Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

日本で理学療法士として働いた後

オーストラリアでPhysiotherapist (理学療法士)になるために渡豪

そんな日々の中での気づき


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今日は痛みについて(青い文字から文献のリンクに飛べます!)。

 

  1. 痛みとは?

 

僕ら理学療法士を含めた医療従事者が担当することが多い 痛み ですが、オーストラリアの筋骨格系外来クリニックで働かせてもらっていても、患者らがクリニックに来院される理由で最も多い主訴が痛みです。

 

痛みとは、IASP(国際疼痛学会)によって”An unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage.” と定義されています。

 

ここで重要なのが、actual or potentail tissue damage(実際の、もしく潜在的な組織損傷に伴う、不快な感覚・感情的な体験)というところです。

 

これは、実際に組織損傷がなくても痛みを生じる可能性があるということです。

 

例えば、非常にストレスを感じている時に頭痛を生じることはよくあります。これは、組織損傷が起こっているわけではありませんが、ストレスにより神経系に域値の低下や感受性の上昇(感作)などの影響が及ぼされているとされています。

 

そして、感情的な体験というところ。僕らはもちろん人間を対象としています。そのため、機械や自動車を整備しているわけではありません。

 

 

2.医療従事者の発言による影響

 

 

その感情的な要因の一つと成りうる原因として、僕ら医療者の説明が挙げられます。The Enduring Impact of What Clinicans Say to People with Low Back Pain という文献に、僕ら医療者の発言がどれだけ患者らに影響を及ぼしていたかという報告があります。

 

ここでは、急性腰痛になった患者は、インターネット、友達・家族、そして医療従事者から自分の腰痛についての情報を調べており、当然のように思えますが、医療従事者からの情報が一番影響力があったと報告されています。

 

そのため、例えば僕らが ’ヘルニアなので腰をあまり曲げないで腹筋を使って下さい。’といったようなアドバイスを何気なく行なったとして、それを患者さんはずっとそうしなければいけないことだと思っていることは多く認められます。また、慢性腰痛を有した患者さんでは、運動恐怖と腰部屈曲方向への運動時に、脊柱起立筋の過活動による屈曲制限などが認められたとされています。

 

これらのアドバイスは多くの場合、僕ら医療従事者が、どのようにその患者さんの問題を捉えているのか?ということによると報告されています。

 

2009年にイギリスにて行われたアンケートでは、医療職種など、19の大学・学校を含めたカリキュラムに関して、1%以下の時間が痛みの教育に時間が割かれていたと報告されています。おそらく現行のカリキュラムでは少しずつ変化してきているとは考えられますが、それでも多くの現職者が痛みの理解を深めるための教育というよりは、運動、解剖、生理に基づいたバイオメディカルな視点での教育を受けてきたと考えられます。

 

 

3.生物心理社会的モデルへの流れ

 

 

そのため、クリニカルリーズニングにおいて、生物医学的な考えが主流であるのは当然の流れかもしれませんが、心理社会的要因を含めた、Biopsychosocial modelの認知や理解(こちらも)が広まってきていることは、僕ら医療従事者の幅を広げてくれる素晴らしい流れだと感じています。

 

そのような心理的要因に関して、アクティビティに伴う痛み体験がどのように患者らに認知されているのかという報告があります。こちらでは、痛みを伴うアクティビティがさらなるダメージを生じている、そして痛みによって苦悩やさらなる機能障害が増す、というような Beliefが認められたと報告されています。

 

僕ら医療従事者の発言によって与える影響は非常に大きく、オーストラリアのクリニックで働いていても頻繁に遭遇する問題です。特に慢性痛を有している患者さんにとって、’痛み=ダメージ’という考え方であったり、’痛み=関節がまたズレてしまった’というような表現をされることも多々あります。

 

脊柱のマニピュレーションに関しては、関節のアライメントを正すといった概念がこちらの患者さんにも多く伝わっています。特に関節マニピュレーションを主な治療法として使用するセラピストに治療を受けてきた方に、そのような説明を受けていることが多く認められます。

 

しかし、そのような科学的根拠は未だに結論づけされておらず、さらなる研究が必要とされています(仙腸関節の例)。また、徒手療法の効果に関しても、従来のバイオメカニクスだけではないことがわかってきています。(こちらにそのような徒手療法の効果やエビデンスの現状などについてよくまとめられていますので是非参考にしてください)。

 

 

4.患者さんの自立度をあげる

 

 

ただ、僕は徒手的な治療に対して反対なわけではありません。関節マニピュレーションやモビライゼーションも使いますし、評価としても患者さんに教育を行うという位置付けでは非常に有効だと感じています。また、説明としても徒手療法による効果は一時的なもので、徒手療法によって痛みが軽減することによって何が出来るのか?を考えること、そして実行することが重要だと伝えています。

 

そのことによって、徒手療法への依存心を作らないということが、本来であればシンプルである問題をより複雑にしないための一つの重要な方法であると体験しています。さらに、筋骨格系疼痛障害に関して、自己効力感 (Self Efficacy自分でなんとかしようということ)が低いということは、恐怖回避行動よりも障害へのリスクが高くなるとも報告されています。

