天都は考えていた。
なぜあのとき胡桃と時を切る事が出来なかったのか、そしてなぜ加奈と龍人の言葉に心が揺らいだのか。
翌日、海斗達は医療の授業を受けていた。
しかし龍人は父親の件が気になって頭に入れなかった。
一方、椿は部屋の隅で寝ていた。
するとインターホンが鳴った。
開けるとそこには海斗がいた。
「依頼かな」椿は馬鹿にしたように笑顔で聞く。
「話がある」
海斗は椿を自然緑川公園に連れて行くとそこには加奈と龍人がいた。
龍人は椿を見るなりすぐに聞く。
「お前、俺の父さんの事を聞かせろ」
「またか」
「椿、頼むから龍人に教えてあげて」加奈も頼む。
「まぁそろそろ教えてやるか」
椿は話始める。
「お前は知らないと思うがお前の両親がどのように出会い俺と過ごしてきたか」
龍人の父親の電雄吾は医療の仕事をしておりその仕事先で出会った民子と仲良くなりやがて交際を始めた。
雄吾は無口だが優しい性格で民子の事をいつも大事に思っていた。
また照れ臭い性格のため愛情表現が苦手だった。
しかし民子もそんな雄吾の事を大事に思っていた。
そして2人は2年の交際を後、結婚し半年後、民子は妊娠をする。
それを知った雄吾は喜びどのように育てていこうか毎日考えていた。
しかし雄吾にとってはその悩みが楽しみの一つでもあった。
ある日、雄吾は民子に子供の名前の話をする。
「なぁ民子、もし男の子だったら名前は龍人にしないか?」
「龍人…」
「そうだ。なんかかっこいいし強い子に育ちそうじゃないか」
「じゃあ龍人にしましょう」民子は笑顔で賛成した。
そして雄吾は神社に行きお前梨をする。
――子供が無事大きくなりますように。そして誰からも愛されるような人間になりますように。
そして半年後、民子は病院で龍人を出産した。
2人は人生で最高の喜びを味わう。
――これからどんな幸せが待っているのか。
しかし龍人が2歳の時、突然不幸はやってきた。
龍人が生まれてすぐ日本で史上最大の大地震が起こった。
そのとき不安に駆られて民子はネットで売られていたマキシウムへタンを購入し龍人と共に飲んでしまう。
それを知った雄吾は激怒する。
「こんな物を龍人に飲ませるなんて」雄吾は呆れてしまった。
「仕方ないでしょ! トラウマになっているんだし冷静な判断が出来ないのよ」
「そんな事言えている時点で冷静に判断できるんだよ」
大地震以降2人の関係は悪化し夫婦仲は悪くなっていた。
その3カ月後、まだ巨大地震が起きた。
雄吾は龍人を抱きしめて民子と逃げるがしかし民子が途中で崩れた建物の下敷きになってしまった。
「民子!」
雄吾は瓦礫を持ち上げようとするが持ち上がらない。
民子は苦しそうにしながら雄吾を見る。
「私を置いて逃げて」
「出来るわけないだろ」雄吾は拒否する。
「龍人だけでも助けて。私にとって龍人は本当の命だから」民子は必死に訴える。
雄吾は考え決断した。
「民子……すまない」
雄吾は龍人を抱いて走り出す。
「生きて…」
そして民子のいたところは洪水で湖のようになった。
雄吾はショックのあまり泣き出す。
「すまない民子、お前を救ってあげる事が出来なくて」雄吾は自分を責めた。
それからというもの雄吾は医療の仕事をしながら男で一人で龍人を育てる。
そして龍人が5歳になったある日、雄吾は上司からある話を聞く。
「電、ある研究機関が悪魔病の薬を治療するためのワクチンを開発する事に決定した」
雄吾は分からなかった
「悪魔病って何ですか?」雄吾は不思議そうに聞いてみる。
「君は前に自分の息子が危険な薬品であるマキシウムへタンを飲んだと話した事があっただろ?」
「確かに前に話した事があります」
「実は君の息子が飲んだ薬がかなり危険なものである事が分かった」
「どういう事ですか?」雄吾は思わず身を乗り出す。
「君の息子が飲んだ薬と同じ薬を飲んだ人たちが最近、次々と重い病気になっているんだ。中には死者も出ている」
「そんな…でも息子がマキシウムへタンを飲んだのは3年も前で」
「この薬の一番怖いところは長い年月をかけて徐々に病が姿を現していく事だ」
「それじゃ」
「君の息子はいつ異変が起きてもおかしくない。もしかしたら明日にでも」上司は重い口調で話した。
「そんな」雄吾はショックを受ける。
「でもそんな病気医療の現場では聞いた事がないんですけど」
