世間は新年になったものの楽人はもやもやしていた。

湖南に対する想いは変わっていないものの湖南はよりによって椿が好き、楽人はそれが気に食わなかった。

そこに時がやってくる。

「新年早々なんだその表情は?」

「別に良いだろ」楽人は嫌な気分だった。

すると湖南がやってきた。

「楽人…」湖南は一瞬視線をそらす。

お互い気まずそうだった。

「どうしたんだ」時が困惑する。

「別に…」

すると湖南の電話が鳴った。

それは卓三からだった。

湖南は思わずスマホを投げ捨てる。

「どうした?」

湖南は震えていた。

時がスマホを拾って見てみるとそこには夜、湖南が歩いている後ろ姿が映っていた。

「これは…」楽人も覗き見る。

「これってまさか」2人はすぐにストーカーだと分かった。

「湖南、ストーカーされていたの?」楽人は聞く。

「……うん…中学卒業してやめたと思っていたけど」

そこに海斗と加奈、龍人、胡桃がやってきた。

「どうしたの?」胡桃が聞く。

楽人はストーカーの件を話した。

「これはまずいやつじゃないか」海斗が心配になった。

「どうするの?」加奈は自分の事のように怖がる。

「とりあえず警察に言った方が良いかも」

放課後、楽人は湖南と一緒に帰る事とした。

「湖南、大丈夫?」楽人が聞く。

「大丈夫よ……でもなんで私の事好きなの?」

「特に理由はないよ。ただ好きだから」

楽人は立ち止まる。

「…でも好きだからこそ何を考えているか分からない椿と付き合ってほしくないんだ。傷付いてほしくないし」

「お前だけじゃ危ないかもしれない。俺も一緒に行ってやる」

振り返ると時が歩いてきた。

「ありがとう、時」

そして3人で警察署に行くため歩いている途中マンションの上を見ると卓三が覗いていた。

湖南は恐怖に陥る。

そして気付いた楽人と時も警戒する。

――何でここに来るのか分かったんだ。

時はすぐに卓三の所に走っていく。

階段を駆け上り卓三のいたところに行くがしかし卓三はいなかった。

「どこに行った?」

ふと下を見ると楽人と湖南の前に卓三がいた。

「久しぶりだね、湖南」卓三は笑顔で言う。

「卓三…」湖南は恐れる。

「お前、何でこんなことをする」楽人は聞いた。

「湖南が好きだから。これが俺の愛情表現だから」卓三は無邪気だった。

「ストーカー!」

時は3人の元に駆け寄った。

「俺からしたらお前らの方が危ないぞ」卓三は狂っていた。

「湖南、俺の所に来てよ。俺ならお前を幸せに出来る。こんな奴と一緒にいるよりも」卓三は笑顔で近づく。

湖南は後ずさりする。

「……でも良いや」

卓三は去っていった。

「あいつ一体…」楽人は思わず呟く。

夜、湖南がコンビニに行くため道を歩いていると再び卓三がやってきた。

「あなた…」湖南は恐れる

「湖南、一つ話がある」

 

 