 

 

5.非特異的慢性痛に関連し得る要因

 

 

非特異的慢性痛を有する患者を担当する上で重要なのは、先ほど述べた心理社会的要因を含めた多面的な視点での痛み・障害の理解であり、特に重要なのは ”なぜ痛いのか?”というところを Make Senseするというとこだと日々感じています。痛みのメカニズムが何なのか、それが現病歴や既往歴と一致しているのか、その痛みが続いていることによってどのような苦悩体験を生じているのか。

 

心理社会的要因であれば、それらがどのようにその個人の体験として影響しているのか。それらを包括的に確認していくこと、それが評価・治療の過程であり、患者さんの中で”なるほど、だから痛いのか”といった思考が生まれることが、Making Senseという過程であり、個人的に非常に重要と感じています。

 

 

6.まとめ

 

 

痛みということについて書かせていただきましたが、多面的な要因が関わる痛みについての現状などを紹介させて頂きました。痛みに関しては本当に学ぶことが多いですが、僕も日々の臨床の中で試行錯誤しながら、色々な方法を模索中です。時には患者さんの中で Make sense され、患者教育のみによって自分は動いても大丈夫なんだという自信を持ってもらえたことにより痛みが改善することもあれば、そのような話をしたために不快にさせてしまうこともあります(苦笑)。

 

重要なのは、その方が求めていることは何なのか、自分がこの人に必要なのは〇〇であるとわかっていても、すぐに結論に飛びつくのではなく、いかに患者さんに Reflective Questioning (自問・反映して頂く質問)を行いながら、患者さん自らがその結論にたどり着くお手伝いをすることだと思います。

 

治療者や痛みを経験している方も含め、一人でも多くの方が痛みと向き合い、前進し、改善していけるように僕も精進していければと思います!

 

 

最後に、このような考え方をもっと学んでみたいという方へ、6月に日本でお話しさせて頂く機会を得ましたのでご紹介させて頂きます。

 

大阪:6月2〜3日   (ここから

 

仙台:6月12〜13日  (ここから

 

東京:6月23〜24日  (ここから

 

 

本日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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少しずつではありますが、クリニカルトランスレーションフレームワーク(CTF)に興味があるという連絡を頂いています。

 

非常にありがたいことです!現在、翻訳を進めていますのでもう少しお待ち下さい。英語で原文を読みたい方はこちらからどうぞ。

 

今日は、前回の頸部痛の記事に引き続き、腰痛についてどのようにCTFを使うことが出来るのかをご紹介させていただきます。

 

 

 Patient perspective (個人の視点)

 

40代女性。主訴:急性腰痛にてクリニック来院。動作に伴う腰部から臀部にかけての鋭利痛(VAS 7-8/10)。座位にて安静時痛VAS 4−5/10。放散痛や痺れなし。

 

現病歴:2日前、朝起きた時に腰に違和感を感じるも、普段通りの生活を送っていた。同日、午後に腰痛が徐々に悪化。腰をひねったり、重いものを持ち上げたなどのエピソードも思い当たらず。翌日GP(一般開業医)を訪れ、痛み止めの薬を貰うも改善せずクリニック受診。仕事としては事務業(主にパソコン作業)をしており、ここ最近の2週間は今までにないほど非常に忙しく、極度のストレスを感じていたとのこと。

 

既往歴:腰痛の既往歴なし。以前より整理中の経血量が多く、貧血などになりやすかったために一年前に子宮摘出術の手術を受けたとのこと。そのため、身体活動量も下がり、去年から約10kgの体重増加あり。

 

Belief : よくわからないけど、腰部にスパズムを感じるとのこと。 

 

ゴール:腰痛の改善と原因が何であるのかを知りたい。

 

 診断名、障害タイプ

 

子宮摘出術の手術の既往はあるが、癌などの既往歴はなし。その他の膀胱直腸障害や会陰部の感覚障害なども認められず。夜間時痛は認められたが、寝返り時などの腰部の動きに伴い痛みが認められるとのこと(器質的な痛みの示唆)。そのため、レッドフラッグの可能性は低いと考えられる(しかし、完全に無視するのではなく、レッドフラッグの可能性も念頭に置きながら評価を進めることが重要と感じています)。

 

夜間時痛だけではレッドフラッグがあるとは言い切れませんが、一つの指標になると考えられます。夜間時痛でも、動作に伴わない痛み(非器質的な痛み)や、組織損傷などの心当たりがないのに痛みが継続的に悪化し、その他に原因不明の体重減少、全身の倦怠感、癌の既往、長期間のステロイドの使用、または高齢者における転倒の既往などがあれば、この’夜間時痛’という情報の重要性が高くなります(骨折や癌についてのレッドフラッグについてはこちらより:この中でも特に癌の既往と、骨折の場合には外傷、高齢、長期のステロイドの使用が有用な情報と報告されています)。

 

非特異的腰痛 vs 特異的腰痛

 

腰痛の発症機序に ’思い当たるような節がなく、朝起きた時に腰部にこわばりを感じた’ とのことから、組織損傷の可能性は低いと考えられます。仮に、この患者さんが何か重いものを持ち上げた際に急激に腰痛が出現したとなると、(何の組織かは別として)組織損傷の可能性が考えられるため、同じ ’急性腰痛’ でも評価・治療の方向性が異なってくると考えられます。

