海斗が屋上に行くと龍人がいた。

海斗が屋上に行くと龍人がいた。

「海斗か」。

海斗は龍人の隣に座る。

「……兄弟って何なんだろう」海斗は分からなくなった。

「俺には分からない…でも同じ家族なら仲直り出来るんじゃないのか」

その時、龍人は苦しみだし口から血を吐き出す。

「龍人!」海斗は驚き頭が混乱する。

「大丈夫だ、いずれこうなる事は覚悟していた」龍人は言う。

「龍人!」

そこに加奈がやってきた。

「慌てるな」龍人は加奈にも言う。

「慌てるな」龍人は加奈にも言う。

そして龍人は立ち上がる。

「俺は…悪魔病だ」

「悪魔病…なんだそれ?」海斗が聞く。

「悪魔病って…」加奈は知っていた。

「父さんから聞かされていた。でもその数週間後に俺を捨てて出ていったけど」

加奈は

「俺は疑っている。きっと父さんが俺にマキシウムへタンを飲ませた。それで俺を殺そうとしていたと」龍人は苦しそうに言う。

「そんな事ないよ。だってお父さんじゃないの」加奈は否定する。だってお父さんじゃないの」加奈は否定する。

「じゃあ、俺の父さんの何を知っているんだ?」龍人は反論する。

「それは…」加奈は何も言えなかった。

「…俺は近いうちに死ぬ事になる」

「そんな…」海斗は震えた。

「冗談じゃない、何でそんな簡単に死ぬだなんて冷静に言えるんだろ」海斗は怒る。

「じゃどうすればよいんだよ。どうすれば死なずに済むんだろ」龍人も背を向けて反論するは感情的になる。

「分からない。俺はまだドクターじゃないから。でもドクターを目指しているなら命を簡単に諦めるなよ」海斗は言う。

「やめて、2人とも」

加奈の声で2人は落ち着く。

そして龍人は屋上から出ていった。

「加奈、悪魔病って何だ?」海斗は冷めた表情で聞く。

「海斗はこの世界で生まれていないから知らないかもしれないけどこの世界では誰もが知っているぐらいの有名な話がある」

「今から15年前、日本で震度7の大地震が発生してそれで日本は壊滅的な被害を受けた。その時にネットでは素人が独学で開発した根拠のない薬が売買された。それがマキシウムへタンだった」

「その薬を飲むと疲れや精神的不安が取り除かれ健康的な体になるとあるけど勿論そんな効果は全くないし本来なら絶対買ってはいけないような薬だった」

「でもその時の日本は壊滅的な被害を受けていたから世間ではそんな薬を買ってしまった人もたくさんいた。そして多くの人がそれを飲んでしまい大きな障害を追ってしまった人もいた」

「仮にその時は健康面に問題がなくてもその後にその症状が現れたりする。その後、その製品を開発した人には有罪判決が下されまたネット環境が大きく見直された。悪魔病の名前の由来はネットの闇が生んだ悪魔のような商品だから悪魔病と名付けられた」

「じゃ龍人は」

「龍人はそれを飲まされていたと思われる。いつ飲まされたかは正確に分からないけどでもその症状が今になって現れ始めたと思う」

海斗は理解した。

「この事は胡桃達には内緒にしよう」海斗は提案する。

「でも…」加奈は迷う。              

「胡桃達に言ったら傷つくと思う」

「での龍人は死ぬんだよ」

「俺は信じない、龍人が死ぬ事なんて。だから諦めるな、最後まで信じろ」海斗は加奈に言う。

加奈は泣き出してしまい海斗は加奈に抱きつく。

「信じよう、まだ希望はある」海斗は加奈を励ます。

希望を信じようとは言ったもののどうしたら良いか海斗は分からなかった。

「海斗、本当の事を言っても良い?」加奈は聞く。

「何だ」

「……私、本当は海斗の事が好きなの、でも海斗と同じぐらい龍人も好き…」加奈は勇気を出して告白した。

海斗は驚く。

「加奈…」海斗は無意識に言った。「加奈…」

その時、海斗は気付いた。

――自分はいつか別世界に帰らないといけない。もし自分と加奈が付き合ってもいつか加奈とは別れなければいけないしそうすると加奈を悲しませる事になるかもしれない。

海斗の中で一気に悲しみがこみ上げてきた。

――それに卒業もそう遠くない

しかしだからといって加奈を龍人にも渡したくなかった。

それほど海斗は加奈が好きだった。

海斗は迷う。

加奈を傷付けても手に入れるかそれとも龍人に渡してしまうか海斗はパラレルトラベラーの切なさを今までにないぐらい感じた。

 