学校では緊急処置法の授業をしていた。

生徒たちが真剣にやっている中、楽人は湖南の事があって授業に集中できないでいた。

「楽人、大丈夫?」胡桃が作業をしながら話しかける。

「大丈夫だよ」

「まだ誰かにお金払ったの?」

「そんなわけないじゃん」

しかし湖南の思いも知らずに楽人はその後も湖南に告白するが受け入れてもらえないでいた。

「何で駄目なんだよ」楽人は屋上で落ち込む。

そこに時がやってきた。

「どうした?」時が心配する。

「別に」

楽人は去ろうとする。

「もし悩んでいるならいつでも相談になるぜ」

「どうしたんだよ」

「何か分からないがつい言葉が出た」

「世の中うまく行く事ばかりじゃない、時に諦めて前に進まないといけない時もある」

時の言葉に楽人は動揺する。

――もしかして俺が湖南の事が好きなのばれているのか。

「ありがとう」

楽人は動揺しながらその場を去っていった。

翌日、楽人が手芸部の教室に入ると湖南がいた。

楽人は勇気を出して湖南に聞いた。

「……湖南…何で駄目なんだ?」

「……私…好きな人がいるの」

「え? それって誰?」楽人は思わず声を上げて聞いた。

「………椿、」湖南は下を向いて答えた。

「あの復讐屋?」楽人は驚き感情的になる。

「あいつは危険な奴なんだぞ、復讐を医療と例える奴なんだぞ」

「それでも私は椿が好き、それに…椿は…本当は優しい人だと思う」

「でも」

「なんで私の恋を否定するの?」

「……俺は以前胡桃に傷つけられ不登校になった…だからどんな理由であれ人を傷付ける奴が気に食わないんだ」

楽人は呆れてしまう。

「そんな事…認めないよ」

そこに海斗と龍人、加奈がやってきた。

「……何が揉め事か?」

「なんでもないさ」

しかし現場は気まずい雰囲気だった。

その頃、胡桃はウサギ小屋で新たに飼われたウサギを見ていた。

「またここにいたのか」

そこに時がやって来た。

「何だ時か」

しかし胡桃は何故が嬉しかった。

「しかし高校生活も半年を過ぎたね」

「そうだな。来年は受験か。胡桃は獣医になるんだっけ」

「うん」

「頑張れよ」

胡桃は胸がときめく。

放課後、楽人は椿の住んでいるマンションに行くと丁度椿が出てきた。

「おやおや、何が依頼かな?」椿は笑顔で聞く。

「…湖南がお前の事が好きらしい」楽人は勝手に伝えてしまう。

「俺を好きになるとは変わり者だな」椿は馬鹿にする。

「二度とあいつの前に姿を現すな」楽人は感情的に訴えた。

「拒否する。俺は誰かに命令される事が嫌いなものだから」椿は挑発する。

「お前」

「やっぱり人間は悪魔だな。どこが不気味なだけで人を拒否するんだから」

楽人は呆れて黙ってその場を去った。

翌日、胡桃が屋上で休んでいるとそこに湖南が来た。

湖南は落ち込んでいた。

「何があったの?」胡桃は心配する。

「うん…でも別に大したことじゃないから」

湖南は椿の事が好きである事が良い事なのか苦悩していた。

その頃、椿は湖南の事を考えていた。

椿も湖南に対し何が特別な思いが生まれていた。

するとインターホンが鳴った。

ドアをあげるとそこには湖南がいた。

「何の用かな?」

「何かここに来たくなっちゃって」

「もしかして俺に協力したくなったか」椿は笑顔で聞く。

「協力は出来ない。椿、もう悪ぶるのやめよう」湖南は悲しそうに言う。

「別に悪ぶっていない」椿の表情が変わる。

「俺はただ自分の正義を行っているだけさ」

椿は過去を思い出す。

手術に失敗してからみんな自分から離れていきずっと孤独だった。

そしてそんな自分に手を差し伸べてくれる人はいなかった。

しかしそんな自分を好きになってくれる人がいることに椿は意外性を感じていた。

「そういえば昨日楽人という奴がきた。お前に近づくなと言われたんだが」

それを聞いた湖南は驚く。

「一つ聞きたいがなぜお前は俺を受け入れたんだ。こんな悪魔のような俺を」

「あなたは悪魔なんかじゃない、もしあなたを悪魔だという人間がいても私はそれを否定し続けると思う」

それを聞いた椿は動揺する。

その時、突然湖南は椿にキスをする。

椿は困惑して固まってしまうが無意識に湖南を抱きしめる。

「…俺は…俺はお前の事を好きになっていた」椿は気付いた。

最初は興味がなかったが気付けば自分も湖南を好きになっていた。

それは全て失いずっと孤独だったからこそ湖南を好きになった。

湖南は嬉しく感じる。

しばらく2人は離れなかった。

 

 

 

 

