今日急用があるからすぐ帰る」

海斗は1人になりたいと思い急いでその場を去る。

そして適当に歩き気付くとそこは海神公園だった。

「こんな公園あったんだ」海斗は今まで気が付かなかった。

海斗は告白できない自分に腹が立っていた。

またずっと好きなのに告白する事が出来ない自分を情けなく感じていた。

「俺は……どうしたらいいんだ……俺は……ずっと好きなのに」海斗は泣きそうだった。

「まさかここでパラレルトラベラーと会うとはな」

海斗が振り向くとそこには泉蓮がいた。

「あなたは?」

「俺はかつてパラレルトラベラーとしてこの世界にやってきた人間だ。でも最後はこの世界に残り続ける選択をしたんだ」

蓮の言葉に海斗は衝撃を受けた。

「でもなんで俺がパラレルトラベラーだと分かったんですか?」

「俺はパラレルトラベラーになり続けた事で他のパラレルトラベラーを見抜く能力を手に入れたんだ」

「そうですか…でもなんで帰らなかったんですか?」

「大切な仲間達がいるからさ。元の世界では代わりのいない仲間達が」

「仲間……」

「俺はこの世界に来る前、仲間とか恋人とかいらないと思っていた。ただ生活に困らなければ良いとしか考えていなかった」

「でもこの世界に来て俺は色々な事を学びこの世界で生きていきたいと思った」

蓮の話を聞いて海斗は試しに悩みを相談する。

「俺、好きな人がいるんです。でもずっと告白する事が出来ずにいてそんな自分が嫌で…」

「俺も君と同じだった。本当は好きなのに自分の気持ちに気付けず分からないでいた。自分の気持ちに正直でそして変わろうとしている君の方がいいじゃないか」

「蓮!」

そこに1人の女性がやってきた。

それは海野奈美、蓮の恋人だ。

「蓮、遅れてごめん…あなたは」奈美が海斗を見る。

「俺は水崎海斗です」

「今知り合ったんだ…でもある意味俺と深い関係にある」

「初めまして海野奈美です」

その美貌に海斗は少し惹かれてしまう。

「あのう…俺、実はパラレルトラベラーです」海斗は普通に伝えた。

「それ言っちゃうの?」蓮は驚く。

「別に隠す必要はないですけど」

海斗と蓮の考えは真逆だった。

「そうなんだ。良い出会いだね」奈美は笑顔で返す。

海斗は何となく奈美に聞く。

「俺、どうすれば好きな子から振り向いてもらえるのですか?」

「私は分からないけどでも単純に好きな人を大切にすれば良いだけだと思う。大切にすれば相手も自分を好きになってくれると思うし…ごめんねありきたりで」

「そんな事ないです。凄い良いアドバイスでした」

奈美は海斗にあるお守りをあげる。

それは3年生の時一緒に遊園地に行ったとき蓮がこっそり買った恋愛成就のキーホルダーだった。

「いいのですか?」

「いいよ。元気つけのためなら」

「ありがとうございます」

「頑張ってね」

海斗は蓮と奈美と別れ帰っていった。

そして海斗達は2年生になった。

その頃、椿は患者と話をしていた。

「この依頼引き受けよう」

「ありがとうございます。もう取られたお金なんてどうでもいいです。やつにそれ相当の苦痛を味わらせて下さい」患者は頭を下げながら頼み込む。

「それじゃ早速準備しないとな」椿は席を立つ。

 

 

