私たちのからだは体幹と四肢で成り立っています。体幹は骨盤~背骨~頭部という骨格と関連する筋肉のことであり、四肢は上肢2つ(左右の腕~手)と下肢2つ(脚~足)です。
 整体的な観点で言いますと、体幹が歪んだりおかしくなりますと全身的に機能が低下します。腰痛や首・肩の痛み、頭痛などの症状はこの一部ですが、体幹が歪んだりおかしくなる原因の多くは四肢の問題によるものです。平たく言いますと、手先や腕、足などの使い方やそれらの筋肉や骨格に生じたのいろいろな問題が体幹のさまざまな問題の原因になっていることが場合が多いのです。
 その他には感覚器官がある顔面部の問題、つまり目の使い方や酷使、噛み方、歯ぎしり、口呼吸などの問題が体幹に影響を及ぼしていることも多々あります。
 ギックリ腰や打撲、肉離れ、手術等々、体幹に直接的損傷が生じた場合は別として、体幹の多くの問題の原因の殆どは四肢か顔面部(感覚とそしゃく)の問題が引き起こしていると言えます。

 さて、今回はその一つの例を取り上げます。そして、とてもたくさん見られる状況です。

 私たちのからだの中心は骨盤ですが、その次くらいに中心的な存在は背骨(脊椎)です。脊椎は首の頚椎、肋骨のある胸椎、そして腰部の腰椎に分けられます。
 腰椎は5つありますが、この在り方が全身的にかなり重要です。

 腰椎は前弯しているのが本来の在り方です。第1腰椎、第2腰椎、第3腰椎は後ろに反った形状になっていますが、つまり椎骨(椎体)は上向きの状態になっています。第4腰椎はほぼ正面(地面と平行)を向いていて、第5腰椎は下向きの状態になっています。そして、第3~第5腰椎のところの曲がり(前弯)がとても重要で、その在り方が背骨全体の状態に大きな影響を与えていると言っても過言ではありません。



第3腰椎の在り方と下半身のエネルギーの流れ
 

 第3腰椎はその椎体が少し上を向いている状態が望ましいのですが、時々正面や下を向いた状態になっている人がいます。



 結論的に言いますと、第3腰椎が上を向いた状態にある人は、下肢の内側をエネルギーが足から骨盤(お尻の内側)に向けて上昇するように流れています。そして下肢の外側は反対に骨盤から足に向かって流れている循環になっています。(他の脊椎の関係で、そうでない場合もあると思います。)
 つまり、エネルギー的に見ますと、大地(地球)からのエネルギーをからだのセンターラインが吸い上げ、そして体内から排出すげきエネルギーはからだの外側を通って排出されている、と解釈することができます。

 そして第3腰椎の椎体が下を向いている状態の人は、この循環が反対になっています。このような人を観察したり触りますと、太ももの内側の筋肉がたるんでいて十分に機能していないように感じます。
 「内転筋を鍛えた方が良い」などと理学療法士やトレーナーの方々に指導されたりアドバイスされたりする方も多いようですが、エネルギーの流れ方が良くなければ、せっかく筋肉を鍛えても、その能力を発揮することができませんので、結果的に日々の生活において「トレーニングの効果はあまり感じられない」と感じてしまうと思います。

靴擦れと第3腰椎の関係

 第3腰椎が下向きになっている原因はいくつかあります。
 ストレートネックは頚椎の前弯が失われてしまっている状態ですが、同じようにストレート腰椎もあります。背中を丸めて座る癖を長年している人は腰椎の前弯が失われしまいますが、それも一つの原因です。
 他の腰椎に歪みなどがあることの影響を受けている場合もあります。
 そして、今回お話ししたいのは靴擦れが原因している場合のことです。

 第3腰椎が下を向いてしまう直接的な理由の一つに広背筋がこわばっている状態があります。バンザイをしたときに脇の下の背中側筋肉に張りを感じて心地良いバンザイが出来ない人は、広背筋がこわばっている可能性があります。
 そして、広背筋にこわばりをもたらす原因の一つに踵のアキレス腱付着部に靴擦れによる塊が関係していることがあります。踵の真後ろよりちょっと外側は腓腹筋外側頭の延長がアキレス腱となって踵に付着している部分ですが、そこに問題がある場合です。
 靴擦れを何度もしますと、その部分が硬くなり塊のような物ができますが、そのちょっと下のところは塊とは反対に腑抜けのような感じになります。



 結論を言いますと、その腑抜けのようになっている部分が根本的な原因となって腓腹筋外側頭がゆるんだ状態となり、その影響によって広背筋がこわばり、そして第3腰椎が下向きになってしまうという流れとなります。
 ですから、踵にできた塊を指圧や揉みほぐしなどでゆるめることに併せて、腑抜けになっている部分にエネルギーを与えてしっかりさせる施術を行うことをします。
 また、マグレインやピップエレキバン(80)などでその腑抜け部分を補うことも有効です。

「まさか靴擦れが影響しているなんて?」と皆さん思われますが、そんな些細だとおもわれるようなことの影響でからだのエネルギーの流れが変わってしまうことはよくあることです。

からだのセンターラインにエネルギーが集まるようにしたい

 長年整体の仕事をしていますと、筋肉や骨格のことだけでなく、体内を流れているエネルギーに着目することが多くなります。
 からだが楽になる、からだを楽に使う、という状態を築いて保つためには、からだを効率よく使える状態に整えるわけですが、そのためにはエネルギーの流れがキーポイントであるように感じます。



 私たちは人間ですが、それは脊椎動物でもあります。元々は骨盤しかないような動物が、海の中で泳ぐために進化しました。それは頭進といって、骨盤の顔(口)に相当する部位が頭として骨盤から分離するように離れて魚のような状態になったのですが、その間に背骨ができたのが脊椎動物です。
 ですから、私たちは骨盤から力をもらって活動をしている生命体であると考えることができます。手先を動かすのも骨盤は関係しています。ギックリ腰などで骨盤を損傷しますと、とたんに力が使えなくなってしまい椅子から立ち上がることもままならなくなります。
 たとえばペットボトルを開けるために両手を捻るとき、骨盤からの力がもらえなければ、手や腕の筋肉だけでその動作をしなければならなくなります。それまで無意識に簡単にできていたものが、手に意識的に力を入れて頑張らないと蓋も開けられない状態に鳴ってしまいます。そして、そんな状態が続きますと手の筋肉がおかしくなってしまいますが、それが影響して肩関節痛や腰痛や膝痛を招いてしまうこともあります。
 このような状況はからだの使い方が非効率な状態です。つまりエネルギーの流れが悪い状態です。
 骨盤の中心~背骨というからだの中心ラインにエネルギーがしっかりと流れている状態では、どんな動作をしても骨盤の力、つまり力の源泉から力を得ることができるので効率が良く、楽に動かせる状態となります。

 ヨガや筋トレやいろいろな健康法でからだを鍛えようとされている方は、このポイントを抑えることが大切だと思います。
 なぜこのようなことを言っているのかは、健康に気遣いながらからだのためにいろいろやっている人でも、このようなことはまったく考えていない人が殆どだからです。一整体師からのアドバイスとしえ言わせていただきました。