放課後、胡桃はテストに備えて勉強をしていた。

しかしある道具の名前が分からなかった

そこに時が来た。

「何か分からないところあるのか?」

「ちょっとこの道具が分からなくてね…でもすぐ回答を見るのは甘いし」

「これはサテンスキー鉗子だ」時は教える。

「なんで教えるのよ」

「考えていても仕方ないだろ」

その頃、楽人は1人、教室で本を読んでいた。

そこに湖南がやってきた。

「まだいたんだ」

「まぁね」楽人は緊張していた。

湖南が帰ろうとした。

「ちょっと待って」

楽人が湖南の腕を掴んで止める。

湖南は驚いた。

「どうしたの?」

「湖南……」

「何?」

「いや…その…俺、湖南の事が好き…だから…」

「……ごめんなさい」

湖南は驚きながら帰っていった。

「フラれた…」楽人は立ち尽くすだけだった。

湖南が外に出るとそこに椿がいた。

「あなたは…というより何の用?」湖南は警戒する。

「ある依頼者からの依頼が来た。そのターゲットは浅木卓三という男だ」

湖南は驚く。

「その人って」

「かつて君が好きだった先輩との間を壊した男のようだね」

湖南は振り返る。

中学生の頃、湖南は吹奏楽部に所属しそこで先輩と出会った。

湖南はその先輩に一目惚れをした。

その先輩は性格も優しく湖南の中でその先輩への思いがどんどん膨れ上がった。

しかしそんな時に同じクラスの卓三が湖南にストーカーを始めた。

最初は気にしていなかったが次第に卓三のストーカーも悪化し湖南の中で恐怖心が生まれそして怯えるようになった。

やがて湖南がその先輩が好きだった事を知った卓三はその先輩に嫌がらせを始めた。

そしてその中で先輩は自分が嫌がらせされるのは湖南が自分の事を好きなのか原因だと知った。

そして先輩は何も言わず吹奏楽部を退部し湖南を避けるようになった。

湖南は自分のせいで先輩を傷付けてしまいそれが原因で湖南は人を好きになる事を恐れるようになった。

湖南にとってトラウマの出来事だった。

湖南がそんな事を考えている中、椿は話を始める。

「調べたらお前もその知り合いと同じように恨んでもいるようだな…どうだ? 復讐屋の俺と一緒に復讐しないか?」椿は湖南を誘う。

「ふさげないで」湖南は断る。

「でも憎んでいるんだろ? ならやろうじゃないか。これは医療なんだから」

「確かに憎いわ…でも…」

「それなら明日俺の仕事を見ると良い。ちょうと良い患者が来るから」

椿に対し否定的だがしかし湖南は気になった。

翌日の放課後、湖南は椿の部屋にいた。

「お前は俺の助手という設定とする。話の最中に文句を言うな、文句は患者が帰ってから言え、それが約束だ」

「うん」

2人が待っているとそこに50代の男性がやってくる。

湖南は驚く。

男は大手芸能事務所の社長だった。

「ところで依頼の内容は?」

「実はある男性アーティストが私の事務所の評判を下げたんだ。なのでその人に復讐してほしい」男は怒っていた。

「それは引き受けられませんね」椿は拒否した。

湖南は思わず椿を見る。

「何でですか?」患者は怒鳴る。

「週刊誌の内容なら知っています。でも元々はあなたの会社に問題があったんじゃないですか。それはあなたが起こした問題でありただの逆恨みでしかない」椿は冷静に答える。

「私は大手芸能事務所の社長だぞ、お金ならいくらでも払うぞ」

「お金の問題じゃない、そんな逆恨みのための復讐に手を貸す気はない」

男性は納得がいかないようだった。

「たかが闇医者で戸籍情報もない不気味な奴にここまで言われるとは」

「私は天才医師だ。でも今は復讐屋だが」椿は反論する。

「私は怒りや憎しみ、悲しみに包まれた人の心のケアをするのが私の仕事でありその患者が幸せを取り戻すのが私の役目です」椿は冷静に話した。

それを見た湖南は思った。

――この人は本当に人を救いたいと思っている。やり方は悪くても本当は優しい人なんだ。

「もういい」男は帰っていった。

「椿、あなたは…」湖南が話しかける。

「俺は人を救いたいという気持ちはドクターの時と変わっていない」

「それは素晴らしいよ、でもこんな事したってまだ新しい復讐を生むだけだよ」

「君に関係ない」

しかし湖南は海斗と同じように椿を変えたいと思った。

そしてそんな椿の姿を見た湖南は椿に恋をする。

 

