雄吾との再会から1週間後、龍人は屋上で手芸の作業をしているとそこに加奈がやって来た。

「龍人、いたんだ」

「加奈……」

「もうすぐ卒業だね」加奈は寂しそうだった。

「まぁまだ2ヶ月あるけどでももうすぐと言ったらもうすぐか」

龍人は2人きりで緊張していた。

「加奈…」

「何?」

突然、龍人は加奈の唇にキスをする。

加奈は頭が真っ白になる。

すると海斗がやって来て加奈と龍人のキスを見てしまう。

「海斗…」加奈と龍人は驚く。

3人は気まずくなる。

「やぁ」

振り返ると天都がいた。

「兄貴!」海斗は警戒し、加奈と龍人の前に立つ。

「海斗、お前はどうやらもうすぐこの世界からいなくなるようだな」

「そうだけどだが兄貴、俺は戻の世界に戻る前に兄貴と決着をつける。必ず兄貴を止める」海斗の言葉に天都は笑い出す。

「海斗、俺はお前に止められたりはしない。それに俺はこの刀を持っている。その気になればお前を斬る事も容易い」

そこに胡桃と湖南、楽人、時がやって来た。

「お前!」時は警戒する。

楽人は胡桃と湖南を後ろに隠す。

天都は笑うのをやめ刀を手に持つ。

「海斗、お前も俺と共に正義を貫こう」

「断る」海斗は即答だった。

「兄貴、悲劇で平和を実現しても結局兄貴は憎まれるだけじゃないのか?」

「そんな事は分かっている上でやっている。俺はもう家族の元に戻る事は出来ないし後戻りも出来ない」

「海斗、前にお前に父親は好きか?と聞いた事があっただろ」

「それがどうしたの?」

「何で父さんは一度だけの医療ミスであんなにも叩かれたか知っているか?」

海斗は注目する。

「父さんは医療ミスなんか犯していなかった。あるドクターを庇っただけだ」

天都の告白に海斗は大きく動揺し加奈達にも衝撃が走る。

「どういう事だ?父さんが医療ミスを犯していないって」

「父さんが庇ったドクターは医療ミスを犯したがそのドクターには家族がいて娘は当時受験が迫っていた。それを知った父さんはそのドクターを庇っていた。俺はそれを知り同時に憎しみが沸いてきた」

「さらに言えばそのドクターの娘が訪花、俺の彼女だった」天都は憎しみがこみ上げた。

「訪花さんの父さんが…」海斗は驚いた。

「そして俺は自分の正義に気付きあの惨劇を生んだ。訪花にも罪悪感や痛みを味わらせるために」天都は笑っていたものの悲しそうだった。

「……確かに兄貴は父さんを責めたりしたけどでもそれでも俺達を支えてくれたじゃないか。兄貴が俺や柚子を支えてくれたから俺達は最後まで絶望せずに生きる事が出来たんだ」

天都は戸惑う。

「それに罪悪感を与えようとしたくせになんで訪花さんに伝えなかったの?」

「家族や身内に関してはもうどうでもよくなったからな」

「違うな。本当は訪花さんを大事に考えていたからこそ真実を話さなかった」

「黙れよ……お前に何が分かる」天都は刀を向けるが震えていた。

「本当は兄貴、後悔しているんじゃないのか?今やっている事を正義なのか疑問に感じているんじゃないのか?」

「これは正義だ。悲劇を起こして悲劇を止める。俺はその信念のために悪魔に魂を売った」

「俺は思う。未来が分からないから人は傷ついたり傷つけたりする。でも過ちを反省し二度とその悲劇を起こさないようにしようとする人はたくさんいる。兄貴の言っている事は間違っていないところもあるけどわざと悲劇を起こす必要なんてない。悲劇を起こさなくてもそれを止める手段なら他にある」海斗は必死に訴える。

天都は黙って聞いていた。

加奈達も真剣に聞いていた。

「俺はもう後戻りが…」

そのとき、天都は遠くである光景を目撃する。

「復讐屋のマンションに訪花がいる」

「訪花さんが」海斗は驚く。

「勘違いしているかもしれないが訪花と言ってもこの世界の人間だ」

天都は瞬間移動し海斗達の前から消えた。

「訪花さんが」海斗は走り出す。

「私達も行こう」

加奈達は海斗を追いかける。

その頃、椿は訪花をソファーに寝かせていた。

訪花は悪魔病が悪化しており危険な状態だった。

「私の命はどうでも良い。それより私の依頼を…」訪花は苦しんでいた。

そこに突然、天都が現れた。

「訪花!」天都は声を上げる。

「誰ですか?」訪花は怯える。

「お前何しに来た?」椿は警戒する。

自分の知っている訪花ではないとは分かっていたものの何故が再会した気分になって嬉しく感じた。

そこに海斗達がやって来た。

海斗達は天都の姿を黙って見ていた。

天都の頭の中でなぜ今の自分がこうなってしまったかという出来事が蘇る。

ある日の夜、自宅で天都が階段を降りると亮が電話で話をしていた。

「安心しろ。そのうち収まる。それにお前には訪花さんがいるし来年受験なのにお前が手術失敗したって言ったら訪花さんはずっと志望していた大学に入る事が出来ないだろ」

それを聞いた天都は全てを悟った。

――医療ミスをしたのは父さんじゃなかった。訪花の父親だった。

天都の中で一気に怒りがこみ上げた。

――俺達は父さんのために今までこんな思いをしていたのか。無責任な優しさのために俺達家族は巻き込まれていたのか。

天都は絶望した。

ふと一方で天都は多くの人から必要以上の批判をされ苦しむ中である考えが生まれていた。

――人はなぜ悪人と血が繋がっているだけで悪い事をしていない人間までここまで傷付けるのか。必要なまでの批判をしている人間達は自分たちのやっている事も悪であると思わないのか、どうしたら平和な世界を作れるのか。