飼い猫の画像はランダムで選んでいるため日によっては数年前の画像でもあったりしますのでご了承下さい

海斗とと加奈、龍人は屋上にいた。

そして海斗は椿の事を考えていた。

「しかしどうする?」龍人が聞く。

「俺は止めたい。こんな復讐を」海斗は過去の事を思い出す。

それは現場でたまたま見た書類から知った事だった。

「よぉ久しぶりだな」

3人が振り向くとそこには悪魔がいた。

「お前はこの間の」海斗は驚いた。

そして龍人と加奈は警戒する。

「何してるの?」

そこに胡桃もやって来たと同時に初めて見た悪魔に恐怖を感じた。

「草麦胡桃、君は頑張って生きているから1つ笑顔になれるプレゼントをあげよう。死んでしまった大切な人を蘇らせてやろう」

すると悪魔は手から黒い光線を放つとそれは人の形となり水崎高馬に変化した。

「高馬!」

「兄貴!」

海斗と胡桃はお互い顔を見る。

加奈と龍人も突然生まれた人間に驚いた。

「こんなことが……」海斗は動揺する。

「それじゃあ」

そして悪魔は消えた。

「本当に高馬なの?」胡桃はゆっくりと近づく。

「久しぶりだね、胡桃」

胡桃は嬉しくなった

しかし海斗は高馬を見て思った

――この人は自分の知っている兄貴じゃない。この世界の兄貴なんだ。

「よく分からないけど凄い……凄すぎる」龍人は興奮する。

「でも何で悪魔が」海斗は疑問に思った。

「分からないけどでも今はいいんじゃない」加奈は言う。

とりあえず胡桃は高馬を自然緑川公園に連れていく。

「なんで復活したのか分からないけどでも胡桃、まだ会えてとても嬉しいよ」高馬は泣きそうだった。

「私もだよ、高馬」胡桃は笑顔だった。

「でも胡桃が立ち直って嬉しいし友達もたくさんできてよかった」

「私は色々な人を傷付けた。自分の目的のために」

「反省してこれからやり直していけばいいじゃないか」高馬は励ます。

「でも自分の行いに気付いて良かったな」

その頃、海斗達は楽人、湖南、時と合流し胡桃の件について話しをした。

「死者が蘇るなんてあり得るのか」時は混乱していた。

「でもパラレルトラベラーがいるんだから死者が蘇ってもおかしくはないだろう」龍人はそう考えた。

海斗は何が嫌な予感がした。

夕方、海斗が帰ろうとした時、加奈が海斗のところにやって来た。

「どうした加奈?」

「海斗、高馬さんの事だけど」

「……高馬さんって海斗のお兄さんでしょ」

「……そうだ。たださっきの兄貴はこの世界の人だから俺とは関係ない」

「そうなんだ…」加奈は切なく感じた。

「まぁ別世界とはいえ、また兄貴と再会できてとても嬉しかった」

「でも俺は疑問に思っている。こんな簡単に命を蘇らせていいのか。いくら悪魔でもそんな事して良いのかと思っている」海斗は悪魔に対し疑問に思っていた。

「それは私には分からない。でも胡桃が幸せなら私は嬉しい」

最初は胡桃が嫌いだった加奈だが今では胡桃の事を仲間だと感じていた。

夜、海斗は家の中に入ると暗闇の中に一つの影があった。

「誰だお前」

それは天使だった。

「あなたはどうやら悪魔に連れてこられたパラレルトラベラーですね」

「天使?」

――天使もいるんだ。

「実はあなたに話があって」