 

具体的に言えば、思い当たる節がないのであれば、組織損傷の可能性が低いため、評価・治療でもどんどん動いてもらうことが可能な場合が多く、患者さんの中でも動いていると楽や、ホットパック・お風呂などの温熱療法で楽になるというような方が多いです。逆に、一日前に腰を捻った、または重いものを持ち上げた後に生じた急性腰痛などの場合、その外傷が生じた方向への反復運動を繰り返すと腰痛が悪化するという傾向にあります。

 

これは、足関節捻挫と同じこととして考えると少しイメージがしやすいかもしれません。例えば数時間前に足関節の内反捻挫をした場合、内反方向への積極的な運動は組織の治癒過程を促すために避けるべきであり、正常な組織の治癒過程が進むにつれて徐々のその動きを再獲得してく必要があります。

 

そのため、急性期の腰痛患者さんを担当する場合には、このような情報(組織損傷を生じるようなイベントがあったのか?)を頭に入れておくことでその人に合わせたアドバイスを提供することができ、不要な安静や腰部の恐怖回避行などによる慢性化への予防の手助けとなります。

 

この方の場合は、思い当たるようなきっかけもなく、朝起きた時に腰痛を感じていたとのこと、神経根症状が認められないこと(筋力、深部腱反射、感覚正常)、レッドフラッグが認められないことなどから、’非特異的腰痛’という診断名が妥当と考えられます。

 

 障害のステージ

 

急性期

 

 痛みの種類

 

先ほど述べたように、この方は主に器質的な痛み(侵害受容性疼痛)を訴えていました。機能障害としては、立ち上がり動作、長時間(約15分ほど)の座位保持などで腰部に痛みを感じていました。夜間時に関しても、安静にしていても疼くような痛み(炎症性)を感じているのではなく、寝返りをうつ際に痛みが生じるといったことからも器質的な痛みということが伺えます。

 

 心理社会的要因(イエローフラッグ)

 

Short Form Orebro Musculoskeletal Questionnaire (10問)では、47/100でした。これは50点以上で慢性痛へのリスクが高くなるというものですが、日本語版では埼玉県立大学の高崎先生が12問の質問紙ver. を使用して研究をされています。ここで重要なのは、リスクが高いかどうかということはもちろんですが、各質問項目によってもどのような要因が影響しているのかということも確認することができることです。もちろん、心理社会的要因においては、初回から全てを正直に書かない人もいることは頭に入れておかなければいけませんが、この方にとっては不安といった項目で8/10点、痛みが出る動作などは中止する必要があるという項目で8/10点という結果が認められました。

 

これらのことを問診の中で頭に入れながら話を進めると、自分の腰痛の原因はわからないが痛みが出るということはそれ以上その動きをすることによって組織にさらなるダメージを加えてしまっている可能性があると考えていること、X-rayやCT/MRIなどの画像診断が必要かもしれないということ、仕事がすごく忙しく、そういった意味でフラストレーションを感じていたこと、腰痛の原因がわからないことなどに不安を感じていました。

 

以前のブログでも、イエローフラッグを早期から発見する重要性について述べましたが、ここで重要なのは本人が画像診断が必要かどうかを考えているところです。NICEガイドラインでは日常的に画像診断を行うことを推奨していません(ただ、これは画像診断を全く否定するわけではなく、ガイドラインに則って必要性が認められない場合には行わないということです)。また、この患者さんが40代後半であることからも、おそらくCTやMRIなどを施行すれば退行性の変化は認められると考えられます。これは、痛みを有さない人たちにも認められる変化とされており、画像診断をルーチンで行うことによって、より不安や運動恐怖といった要因を助長させてしまう可能性が考えられます。

 

そのため、得意的疾患の症状・兆候やレッドフラッグなどが認められないこと、痛みが器質的な評価によって再現可能であること(詳細については以下の機能的行動・習慣を参照)、腰痛発症の2週間前に仕事で非常に強いストレスを感じていたことによって、患者さん本人も筋の緊張を感じていたこと、ストレスに対する反応として疼痛閾値の低下などの要因が重要であることを患者教育として行いました。

 

 労働

 

今回の腰痛発症の要因としては、作業場の環境に変化などがないこと、いつも以上の長時間労働をしているわけではないことなどを考慮すると、仕事のパソコン作業が直接影響しているとは考えづらいですが、いつも以上の仕事によるストレスを感じていたことは重要です。ここで確認しておきたいのは、今後の予後予測の要因としてこの仕事に関するストレスが一時的なものか、それとも今後も続くのかということです。それを踏まえた上で上記したような患者教育を行い、仕事に対するストレスと上手く付き合っていく、またはストレスを発散する方法を知っておくことも重要です。そのためにも以下の生活習慣要因で述べるような身体的活動が重要となってきます。

 

 生活習慣

 