それを考えに考えそして答えが出た。

――痛みを味わらせれば痛みはなくなる。

悲劇が起きれば悲劇は繰り返されない、それが世界の平和を作る第一歩だと天都は結論付けた。

そこに悪魔が現れた。                                   

「お前、随分面白い闇を持っているな」悪魔は興味を持つ。

「俺も疲れてしまったようだな」

しかし天都はそれが現実だという認識はあった。

「悪魔、俺は悲劇で平和を作る。だから俺に力を貸せ」

「面白い、気に入った」悪魔は天都に刀を渡した。

「早速始めよう。平和な世界の開拓を」

天都自身が悪魔と化していた。。

しかし天都は自分のやってしまった事に気付き疑問を感じ始めた。

そしてなぜ自分はあんなに好きだった訪花を手にかけてしまったのだろうかと考えた。

「……海斗…俺は自分の正義を貫くだけだ」天都の考えは変わらなかった。

天都はポケットから注射器を取り出し自分に打ち込む。

「兄貴、それは」海斗は驚く。

「この注射器は悪魔が独自に開発したものだ。遺体にこの注射の針を刺してその死体から残像エネルギーを採取し病人に打ち込めば病人の病気が治る」

「兄貴……」海斗は気付いた。

「俺の全てのエネルギーを訪花、君に注入する」

「安心しろ。すぐに良くする」

天都が訪花に注射すると訪花は体が楽になり回復した。

「嘘みたい」訪花はあまりの出来事に驚く。

安心した天都は倒れこむ。

「兄貴!」海斗は駆け寄り天都の上半身を持ち上げる。

「勘違いするな。俺は助けたんじゃない。ここで終わるつもりだった」

そう伝えると天都はゆっくり目を閉じる。

「さよなら……兄貴…」海斗は呟いた。

加奈達も黙って見守っていた。

その後、天都は天使によって元の世界に運ばれた。

そして海斗の世界では天都の遺体が見つかり大ニュースとなる。

数日後の夕方、海斗は龍人と屋上にいた。

「兄貴はは分かり合えなかった」海斗は悲しく感じた。

「人間、どんなに頑張ったって届かない思いもあるさ」龍人は励ました。

「俺は帰る。受験勉強もあるし」

「分かった。まだ明日」

そして龍人は帰っていった。

海斗は空を見上げる。

天都が亡くなって2週間後、世間はクリスマスムードだった。

湖南は海神公園で編み物をしていた。

それを遠くから楽人と時が見ていた。

「湖南…」楽人は悲しそうだった。

「お前、余程湖南が好きなんだな」

「いい加減諦めろと言うんだろ」

楽人は湖南を見る。

「あの編み物、椿にだろうな」

楽人は見たくないあまりその場を去ろうとした。。

「……でも湖南はお前が自分の事を思っていた事は分かっている。湖南はお前に感謝していた」

「どういう事だ?」楽人が振り返る。

それは時が湖南と屋上にいた時だった。

「卓三の問題解決したな」

「うん、時ありがとね、私の事を守ってくれて」

「別に大したことはしていない。それに楽人はお前の事をとても思っていた」

「うん。楽人は私の事をいつも思ってくれていて嬉しかった。私にとって楽人は大事な人よ。今度、何がお礼をしないと」

楽人は嬉しく感じた

「そうか、湖南が」

「湖南の幸せを思うなら湖南を見守ってあげよう」時の言葉に楽人は決意した。

――湖南を見守っていく。そして湖南を諦める。

湖南はマフラーを完成させマンションに行く。

インターホンを鳴らすと椿が出てきた。

「湖南」

「椿、これクリスマスプレゼント」

湖南は椿に手編みのマフラーを渡す。

「…ありがとう」椿は受け取る。

2人は笑顔になる。

「お前のおかけで俺は変われた。ありがとう湖南」

椿は出会う前とは大きく人間的に成長したようだった。

 

「一度、俺のマンションに連れていく」椿は深刻に考える。

「どうする気だ?」時は聞く。

「俺の部屋で対処する」

そして8人はマンションに行き龍人をベッドに寝かせる。

胡桃、楽人、湖南、時は加奈から龍人の事情を聞き動揺していた。

「龍人…そんな体で」胡桃はショックを受ける。

「なんで今まで言わなかったんだよ」時も悲しく感じた。

「たぶんみんなに心配かけたくなかったんだ。それに龍人は覚悟していたから重く考えていなかったのかもしれない」

椿は龍人の診察をするがしかし治す方法は見つからなかった。

「…闇医者レベルの俺がどうにか出来る問題じゃなかったか」

分かっていたとはいえ駄目元で診断した椿だがしかし治す事は出来ないと知り落ち込んだ。

ふと椿は思いついた。

「……悪魔…来い!」

するとその声を聞き悪魔がやってきた。

「何の用だ?」

「悪魔、龍人の悪魔病を俺の体の中に移植しろ」

椿は臓器移植の手術の事を思い出しその原理で自分と龍人の内臓を取り替える事を考えた。

「何言っている。そんな事したらお前が悪魔病になるじゃないか」海斗は止める。

「そうだよ。そんな事したら椿が死んじゃうよ」湖南も反対だった。

「俺はお断りだ。お前を殺して俺が生きるなんて」龍人も拒否する。

「お前…自分が死ぬんだぞ。それなのに自分の命を捨ててまで龍人を助けるのか?」海斗は悲しそうだった。

「俺は命を守りたいだけだ。それにこれは罪滅ぼしになるかもしれない」

椿はずっと自分が死なせてしまった患者に罪悪感を感じていた。

「…悪魔頼む!」

「良いだろう」

悪魔は不思議な力で龍人の悪魔病を椿の体に移植した。

すると龍人は一気に病状が回復する。

「体が楽になった…けど」

同時に椿は突然苦しみだした。

「悪魔、続いてお願いだ。俺を元の世界に戻してくれ」

椿にはある考えがあった。

「俺は自分の世界に帰還しそこで開発されたワクチンを服用して治す」

それは龍人の父親の雄吾が作ったワクチンだった。

「でも治るの?」胡桃は聞く。

「絶対ではない、治らないかもしれない」

「そんな」湖南は崩れ落ちる。

椿は元の世界に行こうとするが苦しそうだった。

「俺が行く」海斗は志願する。

「お前はここで休んでいろ」

椿はとりあえず座り考える。

「なら俺も行く。元々は俺の問題だったんだから」龍人も賛成する。

「天使!」海斗が呼ぶと天使がやってきた。

悪魔は不機嫌になり消えていった。

「久しぶりですね。海斗さん、何の用ですか?」

海斗は天使に提案する。

「頼みがある。椿の世界に行かせてくれないか? どうしても手に入れたいものがある」

「それは何ですか?」

「悪魔病を治す薬だ。椿の世界にしかない薬なんだ」海斗は訴える。

「……本当は駄目ですが今回は特別に許可します。ただし一度に送り込めるのは3名だけです。まだこの世界に持ち込めるものは1種類1つだけでそれが駄目だった場合は諦めてください」