「さっき悪魔が俺の兄貴…いや高馬さんを蘇らせたんだが……」

天使は一気に表情を変える。

「……悪魔の奴、何で事してくれた!」天使は怒る。

「どういうことだ?」

「天使の世界では死者を蘇らせる事は絶対にしてはいけません。しかしどうやら悪魔は死者を蘇られたようですね」。」

「そうなのか…じゃ高馬という人はどうするんですか?」

「残念ながらその死者には消えてもらいます」

「そんな……」海斗は戸惑う。

「胡桃に言えない……言えるわけがない」

海斗は自分も兄の高馬を失っているため胡桃を自分と重ね合わせて見た。

天使も深刻に考える。

「何で悪魔はそんな事をする」

「それは分かりませんが彼にも彼の正義というのがあるんだと思います。でも悪魔ですけど」

海斗は人生で最大最悪の問題に直面した。

――こんな事胡桃に言えない、でも兄貴をこの世に残す事も出来ない。

海斗は1日中考えるが結論は出なかった。

翌日、海斗が自然緑川公園に行くと胡桃と高馬がいた。

海斗はとても嫌な気分だった。

「どうしたの海斗?」胡桃が笑顔で聞く。

「何でもない」

「遅くなっちゃたけど僕は水崎高馬。よろしくね」高馬は笑顔で挨拶した。

「よろしくお願いします」

ふと胡桃の方を見るととても笑顔だった。

その笑顔を見るとますます言いづらくなった。

「ところで二人はどこで出会ったの?」

「私と高馬は前に同じ町に住んでいてそこで仲良くなってよく遊んでいたの。高馬の方が4歳年上なんだけど」

「胡桃は昔は泣き虫だったけど今、こうやって見ると随分貫禄が出たな」高馬は笑顔で言う。

二人のやり取りを聞いた海斗はますます苦しむ。

同時に海斗にはある感情があった。

別世界の人間とはいえ海斗にとっては兄でもあるため蘇っている間だけでも話をしたいと思った。

しかし別世界の人間に何を話したら良いか分からず気持ち悪がられるだけじゃないかと不安だった。

夕方、海斗は龍人と楽人、時と共にいた。

そして海斗は過去の事を話し相談する。

「光島の件、そういう事だったのか」時は理解した。

「普通に話せば良いんじゃないのか?」楽人は言う。

「その普通が分からないんだ」海斗は頭を抱える。

「でも海斗にそんな過去が」龍人は困惑していた。

「俺の過去は気にするな」

しかし海斗は過去のトラウマが中々消えず苦しんでいた。

翌日、海斗は屋上のベンチに座っていた。

「どうしたの?」

そこに加奈と龍人がやってきた。

「別に……」

「何が困っているようだが」龍人は言う。

「実は……」

海斗は高馬の真実を加奈と龍人に話した。

「そんな……」加奈はショックを受ける。

「この事は胡桃と兄貴に黙っていてほしい」

加奈は表情が曇る。

「でもいつか言わないといけない時が来るんじゃないか?」龍人は言う。

「でも……言えるわけがない」海斗は生気が抜けたようだった。

一方胡桃と高馬は自然緑川公園で話をしていた。

「しかし今日は良い天気だね」高馬は笑顔だった。

「そうだね」

胡桃は勇気を出して聞いた。

「高馬、もし私がこれから別の男と付き合ったらどう思う?」

「嬉しいよ。いつまでも死者に囚われず前を向いていて」

「それに胡桃が楽しくしている姿が俺は一番好きだから」

高馬の言葉に胡桃は涙を堪える。