 

 

3年生になった海斗は公園で休んでいた。

――この世界に入れるのも後、1年なのか。

海斗は切なく感じていると悪魔が現れた。

「どうだ。この世界は、楽しいか?」

「悪魔、好き勝手にして…そのせいでこんな状況に」

「俺は異世界に送り込んだだけでそれ以外俺は関係ない」

悪魔の主張に海斗は憎く感じた。

「俺は悪魔だ。悪魔には悪魔の正義があるんだよ」

海斗は聞いた。

「兄貴をこの世界に連れてきたのもお前か」

「勿論だ。俺が天都を連れてきた。そして本当ならお前には他のパラレルトラベラーを見抜く能力を手に入れる事が出来るはずだったが天都はお前の能力の分の力を自分によこすよう言われたからあいつに渡したんだよ」

「だがお前に唯一残っていた力はパラレルトラベラーとその関係者と寄せ付ける能力だ」

海斗は驚いた。

「そうか…だからあんなに都合よく泉蓮さんやその知り合いとも出会ったんだ」

海斗は悪魔を睨む。

「確かにあんたの言う通りだ。兄貴もあのストーカーも自分に負けてあぁなってしまっただけなんだ」

「素直だな」悪魔は意外に感じた。

「悪魔、この青年をこの世界に連れてくるなんて」

2人が振り返ると天使がいた。

「天使…貴様」

「悪魔、パラレルワールドの人間を無許可でこの世界に連れてくるのは違法行為だ」

「だからどうした? 俺は悪魔だから法律など関係ない」

悪魔はそう言い去っていく

海斗は天使に聞いた。

「悪魔って何者なんだ?」

「彼は元々は天使でした」

その事実に海斗は驚いた。

「しかしある事をきっかけに悪魔になってしまった者なのです」

海斗は天使に詳しい話を聞かせてほしいと頼んだ。

「天使の使命は人間の人生に良い影響を与える役割がありその人を幸福にするのが使命です。しかし中には自分の利益のために人間の人生を狂わせる天使も少なくありません。天使の世界にはそういう現状があります」