「まだ手に入れてもその世界には1日は待機してもらう事になります。なのでどんなに早くワクチンを手に入れても明日までは戻れないと思ってください」

「分かった。行かせてくれ」

「私も行かせて」加奈も頼んだ。

「分かった。一緒に行こう」

海斗は4人を見る。

「分かっている。胡桃、湖南、楽人、時、椿の事を頼んだぞ」

そして天使は手から虹色の光線を放ち3人は別世界に飛ぶ。

3人が目を覚ますとそこはドラックストアの中だった。

――何でここなんだ。

「とりあえず薬を探そう」龍人が言う

「これ」加奈が指をさす。

見ると悪魔病の薬が商品棚に売られていた。

「こんなにあっさり見つかるものなんだ」海斗は驚いた。

「もっと時間がかかると思っていた」加奈も同じだった。

しかし龍人は感動した。

「父さんが作ったワクチンがこうやって棚に並んでいるなんて」

そして3人はワクチンを購入し任務を達成した。

「まさかこんなにも早く見つかると思わなかったな」

「でも明日までは戻れないんでしょ」加奈は言う。

「1日とはいえ、その1日で病状が大きく変わらなければ良いんだが」龍人は椿が心配だった。

すると3人の横を1人の男が通る。

龍人は驚き目を見開いた。

「父さん?」

男は龍人の父親の雄吾だった。

雄吾は振り返る。

「龍人? 龍人なのか?」雄吾は目を疑った。

雄吾は龍人の側に来る。

「龍人、すまなかった。勝手にいなくなって」雄吾は謝った。

「父さん、俺を救うためにこの世界に来ていたんだろ」龍人は震えていた。

「その通りだ。でも何でお前がそんなことを」

「椿から聞いた。椿は悪魔の力で俺の世界に来ているんだ」

「そうだったのか、椿は無事だったか」

雄吾は警察に失踪届を出しており椿を探していたもののしかし見つからず椿は死亡したと考えていた。

おんな2人の姿を見て海斗と加奈も感動する。

3人は雄吾の家に案内される。

それは雅夫が生前住んでいた家で椿がいなくなった後は1人で暮らしていた。

「水崎君、火高さん、息子は迷惑をかけていないかな」雄吾が2人に聞く。

「いや、そんな事ないです。むしろ龍人からは色々助けてもらっています」海斗は答えた。。

「龍人、良い友達を持ったな」雄吾は嬉しかった。

そして雄吾は聞いた。

「そういえばなんで龍人達はこの世界に来たのかな?」

雄吾の質問に3人は黙り込む。

「……椿が悪魔病なんだ。俺の悪魔病を自分に移植したため」

雄吾はすぐに悪魔の力と察した。

「そうだったのか…だからワクチンを購入しに来たのか」雄吾は深刻に考えた。

「……今日は泊まっていくと良い。外は寒いと思うし高校生にホテル代は高い」

「ありがとうございます」加奈は感謝する。

そして3人は泊めてもらう事になった。

翌日、海斗達3人と雄吾が待っていると天使がやってきた。

天使を見た雄吾は驚きそして初めて天使の存在を知った。

「3人を元の世界に戻します」

「天使頼む、俺も元の世界に戻してくれ」雄吾は頭を下げる。

海斗達は天使を見つめる。

「……良いでしょう。というよりそもそもあなたはこの世界にいてはいけないのでどっちにしろ元の世界には連れていきますよ」

「ありがとう…でも後で別れの挨拶をしたい人が何人もいるんだ」

天使は考える。

「……なら後でもう1回戻って来ると良いです。今はもう1人の息子を優先しましょう」

「ありがとう」

雄吾は龍人を見る。

「龍人、お前が良いなら元の世界に戻ったらまだ一緒に暮らそう。普通の家族のように長く暮らせるかは分からないけど」

「勿論いいよ、父さん」龍人は笑顔で言った。

雄吾は笑顔になる。

そして海斗と加奈も安心した。

天使は手から虹色の光線を放つと4人は椿の部屋に辿り着いた。

「海斗!」時は驚く。

「その人は?」

「俺の父さんだ」龍人が言う。

龍人が目線を下ろすと椿の容態が悪化していた。

「父さん……なぜ」意識が薄れていく椿は驚いた。

「椿、しっかりしろ」

海斗はすぐに椿に薬を飲ませようとしたが雄吾が気付いた。

「これは…もう薬じゃ治らない」

「どういう事ですか?」湖南は声を上げた。

「ここまで悪化していたらいくら椿の世界の技術でも治らない。でもなぜ椿が悪魔病に」

雄吾はどうするべきが考えそして覚悟を決めた。

「悪魔…来てくれ」

「どうしたかな?」

振り返ると悪魔が現れた。

「…悪魔、椿の悪魔病を俺に移してくれ」

雄吾の言葉に海斗達は驚く。

「何、言っているんだ。そんな事したら父さんが死ぬじゃないか」椿は拒否する。

「お前だって俺と同じ事をしているじゃないか。それに自分の息子が死ぬのを見るぐらいなら」

雄吾は龍人を見る。

「龍人、お前は俺の息子だ。自分の命よりも大事な命だ。母さんも自分にとって龍人は本当の命だと言っていた」

「椿、お前とは血は繋がっていないがお前の父親のおかけで俺は希望を持てた。だからお前達を死なせるわけにはいかない。これは雅夫への恩返しだ。それに俺は癌だ」

海斗達は驚いた

「だからもう長くない。今更悪魔病になっても問題ない。龍人、椿、お前達を守れるのなら俺にとってはそれが幸福だ」

「父さん…」龍人は悲しそうだった。

「悪魔、頼んだ」雄吾は叫ぶと悪魔は願いを聞き入れ椿の病気を雄吾に移した。

椿は楽になり同時に雄吾は苦しみだす。

「父さん」龍人が駆け寄る。

椿も側に行く。

「良かった。2人が元気そうで」雄吾は辛そうなものの笑顔で話した。。

その後、龍人は雄吾と一緒に暮らす事になる。

2週間後、雄吾は亡くなった。

その後、お葬式が行われ雄吾の墓が建てられた。

「父さん、最後は笑顔だった」龍人は嬉しく思った。

最後はもがきながら死ぬと思っていたものの意外と元気で死んでいった。

「そうか、お前の父さん良い人だったじゃないか」海斗は雄吾と過ごした1日を振り返る。

数日後、椿は雄吾のお墓参りをする。

椿は誓った。

――俺は人を傷付けない方法で人を救う。

椿は復讐屋をやめる決意をした。

 