加奈は手芸部の教室で編み物をしながらある事を考えていた。

「加奈」

胡桃が教室に入って来た。

「何が悩みでもあるの?」胡桃は笑顔で聞く。

「別に悩んでなんか…悩んでないよ」

胡桃は察した。

「あなた海斗の事好きなんでしょう、もしくは龍人の方」

「……何で分かったの?」加奈は恥ずかしくなる。

「だってあなたいつも2人をよく見ているんじゃない。それにいつも3人仲良くしているし」

加奈は下を向く。

「……私は海斗も龍人も好き…付き合いたい」

「両方とも好きなの?」胡桃は驚いた。

「でもどちらかしか付き合えないし」

「そうね…でも悩んでいるなら私に相談してよ。出来るだけ力になるから」

「胡桃……あなたがそんな事言うなんて」

「そりゃ最初は対立していたけど今は友達だから」

加奈は少し感動した。

「何をしている?」

そこに時がやって来た。

「別に」

「そうか、しかし胡桃、やっぱりお前は笑顔が1番だ」時は言った。

「何よいきなり」

「俺も相手を褒められる人間になるべきだと思って」

「お世辞じゃん」

胡桃は笑顔で突っ込むが同時にある感情が生まれる。

その頃海斗は校庭で悩んでいた。

すると龍人が隣にやって来た。

「龍人」

「なぁ海斗、人を好きになるってどういう感情なんだ」

龍人の突然の質問に海斗は困惑する。

「……なぜそんな事聞くんだ」

「……俺は加奈の事が好きだ。今まで出会った誰よりも」

想定外の言葉に海斗は返答できなかった。

「そうか…そうなのか…」海斗はとりあえず反応した。

「なぁ俺はどうしたら良い?」

「俺には分からない…加奈に聞いて」

「その加奈が好きなんだよ」

「そうだったな」海斗は混乱した。

そして海斗は決めた。

――龍人には悪いけどすぐにでも加奈に告白しよう、じゃないと奪われてしまう。

しかし同時に龍人を傷つける事になると考えると悲しくなった。

だが海斗はすぐにその場を離れ加奈に電話した。

「もしもし加奈」

「どうしたの?」

「今から会えないか?」

「ごめん、この後、用事があるの」

「…そう…分かった」海斗は電話を切った。

――何でよりによって用があるんだろ、いつも一緒にいるのに。

その頃、龍人は自然緑川公園のベンチに座っていた。

龍人は加奈について考えていた。

するとそこにサッカーボールが飛んできた。

「すいません、取ってください」

子供の呼びかけに龍人は蹴る。

しかしそのボールはある男にぶつかる。

「すいません」

龍人が謝るとその男はボールを蹴る。

それは上手く子供の所に届いた。

龍人がその男の顔を見るとそれは霧島修、泉蓮の友人の1人だった。

「あなたは霧島修選手、プロのサッカー選手ですよね? 小学生の頃、憧れていました」龍人は驚いた。

「最近復帰したばかりだよ。それにまだ病気で休業するかもしれないし」

「修!」

そこに修の恋人、川上美羽がやってきた。

また美羽も泉蓮の友人の1人だった。

同時に海斗もやってきた。

海斗は思い出した。

蓮から見せてもらった写真の2人だと。

「もしかして泉蓮さんという人の知り合いですか?」海斗は聞く。

「蓮? もしかして蓮の知り合い?」美羽は笑顔になる。

「まぁ知り合いというがなんというか」

「俺も小学生の時サッカーをやっていたんです。やめてしまいましたが」龍人は言う。

「俺も高校生の頃に病気になって引退した。でも最新医療で少しずつだが出来るようになっているさ」

「サッカーが上手いなんていいな」海斗は昔兄の高馬と共にサッカーで遊んだ日々を思い出す。

「しかし蓮の知り合いと会うなんて偶然だね。蓮元気だった?」美羽は海斗に聞く。

「元気でした。良い人でしたし」

「じゃ俺達はここで」

修と美羽は去ろうとした

ふと龍人は修に質問した。

「あの~俺は好きな人がいるんですが告白出来ないでいます。どうしたら告白出来るようになりますか?」龍人は修が美羽と付き合っているからこそ相談した。

「そんなのその場の運と諦めない心だ」

――この人いい加減すぎ

海斗は心の中で思った。

「ありがとうございます。勇気が出ました」何故が龍人は元気が出た。

翌日、海斗は体育館で待っているとそこに加奈がやってきた。

「話って何?」

「加奈…言いたい事がある…俺…俺は…加奈が好きだ。だから…俺と付き合ってくれないか?」海斗は勇気を出して告白した。

「…ごめんなさい」加奈は断った。

「…そうなんだ…なんか悪いな」海斗はショックを受ける

加奈は黙ってその場を去った。

同時に海斗と両想いである事を知った加奈は嬉しさと悲しさで複雑な心境になっていた。

その後海斗は校庭のベンチに座っていると龍人がやってきた。

「元気ないようだな」

「まぁあな」

海斗はその場を立ち去ろうとした。

「加奈に告白したんだろ?」龍人が言う。

「何で知っているんだ?」海斗は気まずくなる。

「たまたま見ていた奴から聞いた」

海斗は恥ずかしくなったが口を開いた。

「龍人…俺も加奈が好きなんだ……それがたとえ龍人だろうが加奈は譲れない」海斗は強気で主張する。

「当然だよ」龍人は声を上げる。

「俺だって加奈は譲れない。気を使って譲ってもらいたくなんかないしそれぐらいなら正々堂々と勝負してほしい」龍人も強気だった。

そこには友であり恋のライバルである2人がいた。

その後、龍人が教室に入りバックを取ろうとした時そこに加奈がいた。

加奈は寂しそうだった。

「なぁ加奈…」

龍人の声に加奈は振り返る。

「何?」

「俺は本当は高校には何も期待していなかった。中学を卒業したらそのまま就職し適当に人生を送れば良いなと思っていた」

「でも加奈と出会って高校が楽しくなったし恋の素晴らしさを知った。俺は…」

「龍人…」加奈は察した。

すると龍人は加奈に駆け寄り抱きしめる。

加奈は鼓動が激しくなった。

龍人は海斗に悪いと思いながらも加奈を強く抱きしめる。

そして龍人は加奈から体を離し顔を見る。

「……ごめんなさい」加奈は断った。

龍人は黙り込む。

そして加奈は教室から出ていく。

それから数日後の夕方、龍人は校庭のベンチに座っていた。

龍人は悔しくて泣きたくなった。

 