健康に影響を及ぼすような喫煙やアルコールの摂取は認められませんでした。睡眠に関しても日頃からの睡眠障害は認められませんでした。身体活動においては、去年の子宮摘出術以降、定期的な運動を行っておらず、体重も一年で10kg増加しています。また、肥満と痛みの関係においても、肥満は従来のBiomechanicsのみでなく炎症との関連もあるとされています。そのため、これらの要因を考慮した上で生活習慣の改善も介入の視野に入れるべきであると考えられます。

 

 全人的考慮

 

既往歴から、子宮摘出や更年期に移行してきていることなどを考えると、急性腰痛といっても上記のような要因を考慮した上で治療を展開していくことで、より包括的な評価・アプローチが可能となると考えられます。

 

 機能的行動・習慣 (Functional Behaviour)

 

主な機能的障害は立ち上がり動作、長時間の座位保持でした。座位では骨盤前傾、腰椎の前弯が強く、腰部脊柱起立筋群の過剰な保護的収縮、腹部を固める bracing が認められました(これをCTFでは**Pain behaviourと呼んでいます)。リラックスした状態で呼吸にフォーカスしてもらい、腹部を自分の手を当てた状態でうなだれたように(骨盤後傾)座ってもらうことによって腰部の痛みが軽減しました(通常の座位 VAS 4-5/10、伸展時 VAS 6-7/10の鋭利痛 -> 骨盤後傾 VAS 0/10)。また、立ち上がり時にも同様に骨盤前傾位で固定している様子が伺えたので、リラックスした状態で動きを促す訓練を繰り返した後、立ち上がり時の痛みも軽減しました。

 

また、徒手的な評価のPPIVMにおいて腰椎の動きを確認したところ、患者さんが緊張した状態では痛みを生じますが、完全にリラックスした状態では屈曲で痛みを生じず、最終域で筋の伸張性の硬さが多少あるものの、ほぼ可動域を動かすことが可能であるため、分類としては Movement Impairmentが主ではなく、Pain behaviour/Motor Controlが主な要因と考えられます。ここで注意しておきたいのが、先ほど述べたように屈曲方向への外傷を伴うようなケースではおそらくPPIVMの評価においても急性期では痛みを伴うことが考えられます。そう言った意味で問診で受傷機転を確認し、身体的評価によってその確認作業を行っていくという繰り返しによって問題点を抽出していくということがクリニカルリーズニングとなります。

 

**Pain behaviour: Helpful(有用である)vs Unhelpful(有用でない)

 

これらの筋の過剰な保護的収縮などは、急性腰痛に頻繁に認められる行動ですが、これが有用か(helpful)か有用でないか(unhelpful)を判断する必要があります。上記のように、リラックスした状態で動作をしてもらった場合に痛みがなくなるのであれば、この過剰な収縮は有用でない(unhelpful・痛みを助長させている)と考えることができます。逆に、例えば他のケースで痛みがある人にリラックスしてもらった際に下肢痛が強くなったなどの情報が認められる場合には、この行動は痛みを助長させないために有用である(helpful・保護的である)と考えられます。

 

 

 臨床意思決定 (Clinical Decision Making)

 

診断名:非特異的腰痛

 

ステージ:急性期

 

分類:Pain behaviour/Motor  control 障害

 

治療方針

 

短期目標

  • エビデンスに基づいた患者教育
    • 画像診断の不必要性(レッドフラッグ、特異的疾患、外傷などのが認められないこと)
    • 不安、ストレス、身体的活動量低下などの痛みへの影響
  • モーターコントロール障害に対するアプローチ
    • 腹壁をリラックスした状態、骨盤後傾、腰椎後弯の状態での座位、立位の動作の再獲得
    • 腰部脊柱起立筋、臀筋、腸腰筋のストレッチ
  • Movement impairmentに対するアプローチ
    • 腰部脊柱起立筋や臀筋群に対するリリース
    • ホットパックや温熱の継続
長期目標
  • 身体的活動の増加
    • 患者さんが楽しめる運動の再開(本人は昔ジムに通っていたとのことから将来的にまたジムに通いたいとのこと)
  • 動作時(立ち上がり、物を拾うなど)における腰部脊柱起立筋の過剰収縮の改善
    • 下肢筋群の筋力強化(特にスクワットやラウンジ)により、脊柱起立筋の過剰な活動からのシフト
 
まとめ
 
腰痛といっても、様々な要因が関連していることは知られていますが、要因が増えるにつれてその複雑さも増します。その複雑性に対処するためには、身体的な機能障害を知ることはもちろんですが、’心を持った人間’ を対象にするPTとして、これらのことを考慮することが出来るかどうかは、患者さんの回復や予後を左右する重要な点であると考えられます。
 
このような考え方をもっと学びたい方は、6月に日本でセミナーを開催させて頂く機会を得ましたので是非!!
 
今日も長文を読んで頂きありがとうございました!!
 