「それは医療界のトップしか知らない極秘情報だからな。まだ確信を持てないまま医療現場で話すわけにもいかないだろう。それに今はネットとかコミュニティーサイトが普及している。そんな確信もない事が噂として広まったら混乱を招く恐れもある。だからなるべくこの情報は極秘にするよう言われているんだ。そこで君に話があって来た。ぜひ私と共に悪魔病の研究をしてワクチンの開発してほしい」
「そして君の息子を臨床実験に参加させてほしい」
「私の息子を臨床実験に?」
「これも悪魔病患者を救うためだ。勿論命を奪う事はしない」
「……私が研究に参加してもいいのですか?」
「君は常に真面目だし努力家だ。仕事と家庭を両立している君を上の者はみんな尊敬している。そんな君にはまだ悪魔病の事を良く知らないと思う。しかし君ならきっと勉強して研究してくれると信じている。きっと努力してくれると思っているから今回特別に君を研究チームに入れるという話が来たんだ。やってくれるか」
「もちろんです。必ずワクチンを作って龍人を救わないと」
そして翌日、雄吾は家を出る。
しかしいつもは行く前に挨拶をする雄吾だがこの日はそのワクチンの事で頭がいっぱいだったため挨拶を忘れていた。
龍人はそれを不思議に思う。
雄吾は決めていた。
――絶対に龍人には悪魔病である事を黙っていなければ。
雄吾は打ち合わせのため現地n向かっている途中突然、悪魔が現れる。
「お前は誰だ?」雄吾は警戒する。
「お前を悪魔病の治療が進んでいる世界に連れて行ってやる」
「悪魔病の医療が進んだ世界?」雄吾は興味を持つ。
――それなら別世界に行けば早くワクチンを開発することが出来るし、龍人は勿論、他の人達も救えるじゃないか。
雄吾に希望が見えた。
「お願いだ。俺を別世界に連れて行ってくれ」
それを聞いた悪魔は雄吾をパラレルトラベラーとして別世界に行れて行こうとする。
「……その前に一つやりたい事がある」
そして雄吾はある人の元に行く。
それは今の龍人の父親の正樹の所だった。
雄吾のとっては親友であり長い付き合いでありまた正樹も猛という子供がいたが病気で亡くしていた。
居間で雄吾は話した。
「ワクチン開発に集中したいからいきなりで悪いが龍人の面倒を見てくれないか?」
「それは良いがしかし子供を連れていく事は出来ないのか?」正樹は聞く。
「それは……」正樹は言えなかった。
まさか悪魔の力で別世界に行くだなど。
さらにいえば別世界がどんなところが分からないのに龍人をその世界に連れていって危険な目にあわせたら天国にいる民子を悲しませるだけだと考えていた。
「……ワクチン開発をする研究所は田舎なんだ。龍人を連れていけば友達もできないだろうし独りぼっちにさせてしまうと思うんだ。本当はもっと前から言いたかったが当日になっても言えなかった」雄吾は嘘をついた。
雄吾は正樹に家の鍵を渡す。
「龍人君には別れの挨拶をしたのか?」
「してきたさ…」雄吾はまだ嘘をついた。
理由は悪魔に30分以内に用を済ませるよう言われていたため。
「龍人を頼んだ」
雄吾は走って出ていった。
そして龍人は悪魔の所にたどり着く。
「悪魔、別世界に連れていっていってくれ」
そして悪魔は手から黒い光線を出し雄吾は別世界にたどり着く。
そこは研究所だった。
「ここは…」
その時2人の人物が入ってきた。
「誰だ!」
それは当時小学生3年生だった椿とその父親の雅夫と出会った。
雅夫は悪魔病治療の第一人者だった。
「あなたが悪魔病を研究している人ですか」雄吾は興奮する。
「そうだが」雅夫は不審者を見る目で雄吾を見る。
雄吾は事情を話す。
「そうか、自分の子供が悪魔病に」
「龍人を助けたいが私の世界には悪魔病を治すワクチンはありません。そのため悪魔の力でこの世界にやってきました」
非現実な話をするが雄吾は何ふり構っていられなかった。
「幼稚な話ですが全て本当です」
「……なら一緒に研究しよう。君、医師免許持っているようだし」
雅夫の言葉に雄吾は顔を上げる。
「いいのですか?」
「あなたと同じドクターであり子供を持つ父親です。それに悪魔病で子供を亡くして悲しむ親をたくさん見てきた。だからあなたの気持ちも分からなくもない」雅夫
「ありがとうございます」雄吾は感謝する。
そして雄吾は雅夫にワクチンの作り方を教える。
ワクチンは持ち込めないため雄吾は勉強をして元の世界で作る事を考えていた。
椿も小学生ながらその手伝いをしていた。
2人は一緒に研究していく内に仲良くなり雄吾はワクチンの開発の仕方を覚えていった。
