Aussie Physio (オーストラリアの理学療法) -5ページ目

Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

日本で理学療法士として働いた後

オーストラリアでPhysiotherapist (理学療法士)になるために渡豪

そんな日々の中での気づき

お久しぶりです!

今日から西オーストラリア州にあるカーティン大学でのマスターコース(大学院)が始まりました。僕は自分の職業である理学療法の専門分野(筋骨格系疾患)に対する徒手療法の勉強を2年間かけて行っていく予定です。

日本で大学院に通うとなると、日中に仕事をしながら夜間で通うという方が多いかと思いますが、僕の通っている大学院では授業は日中なのでパートタイムで働きながらパートタイムでの大学生活となります。

もし授業を一年でフルタイムで行う場合の授業の概要としては、

Semester 1
- Advanced Evidence Based Physiotherapy
- Physiotherapy Project Proposal
- Advanced Anatomy and Pathology
- Advanced Musculoskeletal Science
- Advanced Physiotherapy Clinics 1

Semester 2
- Physiotherapy Project Report
- Advanced Management of Pain Disorders
- Advanced Musculoskeletal Management
- Advanced Physiotherapy Clinics 2

というようになっています。パートタイムで行う場合には2年から3年でこれらの単位を取ることによって卒業と同時に専門理学療法士の称号がもらえるというようになっています。

また、International Student の場合は基本的にパートタイムが不可で、1年のフルタイムでの学習が義務づけられています。

今日は早速大学で献体を使用させて頂いての頸部の解剖学の勉強でした。実際の筋の走行、付着や層などをもう一度確認できるというのは大変貴重なので、できるだけ吸収してきたいと思います。


それはさておき、2月8日でこちらにきて6年が経ちました。2009年、24歳の時に日本を出てから今まで大きな病気や怪我もせずなんとか無事に自分がやりたいことをさせてもらっている環境に感謝です。

今自分の中でぼんやりと、だけど日々強くなってる思いがあります。

それは日本で理学療法士がいつの日か開業権を得ること。

全ての理学療法士とは言いませんが、せめて筋骨格系に関連する理学療法士が医師の紹介状を介さずに患者さんが自らの選択で理学療法士を受診する…それは現段階では考えられない現実ですが、不可能ではないのではと思っています。

オーストラリアで理学療法士として働き出して1年半ですが、理学療法士がダイレクトアクセスを認めてもらっていることの素晴らしさを日々感じています。

理学療法士が、患者さんの問診(主観的評価)、身体的評価(客観的評価)行い、理学療法介入を医師を介さずに行う場合の利点として:

ー 画像診断などのコストを削減することが可能

ー 医師の診察時間の短縮により、医師がより重要な業務(手術
  など)に専念できる

ー 患者さんが理学療法でマネジメント可能かどうかの判断を
  医師ではなく理学療法士が行える

ー 医師から結局リハビリが必要だとされた場合に、患者さんの
  医師受診の時間とコストを削減することができる

ー 理学療法を行うことによって改善可能でない場合に医師に
  紹介状を書くというように、段階的なマネジメントが可能に
  なる

など、パッと思いつく程度でもこのようなことが挙げられます。この他にも実際にオーストラリアの理学療法士の業務としてもし骨折や重度な軟部組織などの損傷が疑われる場合には、レントゲンや超音波、MRIへの紹介状を理学療法士が書くことができるというのも、日本の理学療法士ができるようになるとしたら大きな発展へとつながるのではないでしょうか。


オーストラリアの理学療法士も昔は開業権を持っていませんでした。

それが可能になったのは1970年代のことだそうです。そう考えると40年ちょっとで今の現状まで持っていくことができたというのは、やはり一人一人の理学療法士が自分たちの職業に誇りを持ち、自分たちの地位を証明し自立を勝ち取った証なのだと思います。

もちろん日本とオーストラリアで政治や背景が違っているのは明確ですが、それでもどこからか始めなければ、一生僕らは自分の職業を名乗って開業の道へ進むことができないのではないかと思います。

道は果てしなく遠いかもしれませんが、今の自分にできることはまず目の前のコースを終わらせてそこから少しずつそういった夢に向かって動きだすことかなと思います。

長くなりましたが、今日も読んでいただきありがとうございました。

僕はまだまだ元気にやってます!!
オーストラリアの理学療法クリニックではピラティスが普及しており、多くの患者さん・クライエントがコアトレーニングのためにクリニックに訪れます。