それを海斗と加奈も陰から見ていた。

「何か俺達ストーカーみたいだな」

「確かにね。でも堂々と見るのもなんか」

その時悪魔がやってきた。

「悪魔!」海斗は思わず声を上げる。

「海斗」胡桃は2人に気付く。

「草麦胡桃に一つ教えておく。高馬は復活したがもうすぐまだ死ぬ事になる」悪魔は微笑んでいた。

――最悪だ。バレちゃった。

しかし胡桃と高馬は驚かなかった。

「水崎高馬、お前を復活させたつもりはない。お前が死んで草麦胡桃が悲しむ姿を見せるためにお前を一時的に蘇らせたんだ」悪魔は笑いながら話す。

「あなた……最低よ」加奈は感情的になる。

「悪魔…お前という奴は」海斗は震えていた。

「…そんな気がしていた」胡桃が下を向きながら言う。

「何?」笑顔だった悪魔は表情を変えた。

「死んだ人間が蘇るなんていう都合の良い話なんてないと思っていた。だから高馬が蘇った時、きっといつかまだ別れの時が来ると覚悟していた」

胡桃の言葉に悪魔は動揺する。

「胡桃、お前は既に気付いていたんだな」

「そうよ、だから高馬と別れる時が来ると前から覚悟していたわ」

しかし胡桃は辛い表情だった。

その時、高馬の体は透明化していく。。

「高馬……」胡桃は別れの時が来たと悟った。

「胡桃、お別れだね」高馬は無理矢理笑顔に振る舞う。

「胡桃、君と出会えてよかった。こんな嬉しい事なんてないよ」

「高馬、私も同じだよ。高馬と出会えたから私はこんな良い人生を送れた」

「こんな良い人生送れたとかまだまだ人生これからだろ」

海斗も思わず話しかける。

「兄貴……すまない、あんたが俺の死んだ兄貴に見えてつい兄貴と呼んでしまった」海斗は我慢できなかった。

「俺はもっと兄貴と一緒にいたかった。いつかまだ家族みんなで旅行に行きたかった」海斗は涙を流す。

「兄貴じゃないと分かっている。でもそれでも俺にとっては兄貴と再会出来たようで嬉しいんだ。気持ち悪く感じるかもしれないけど」

「そんな事ないよ。俺で良ければもっと甘えてあげても良かったのに」高馬は海斗の肩に手をのせる。

海斗は思い出した。

――もう二度と会えないんだ

「じゃあね胡桃、弟」

そして気が付くと高馬は消えていた。

「ありがとう…高馬」

「じゃあな…兄貴」

胡桃は海斗を見る。

「ごめんね海斗。私ばかりが高馬を独占して」

「良いんだ。俺の方が悪いんだ。死んでもう二年も経つのに未だに心の中で兄貴の事を消せないでいるんだから」海斗は自分の弱さを責めた。

「私も同じよ。高馬の死を乗り越えていたと思っていたのにまだ心のどこかで高馬が消えないでいた。いつかまだいなくなるのも分かっていたのに…覚悟していたのに…でもやっぱりいなくなるととても悲しい」胡桃は泣きながら話す。

加奈は胡桃に寄り添う。

「大切な人を心から完全に消す事なんて出来ないよ。大切な人だからこそ心のどこかに残るものだしそれに心のどこかに大切な人が残っていてもいいじゃない」

加奈の言葉に海斗と胡桃は励まされた。

翌日、海斗は胡桃の事を龍人達に話した。

「そうなんだ……」湖南は悲しく感じた。

「何でこんな酷い事を」楽人は怒りを覚える。

加奈は空を見上げる。

「高馬さんはきっと胡桃の側にいるよ。絶対に」

 

 