 

天都は考えていた。

なぜあのとき胡桃と時を切る事が出来なかったのか、そしてなぜ加奈と龍人の言葉に心が揺らいだのか。

翌日、海斗達は医療の授業を受けていた。

しかし龍人は父親の件が気になって頭に入れなかった。

一方、椿は部屋の隅で寝ていた。

するとインターホンが鳴った。

開けるとそこには海斗がいた。

「依頼かな」椿は馬鹿にしたように笑顔で聞く。

「話がある」

海斗は椿を自然緑川公園に連れて行くとそこには加奈と龍人がいた。

龍人は椿を見るなりすぐに聞く。

「お前、俺の父さんの事を聞かせろ」

「またか」

「椿、頼むから龍人に教えてあげて」加奈も頼む。

「まぁそろそろ教えてやるか」

椿は話始める。

「お前は知らないと思うがお前の両親がどのように出会い俺と過ごしてきたか」

龍人の父親の電雄吾は医療の仕事をしておりその仕事先で出会った民子と仲良くなりやがて交際を始めた。

雄吾は無口だが優しい性格で民子の事をいつも大事に思っていた。

また照れ臭い性格のため愛情表現が苦手だった。

しかし民子もそんな雄吾の事を大事に思っていた。

そして2人は2年の交際を後、結婚し半年後、民子は妊娠をする。

それを知った雄吾は喜びどのように育てていこうか毎日考えていた。

しかし雄吾にとってはその悩みが楽しみの一つでもあった。

ある日、雄吾は民子に子供の名前の話をする。

「なぁ民子、もし男の子だったら名前は龍人にしないか?」

「龍人…」

「そうだ。なんかかっこいいし強い子に育ちそうじゃないか」

「じゃあ龍人にしましょう」民子は笑顔で賛成した。

そして雄吾は神社に行きお前梨をする。

――子供が無事大きくなりますように。そして誰からも愛されるような人間になりますように。

そして半年後、民子は病院で龍人を出産した。

2人は人生で最高の喜びを味わう。

――これからどんな幸せが待っているのか。

しかし龍人が2歳の時、突然不幸はやってきた。

龍人が生まれてすぐ日本で史上最大の大地震が起こった。

そのとき不安に駆られて民子はネットで売られていたマキシウムへタンを購入し龍人と共に飲んでしまう。

それを知った雄吾は激怒する。

「こんな物を龍人に飲ませるなんて」雄吾は呆れてしまった。

「仕方ないでしょ! トラウマになっているんだし冷静な判断が出来ないのよ」

「そんな事言えている時点で冷静に判断できるんだよ」

大地震以降2人の関係は悪化し夫婦仲は悪くなっていた。

その3カ月後、まだ巨大地震が起きた。

雄吾は龍人を抱きしめて民子と逃げるがしかし民子が途中で崩れた建物の下敷きになってしまった。

「民子!」

雄吾は瓦礫を持ち上げようとするが持ち上がらない。

民子は苦しそうにしながら雄吾を見る。

「私を置いて逃げて」

「出来るわけないだろ」雄吾は拒否する。

「龍人だけでも助けて。私にとって龍人は本当の命だから」民子は必死に訴える。

雄吾は考え決断した。

「民子……すまない」

雄吾は龍人を抱いて走り出す。

「生きて…」

そして民子のいたところは洪水で湖のようになった。

雄吾はショックのあまり泣き出す。

「すまない民子、お前を救ってあげる事が出来なくて」雄吾は自分を責めた。

それからというもの雄吾は医療の仕事をしながら男で一人で龍人を育てる。

そして龍人が5歳になったある日、雄吾は上司からある話を聞く。

「電、ある研究機関が悪魔病の薬を治療するためのワクチンを開発する事に決定した」

雄吾は分からなかった

「悪魔病って何ですか?」雄吾は不思議そうに聞いてみる。

「君は前に自分の息子が危険な薬品であるマキシウムへタンを飲んだと話した事があっただろ?」

「確かに前に話した事があります」

「実は君の息子が飲んだ薬がかなり危険なものである事が分かった」

「どういう事ですか?」雄吾は思わず身を乗り出す。

「君の息子が飲んだ薬と同じ薬を飲んだ人たちが最近、次々と重い病気になっているんだ。中には死者も出ている」

「そんな…でも息子がマキシウムへタンを飲んだのは3年も前で」

「この薬の一番怖いところは長い年月をかけて徐々に病が姿を現していく事だ」

「それじゃ」

「君の息子はいつ異変が起きてもおかしくない。もしかしたら明日にでも」上司は重い口調で話した。

「そんな」雄吾はショックを受ける。

「でもそんな病気医療の現場では聞いた事がないんですけど」

「それは医療界のトップしか知らない極秘情報だからな。まだ確信を持てないまま医療現場で話すわけにもいかないだろう。それに今はネットとかコミュニティーサイトが普及している。そんな確信もない事が噂として広まったら混乱を招く恐れもある。だからなるべくこの情報は極秘にするよう言われているんだ。そこで君に話があって来た。ぜひ私と共に悪魔病の研究をしてワクチンの開発してほしい」

