受験のシーズンも一段落したようですが、現在の受験生は昼は学校、夜は塾と、休日もなく勉強し続けなければならないようで大変ですね。
小学校4年生の頃から知っている女子が、大学受験が終わり時間が取れるようになったということで来店されました。「腰痛ベルト無しでは5分も座り続けていられない」という、腰痛の訴えです。
考えられないくらい重たいリュックサックを毎日担いで、高校と塾に通っていたようです。
長く座り続けていられない腰痛は、その原因が幾つかのパターンに別れますが、この女子の場合は重たいリュックサックを担ぎ続けたことによる踵重心が主な原因でした。その他に肩の筋肉の疲労も関係していました。
腹横筋はコルセットの役割
一般に「腹筋」と呼ばれている筋肉は専門的には四つに分かれます。「腹筋が割れる」で有名なカラダの中央にある筋肉は腹直筋と言います。そして腹直筋に斜め横や横から接続している二つの腹斜筋(外腹斜筋と内腹斜筋)と深部に腹横筋があります。
大雑把に表現しますと、上半身の縦方向の動きに関しては腹直筋の働きが主体となります。からだを捻るなどの動作では腹斜筋が主体となります。そして、トイレでいきんだり腹圧を高めてからだを支える働きは腹横筋が主体となっています。
どの筋肉も腰痛に関係はしますが、「座り続けられない」という症状は、腹横筋の働きが悪いことがまず考えられることです。
そして、この女子の腹横筋を観察しますと、案の定、腹横筋がゆるゆるになっていてほとんど働けない状態であることがわかりました。つまり腰部を支える自然のコルセットが機能していないということです。これでは立ち続けたり、座り続けたりすることは困難なので、ぎっくり腰を患ったわけでもないのに腰痛ベルトを装着し続けて、腹横筋の働きを腰痛ベルトに代替してもらわないと過ごせないことがわかりました。
そして、腹横筋がしっかりしていないので、他の腹筋や腰部の筋肉(脊柱起立筋や腰方形筋など)がガシッとこわばって体幹を支える仕事もしていることがわかりました。
ところで、足裏の踵の筋膜が固くなると腹横筋の働きが悪くなることがわかっています(私は施術を通して知っています)。
そこで解決しなければならない問題が浮上します。踵重心の状態を改善しないと、立ったり歩いたりすることで踵に余計な負担が掛かりますので、踵は硬くこわばってしまいます。ですから踵重心を改善しない限り、すぐにまた同じ症状を発症することになっていまいます。
重たいリュックサックを担ぐことは、それが背中に担いでも、お腹側に担いでも、立位のバランス、つまりお腹側の筋肉の使い方と背中側の筋肉の使い方のバランスが正常ではなくなりますので、踵重心になってしまいます。
ですから受験が終わって、重たいリュックを担がなくてもよい状況になれば、次第に踵重心の状態は改善されていきますから、腹横筋の問題による腰痛は自ずと改善されていくものと思われます。
余談ですが、お腹が大きくなった妊婦さんは踵重心になりますので、それが腰痛になりやすい理由でもあると思います。
また、お腹が突出しているお父さんや、腰に寄っかかるようにして下腹を前にだしているおばさんたちも、踵重心による腰痛を患いやすいと言うことができます。