 
 
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今日は、現在翻訳に関わらせて頂いている、クリニカルトランスレーションフレームワークの使い方について少しご紹介させて頂こうかと思います。

 

 

また長くなってしまったので、時間のあるときに(例えば日曜日の朝)コーヒーでも飲みながらゆっくりと読んでみてください(笑)。

 

Musculoskeletal Clinical Translation Framework(MCTF)とは元々カーティン大学理学療法学科学士・専門修士の学生に対して、筋骨格系疾患患者を担当する際に、多様な問題に対応することの重要性を教えるために作成されました。いわゆるBiopsychosocial アプローチですね。

 

今回は、そのMCTFをどのように臨床的に応用したらいいのかということを、今日、担当した頸部痛〜肩の痛みのケーススタディを元に紹介させていただければと思います。 全ての項目を細かくは説明しませんが、大まかな流れを理解していただければと思います。

 

 Patient Perspective (個人の視点)

 

主訴:48歳女性、左の頸部から肩関節にかけての痛み(疼くような鈍痛の場合が多いが、時折頸部・肩の動きに伴う鋭利痛もあり。)左手の第3−5指にかけて、断続的な痺れあり。

 

現病歴:2015年よりオフィスワーカーとしての仕事を開始。以前より座っている時間が増え、一日中(約8時間)パソコンを使うことが増える。それに伴いストレスを感じることが増えたとのこと。2015年の終わり頃より、徐々に両肩関節に痛みを感じ始め、左の頸部にも痛みを感じ始める。

 

特に思い当たるような事故・イベントもなく、3−4週間かけて徐々に悪化してきたため、GP(一般開業医)受診。頸部CT スキャンを施行。Multi-level degeneration(複数の椎間関節レベルにて退行性変化が認められる。特にC6/7 の椎間孔にて狭小化とC6神経根がインピンジメントされているかもしれないとのこと。

 

2016年7月より、フィジオ(理学療法士)による介入として徒手療法(関節モビライゼーション、マッサージ、鍼治療、ピラティスを3ヶ月ほど行うも改善が認められず。2017年12月にSpecialist (整形外科医)受診し、MRI施行。同様に、Multi-level degenerationが認められるが2016年と比較して大きな変化はなし。SpecialistにはSpinal Fusion (椎体固定術の手術)しかないと言われ、手術は行いたくないため、その他にできることはないかと相談し、C6神経根に対してのブロック注射を行うが改善は認められず。

 

既往歴:25年前に交通事故にあうが、左側の肩鎖関節の捻挫はあるが、骨折は認められず。それ以後にスポーツとしてテニスやズンバを行うも、後遺症は全く認められず。

機能障害:左の頸から肩にかけての痛みがあるため、以前行っていたスポーツやジムでの運動はここ数年行なっていないとのこと。また、運転をする際に左側を向くことができず、胸椎からの回旋を行なっているとのこと。

 

 診断名、障害タイプ

 

レッドフラッグの可能性を示唆する、夜間時痛、癌の既往歴、原因不明の体重減少、発熱、骨折、5Ds & 3Ns(Double vision, Dizziness, Diplopia, Drop Attacks, Dysphasia, Dysarthria, Ataxia, Nystagmus, Numbness, Nausea)などは認められず。

 

非特異的 vs 特異的

頸部の痛みや病態が果たして特異的なものか、非特異的なものかという判断は難しいところです。この患者さんにおいて、MRIにてC6の神経根症状の可能性が考えらますが、頸椎椎間板ヘルニアによる神経根症状が原因というためには、深部腱反射の消失、マイオトームレベルでの筋力低下がC6支配レベルで認められる必要があります。しかし、両側でC5-C8, T1レベルでの深部腱反射、筋出力はともに正常でした。そのため、特異的疾患である、C6椎間板ヘルニアによる神経根症状と言える可能性が低くなります。

 

では、なにが問題なのか?

 

左の頸部から上肢にかけての痛みの評価として、Neurodynamics (神経誘発テスト)を行いました。左では、正中神経、橈骨神経、尺骨神経すべてにおいて、左肩関節前部から上肢にかけての痛みの再現、可動域制限、しびれの再現が認められ、左頸部にC5-C8 神経根の触診、神経パルペーション(正中神経、橈骨神経、尺骨神経の触診による症状誘発テスト)にて、痺れと感作を認めました(以前、この考え方として腰痛を例として記事を書いていますので、興味のある方はこちらより)。

また、頸部のPPIVM(脊柱のPROM)により、左C5−7レベルの側屈・回旋の関節可動域制限を認めました。これは、この方が運転の際に左を向こうとしている時に感じている制限と同部位に認められました。

 

 障害のステージ

 

慢性期

 

 痛みの種類

 

この方の痛みの性質として、焼けるような痛み、電気の走るような痛み、spontaneous pain と呼ばれる、何もしていないのに急激に起こるような痛みは認められませんでした。これらは神経障害性疼痛の特徴とされており、神経に外傷や病変が起こることによる痛みとされており、それらの痛みが問診により疑われる場合にはPain DETECTやLANSSと呼ばれるスクリーニングツールを使うことにより、リスクを調べることも可能です。

 

主な痛みとしては、疼くような鈍痛や、頸・肩の動きに伴う鋭利痛が認められていました。特に、頸部左回旋時に認められる頸部の痛みは正中位に戻ると、痛みが落ち着いていました。これは、Mechanical Pain (器質的)な痛みと解釈することができ、Nociceptive Pain(侵害受容性の痛み)という種類の痛みに分類することができます。