基本的にコアトレーニングというと、腹横筋を収縮させ、ニュートラルスパイン(腰椎の前弯を減少させた)状態で上肢、下肢の運動を行うといったものが多く取り入れられていますが、その他にも本当にたくさんのバリエーションがあり、脊椎だけでなく、四肢の可動性を向上させるのに非常に有効だと感じています。

ですが、このコアトレーニングまたは「コアスタビリティ」という言葉がオーストラリアではよく使われていますが、この運動療法が果たして本当にその人にとって必要なのか・・・たまにそういった疑問が浮かびます。

僕が現在働いているクリニックでは「腰痛」によって来院される患者さんが大変多いのですが、他のセラピストが頻繁にコアが必要だということを耳にします。腰痛 = コアスタビリティの低下 といった考えは、近年の研究から推奨されているのは事実ですが、コアスタビリティの低下が腰痛の全ての原因ではない、ということも研究にて出てきているのも事実です。

僕が感じるところとしては、評価によって、その人の主訴を改善させる手段がコアスタビリティであれば全く問題はないと思います。ですが、何が問題かわからないので、とりあえずコアスタビリティのエクササイズを処方して経過を見るとなると、短期・長期的にみて改善がなければそれ以外の主訴の原因を探す必要があると思います。


今日診させていただいた新規の患者さんの話ですが、50代の男性で左の鼠径部に鋭利痛を訴えてこられました。その患者さんの話では、座骨神経と受診票に書かれており、3~4年前に同じ痛みがあり理学療法士を受診したことがあるとのことでした。その当時の治療としては、Prone で腰部のPAIVMの治療(前回の記事で少し触れた治療方法です)にて数回のセッションを終えた後に痛みが改善したとのことでした。

痛みが出る動作としては、仰向けで股関節の屈曲時に鼠径部に鋭利痛が出現しており、座骨神経痛と言っているのに痛みが鼠径部に出ているのは少しおかしいな…と思いながらさらに問診、評価を進めていきました。腰部のAROMでは若干の関節の硬さが左のL 3-S1 levelで認められましたが、全ての運動方向で同様の痛みは認められませんでした。さらに、PAIVM とPPIVMで腰部の評価を行ったところ同様の痛みは出現せず、過去の治療で腰部をモビライゼーションしたことによって改善したという機序に少し困惑を覚えながらもさらに評価を進めて行きました。

そこから、鼠径部に鋭利痛が走るということで、股関節のAROM/PROMを評価したところ、PROMでは問題ないがAROMの際に痛みが出現しており、股関節周囲筋の問題かな?と考え、細かい触診を行っていきました。腸腰筋、大腿直筋、内転筋群、縫工筋など念入りに触診するも同様の痛みを確認することはできず、筋硬結なども認められませんでした。

ここまできて、腰部、股関節などは全て痛みを再現することができず、次に評価をしたのが仙腸関節(SIJ)でした。Active SLRでは痛みが再現され、Compression にて痛み減少, distraction にて痛みが増強しており、その他のSIJテストでは全て陰性でした。通常はSIJが痛みの原因とされる場合、放散痛は臀部に出現することが多いのですが、今回のように鼠径部に出現するケースもあり得るのかなとまた一つ勉強になりました。

治療としては、compression にて痛みが減少しているということから、腹横筋の収縮を促して、ニュートラルスパインを保持した状態で股関節の屈曲を行ってもらったところ、痛みが消失。 本人も、少し筋肉の収縮を意識するだけでここまで変わるものなんだと大変驚いていました。(…実は患者さん以上に驚いていたのは僕であることは彼には秘密です。笑)

話が長くなってしまいましたが、こういった風に、時にはコアスタビリティが本当に必要な状況もありますが、それを見極めることができるかどうかは、やはり僕らの「評価」にかかっていると感じています。

まだまだ評価の正確性をこれからも磨いていきたいと思います。みなさんのなかで、他にはこういった評価もしてみたらどうかなどの意見があれば、ぜひ知識を共有してください!!

