JR西日本は17日、福知山線を走る特急「こうのとり」の下り2本、上り4本を、7月1日(月)~9月30日(月)の間臨時停車させることを発表しました。今回はこれについて考察します。

https://www.westjr.co.jp/press/article/items/240517_00_press_tanigawaeki_kounotori.pdf

 

※記事中の画像は、JR西日本プレスリリースから引用しています。

 

<チャプター>

1.福知山線と特急「こうのとり」について

2.加古川線について

3.谷川駅への特急「こうのとり」臨時停車について

4.これのどこが加古川線の利用促進なのか

5.JR西日本の本当の狙い

 

1.福知山線と特急「こうのとり」について

 JR福知山線は、尼崎駅(兵庫県尼崎市)~福知山駅(京都府福知山市)を結ぶ路線で、特急「こうのとり」はこのJR福知山線を経由し、新大阪・大阪~福知山・豊岡・城崎温泉間を結んでいます。大阪にほど近い尼崎~新三田間は本数も多く、大阪への通勤通学路線として機能しているほか、大阪と北近畿を結ぶ路線としての役割も担っています。

 

2.加古川線について

 加古川線は、加古川駅~西脇市駅~谷川駅を結ぶ、全線単線のローカル線です。兵庫県の中部を南北に通っています。南側の加古川駅~西脇市駅間は毎時1本以上確保されているものの、北側の西脇市駅~谷川駅間は1日9往復(土休日は8往復)と、非常に本数が少ないのが特徴です。西脇市~谷川間の令和4年度の輸送密度は321で、このままでは存続が危ぶまれる状況です。

 

3.谷川駅への特急「こうのとり」臨時停車について

 谷川駅は、加古川線の終着駅であり、福知山線と加古川線の乗換駅です。朝夕は特急「こうのとり」が停車するのですが、日中は谷川駅を通過します。

 しかし、福知山線は篠山口~谷川~福知山間は単線になっており、一部の特急「こうのとり」は行き違い待ちのために谷川駅で運転停車します。運転停車なので谷川駅に”停車”するのですが、通過扱いのためドアは開かず、乗客の乗り降りはできません。

 そこで今回、谷川駅で運転停車を行っている特急「こうのとり」を期間限定で停車扱いとし、ドアを開けて乗客が乗り降りできるようにしようというわけです。併せて、加古川線と福知山線の特急「こうのとり」を乗り継き機会を増やすことで、加古川線の西脇市~谷川間の利用増加についても検証がなされます。

 

4.これのどこが加古川線の利用促進なのか

 それでは実際に、加古川線と福知山線の乗り継ぎ時刻表をみてみましょう。(時刻表は当局作成)

 

 黄色で塗られた部分が、今回の実証実験で臨時停車する特急列車を示しています。ご覧の通り、加古川線~福知山線の乗り継ぎが良くなる箇所は2か所のみで、福知山線→加古川線への乗り継ぎに至っては全く変わりません。

 本当に加古川線の利用促進を図るのであれば、臨時停車する特急に接続する加古川線の普通列車を増発する、加古川線のダイヤに合わせて特急を停車させる、乗り継ぎ改善される事例を示してアピールするなどの方策が必要と思われますが、そうした策は打たれていないのが現状です。

 正直に言って、今回の谷川駅への特急の臨時停車は、加古川線の利用促進策に全くなっていないといえます。にも拘わらず、加古川線の利用促進という点を前面に打ち出しているため、最悪のケースでは、今後JR西日本が今回の実証実験の結果をたてに西脇市~谷川間の廃止をちらつかせる可能性すらあり、今後の展開が危惧されます。

 

5.JR西日本の本当の狙い

 それでは、特急「こうのとり」の谷川駅の臨時停車の本当の狙いは何なのでしょうか。今回臨時停車することとなった特急「こうのとり」は、いずれも行き違い待ちのために谷川駅で運転停車する列車であるという共通点があります。

 どうせ停車するのであれば、通過扱いにしていないで乗客の乗り降りができるようにして、谷川駅から特急を利用できる機会を増やそうという意図があると思われます。即ちこの施策は、加古川線の利用促進ではなく、特急「こうのとり」の利用促進のための施策というわけです。

 JR西日本では、これも期間限定で、列車時刻発車後にネットで特急券を購入できるチケットレスサービスを、特急「こうのとり」で行うことを発表しています。

 

 

 2つの施策を相次いで実施するあたりに、特急「こうのとり」利用を何とかして増やしたいというJR西日本の意志を感じます。客単価を上げるには、特急などの有料列車の利用者を増やすことが重要となるため、JR西日本としても必死なのでしょう。

 今回の谷川駅臨時停車で、特急利用者がどのように変化するか、そして加古川線の今後に注目です。