3年生になった海斗は公園で休んでいた。
――この世界に入れるのも後、1年なのか。
海斗は切なく感じていると悪魔が現れた。
「どうだ。この世界は、楽しいか?」
「悪魔、好き勝手にして…そのせいでこんな状況に」
「俺は異世界に送り込んだだけでそれ以外俺は関係ない」
悪魔の主張に海斗は憎く感じた。
「俺は悪魔だ。悪魔には悪魔の正義があるんだよ」
海斗は聞いた。
「兄貴をこの世界に連れてきたのもお前か」
「勿論だ。俺が天都を連れてきた。そして本当ならお前には他のパラレルトラベラーを見抜く能力を手に入れる事が出来るはずだったが天都はお前の能力の分の力を自分によこすよう言われたからあいつに渡したんだよ」
「だがお前に唯一残っていた力はパラレルトラベラーとその関係者と寄せ付ける能力だ」
海斗は驚いた。
「そうか…だからあんなに都合よく泉蓮さんやその知り合いとも出会ったんだ」
海斗は悪魔を睨む。
「確かにあんたの言う通りだ。兄貴もあのストーカーも自分に負けてあぁなってしまっただけなんだ」
「素直だな」悪魔は意外に感じた。
「悪魔、この青年をこの世界に連れてくるなんて」
2人が振り返ると天使がいた。
「天使…貴様」
「悪魔、パラレルワールドの人間を無許可でこの世界に連れてくるのは違法行為だ」
「だからどうした? 俺は悪魔だから法律など関係ない」
悪魔はそう言い去っていく
海斗は天使に聞いた。
「悪魔って何者なんだ?」
「彼は元々は天使でした」
その事実に海斗は驚いた。
「しかしある事をきっかけに悪魔になってしまった者なのです」
海斗は天使に詳しい話を聞かせてほしいと頼んだ。
「天使の使命は人間の人生に良い影響を与える役割がありその人を幸福にするのが使命です。しかし中には自分の利益のために人間の人生を狂わせる天使も少なくありません。天使の世界にはそういう現状があります」
「じゃああの悪魔は」
「堕天使といったところです。しかしなぜあの悪魔は君をこの世界に連れてきたのでしょうか?」天使は疑問に思う。
海斗も分からなかった。
そして天使は消えた。
翌日、精神的に疲れた海斗が手芸部の教室に入るとそこには加奈達がいた。
「どうしたの海斗?」加奈は声をかける。
「いや、何でもない」
「海斗、この前の男って一体」龍人が恐る恐る聞く。
「あいつは俺の兄貴であり俺の故郷である島に大きな悪影響を与えた極悪人だ」
それを聞いた一同は暗い表情となるがしかし加奈と胡桃は少し聞いていたためそれほど驚かなかった。
「あれは夜の出来事だった」
海斗は暗い過去を振り返る。
「うわぁぁぁ」
夜の街に悲鳴が聞こえ街の人々が駆け付けると家が燃えていた。
さらに別の方向を見ると他の家も燃えており人々はパニックになった。
海斗達家族も駆けつけると後ろで爆発音がした。
振り返るとそこには天都がいた。
手には灯油とライターを持っておりまだ刀が握られていた。
「兄貴!」海斗は驚きと同時に危険な気配を感じた。
人々が逃げる中、天都は次々と家に灯油をかけてライターで火をつける。
そして次々と家やマンション、森などが燃えていき島は悲鳴を叫びに包まれる。
しばらくすると当たり一面火の海と化し街はパニック状態になった。
「やめろ、天都!」父の亮は叫ぶ。
海斗は柚を後ろに隠す。
「これは正義だ。これ以上悲劇を生まないための」天都は無表情だった。
「違う、こんなの正義じゃない」亮は説得する。
「元々はあんたから始まった事だ」
天都は灯油をかけていくが海斗は気付いた。
――入れ物の大きさの割に灯油がなくならない。