それでは今日も読んでいただきありがとうございました。
お久しぶりです。今日は関節の評価について少し書いてみたいと思います。

今日見ていた腰痛の患者さんのPAIVMと呼ばれる関節副運動の評価・治療を行っていた際の会話で、患者さんから「どうして痛いところがわかるの?」と聞かれました。

PAIVMとは、脊椎のFacet jointに対して、片側もしくは両側にP-A(Posterior - Anterior:後方ー前方)のプレッシャーをかけてあげることにより、関節のStiffness (硬さ)を評価、治療する手技です。

この手技は、基本的にFacet Jointの上から圧を掛けており、その上には多くの筋、関節包、靭帯、腱などが付着しており、一体どのStructure(構造)がこの関節を評価した際に制限しているのか断言するのは難しいと言われています。



僕ら理学療法士が徒手的評価を行う際にこれらの構造を考慮はしますが、それよりは動きを評価するなかで(例えばAROMであったりFunctional Testであったり)どこの部位に動きの制限が出ているのか大まかに予測を立て、そこから細かくPAIVMやPPIVMを行っていくというようになります。

僕が患者さんから聞かれてまず真っ先に浮かんだ答えが、患者さんが痛いかな?と思うところは必ずといっていいほど硬さがあります。Facet joint にP-Aの圧をかけると痛みが出ているところは、何か硬いものに対抗して押してる感じがあるのに対して、痛みがないところには関節の Give(少し沈む感じ)があります。

これは毎日患者さんに触れせていただいて、ようやくその硬さの違いがわかってきたかなぁってのが最近の現状です。ただ難しいのは、関節が硬いからそのモビライゼーションを行ったとしても、それが患者さんが訴えている痛みとはまた別のものという可能性もあります。また、関節のモビライゼーションを行う強度も、あまり痛みを生じさせ過ぎず、なおかつ硬さを取るという微妙なさじ加減は、もう練習しかないなって日々感じてます。

そんな感じで、毎日関節感じながら日々の臨床に取り組んでます!
それでは、みなさん週末楽しんでください。
月曜日からも一人でも多くの患者さんに貢献していきましょう⭐️
今日は前回の記事の続きです。

腰痛でこられた患者さんの3回目の治療では、初回、2回目と同様の治療を行うのではなく、もう一度しっかりと評価をし直そうと思いました。それは自分の中で2回目の治療終了時にひっかかるものがあったからです。

僕が経験してきた中で、一番最初からプライマリードライバー(要は何が問題の根本にあるのか)というものを見つけられることが出来れば治療がスムーズにいきますが、やはり自分の理学療法の腕が未熟なせいもあってプライマリードライバーを見つけるのに数回のセッションを要するということがまだまだあります。

今回の患者さんの主訴は、腰部の痛みが「座っている時に起こる」とのことでした。そこで座位から評価を行っていきました。まず座位の時点で患者さんの骨盤はやや後傾しており、後傾を強めると痛みが増強、前傾をすると痛みが減少しました。

こういった症状はときおり急性の腰椎椎間板ヘルニアなどの患者さんでもみられることがあり、その可能性もあるのかな。。。と頭の片隅に置いておきながら評価を続けました。

次に座位にて腰椎の回旋、側屈を行ってもらったところ右腰部に若干の固さはあるものの同じ痛みはでないとのことでした。次に股関節の屈曲を座位でしてもらったところ、右側の股関節屈曲にて痛みが出現。部位としては右側の仙腸関節上部のところを訴えていました。また、 右側のPSISとS1を股関節屈曲時に触診しながら感じたところ、右側の方がより左側の動きよりも大きいように感じました(これらの仙腸関節の触診については賛否両論ありますが、僕はそのように感じました。。。)

ここまでの評価で次に疑われてきたのが、腰部の痛みがプライマリードライバーというよりは、仙腸関節の方が可能性が大きいのではと思い、さらに細かい整形外科的評価を行いました。

Active Straight Leg Raiseでは右側にてより努力を要しており、また同部位の痛みも再現、Compression を両側ASISにかけてあげることにより痛みの減少。Sacral Thrust test といって仙骨にposterior – anterior のストレスをかけることによって痛み再現。また、触診にてLong Dorsal Sacroiliac Ligamentに痛みが出ていました。

また、前回の記事で書いたように、今回の患者さんはこの腰痛を2年半前の妊娠中より感じており、座位時に骨盤後傾(より細かく言えば仙骨の逆うなずき運動)がLong Dorsal Sacroiliac Ligamentにストレスをかけることにより痛みが生じているのではないかと考えました。

右側の仙腸関節が過度に動いている一つの原因として、Impaired force closure があげられます。そして、これらの評価を元に腹横筋の評価を行ったところ、supine にて膝/股関節屈曲位から下肢の挙上を行ったところやはり右側の下肢を挙上する際に骨盤帯の固定が行われておらず、痛みを助長していました。