夜、海斗がお風呂から上がりテレビを見るとそこにあるニュースが飛び込んできた。

前回、高校に来て講義を行った医者が逮捕されたというものだった。

翌日、海斗達はその話題について話していた。

「まさか本当だったなんてね」胡桃は言う。

「でもよくあの医師が来る場所分かったな」時は関心する。

海斗と龍人、加奈は椿が気になっていた。

「あいつが仕組んだんだ」

海斗の言葉に胡桃と時、楽人、湖南は注目する。

「あいつがそう言っていた」

「あいつって昨日のあの知らない人か? でもなんのために」楽人は聞く。

「分からない。あいつも被害者なのか、そもそも何者なのかよく分からないんだ」

しかし海斗は何が嫌な予感がした。

放課後、7人が下校をしようと外に出るとそこに椿が待っていた。

「あんた昨日の」

「様子が気になってね」椿はにやけていた。

「あんたこの前の医師について話を聞かせてくれ。あんたは何をした?」龍人は聞く。

「じゃあまずは内に来ると良い」

椿の言葉に海斗達は行こうとするが加奈が止める。

「やめたほうがいいよ、何か危ない気がする」加奈は警戒していた。

「私も同じ。いかにも危なそうだし」湖南も同じだった。

「平気だって」

「そうだ。横断歩道みんなで渡れば怖くないというしみんなで行けば大丈夫だよ」龍人は加奈と湖南を説得する。

「まぁいざというときは俺が戦ってやる」時は言う。

こうして7人は椿と共に行く事とした。

着いた先は不気味で今にも幽霊が出そうなマンションだった。

「ここ心霊スポットじゃないか」

「大丈夫だ。心配するな」

7人は警戒しながらもその部屋に入る。

そして椿は7人に飲み物を差し入れる。

「どうだ、不気味だろ」椿は笑顔で話しかける。

「あんたこの前の医師の件について聞かせろ」海斗は危険視していた。

「良いだろう。まず俺はここで復讐屋として活動している」

「復讐屋?」

「そうだ。復讐屋は依頼者からお金を貰いその恨みを晴らすという仕事だ」

「それって闇商売じゃないの?」加奈が聞く。

「世間から見たらな。だが俺は誇りに思っているし他の闇商売と一緒にするな」椿は加奈の言う事を否定した。

「そして被害者青年達から依頼を受けてその医者に復讐をした。まぁしたというよりかは手伝ったといったところだが。まず多くの人の前で過去の事を暴露し威厳をなくす、そして晒し者にするため医師がどこにいるかを調べその結果、花式高校で特別講義をすると分かった。当日、依頼者に演技をさせて多くの人の前でその医師の悪事を晒した。この依頼は成功し俺は依頼者……いや、患者を救った」椿は自分を称賛するように話す。

「お前…」海斗は怒りに震える。

「しかし驚いたな、まさかお前もパラレルトラベラーだったとはな」その言葉に海斗は驚く。

「何故その事を」

「何故? それは俺もお前と同じパラレルトラベラーだからな」椿は笑顔で言った。

「何だと」

「俺は悪魔の力で別世界からこの世界に連れてきてもらった。そして俺はパラレルトラベラーを見抜く能力を身につけた。だがおかしいな。なぜお前は悪魔によって連れてきてもらったのにその能力を持っていないんだ」

全く話を聞かされていない楽人と時は困惑した。

加奈と龍人、胡桃、湖南は海斗から話を聞かされていたが信じていなかった。

しかし海斗の真剣な顔を見ると本当に別世界から来たんじゃないかと信じ始めた。

「あんた、なぜこんな事する。わざわざ別世界から来てまで何か目的なんだ」海斗は聞く。

「俺は元いた世界では世界が注目する医者だった。しかしある成功する確率5%以下の手術に失敗した。本当なら責められないはずだが俺が天才医師だったかため期待を裏切られたと多くの人間が俺を批判した。さらにいえばかつて自分が助けた患者も含めて。そして医師免許を剥奪され医療界から追放され疲れ果てた俺の所に悪魔がやってきた。そして俺はパラレルトラベラーとしてこの世界にやってきた。俺は人の心を救うためこの世界で復讐屋を立ち上げた」

「ふさげるな」海斗は怒りに燃える。

「いくら悪人でもこんな事していいわけない、これじゃまだ復讐が起きるだけじゃないか、そしてそれはただ復讐の連鎖になるだけじゃないか」

「これは医療だ。人の心を救うための治療だ。まぁ俺は闇医者だが」椿は鼻で笑った。

加奈も割って意見する。

「違う、こんなの医療でも治療でもない。ただの復讐でしかないよ」加奈は怒りに震えた。

「そうか? 恨みを抱えながらこの先生きて行かなきゃいけない人間がこの復讐で心の傷が消えるんだぜ、いいじゃないか」

「それにストレスが原因で体が弱くなる人間もいるしそういう面では俺のやっている事は医療であり治療である」

「それに元を正せば俺に復讐を依頼をさせるほど人を傷付けた腫瘍やウイルスに問題があるだろ」

「ウイルス? 何の事」

「加害者の事だ」

椿は加奈を睨み付ける。

「この後患者が来る。今日はここまでだ」椿は7人を帰らせる。

海斗と加奈はとても嫌な気分だった。

「海斗、パラレルトラベラーって何?」加奈は聞く。

「別世界から来た人間の事だよ」

「そうか~驚いたな。まさか海斗の言う事本当だったとは」龍人は信じた。

「でも本当か?」時は未だに疑っていた。

楽人も信用しきっていなかった。

「でも本当にそういう不思議な出来事もあるかもしれないよ」湖南は言う。

人それぞれだが加奈達は海斗が別世界から来たパラレルトラベラーだと信じる事とした。