「やめて! お兄ちゃん!」柚は泣きながら訴える。
海斗が遠くを見ると芝生に訪花が倒れていた。
「訪花さん!」
しかし海斗はそれよりも天都を探すため町を走った。
しばらくして天都を見つけるが同時に訪花を見捨て天都を探した自分を責めた。
「兄貴!!なぜ俺達を裏切った!」
「なぜ彼女を傷付けた。兄貴!!」海斗は叫ぶ。
「これは世間に対する復讐だ。俺はこの世間を許さない。これは天罰だ」
天都は大笑いしていた。
「彼女は何もしていないじゃないか。むしろ彼女は俺たち家族の味方をしていた。なのに……それなのに」
「味方だろうが俺にとっては悪党だ。彼女を傷付けて世間に見せてやった。お前達社会が一人の女を傷付けた事を」
「…そのためなら俺達家族が傷付く事も厭わないのか?」
「家族を犠牲にするだけで俺の正義が成し遂げられるなら俺はどんな罪も背負える。だがこれは罪じゃないな」
天都はどこかに歩いて去っていった。。
「待てよ、兄貴!!」しかし
天都は暗闇の中に消えていった。
「何でなんだよ。家族なのに……」
そして島には次々とドクターヘリや船が駆け付け人々を搬送していく。
その後、警察は天都を探すがしかし結局見つからなかった。
一方で海斗達家族を迫害した事が世間に知られると人々は光島の住人を批判した。
さらに中には天都に同情する声も多く天都を被害者と考える声も多かった。
そしてこの事件をきっかけに犯罪者の身内に対する差別や迫害などの問題が見直され加害者家族への支援や法律などが大きく変わる事となった。
そのため皮肉にも天都のやった事は世間に良い意味で大きな影響を与える事となり中には天都を英雄視する声も多く会った。
しかしそれでも海斗は天都を悪人としか見る事が出来ず英雄視する人々を憎んだ。
海斗の告白に加奈達は戦慄した。
「時、すまなかった。俺が兄貴の闇に気付く事が出来なくて。もし俺が気付くことが出来たらこんな事にならなかったのに」
「お前のせいじゃない。お前は何も悪くない」
「私も同じよ。お兄さんがどんな人物であっても海斗である事は変わらないよ」加奈は慰めた。
海斗はありがたく感じた。
夕方、海斗たちは下校中、自然緑川公園を通ると海斗達の目の前に天都が現れた。
「兄貴…」海斗達は警戒する。
「とりあえずその青年が無事そうでなによりだ」
「兄貴、もうやめてくれ。まだ悲劇を繰り返さないでくれ」
「これは必要な悲劇だ。平和を乱す者が現れたら襲う。そして悲劇を起こし恐怖を与える。最後は平和になる。それが俺の正義だ」
「医療で言えば抗体を作るといったところだ」
「違う。こんなの正義でも抗体でもない。家族や訪花さんとかを犠牲にして得た平和なんて俺は認めない」
「海斗、かつて俺達の父親は医療ミスを犯し光島の人々から批判や嫌がらせを受けただろ。これから先、まだどこかで俺たちと同じ状況に陥る人は出てくるだろう。そしたら俺達と同じ思いをする事になるはずだ。だから光島の惨劇を起こした。それが教訓になれば二度と同じ悲劇は起きないだろうから」天都は涼しげな表情で言った。
そして天都は背を向け手に持った刀を見つめる。
「悪魔は俺に希望をくれた。生きる事への意味を失った俺にこの刀をくれた。俺は悪魔に感謝している。だから俺は自分の信じる正義を貫くだけだ」
「海斗、お前は父親が好きか?」
「何でそんな事聞く」
「お前は知らないんだ。何も。ただ知る必要はない。今頃知っても意味などないからな」
天都はそう言い残し去っていった。
海斗は悲しかった。
同時に天都が知る真実が気になった。