また雄吾は日頃の感謝をこめ休みの日は椿と公園で遊んであげたり遊園地に連れて行ってあげたりした。
雄吾にとってはどこから来たか分からない自分を受け入れてくれた雅夫のため出来るだけ椿の面倒も見てあげていた。
そして椿も雄吾の事を父親のように思うようになった。
しかし2年がたったある日雅夫は突然倒れ帰らぬ人になった。
雄吾は悲しんだ。
「あなたのおかけで私はワクチン開発の知識を身につける事が出来ました。ありがとうございました」
そして椿も父親を失い悲しかった。
6年後、雄吾は新型のワクチンの開発に成功したもののしかし椿に親戚はおらず身内は自分だけだったため帰るに帰れない状況だった。
また龍人を置いて出ていった自分がまだ一緒に暮らせるとは思えずさらにいえば龍人が生きているのか疑っていた。
また悪魔はいつまで経っても迎えに来なかったものの雄吾は龍人の安否を心配しながら椿の父親代わりとなっていた。
そして17歳になった椿は医師免許を取得した。
椿は喜ぶが雄吾は不思議な気分だった。
この世界では高校生でも難易度の高い試験に合格すれば医師免許を取得する事が出来る。そして病院が認めれば手術も可能だった。
椿は高校生でありながら高校に通う傍ら依頼があれば病院で手術をしていた。
そして椿は外科医になり難しい手術も成功させていきいつしか凄腕ドクターと呼ばれるまでになった。
その一方で雄吾は悪魔病ワクチンを開発した事に意味があったのか悩んでいた。
雄吾が開発した悪魔病ワクチンは普及し徐々に悪魔病患者達を救っていったがしかし一番救いたかった龍人にまだ渡す事が出来ていないため雄吾は複雑に感じていた。
さらに2年がたったある日、雄吾に末期癌が見つかった。
「頼む、お前の優れた器用さで俺を手術してくれ」雄吾は必死に訴える。
「でもこの手術はとても難しい」椿は迷う。
「たとえ失敗しても俺はお前を恨まない」雄吾は必死に訴える。
「お前にならたとえ殺されても良い。お前の父親のおかけで俺は諦めず希望を掴めたんだ」
「…俺は出来ない…自身がない」椿は断った。
その後、椿は別の手術の依頼を引き受ける。
雄吾の手術よりは難易度は少し低かったものの椿は手術に失敗に失敗してしまう。
その後、椿は医師免許を剥奪され医療の世界から追放された。
椿は屋上で落ち込んでいると雄吾がやってきた。
「すまない、俺が無茶な頼みをしたせいでお前に心の乱れをつくってしまって」雄吾は謝る。
「…俺のせいだ。俺は一人の人間を手にかけてしまった。俺のせいで」椿は自分を責めた。
「そんな事ない。お前は殺したんじゃない。ただ救えなかっただけだ。もし世界中の奴がお前を責めても俺はお前の味方だ。それに元はと言えば俺が原因だ。俺がお前を通してその患者を殺したんだ」
「なせそこまで。血は繋がっていないのに」
「血が繋がっているとかそんなの関係ない。俺からしたらお前は息子のようなものだ。俺の息子と同じぐらい大事なものだ」
雄吾は屋上から出ていく。
しばらくして椿が玄関に行くとそこに悪魔が現れた。
「お前、人間が憎いようだな」悪魔は笑顔で聞く。
「お前は…」
「お前を楽しい世界に連れて行ってやるよ。お前がまた立ち上がれる世界に」
椿は何故が悪魔に希望を抱く。
そして悪魔の力で少し若返り今の世界にやってきた。
「それがお前達の知りたかった真実だ」椿は悲しそうに全て話した。
「じゃ父さんは俺を救うために俺の前からいなくなったってことか」
「そういう事だ」椿の話を聞いて龍人は動揺する。
自分を捨てたと思っていた父親は本当は自分を救うために別世界でワクチンの開発をし同時に椿の父親として一緒に暮らしていた。
「父さんは言っていた。俺には龍人という大事な息子がいる。その息子を救うために一日でも一秒でも早くワクチンを開発したい。そして出来たらいつか龍人と酒を飲んで話をして、そして龍人の結婚式に出たいと」
「父さんが…」龍人は泣きそうになる。
その時、龍人は突然倒れる。
「龍人!」海斗は呼びかける。
「悪魔病の症状が現れ始めたか」椿が言う。
「どうしたらいいの?」加奈は聞く。
「大丈夫だ…ちょっと眠くなっただけだから」龍人は心配かけないように言う。
しかし病状は悪化していた。
「どうした?」
そこに胡桃、楽人、湖南、時が駆け付けた。
「龍人…何があったの?」胡桃は聞く。
「訳は後で話す」
ふと椿はある方法を思いつく。