「そして君の息子を臨床実験に参加させてほしい」

「私の息子を臨床実験に?」

「これも悪魔病患者を救うためだ。勿論命を奪う事はしない」

「……私が研究に参加してもいいのですか?」

「君は常に真面目だし努力家だ。仕事と家庭を両立している君を上の者はみんな尊敬している。そんな君にはまだ悪魔病の事を良く知らないと思う。しかし君ならきっと勉強して研究してくれると信じている。きっと努力してくれると思っているから今回特別に君を研究チームに入れるという話が来たんだ。やってくれるか」

「もちろんです。必ずワクチンを作って龍人を救わないと」

そして翌日、雄吾は家を出る。

しかしいつもは行く前に挨拶をする雄吾だがこの日はそのワクチンの事で頭がいっぱいだったため挨拶を忘れていた。

龍人はそれを不思議に思う。

雄吾は決めていた。

――絶対に龍人には悪魔病である事を黙っていなければ。

雄吾は打ち合わせのため現地n向かっている途中突然、悪魔が現れる。

「お前は誰だ?」雄吾は警戒する。

「お前を悪魔病の治療が進んでいる世界に連れて行ってやる」

「悪魔病の医療が進んだ世界?」雄吾は興味を持つ。

――それなら別世界に行けば早くワクチンを開発することが出来るし、龍人は勿論、他の人達も救えるじゃないか。

雄吾に希望が見えた。

「お願いだ。俺を別世界に連れて行ってくれ」

それを聞いた悪魔は雄吾をパラレルトラベラーとして別世界に行れて行こうとする。

「……その前に一つやりたい事がある」

そして雄吾はある人の元に行く。

それは今の龍人の父親の正樹の所だった。

雄吾のとっては親友であり長い付き合いでありまた正樹も猛という子供がいたが病気で亡くしていた。

居間で雄吾は話した。

「ワクチン開発に集中したいからいきなりで悪いが龍人の面倒を見てくれないか?」

「それは良いがしかし子供を連れていく事は出来ないのか?」正樹は聞く。

「それは……」正樹は言えなかった。

まさか悪魔の力で別世界に行くだなど。

さらにいえば別世界がどんなところが分からないのに龍人をその世界に連れていって危険な目にあわせたら天国にいる民子を悲しませるだけだと考えていた。

「……ワクチン開発をする研究所は田舎なんだ。龍人を連れていけば友達もできないだろうし独りぼっちにさせてしまうと思うんだ。本当はもっと前から言いたかったが当日になっても言えなかった」雄吾は嘘をついた。