 

ここで少し考慮しておきたいことが、なぜこの方の痛みが2015から3年経った今でも続いているのかということです。これは、急性期、亜急性期、慢性期において痛みの性質が変わることが予測される観点からも重要です。

先ほど述べたように、この方の痛みはNociceptive Painですが、Neurodynamicテストにおいて神経系(正中神経、橈骨神経、尺骨神経)に感作が認められている理由がどこかにあると考えられます。それらの理由は一つではないと思いますが、ここで以下のような要因が重要になってきます。

 

 心理社会的要因(イエローフラッグ)

 

Short Form Orebro Musculoskeletal Questionnaire という質問紙をオーストラリアの臨床では使うことが多いですが、これもイエローフラッグをスクリーニングするために非常に有用です。各項目において、不安、うつ、睡眠、痛みの回避などをスクリーニングすることができます。

 

この方の場合、不安や睡眠などのスコアが高く、これらの質問紙からそのことについて話を伺ったところ、夜寝ることができないのは不安(頭の中で色々な考えが巡ってしまうため)によるという話をされていました。また、不安やストレス、よく眠れない時などは翌日の痛みの感受性が増しているということも確認できました。

 

また、Beliefの確認として、「何が頸部や肩の痛みの原因だとお考えですか?」という質問に対して、よくわからないけど椎間板ヘルニアや退行性変化によるものという考えがあることを確認しました。また、「痛み=関節へよりダメージを与えている」という考えがあり、頸部の回旋時に頸部筋群の保護的過剰収縮が認められていました。

 

 労働

 

仕事に関しては、2017年の9月より新しい仕事を始め、コンピューターを使う量はあまり変わらないが、以前よりもストレスが非常に減ったとのことです。このことにより、痛みに関しても以前よりは少なくなってきているとのことでした。

 

2015年に痛みが発生した当時何が原因で痛みを生じたのかを確認しましが、この患者さんにとって思い当たる節が見つからず、外傷なども認められませんでした。これは、この患者の肩から頸部にかけての痛みが仕事によるストレスによって引き起こされた‘可能性’があることを示唆していますが、過去に起きたことであり断定することはできません。ただ、外傷が認められないということは、痛みがあるとしても過剰に保護する必要がないということを示しています。このようなことをPain behaviour(以下の機能的習慣・行動参照)と言いますが、多くの場合はその人のBeliefと関連していることが多く認められます。

 

 

 生活習慣

 

ここでは、身体的活動量、睡眠、喫煙、アルコール、肥満などが含まれますが、睡眠と身体的活動量において、症状への影響が認められました。以前は日常的に運動を行なっていたものの、ここ数年はほとんど運動を行えておらず、そのことにより心理的なストレス、不安や気分が落ち込みがちになるということも認められました。また、それらによる下降性疼痛抑制系の機能も低下していることが考えられます。

 

 

 全人的考慮

 

一般的な健康状態の考慮などがここに含まれますが、この方には特に問題となるような合併症は認められませんでした。

 

 

 機能的行動・習慣 (Functional Behaviour)

 

この方においては、頸部左回旋時の頸部筋群の過剰収縮(Pain behaviorと呼ばれる有益でない行動=頸部の固さや症状を助長させている一要因: Unhelpful/Provocative)が認められました。もしPain behaviour が有益(Helpful/Protective)であれば、リラックスして頸部回旋をしてもらった際に痛みの増悪が認められます。しかし、この患者においては関節可動域の拡大が認められました。ただ、リラックスすることによって全可動域を獲得できたわけではなく、先ほど述べたようにPPIVMによって左C5−7レベルの側屈・回旋の関節可動域制限を認めました

 

また、頸部の運動に伴った恐怖は先ほどの「痛み=関節へよりダメージを与えている」といった、誤った理解による結果として認められるようになった機能的習慣だと理解できます。

 

このことから、この方の分類としては Movement Impairment、Pain behaviour

という要素が重要なことが確認できます。また、この分節的な可動性の低下は、C5−8レベルでの神経根でのAxonal mechanical sensitivityをきたすと考えられます。

 

 臨床意思決定(Clinical Decision making)

 

さて、ここまで様々な要因がこの方の痛みに関わることをフレームワークの要素に沿って説明しましたが、このことからも筋骨格系疾患といっても個々によって多くの要因に左右されることが分かるかと思います。ここで重要なのは、Biopsychosocial アプローチというのは、何か一つ(例えば頸部に対する徒手療法、または社会心理的要因だけに対するアプローチ)を行えばいいというわけではないことです。

 

この患者にとって必要なアプローチとして以下のことが考えられます。

 

  • 頚椎椎間板ヘルニアや退行性変化などの病態が主に痛みを引き起こしているわけではないという理解
  • 痛み=ダメージではないという患者教育
  • 頸部のCx5-7 Movement Impairment に対する徒手療法
  • 末梢神経感作に対するアプローチ
    • 神経モビライゼーション
    • 身体的運動量の増進
    • 睡眠管理
    • 心理的対応(不安が強く、運動によって管理が難しい場合には臨床心理士などとの連携)

 

ここですべての要因の詳細については記載していませんが、このようにフレームワークを理解することによって、Biopsychosocial アプローチの実際を理解することができるかと思います。

 

フレームワークの内容をもっと知りたい方は、既に英語版が出版されています。

 

現在、日本語版の翻訳を進めていますので、年内には出版できればと思っています。

 

また、6月に日本に帰国した際にもこのような内容をお話しさせて頂く機会を頂きました。今回は腰痛に関してですが、フレームワークを応用してどのように腰痛を有した方に対してアプローチ・マネジメントを行っているのかということを、僕の経験とともにシェアさせていただければと思いますので、興味がある方は是非足を運んでみてください!!