「じゃああの悪魔は」

「堕天使といったところです。しかしなぜあの悪魔は君をこの世界に連れてきたのでしょうか?」天使は疑問に思う。

海斗も分からなかった。

そして天使は消えた。

翌日、精神的に疲れた海斗が手芸部の教室に入るとそこには加奈達がいた。

「どうしたの海斗?」加奈は声をかける。

「いや、何でもない」

「海斗、この前の男って一体」龍人が恐る恐る聞く。

「あいつは俺の兄貴であり俺の故郷である島に大きな悪影響を与えた極悪人だ」

それを聞いた一同は暗い表情となるがしかし加奈と胡桃は少し聞いていたためそれほど驚かなかった。

「あれは夜の出来事だった」

海斗は暗い過去を振り返る。

「うわぁぁぁ」

夜の街に悲鳴が聞こえ街の人々が駆け付けると家が燃えていた。

さらに別の方向を見ると他の家も燃えており人々はパニックになった。

海斗達家族も駆けつけると後ろで爆発音がした。

振り返るとそこには天都がいた。

手には灯油とライターを持っておりまだ刀が握られていた。

「兄貴!」海斗は驚きと同時に危険な気配を感じた。

人々が逃げる中、天都は次々と家に灯油をかけてライターで火をつける。

そして次々と家やマンション、森などが燃えていき島は悲鳴を叫びに包まれる。

しばらくすると当たり一面火の海と化し街はパニック状態になった。

「やめろ、天都!」父の亮は叫ぶ。

海斗は柚を後ろに隠す。

「これは正義だ。これ以上悲劇を生まないための」天都は無表情だった。

「違う、こんなの正義じゃない」亮は説得する。

「元々はあんたから始まった事だ」

天都は灯油をかけていくが海斗は気付いた。

――入れ物の大きさの割に灯油がなくならない。

「やめて! お兄ちゃん!」柚は泣きながら訴える。

海斗が遠くを見ると芝生に訪花が倒れていた。

「訪花さん!」

しかし海斗はそれよりも天都を探すため町を走った。

しばらくして天都を見つけるが同時に訪花を見捨て天都を探した自分を責めた。

「兄貴!!なぜ俺達を裏切った!」

「なぜ彼女を傷付けた。兄貴!!」海斗は叫ぶ。

「これは世間に対する復讐だ。俺はこの世間を許さない。これは天罰だ」

天都は大笑いしていた。

「彼女は何もしていないじゃないか。むしろ彼女は俺たち家族の味方をしていた。なのに……それなのに」

「味方だろうが俺にとっては悪党だ。彼女を傷付けて世間に見せてやった。お前達社会が一人の女を傷付けた事を」

「…そのためなら俺達家族が傷付く事も厭わないのか?」

「家族を犠牲にするだけで俺の正義が成し遂げられるなら俺はどんな罪も背負える。だがこれは罪じゃないな」

天都はどこかに歩いて去っていった。。

「待てよ、兄貴!!」しかし

天都は暗闇の中に消えていった。

「何でなんだよ。家族なのに……」

そして島には次々とドクターヘリや船が駆け付け人々を搬送していく。

その後、警察は天都を探すがしかし結局見つからなかった。

一方で海斗達家族を迫害した事が世間に知られると人々は光島の住人を批判した。

さらに中には天都に同情する声も多く天都を被害者と考える声も多かった。

そしてこの事件をきっかけに犯罪者の身内に対する差別や迫害などの問題が見直され加害者家族への支援や法律などが大きく変わる事となった。

そのため皮肉にも天都のやった事は世間に良い意味で大きな影響を与える事となり中には天都を英雄視する声も多く会った。

しかしそれでも海斗は天都を悪人としか見る事が出来ず英雄視する人々を憎んだ。

海斗の告白に加奈達は戦慄した。

「時、すまなかった。俺が兄貴の闇に気付く事が出来なくて。もし俺が気付くことが出来たらこんな事にならなかったのに」

「お前のせいじゃない。お前は何も悪くない」

「私も同じよ。お兄さんがどんな人物であっても海斗である事は変わらないよ」加奈は慰めた。

海斗はありがたく感じた。

夕方、海斗たちは下校中、自然緑川公園を通ると海斗達の目の前に天都が現れた。

「兄貴…」海斗達は警戒する。

「とりあえずその青年が無事そうでなによりだ」

「兄貴、もうやめてくれ。まだ悲劇を繰り返さないでくれ」

「これは必要な悲劇だ。平和を乱す者が現れたら襲う。そして悲劇を起こし恐怖を与える。最後は平和になる。それが俺の正義だ」

「医療で言えば抗体を作るといったところだ」

「違う。こんなの正義でも抗体でもない。家族や訪花さんとかを犠牲にして得た平和なんて俺は認めない」

「海斗、かつて俺達の父親は医療ミスを犯し光島の人々から批判や嫌がらせを受けただろ。これから先、まだどこかで俺たちと同じ状況に陥る人は出てくるだろう。そしたら俺達と同じ思いをする事になるはずだ。だから光島の惨劇を起こした。それが教訓になれば二度と同じ悲劇は起きないだろうから」天都は涼しげな表情で言った。

そして天都は背を向け手に持った刀を見つめる。

「悪魔は俺に希望をくれた。生きる事への意味を失った俺にこの刀をくれた。俺は悪魔に感謝している。だから俺は自分の信じる正義を貫くだけだ」

「海斗、お前は父親が好きか?」

「何でそんな事聞く」

「お前は知らないんだ。何も。ただ知る必要はない。今頃知っても意味などないからな」

天都はそう言い残し去っていった。

海斗は悲しかった。

同時に天都が知る真実が気になった。

 