雄吾は正樹に家の鍵を渡す。

「龍人君には別れの挨拶をしたのか?」

「してきたさ…」雄吾はまだ嘘をついた。

理由は悪魔に30分以内に用を済ませるよう言われていたため。

「龍人を頼んだ」

雄吾は走って出ていった。

そして龍人は悪魔の所にたどり着く。

「悪魔、別世界に連れていっていってくれ」

そして悪魔は手から黒い光線を出し雄吾は別世界にたどり着く。

そこは研究所だった。

「ここは…」

その時2人の人物が入ってきた。

「誰だ!」

それは当時小学生3年生だった椿とその父親の雅夫と出会った。

雅夫は悪魔病治療の第一人者だった。

「あなたが悪魔病を研究している人ですか」雄吾は興奮する。

「そうだが」雅夫は不審者を見る目で雄吾を見る。

雄吾は事情を話す。

「そうか、自分の子供が悪魔病に」

「龍人を助けたいが私の世界には悪魔病を治すワクチンはありません。そのため悪魔の力でこの世界にやってきました」

非現実な話をするが雄吾は何ふり構っていられなかった。

「幼稚な話ですが全て本当です」

「……なら一緒に研究しよう。君、医師免許持っているようだし」

雅夫の言葉に雄吾は顔を上げる。

「いいのですか?」

「あなたと同じドクターであり子供を持つ父親です。それに悪魔病で子供を亡くして悲しむ親をたくさん見てきた。だからあなたの気持ちも分からなくもない」雅夫

「ありがとうございます」雄吾は感謝する。

そして雄吾は雅夫にワクチンの作り方を教える。

ワクチンは持ち込めないため雄吾は勉強をして元の世界で作る事を考えていた。

椿も小学生ながらその手伝いをしていた。

2人は一緒に研究していく内に仲良くなり雄吾はワクチンの開発の仕方を覚えていった。

また雄吾は日頃の感謝をこめ休みの日は椿と公園で遊んであげたり遊園地に連れて行ってあげたりした。

雄吾にとってはどこから来たか分からない自分を受け入れてくれた雅夫のため出来るだけ椿の面倒も見てあげていた。

そして椿も雄吾の事を父親のように思うようになった。

しかし2年がたったある日雅夫は突然倒れ帰らぬ人になった。

雄吾は悲しんだ。

「あなたのおかけで私はワクチン開発の知識を身につける事が出来ました。ありがとうございました」

そして椿も父親を失い悲しかった。

6年後、雄吾は新型のワクチンの開発に成功したもののしかし椿に親戚はおらず身内は自分だけだったため帰るに帰れない状況だった。

また龍人を置いて出ていった自分がまだ一緒に暮らせるとは思えずさらにいえば龍人が生きているのか疑っていた。

また悪魔はいつまで経っても迎えに来なかったものの雄吾は龍人の安否を心配しながら椿の父親代わりとなっていた。

そして17歳になった椿は医師免許を取得した。

椿は喜ぶが雄吾は不思議な気分だった。

この世界では高校生でも難易度の高い試験に合格すれば医師免許を取得する事が出来る。そして病院が認めれば手術も可能だった。

椿は高校生でありながら高校に通う傍ら依頼があれば病院で手術をしていた。

そして椿は外科医になり難しい手術も成功させていきいつしか凄腕ドクターと呼ばれるまでになった。

その一方で雄吾は悪魔病ワクチンを開発した事に意味があったのか悩んでいた。

雄吾が開発した悪魔病ワクチンは普及し徐々に悪魔病患者達を救っていったがしかし一番救いたかった龍人にまだ渡す事が出来ていないため雄吾は複雑に感じていた。

さらに2年がたったある日、雄吾に末期癌が見つかった。

「頼む、お前の優れた器用さで俺を手術してくれ」雄吾は必死に訴える。

「でもこの手術はとても難しい」椿は迷う。

「たとえ失敗しても俺はお前を恨まない」雄吾は必死に訴える。

「お前にならたとえ殺されても良い。お前の父親のおかけで俺は諦めず希望を掴めたんだ」

「…俺は出来ない…自身がない」椿は断った。

その後、椿は別の手術の依頼を引き受ける。

雄吾の手術よりは難易度は少し低かったものの椿は手術に失敗に失敗してしまう。

その後、椿は医師免許を剥奪され医療の世界から追放された。

椿は屋上で落ち込んでいると雄吾がやってきた。

「すまない、俺が無茶な頼みをしたせいでお前に心の乱れをつくってしまって」雄吾は謝る。

「…俺のせいだ。俺は一人の人間を手にかけてしまった。俺のせいで」椿は自分を責めた。

「そんな事ない。お前は殺したんじゃない。ただ救えなかっただけだ。もし世界中の奴がお前を責めても俺はお前の味方だ。それに元はと言えば俺が原因だ。俺がお前を通してその患者を殺したんだ」

「なせそこまで。血は繋がっていないのに」

「血が繋がっているとかそんなの関係ない。俺からしたらお前は息子のようなものだ。俺の息子と同じぐらい大事なものだ」

雄吾は屋上から出ていく。

しばらくして椿が玄関に行くとそこに悪魔が現れた。

「お前、人間が憎いようだな」悪魔は笑顔で聞く。

「お前は…」

「お前を楽しい世界に連れて行ってやるよ。お前がまた立ち上がれる世界に」

椿は何故が悪魔に希望を抱く。

そして悪魔の力で少し若返り今の世界にやってきた。

「それがお前達の知りたかった真実だ」椿は悲しそうに全て話した。

「じゃ父さんは俺を救うために俺の前からいなくなったってことか」

「そういう事だ」椿の話を聞いて龍人は動揺する。

自分を捨てたと思っていた父親は本当は自分を救うために別世界でワクチンの開発をし同時に椿の父親として一緒に暮らしていた。

「父さんは言っていた。俺には龍人という大事な息子がいる。その息子を救うために一日でも一秒でも早くワクチンを開発したい。そして出来たらいつか龍人と酒を飲んで話をして、そして龍人の結婚式に出たいと」

「父さんが…」龍人は泣きそうになる。

その時、龍人は突然倒れる。

「龍人!」海斗は呼びかける。

「悪魔病の症状が現れ始めたか」椿が言う。

「どうしたらいいの?」加奈は聞く。

「大丈夫だ…ちょっと眠くなっただけだから」龍人は心配かけないように言う。

しかし病状は悪化していた。

「どうした?」

そこに胡桃、楽人、湖南、時が駆け付けた。

「龍人…何があったの?」胡桃は聞く。

「訳は後で話す」

ふと椿はある方法を思いつく。

 

 

この世界にある青年がやってきた。

「久しぶりだな。まだ帰ってくるとは思わなかった」

海斗と加奈、龍人はマンションに行きインターホンを鳴らすと椿がドアを開けた。

「久しぶりだな、どうしたのかな?」椿は笑顔だった。

「お前」龍人は平然を装う。

「……お前に聞きたい事がある」

「部屋に入れ」

そして椿は3人を部屋に入れ話を聞く。

「お前に聞きたい。お前は俺の父親と何か関係があると知ったんだが」

龍人が言うと椿は表情を変える。

「悪魔から聞いたか」椿は悟った。

「椿、何があったか俺からも教えてくれ」海斗は頼む。

「断る。話す必要もない」

「そこを何とか教えてくれ。龍人の父親は龍人を捨てて出ていったんだ。だから父親の事を聞けば龍人を捨てて出ていった理由も分かるかもしれない」海斗は頼み込む。

「教える気はない」椿は態度を変えなかった。

「でも」

海斗は更に頼もうとするが加奈が止める。

「…たぶん今日は無理だと思う」

仕方なく海斗達はマンションから出ていく。

「椿は何で龍人のお父さんの事を教えてくれないのかしら」

「何が言えない理由でもあるのか」

「言えない理由って何?」龍人は聞く。

「それは分からない」

龍人は父親との日々を振り返る。

「俺が知りたいのはなぜ俺を捨てたかだ。それを知る事が出来ればもう用はない」龍人に憎しみがこみ上げた。

一方、椿も暗い表情をしていた。

同時にある依頼の準備をしていた。

「父親の事はまだ明日椿の所に行こう」海斗は言う。

「別に俺は父親の事なんてどうでもよい。俺を捨てた親なんだから」

龍人は父親を憎んでいた。

翌日、海斗達は椿に呼ばれて部屋に入る。

胡桃、楽人、湖南、時も一緒だった。

海斗は椿が龍人の父親の話をする気になったと思い期待した。

「お前達を呼んだのは復讐の件についてだ」椿の話に海斗達は警戒する。

すると椿はホワイトボートに指さす。

そこには奈美の名前が書かれていた・

「今回のターゲットは海野奈美。彼女への復讐が今回の依頼だ」

海斗達は驚愕した。

「ふさげるな! 彼女は俺に勇気をくれた人だ。そんな事出来るわけないだろ。それに彼女には大切な恋人がいる。その人を悲しませたくない」海斗は奈美からもらったキーホルダーを握りしめ怒る。