 

本日も最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

 

 

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毎年書いてるわけじゃないですけど、この丸◯年シリーズも今日で9年になりました。毎年2月7日になると、日本を発った日のことを思い出します。こうやってみると、当時は色んなこと考えてたんだなぁってわかりますね。

 

丸7年   丸5年   丸4年

 

そんな今日はスペシャルな1日になりました。カーティン大学で筋骨格系専門修士のクリニカルディレクターで、筋骨格系スペシャリストフィジオセラピスト(オーストラリアのスペシャリストについてもう少し詳しく知りたい方はこちらより)のティムと会ってきました。

彼は僕が今まで出会ったフィジオの中で一番だと思える人です。何を持って一番とするのかは難しいですが、自分の臨床的な疑問、わからないことがあれば一番最初に「ティムならどう考えるかなぁ」と頭に浮かびます。

 

それはおいておき、今日ティムと会ってきたのはカーティン大学で教えられているクリニカルリーズニングの基盤となっている Musculoskeletal Clinical Translation Framework (MCTF)の日本語訳をさせてもらえるということで、その話を進めてきました。

 

僕らが担当する患者さんにおいて、Biopsychosocial Model(生物心理社会的モデル)を知っているけど、じゃあ実際どのように使用すればいいのか、分かりにくい場合が多いかと思います。

 

例えば、この患者さん鬱傾向でイエローフラッグスがあるように思えるけど、実際どのようにそれがこの人の症状・病態に関係していて、それだけが問題なのか、この患者さんの生活習慣(睡眠、ストレス、運動量など)も影響するのか、他にはどういった要因を考慮しなければいけないのかなど、様々な疑問が浮かんでくると思います。

 

筋骨格系疾患だけど、人を対象とする僕たち理学療法士が考慮しなければいけない要因は幅広く、どこから初めていいのかわからないということもあるかもしれません。

 

そこで有用になってくるのがMCTFになります。以下の図は、その要約を表しています。

 

 

ここで全ての項目についての説明はできませんが、僕らが慢性痛などを有する複雑なケースを担当した時に、このようなことを考慮する必要があります。

 

患者さんの視点

o   何が問題と捉えているのか

o   機能的障害は何か

o   ゴール・理学療法から期待することは何か

 

診断名

o   特異性疾患

o   非特異性疾患

o   レッドフラッグ(骨折、腫瘍など)

 

障害のステージ

o   急性期

o   亜急性期

o   再発

o   慢性期

 

痛みの性質

o   侵害受容性

o   炎症性

o   神経障害性

o   機能的

o   ミックス

 

痛みの特性   

o   器質的 vs 非器質的

 

痛みの感受性

 

心理社会的要因(イエローフラッグス)

o   認知要因

o   情緒要因

o   社会的要因

 

仕事・職業関連(ブルー・ブラックフラッグス)

 

生活習慣

 

個人の全体的要因を考慮(健康状態、合併症など)

 

機能行動的障害

o   適合的 (Adaptive) vs 非適合的 (Mal-adaptive)

o   運動障害、コントロール障害、疼痛行動、ディコンディション

 

臨床判断

o   診断名

o   障害のステージ

o   重要な関連要素

 

このように、一人の患者さんでもそれぞれの関連要因が異なり、そのため腰痛の人にはこの治療さえ行えばいいとか、慢性痛の人にはイエローフラッグスだけに対して介入を行うというわけでありません。

 

今日ティムと話た時に、このe-bookを出版してからシンガポール、イタリアやスイスなどから、この本をPT大学の授業として取り入れたいという話をもらっているとのことでした。

 

今後、このように多くの要因を考慮した筋骨格系のマネジメントが世界的に主流になってくることは間違いありません。これは、今までの徒手療法に取って代わるというわけではなく、既存の概念や手技を活かすためのフレームワークと考えていただけるといいかと思います。

 

今年中の出版を目指しますので、楽しみにしていてください!!もし英語が読める人は、すでにibook storeで発売されていますので、ここからチェックしてみてください。

今後、このフレームワークをどのように実際に使うのかなどのブログも少しずつですがアップしていけたらと思います。

 

また、6月に日本でこのフレームワークを使用した腰痛評価や治療・マネジメントのセミナーを行わせていただく機会をいただきましたので、興味がある方は是非いらっしゃってください。

 

仙台の整体院Rootsを経営されている櫻井さんのホームページよりご確認ください。

 

櫻井さんのホームページ

 