昼になっても時はまだ目覚めていなかった。

「時…大丈夫かな」加奈は心配だった。

「手術は成功したんだ。そのうち目を覚ますだろう」龍人は励ます。

しかし楽人は苦悩していた。

湖南が椿の事を好きだと分かっていてもやっぱり湖南の事を諦めきれないでいた。

そして楽人は病院を抜け出しどこかの小さな公園に行く。

「……俺はどうしたら良いんだよ!」

楽人が小さな公園で思わず大声を上げる。

「何を落ち込んでいる?」

海斗は声をかけた。

「……なんでもないよ」

しかし海斗は楽人が心配だった。

「どうした?」

海斗が振り返ると湖田鎧と雪中月美がいた。

「あなた達は?」海斗は驚く。

それは剛から見せてもらった写真の中に写っていた人物で蓮の仲間だった。

「なんか印象に残っているなと思っていたら」

「君、どっかで会った事あるっけ?」鎧は戸惑う。

「さっきの叫び声は?」月美が聞く。

「俺の仲間です。すいません」

鎧は楽人の方に行く。

「どうしたんだ、何があったか?」

「別に何でもないです、ただ叫んだだけで」

「そんなようには見えないが」

海斗と月美も注目する。

「……何に悩んでいるのか分からないが湖南がお前を叩いたのはお前を思っての事だと思うぞ」海斗は言う。

「違う、俺は湖南が許せない」

「どういう事だ?」

「湖南は椿の事を受け入れている。その考えが俺は気に食わない」楽人は怒っていた。

海斗は何も言えなかった。

「何だが分からんないがお前の考えで彼女を縛るようなことは良くないな」鎧は言う。

「でもそいつは」

「彼女さんには彼女さんの考えがあるんだよ、逆にあなたの考えが正しいというわけでもないと思う」月美は言う。

「…」楽人は黙り込む。

「月美、言うようになったじゃん」鎧は突っ込む。

「私も成長してるからね」

「でも彼女を思う気持ちは悪くない」鎧は楽人を励ます。

楽人はどうしたら良いか分からないでいた。

「でもここまで思えるなら彼女さんを受け入れる事も出来るんじゃないの?」月美は言う。

「受け入れる?」

「うん。なんかあなたなら出来る気がする」

月美の言葉で楽人は目が覚めたようだった。

そして2人は去っていった。

その頃、時の側には胡桃がいた。

胡桃は時の手を握っていると加奈が病室に入って来た。

胡桃は慌てて時の手を離す。

「時、まだ目を覚めないのね」加奈は不安だった。

「大丈夫、時はきっと目を覚ますよ」

そして海斗と楽人が帰ってきて時を見る。

「時は俺や湖南の事を気にかけてくれていた。そして悪党の卓三も自分の身を犠牲にしてまで助けた。それなのに俺は湖南の意思を無視しようとしたり海斗や龍人が時の処置をしている中、自分はあいつに向かっていこうとした。俺は情けない」

海斗達は楽人を見る。

「でもお前はちゃんと気付いたじゃないか。それでよかったじゃないか」海斗は励ます。

すると時は目を覚ました。

「時!」海斗は声を上げる。

時はまだ話す事は出来なかったものの海斗達は安心する。

後から来た龍人と湖南も安心する。

「目を覚ましたのか」

椿も駆け付けた。

「ありがとう…椿」湖南は笑顔だった。

楽人も久しぶりに笑顔になれた。

数日後、時は退院し学校に行けるようになった。

そして7人で下校していると卓三が現れた。

海斗達は警戒する。

「…自分は間違っていました。今まですみませんでした」卓三は頭を下げて謝る。

海斗達は黙り込む。

「あなたもきっと変われるはず。だから前を向いて生きて」湖南は優しく言う。

「俺は変わります。なので俺を警察に…」

「その必要はない。お前が変わろうとするならそれでいい」時は許した。

「ありがとうございます」卓三は決意した。

卓三は去っていった。

そんな海斗達の姿をマンションの屋上から天都が見ていた。

「やれやれ元ドクターに手術させなくても治療してやったのにな」

天都は敢えて痛みを与え後で特殊な力で治療する事を考えていた。

「まぁ良い。海斗、俺の邪魔だけはするなよ」

 

 