「でもなんで私達を誘うの?」加奈は聞く。

「悪魔が言っていた。水崎海斗は海野奈美と会った事があると」

「知っているならついでに俺の復讐屋の素晴らしさを知ってもらいたいと思い誘ったわけだ」

「やっぱりお前最低だな。時を助けてくれたとき、少しはお前を見直したがでも俺は馬鹿だったし甘すぎた」楽人が椿を見直した事に後悔した。

「それとこれとは別だ」

「椿…もうやめよう」湖南が説得する。

「これは俺の正義であり医療だ。俺は自分の正義を貫くだけだ」

湖南は悲しく感じた。

海斗達は部屋を出ていき自然緑川公園に集まる。

「一体どうすればいいんだ」海斗は頭を抱える。

「分からないけどでも椿は変わらないかもしれない」胡桃は言う。

「でも椿の復讐も他の誰かにとっては正義じゃないのか?」

時の言葉に全員が注目する。

「あいつを一方的に悪党扱いするのも悪い気がして」

「でもそれでもやり方が正しいとは思えない」楽人は否定する。

湖南は思い悩む。

「椿は人を救いたいだけだけどやり方を間違えているだけだと思う」

全員が椿の説得を諦めかけた。

「お前か、海崎海斗というパラレルトラベラーは」

7人が振り向くとそこに氷崎大我がいた。

また大我は泉蓮の仲間の最後の1人であった。

「あなたは…」海斗は驚いた。

「俺もお前と同じパラレルトラベラーだ。一度元の世界に帰還したが奈美への復讐を知って奈美を守るために再びこの世界にやってきた」

「奈美は誰かに復讐をされるような悪い事はしない。それに奈美の事を大事に思っている恋人や仲間がいる。その人達を悲しませないために俺は奈美を守る」

大我の言葉に海斗は心強く感じた。

海斗は大我に椿の状況を話す。

「話は分かった。俺に考えがある」

「考えって何ですか?」。

その頃椿は計画を実行しようとしていた。

それは奈美の出身校である優ヶ丘高校に犯罪者であるという紙を大量に張り付けるという方法だった。

しかし椿の中には何が迷いがあった。

海斗は大我に伝えた。

「椿は確かに復讐屋をやっていてそれを正義であり医療であると言っている。だが根は悪い奴ではないしそれに椿のおかけで危うく死にかけた命を救ってくれた事もあった。だから俺はあいつを悪だと思いたくない」

「そう思うのならそれを信じれば良いだけだ」

そしてその日の夜、椿は優ヶ丘に侵入しそして紙を貼っていく。

さらにスプレーで中傷を書こうとした。

「もうやめよう」

振り返ると海斗達と大我がいた。

「今のは動画で撮影させてもらった。これを警察に届ければお前も捕まるだろう」大我は言う。

「よく分かったな。でもまさかパラレルトラベラーに止められるとはな」椿は驚いていなかった。

「この学校は俺にとっては故郷だ。お前のような騙された奴に汚されてたまるか」大我は言う。

「騙された? どういう事だ」

「天使がお前の事を見ていた。そしてお前がある依頼者と契約を交わしたと聞いている。だがその依頼者は天使によればかつて蓮や奈美がある仲間の恋人を守るために戦った相手だ。お前はただ逆恨みをしているやつと契約をしただけだ」

「あり得ないな。俺がそんなミスをするわけがない」

「天使は万能の力を持っている。それを考えれば不思議じゃない」

大我の言葉に椿も疑問を抱き始めた。

「……そんなはずがない、俺が間違えるだなんて…お前ら…嘘を言っているのか?」

「嘘などつくわけない。もし嘘だと思うのならやれ。だが本当だったらお前はまだ人を傷付ける事になる」

大我に言われ椿は信じ始めた。

そしてかつて医療ミスを犯し患者を死なせてしまった事を思い出しまた人の人生を奪う寸前だった事を考えると心がおかしくなりそうだった。。

「もうやめよう。人を救う方法はまだ他にあるはずだ。それにお前を思っている人だっているじゃないか」海斗は椿を説得する。

椿は湖南の事が頭をよぎる。

自分が復讐屋だと知ってもそれでも自分を思ってくれたのが湖南だった。

椿にとっては湖南は大切な人でありずっと一緒にいたいと思った人でもあった。

それなのに人を傷付けたら湖南は悲しむだけではないかと考えた。

「…やめておこう…」

椿はその場を去っていく。

「悲しいものだな」大我は呟く。

「あいつは一人ぼっちだと思う。やり方は悪いがずっと一人で人を救うために動いていた。

大我が歩き出す。

「どこへ行くんですか?」

「俺はしばらくこの世界で過ごす。もう戻る事はないかもしれないから思う存分この世界で過ごす事にする」大我はそう言い去っていった。

 

 

 

 

 

 

この時期10月、海斗たち達にとって高校生活最後の文化祭が近づいていた。

胡桃と時以外の海斗たちは手芸部からも展示する事に決めていた。海斗と加奈、龍人と楽人、湖南は手芸部の教室にいた。

製作作品は88星座の刺繍を繋げた巨大カーテンだった。「ところで何を作る?」加奈は聞く。

「そうだな…マフラーにしようかな」海斗は答えた。

「マフラーか…なら俺は手袋にでもするか、もうすぐ冬だし」龍人は言う。

「じゃみんな頑張って作ろうね」

湖南は帰ろうとした。

「え? 帰るのか?」楽人は聞く。

「今日は用があってね。でももうすぐ制作も終わるから」

そして湖南は帰っていった。

「湖南、やっぱりしっかりしてるね。もうすぐ終わりだなんて」加奈は関心した。

そして良い作品を作るため海斗は部員ではない胡桃と時にも頼んみ文化祭が終わるまでの間、手芸部で海斗たちに協力する事にしていた。「本当だな。俺達なんて今から作るというのに」