そこで3回目のセッションでは主にこれらの筋の使い方を指導し、座位にてLong Dorsal Sacroiliac Ligamentにストレスをかけないように指導し、その日の治療を終えました。

自分でもびっくりしたのが、この日はまったく徒手療法を行っていないにも関わらず、患者さんの満足度は今まで行った治療の中で一番たかいものでした。こちらのManual Therapistが陥りやすい考えとして、やはり徒手療法が発達していることもあり、こちらが徒手的に何かをしてあげることによって痛みが改善するのが美徳みたいな感じもなきにしもあらずだと思います。

少なくとも、自分も患者さんの痛みが徒手療法によって改善された時はやはり正直嬉しいです。しかし、一番大事なのはやはりその患者さんにとってなにが一番必要なのか、それが徒手療法であれ運動療法であれその人にあったものを提供していけるセラピストになりたいと思いました。

やはり評価あっての治療ですね。まだまだこれからたくさん勉強させていただきます!!長くなりましたが読んで頂いてありがとうございました。


今日は1週間前に来た患者さんについて書かせてもらいたいと思います。

今日で3回目の治療でしたが、1回目、2回目と治療を終えてこちらが期待しているよりも結果が良好でなかった場合、もう一度自分が行っている治療、評価の再考をし直さなければいけないという経験をしました。いかに最初の評価で何が本当の問題なのかを見極めることが大事だということを目の当たりにしました。

『主観的評価』

33歳女性、主訴は腰痛で右の腰部に痛みを訴えて来られました。この痛みは約2年半前に妊娠している時に発生し、それ以降完治はせず、痛みの憎悪と緩解を繰り返していました。今回受診しようと思った過程は、来年あたりにもう一人子供を妊娠したいと考えており、妊娠中にまた腰痛が問題になりうると考えての受診でした。

痛みの種類としては鋭い痛み、うずくような痛みを訴えており、初回に受診された時の安静時痛はVAS で5~6 /10 、悪化した時には9/10になる時もあるとのこと。また、同じ部位にときおり軽い痺れを経験することもあり。

痛みを悪化させる要因としては主に座っているときに次第に痛みが増していくとのこと。また、2歳半の子供を抱えているとき、ヨガをしているときも時折痛みがでるとのこと。(ヨガは週に3回程行っておりとてもアクティブな方です)

痛みを減少させる要因としては、同様にヨガのストレッチやうつ伏せになって寝ているとき。温熱などでの緩解はとくに経験していないとのこと。

また夜はうずく痛みで何度か起きることもあるとのこと。妊娠以前に腰痛を経験したことはなく、交通事故による外傷などもなしとのこと。また、Red flagを示す中枢神経系の徴候や、体重減少もなし。

『客観的評価』

AROM—Lxでは主に右側屈にて右腰部の痛みを再現、左側屈にて同意部にストレッチ様の痛み、屈曲、伸展、回旋では特に痛みはでなかったものの右回旋にて固さを訴えていました。

PPIVMとPAIVMといわれる関節の評価にてLx 3-S1レベルの椎間関節にて右側にstiffnessを確認、それらの固さと患者さんが経験している痛みが類似、また、触診にて右腰部の脊柱起立筋群のスパズムも確認、それらも患者さんが経験している痛みと同様であることから、初回と2回目の治療はそれらをターゲットとしました。

治療法としてはDry Needlingとマッサージにて筋の固さを取ったあと、PPIVM とPAIVMにて右側Lx 3-S1の椎間関節を治療し、AROMの再評価にてmobility の向上と痛みの減少を認めました。Home exercise programとして関節を固くしないようにストレッチを指導した後、二回目の治療後の再評価ではほぼ腰部のAROMにて痛みなし、可動域も右側屈、右回旋でほぼ最終域まで動かせるといった状態でした。

しかし、2回目の治療を終えたあとに話をしている時に、数分座っているとまた同様の痛みが出てきたと訴えていました。ここが自分の中ですごくひっかかっていました。そして今日、3回目の治療に来られた時に腰部の調子を聞いたところ、動きは良くなったが座っている時にやはり痛みがまだ出てくるとのことでした。

ここで思ったのが、もしこのまま同じ治療を続けたとしたら、次の治療に患者さんは多分帰ってこないだろうなとどこかで感じました。そのため、もう一度しっかりとした評価を行おうと思いました。(こちらの理学療法クリニックでは、患者さんが次の予約に帰ってこないってこと…やはりあります。)

さて、そこで今日行った評価内容については…また次回!!