時は救急車で搬送されたものの容態は危険な状況だった。

「あいつ絶対に許さない」楽人は怒って出ていこうとする。

「どこに行く」龍人が聞く。

「あいつをぶっ潰すんだ。時を傷付けた復讐として」楽人は正常な判断が付かないでいた。

「今は落ち着きなさい。今行ってもあなたに何が出来るの? ただ死ぬだけかもしれないのよ」胡桃も説得する。

「それでも俺は」

湖南は楽人にビンタする。

「あなたは時よりも復讐が大事なの?」湖南は怒る。

「時が負傷したとき海斗や龍人は処置をしていたのにあなたはそれよりも男の方に向かっていって…あなたにとって時は仲間じゃないの?」湖南は涙を流す。

「あなたは椿を否定しているけど私はそれでも楽人より椿の方が好きなのよ」

楽人は黙り込む。

湖南が椿の事を好きだと知った海斗達だが特に聞き返さなかった。

そこに医者がやって来た。

「内臓を深く損傷しています。この病院で手術出来るドクターは現在いません。なので緊急でヘリでドクターがやってきます。そのドクターは難しい手術を幾度もこなしていますがしかし問題なのはこの手術も出来るかです。今までこんな事例ほとんどなかったもので」

それを聞いた加奈達は絶望する。

その時、海斗はあるひらめきを思いつく。

「椿、お前は別世界では凄腕ドクターだったな」

「そうだが」

「それなら時の手術をやってくれ」海斗は頼み込む。

予想外の提案に龍人達は注目する。

「何言っている? 俺は無免許医だぞ。闇医者の俺が手術をやらせてろと言ったって出来るわけないだろ」椿は言う。

「いや、ちゃんと合法の方法でやる」。

「天使!」海斗が呼ぶとそこに天使がやって来た。

「どうしましたか?」

「天使、頼みがある。今から仲間の手術があるんだがそのドクターに椿を取り憑かせる事は出来ないか?」海斗が聞く。

「そうか。そのドクターに取り憑けば椿は無免許医ではなくちゃんとした医師になるのか」

龍人は気付いた。

「……本来なら私達天使は人間に介入しません。しかし憑依だけで最後は自分達でやるなら良いでしょう」天使は許可した。

「椿、それならいいだろ」

「だが俺は…」

「私は信じるよ。椿の事を。椿ならきっと時を救ってくれると」湖南は説得する。

「……分かった。久しぶりにやってやる」

楽人はそのやり取りを黙って見ていた。

しかし椿にとってもこの手術は難しい手術であり成功率も低いと感じていた。

しばらくしてドクターがやって来た。

そして椿の体から精神が抜けてドクターに憑依する。

ドクターは海斗達のところに行き伝えた。

「必ずこの手術を成功させます」

「お願いします」海斗達は頭を下げる。

そしてドクターに憑りついた椿は手術室に入る。

そして真夜中、早速手術を始める。

まず麻酔師が時に麻酔をかけた。

椿はメスで時の体を切る。

手術の結果を海斗たちは廊下で待っていた。

側には時の両親がおり両親は憔悴しきっていた。

海斗達は敢えて言葉をかけなかった。

椿は慎重に手術をしていき周りの医師達も緊張しながら見守る。

椿は怖がった。

――血は大量に溢れ出ないだろうか

――本当にこれであっているのだろうか

――突然死んでしまったらどうしたらいいんだ

椿の頭の中で不吉な事ばかり考える。

しかし余計な事は考えず手術を進めていく。

海斗たちが待っているとランプが消えた。

そして椿が取り憑いたドクターが出てきた。

「息子はどうでしょうか?」両親は緊張していた。

「手術は成功しました。後は本人次第です」

海斗達は安心する。

そしてドクターから椿が抜ける。

「先生、今日の手術、とても素晴らしかったです」医師達は賞賛する。

「私も不思議だよ。何か不思議な力に導かれてというかなんかよく分からない力が働いて」

翌日の朝、安心した海斗達は時の病室で眠っていた。

しかし楽人は窓を見ていた。

楽人は自分の愚かさが嫌になっていた。

 

 

 