夕方一方、胡桃が帰ろうとしたとき玄関のところに時がいた。

胡桃は時の側に近づく

「何しているの?」

「いや~今からどこに行こうか考えているんだ」

「サボってないで家で作品制作しなさいよ」「幸せだね。ところで受験勉強は?」

「指定校推薦で合格したからもう終わりだよ」

「いいじゃないか。明日は土曜日なんだから」わね。受験が早く終わって」

胡桃と時は笑顔で会話をする話す。

「そういえばもうすぐ文化祭だな」

「気が早いよ。まだ3週間あるよ」

「そういえば受験勉強しているのか?」

「勿論やっているよ。でも今のままじゃ志望大学に行けそうにないけど」

「じゃあ俺は行くぜ」

時は帰ろうとした。

「……待って」胡桃は声をかける。

「どうした?」時は振り返る。

「…やっぱり何でもない」胡桃は寂しく感じた。

「そうか、じゃあな」時は行く。

胡桃は今の状況が虚しく感じた。

そして胡桃が一人帰っていると洋服屋でマフラーを見つける。

「もうすぐ冬か」

ふと胡桃は思いつく。

――時にマフラーをプレゼントしよう。

翌日、胡桃は手芸部の教室に行くと湖南が作業をしていた。

「湖南、一つお願いがあるんだけど」

「何かな?」

「マフラーの作り方を教えてほしいんだけど」

「誰かにあげるの?」湖南は少し微笑む。

「……まぁね」

湖南は察した。

「誰にあげるか知らないけど教えてあげるわ」

そして湖南は胡桃にマフラーの作り方を教える。

「……複雑だね」

「慣れれば出来るわよ」

胡桃は不器用ながらもとりあえず作ってみた。

そして家でも受験勉強の傍らマフラーを編んでいく。

何度も間違え何度も出来るか不安になるがそれでも頑張って作業していく。

湖南も出来る限り胡桃の面倒をみてあげる事とした。

そして文化祭一週間前、海斗と加奈、龍人は帰ろうとした。

「そういえば作品は出来たの?」加奈は聞く。

「俺はもうすぐ終わる」海斗は言う。

「俺はまだかかりそうだ」龍人は呑気だった。

「じゃやらないと」

「でもどうせすぐ終わるだろ」

すると3人は足を止めた。

目の前には天都がいた。

「兄貴…」

「しかしあの復讐屋、今兵庫県にいるのか?」天都は笑顔で言った。

「なぜ分かる?」

「前にお前のパラレルトラベラーを見抜く能力の分を俺がもらったと言っただろ。俺はその能力が倍になった分、日本のどこにパラレルトラベラーがいるかを見抜く事出来るようになったからな」

海斗は天都の側による。

「兄貴、こんな事してもただ悲しみが生まれるだけじゃないか。悲劇をなくすために悲しみを作っていいわけがない」

しかし天都は態度を変えなかった。

「何で兄貴はここまで冷酷になってしまったんだよ」海斗は悲しかった。

「光島での出来事を思い出すと俺は毎回思う事がある。人間は悪魔だと。理由があるとはいえ罪のない家族を奴らは傷付けているのに自分達の行き過ぎた正義を悪だと気付いていない」天都は涼しげな表情で主張する。

「あなたも変わらないでしょう」加奈が言う。

「言ってくれるね」天都は思わず加奈を見る。

「その人達はそれを正義だと信じてやっているならあなただって人を傷付ける事を正義だと思ってやっているじゃない」加奈は天都を見つめる。

天都は刀を向ける。

龍人は加奈の前に立つ。

「…冗談さ」

そして天都は消えた。

「中々面白いな」

振り返ると悪魔が現れた。

「お前…」海斗は前と同じように警戒する。

「電龍人、お前に一つ良いものを見せてやる」

悪魔は手から光線を出すと立体映像が現れた。

海斗達はそれを見て驚愕した。

そこに映っていたのは龍人の父親の眠る姿だった。

「これは…」

さらにモニターに映ったのは椿だった。

「椿!」加奈は驚く。

「一体これは…」海斗は混乱した。

そして考えた。

父親と椿には何が関係があると。

数日後、胡桃はマフラーを完成させた。

――後は時に渡すだけだ。

放課後、胡桃が帰ろうとした時、そこに時がやって来た。

「時」胡桃は声をかけた。

「胡桃」

「時、渡したいものがあるんだけど」

胡桃はバックを探すがマフラーがなかった。

――しまった…忘れた

――何でいつも忘れ物しないのにこんなときに忘れちゃったの。

胡桃はショックを受ける。

「どうした?」

「家に忘れちゃった。明日持ってくる」

「そうか…胡桃、一緒に帰ろう」時は誘う

「え?」胡桃は一瞬ドキッとなる。

「いいよ」胡桃は笑顔になる。

そして2人は一緒に帰る。

胡桃は緊張していた。

「もうすぐ文化祭だな」時が言う。

「そうだね…龍人ギリギリまでやってる」

「夏休みの宿題みたいだな」

すると2人の前に天都が現れる。

「あなた…」胡桃は怒りがこみ上げる。

「安心しろ。お前を斬ったりはしない」

天都はそう言うものの胡桃は警戒する。

「でもお前達2人は入学して当初、悪事を働いていたようだな」

「確かに俺は力に溺れて人を傷付けた。でも今は違う。俺は自分の過ちに気付いて罪滅ぼしをしている」

「そのようには見えないな。前回はお前は卓三を庇って斬られたが生還した。しかし今回はお前の悪のために切る。2人まとめてな」

天都は刀を握る。

「俺は傷付いても良い。でも胡桃だけは傷付けるな」時の言葉に胡桃は胸がときめく。

天都が刀を持って向かって来た。

時は胡桃を抱きしめ天都に背を向ける

胡桃は固まってしまう。

『その人たちはそれを正義だと信じてやっているならあなただって人を傷付ける事を正義だと思ってやっているじゃない』

『あんたはいいじゃないか。まだ家族がいて。俺なんて家族はいないんだから』

加奈と龍人の言葉を思い出し天都は腕を止める。

時は振り返る。

そして刀を下に下ろし天都は無言で去っていった。

「良かった…」時は安心する。

そして体を離そうとしたときどさくさに紛れて胡桃は時にキスをした。

時は驚く。

そして2人は顔を離す。

「……私、時の事……」

「……いいぜ」時は返答した。

胡桃は思わず顔を上げる。

「いいの?」

「勿論だ。胡桃の笑顔好きだし」

「ありがとう」胡桃は嬉しく感じた。

「でもちゃんと言わせてよ」

「察してしまってつい」

しかし2人は笑顔になった。

文化祭当日、多くの人が海斗達の作品を見ていた。

そして海斗達も遠くからその作品を見ていた。

「良い作品に仕上がったな」楽人が褒める。

「ありがとう」加奈は言う。

「しかしギリ間に合ったぜ」龍人は昨日の夜中に完成させていた。

「芸術性にこだわりすぎてしまってな」

「たださぼってただけだろ」海斗は突っ込む。

胡桃と時は隣に並んでいた。

「…みんな…俺…胡桃と付き合う事とした」

その話に海斗達は注目する。

「2人か付き合うのか…なんか面白いな」海斗は笑う。

「馬鹿にしてるの?」

「いや…なんか問題児同時が付き合うって聞いて」

しかし加奈は胡桃が時と結ばれて嬉しく感じた。