JR西日本は9日、列車出発後でもネット予約で特急券を購入できる新たなチケットレスサービスを、列車・期間限定で実施することを発表しました。今回はこれについてみていきます。

https://www.westjr.co.jp/press/article/items/7bd6b38fb2753d0cd78ed4556988538c.pdf

 

<チャプター>

1.新たなチケットレスサービスの概要

2.新サービス導入の意図とは何か?

3.ネット予約する上でのハードルと、その解決策としての新サービス

4.今後のゆくえ

 

1.新たなチケットレスサービスの概要

(1)期間 2024年5月15日(水)~9月30日(月) ※お盆期間の8月10日(土)~19日(月)は除く

(2)内容 列車発車後でも指定席特急券を購入できるようになります。(購入後の変更・払い戻しは不可)

(3)対象列車 特急「こうのとり」全列車・全区間(新大阪~城崎温泉)

(4)対象商品 会員制予約サイト「e5489」で購入できるチケットレス特急券 

 

2.新サービス導入の意図とは何か?

 通常、紙のきっぷであっても会員制予約サイトで購入した場合であっても、指定席特急券を購入できるのは(列車が遅れていても)乗車列車の発車時刻前までです。しかし、この新しいチケットレスサービスでは、列車発車時刻後であっても指定席特急券を購入できるので、とても画期的な施策です。

 JR西日本に限らず、JR各社はきっぷのネット販売を促進し、有人窓口を削減し、車掌業務を省力化することで、コストと労力を削減しようとしています。これを進めていくのに欠かせないのがネット予約の促進なのですが、いろいろな課題があり思うように促進が進んでいない部分もあります。今回の新サービスでは、その課題のいくつかを解消し、よりネット予約での利用を拡大したいという意図があります。

 

3.ネット予約する上でのハードルと、その解決策としての新サービス

 ここでは、特急券をネットで購入するときにハードルとなる具体的事例を考え、新サービスがそのハードルをどうして解消することになるのかを考えていきたいと思います。

 

<事例1>事前に乗る列車が決まっていない

 ネット予約では、無条件に正規料金より割引される、早期割引商品の設定があるなど、券売機で紙のきっぷを購入するよりおトクになる仕組みになっています。ただ、乗車当日の状況により、乗る列車を事前に決められない場合はどうでしょうか。

 会員制予約サイトでは、指定券の変更は無手数料で可能となっているので、とりあえず適当に指定席を押さえて、乗車当日の予定次第で変更をかけるということもできます。しかし、予約サイトにログインして変更をかけるというのは手間と時間がかかるので、「とりあえず当日の状況次第で駅に行って、一番すぐに発車する列車に乗りたい」という場合は、乗車直前に券売機でさっと購入するほうが手間が少ないと感じる人もいらっしゃるでしょう。

 

<事例2>乗りたいと思っている特急列車が発車寸前である

 乗車駅に行ってみたら、たまたま2分後に特急が発車する状況はどうでしょうか。紙のきっぷであれば、とりあえず特急列車に飛び乗って車内で特急券を購入することができますが、ネット予約では発車時刻後はもちろんのこと、発車時刻寸前でも特急券を買うことができないため、「飛び乗りができない」という欠点があります。

 

<事例3>隣に見知らぬ人がいる状況を回避したい

 これはネット予約うんぬんというよりは、指定席より自由席を好む人の考えになりますが、指定席より自由席を好む理由の一つとして「乗車後に席を自由に変えられる」ということが挙げられます。

 当然のことながら、指定席は決められた席に座らなければいけません。しかし、隣や前後、周囲にいる人が嫌だと感じたときに、自由席であれば他の号車や座席に移ることができますが、指定席だと座席の変更はできません。

 ネット予約では、シートマップで空席状況を見ながら予約できるようになっていますが、いざ乗車してみたら自分が座る席の隣に誰か来てしまった、他の席に空席があるから移りたいのに移れないということもあるでしょう。

 

 新しいチケットレスサービスであれば、とりあえず特急に乗り込んでからゆっくり落ち着いて特急券を購入するということができるので、事例1・2のようなケースで効力を発揮します。また、シートマップと実際の車内の様子の双方を見ながら列車内で特急券を購入することができるので、事例3のケースでもこのサービスは使えるといえるのではないでしょうか。

 

4.今後のゆくえ

 特急列車の発車時刻後に指定席特急券を購入できるという新サービスはとても画期的で、ネット予約のハードルが低くなり、使いやすいものになりそうです。

 今回の新しいチケットレスサービスは、福知山線の特急「こうのとり」限定で、時期も9月までとなっています。今回はいわば”観測気球”であり、この間の購入状況を踏まえて、今後このサービスを継続するかどうか、他の特急列車にも導入するかどうかを判断するとみられます。

 今後この新しいチケットレスサービスが定着するのか、他の列車にも広まっていくのか、引き続き注目です。