翌日、海神公園で海斗と龍人、胡桃、楽人、時は集まっていた。

「今日は女1人なのか」胡桃は言う。

「そうだね。珍しい」

「やぁ」

5人が振り返ると卓三が現れた。

「お前…」楽人と時は驚く。

「知り合いか?」龍人は聞く。

「例のストーカーだ」

「なんだと」海斗は警戒する。

「君達に一つ報告がある。俺は新しい恋人を手に入れた。そしてその女は君達を裏切り捨てるらしい」

するとそこに湖南がやってきた。

海斗達は目を疑う。

「俺の新しい恋人、湖南だ」

湖南は下を向いていた。

「裏切るとはどういう事だ?」龍人は聞く。

「彼女は君達がいらなくなったんだ。そして俺だけが側にいれば良いという結論に至った」

海斗達は困惑する。

「何で…何が気に食わなかったの?」

胡桃は聞くが湖南は黙っていた。

「ふさげるな。友達を裏切って捨てる事は簡単だが取り戻すのは難しい、湖南はそれでいいのか?」海斗は怒る。

その時、卓三は言った。

「お前、パラレルトラベラーだな」

その言葉に6人は思わず驚いてしまう。

「なぜそれを」

「実は俺は悪魔と契約をしこれからパラレルトラベラーとして別世界に行く事に決めている。だから君の事も聞いているんだよ」

卓三はパラレルトラベラーになろうとしていた。

「悪魔がお前に力を貸したのか?」

「そういう事だよ。じゃあね」

そして卓三は湖南を連れて去っていった。

「何で湖南があんなストーカーといるんだよ!絶対におかしい」楽人は感情的になる。

「落ち着いて」胡桃は諭す。

「でも何がどうなってんだよ」龍人は考える。

「何とかして湖南を取り戻そう」海斗は言う。

ふと時は思った。

「……もしかしたら湖南、何が脅迫されているかもしれないな」

「脅迫? どんな」

「それは分からないがそんな気がする」

「もしかして」海斗は気付いた。

「奴が悪魔と契約しパラレルトラベラーとして別世界に行こうとしているならもしかしたら…湖南を別世界に連れて行こうとしているのかもしれない。悪魔ならそれも可能だろうし」

「そうだ、それだ」

「もし別世界に湖南が連れて行かれたら助け出すことは出来ない」

その時、海斗はある考えを思いついた。

「椿に協力を頼もう」

全員が注目する。

「何であいつの力を貸りなきゃいけないんだろ」楽人は拒否する。

「でも今、あいつは復讐屋として活動している。復讐屋なら相手の情報を入手するぐらいたやすいだろ」海斗は楽人を説得する。

「それに今は選り好みしてる場合じゃないだろ」時は言う。

すると天気が曇ってきた。

「……分かった。椿が切り札なら椿にに力を貸してもらおう」楽人は決めた。

早速、海斗達は椿のマンションに行きインターホンを鳴らすと椿が出てきた。

「椿、依頼がある」

「お前達が依頼をするとは珍しいな」椿は興味を持つ。

そして海斗達は部屋に事情を話した。

「そうか。ちょうど浅木卓三への復讐の依頼があるがなぜそいつの事を知りたい?」

「湖南が卓三に連れ去られた。本人はそれを望んだ事らしいがでも脅されてると思う」

椿は表情を変える。

「……分かった。情報を教えよう」椿は真面目な態度となる。

「ありがとう」海斗は安心する。

「でも意外とあっさりだな」龍人は怪しく感じる。

「彼女には世話になっているからな」

「そうなの?」胡桃は驚いた。

「料金はいくらだ?」

「金は取る気はない」

椿は自分が集めた卓三の情報を海斗達に見せる。

「これは…」

「卓三の過去を調べた所、色々な事が分かった」

「卓三は小中学校の成績が優秀で将来を期待されていたがしかし同時に危険な思想の持主でもあったそうだ。自分が欲しいと思ったものはどんな手を使っても手に入れそのためなら周りの人間も平気で巻き込む」