 

海斗達は公園で話をしていた。

「しかしなんであの復讐屋と関わろうとするんだ?」時は聞く。

「なんか深い事情があって復讐屋をやってるんじゃないかと思ってね」海斗はそう考えた。

「でも復讐屋をやりたくなるぐらいの深い事情って何だろう」加奈は考える。

「よぉ!」

そこに椿がやってきた

「お前」海斗は抗の件もあって警戒する。

「伊藤抗という奴学校退学したようだな。これでまだ依頼を達成したな。まぁ後で報復があるかもしれないが」椿は悪びれていなかった。

「ふさげるな、全部お前のせいで」海斗は感情的になる。

「全部お前のせい? 馬鹿な事言うなよ。俺は伊藤抗からお前も含めて多くの人を救ってやったんだ、むしろ正義だろ」椿は言う。

「それに伊藤抗のやっている事は犯罪行為だ。そして俺が依頼を達成した事で馬鹿2人の金も戻ってきてるじゃないか」

海斗と楽人は思わず黙り込む。

「でもそれでも」

「お前のしている事も正義なのか?」椿は問う。

「それは…」

「お前にとっての正義が誰かにとっては悪かもしれない。むしろ俺のやっている事を賞賛する人間の方が多いかもしれないぞ」

その時、加奈は意見した。

「あなたのやっている事は正義か悪かは分からない。でも私は海斗を信じている」

加奈は海斗の味方をする。

「俺は誰かの無念を晴らし心を華やかにするのが仕事だ。死にそうな人間を救うよりも生きている人間を救う方が俺にとっての正義だ」

「あなた……ドクターだったくせに死にそうな人を救わなくていいなんて」加奈は呆れた。

「たくさんの人を救った俺が1つの命を救えなかっただけで人々は平然と俺を傷つけた。おまけに医師免許を剥奪され医療界から追放された」

椿の言葉を聞いて海斗は父親の事を思い出した。

父親の亮が手術に失敗しそして多くの人から批判され挙句の果てに次男の天都は町を放火しそして多くの人を傷付けた。

そう考えると椿はある意味自分と似ていて天都とも似ていると海斗は感じた。

椿は去っていく。

その頃、どこかの屋上では男がビルから人々を見ていた。

「まさか襲撃する気か」悪魔が現れて聞く。

「俺も無駄に人を襲ったりはしない。襲うのは人間のクズだけだからな」

「お前も人間のクズじゃないのか?」悪魔は馬鹿にする。

「確かに多くの奴は俺をクズとみるかもしれない。でも俺にとってはこれは正義だ。俺がやらなきゃ誰がやる」男は刀を見ながら言う。

数日後、龍人は海斗を家に呼ぶ。

海斗が龍人と楽しく話をしているとそこに龍人の父親の正樹が帰ってくる。

「初めまして」

海斗が挨拶をすると正樹は驚く。

「猛じゃないか」正樹は興奮する。

「え?」海斗は戸惑う。

「父さんこいつは海斗だ」龍人は言う。

「何だ…やっぱりそうか」正樹は分かっていながらも落ち込んだ。

「いや、私には猛という息子がいたんだけど猛は交通事故で死んだんだ。そのタケルは君そっくりでつい驚いてしまった」

そして海斗は気付いた。

――もしかしてこの世界の自分か?

夕方、龍人は途中まで海斗を送りながら話した。

「父さんは俺の本当の父さんじゃない」

「どういう事だ?」海斗は驚いた。。

「俺の父さんは俺を捨てて出ていった。その後、今のお父さんに育てられたんだ。今のお父さんには子供がいたらしいんだけど事故で亡くなっている。だから俺はお父さんにとっては2人目の子供みたいなものだ。血は繋がっていないけど」龍人は悲しそうに言う。

海斗は何も言えなかった。

「でも正直俺は自分を捨てた父さんを憎んでいる。俺は父さんが嫌いだ」龍人は怒っていた。

意外な龍人の一面に海斗は思わず驚いてしまう。

しかしそれ以上は聞かなかった。