そのため流石の椿も卓三にはかなり警戒していた。

「とりあえずやつの家は分かっている。行ってくる」

椿が行こうとした。

「待て、俺にも行かせろ」楽人が頼む。

「これは俺の仕事だ。お前達は待っていろ」

「俺も湖南を助けたい。それに万が一何があったとき2人いたら安心だろ」楽人は椿を説得する。

「…まぁ良いだろう」

「なら俺も行かせてもらおう」時も頼む。

「生きたい奴は来い」

しかし海斗たちには好きにしろというように見えた。

そして6人は卓三の家に向かう。

その頃、湖南は卓三の家にいた。

側には両手を縛られた加奈がいた。

「ごめん湖南。私のために脅されて」

「いいのよ。友達だし」

湖南は卓三を見る。

「…加奈を解放して」

「まだ駄目だよ」

「湖南、俺は君の事が好きなんだ。愛しているんだ。だから復讐屋と付き合っているのを見て俺は気に食わない」

卓三は湖南が椿とキスをする瞬間を偶然窓から見ていた。

それを初めて知った加奈は驚く。

「あの復讐屋に頼んで湖南の友達を潰そうと頼んだが奴は拒否した。同情できる所がないただ一方的な恨みのために復讐をする気はないと」

「……貸すわけないでしょう」湖南は怒りがこみ上げた。

「椿はやり方は間違っているけど本当は心優しい人なのよ。そんな椿があなたに力を貸すわけないでしょう」

「ストーカー、あなたは自分の事しか考えないから誰も相手にしてくれないのよ」加奈は言う。

「黙れ!」卓三は怒鳴った。

「どうせ今まで1人ぽっちだったんでしょ? でも分かるわ。あなたと関わりたくないもん」加奈は怯まず反論する。

そして落ち着きを取り戻す。

「……湖南…椿と付き合っていたの?」

「…付き合ってはいない。でも椿の事は好きだよ」

卓三はさらに腹を立てる。

その時、インターホンが連打で鳴った。

「うるさいな、誰だ」

卓三がドアを開けると海斗達が突っ込んできた。

楽人と時は卓三を取り押さえる。

「大丈夫? ていうより何で加奈が…」海斗は驚く。

「くそぉー」卓三は悔しがる。

「警察に通報する?」胡桃が聞く。

「悪いけど警察に通報しても無駄だ。何故なら俺は悪魔と契約し別世界に連れていってもらう事になっているからな」卓三は笑いが止まらなかった。

「俺は…俺はずっと湖南の事が好きだった、なのに湖南は復讐屋の事を愛していた。俺はそれが憎い、憎いんだよ」

するとそこに悪魔が現れた。

海斗達は警戒する。

「悪魔、俺を別世界に…」卓三は笑顔で頼む。

「残念だがお前には興味がなくなった。この世界で生きろ」悪魔は笑顔で返答する。

「何だよそれ、俺達約束したじゃないか」卓三は焦る。

「お前の姿を見て考えが変わったんだよ。女を捕まえるために女を餌に脅しをかけるお前を見て面白みがなくなった」

「ふさげるな。もし俺を別世界に連れていってくれなきゃ俺は監禁罪で警察に捕まるかもしれないんだぞ」卓三は慌てる。

「お前の事情など知るか。この世界で生きろ」

悪魔はそう言い残し消えた。

卓三はショックを受け楽人と時を押しのけ逃げていく。

海斗達が追いかけると卓三は廃れた工場に入っていった。

そして海斗達も卓三の元にたどり着くと卓三は震えていた。

海斗達の前に現れたのは水崎天都、海斗の兄だった。

天都の手には刀を握っていた。

「兄貴…」

加奈達も思わず注目する。

「久しぶりだな海斗、まさかこの世界に来るとはな」天都は不敵な笑みを浮かべる。

「まさか兄貴がパラレルトラベラーだったなんて。どおりで警察が大掛かりで捜査しても見つからないわけだ」海斗は混乱していた。

「卓三、お前には失望した。お前には何の感情もない。だから病院で気の済むまま休め」天都が刀を上に掲げる。

「危ない」時が飛び出す。

時は卓三を庇って天都に刀で斬られた。

背中から血が流れ時は倒れこむ。

「時!」胡桃は叫ぶ。

海斗達はすぐに時に駆け寄る。

「ガムテープないか?」海斗が聞く。

「セロテープならあるけどそれで大丈夫なの?」加奈は慌てていた。

海斗と龍人はその場凌ぎですぐに時の背中に貼りつける。

「これって大丈夫なの?」胡桃が聞く。

「今は血が流れにくくすることを優先しないと」海斗は焦っていた。

「いや、そんなんじゃ駄目だ」

椿はある液体の薬を出して時の背中につける。

するとその液体は皮膚のように固まった。

「当たり前だが刀で切られた場合の対処法は習った事がない。だがこの薬があれば少しだが血を止められる」椿は時を処置しながら話す。

湖南はすぐに救急車を呼んだ。

卓三は恐怖に陥る。

「貴様!」

楽人は天都に向かおうとするが湖南が止める。

「これ以上負傷者が出たらどうするの?」

「海斗、俺は自分の正義を貫くだけさ」

そして天都が去る姿を海斗は悔しそうに見ていた。