また、近年のエビデンスをどのように臨床に落とし込むのかといったところも難しい課題の一つではあるかと思います。それを学ぶのに素晴らしい機会を、山形済生病院の須賀さんが用意してくれているので、こちらも是非足を運んでみてください。

そんなこんなで、オーストラリア生活9年目に入りました。これからも自分が経験させてもらっていること、そういったことを日本の皆さんにシェアさせていただければと思います。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 


テーマ:

今年も残り1日となりました。オーストラリアでは全くお正月前といった雰囲気もなく、いつもと変わらない1日を過ごしています。

 

今年は、カーティン大学での大学院の授業・実習も終わり、無事に修士課程を終了することができました。つい先日には、いつもお世話になっている岩田研二さんと第二回オーストラリアスタディーツアーを開催することができました。その内容についてはこちらからご覧ください。

 

 

 

この数年は、本当に多くのことを学び、実際の臨床での取り組みも変わりました。筋骨格系専門終始のコースを2年に分けて学んだのですが、やはり、自分の中で一番の収穫となったのは、クリニカルリーズニングの幅が広がったことではないかと思います。

 

もちろん、徒手療法では頸部、胸椎、肋骨、腰部などのマニュピュレーションや、モーターコントロール障害に対する治療戦略、そして慢性腰痛の分野で有名なピーター・オサリバン先生に直々に教わることができたことも、自分の人生の中で有益な時間となりました。

 

彼の治療で有名な認知行動療法 (Cognitive Functional Therapy)は、慢性腰患者に対して有効であるといった論文もいくつか出ており、注目が集まってきています。その中でも彼がズバ抜けてすごいなと思ったことはそのコミュニケーション能力の高さでした。

 

患者との対話の中で、本当に多くの要因を探り、それらから考えられる全体像を組み立てていく。

 

そして、彼のスタイルはセラピストとして上から物を言うのではなく、患者自らその答えにたどり着くように導いていくスタイル。これは臨床で挑戦しているのですが、本当に難しいです。

 

これらの慢性痛に有用な問診スタイルの一つとして、 Motivational Interviewing (動機づけ面接)というものがあります。

 

この中にはもちろん多くの要素が含まれているのですが、中でも Reflective Questioning という相手に自問してもらうようなスタイルは、行動変容が必要な認知行動療法において重要なポイントとなっています。

 

一例として、慢性腰痛を有する患者が痛みの原因が「腹筋が弱いせいだ 」と考えていたとします。その場合、「どうしてそのようにお考えですか?」といった質問を投げかけることによって、患者自身が思っている Belief (問題がどこにあるのか、何が原因なのかと患者自身が信じていること)を確認することができます。

 

他にも、ストレス、うつ、不安、睡眠障害といった要因(イエローフラッグスと呼ばれるもの)を理解した上で、

いつそれが問題になるのか、いつその話を患者に持ちかける必要があるのか

そういったことを学べたことが大きな収穫となりました。

 

患者さんの中には急性期・慢性期を問わず症状の改善(Symptom relief)を求めてくる人ももちろんいます。慢性痛の患者さんが全て根本治療を最初から求めているわけではないことも、多くの失敗の中から学びました。

 

これがどういうことかというと、急性痛の場合は症状の改善が優先的で、慢性痛を有する人は今まで様々な治療を受けてきて、ただ単に短期的な症状の改善だけではなく、根本治療を求めている人が多い、と自分の中で勝手に解釈してしまっていたことです。そのため、慢性痛を有する患者さんに対して症状の改善といったところを少しおろそかにしてしまったことも反省点の一つです。

 

僕らが何か新しいことを学んだ時、とりあえずやっては見るものの、失敗するたびに自分がやり慣れている方法へと戻りたくなるのが人間の心理だと思います。そこで、やめずに続けることができるか。

 

おそらく、新しいことに挑戦している間に多くの患者さんをがっかりさせてしまったことは事実ですが、それでも少しずつ新しいスタイルが確立しつつあるのは確かです(問診に関する、より詳しい内容については、現在書籍の一部を担当させて頂いています。来年中には出版されると思いますので、追って報告させて頂きます)。

 

このように、臨床に直結しやすいことを学べるというのは、カーティン大学で筋骨格系専門修士の特徴だと思いますが、ここで出会った全ての素晴らしい先生達が口を揃えていっていたことは、

 

ここで終わりではなく、ここからがスタートです。

 

といった言葉でした。本当にその通りで、僕らが学んだことは日々変化しています。常に新しい知識や研究が発表され、ここで終わりではなく、これら自分が学んだことをさらに深めていけるように日々精進していければと思います。

 

 

自分が学んだことをもっと知りたいという方に、6月に帰国した際にお話しさせていただける機会をいただきました。今のところ、仙台の日程は決定しました。仙台で整体院Rootsを経営されている櫻井さんのホームページでご確認下さい(こちらから)。

 

そして、山形済生病院の須賀さんが、「徒手的介入を輝かせる英語論文の読み方」という勉強会を予定しております。これは、世界の最新の知識というのは多くが英語論文で発表されているという事実をもとに、新しい知識を手に入れようとしても、「あぁ英語かぁ・・・」といって諦めてしまいそうな人たちには是非知ってもらいたい内容となっています(こちらから)。

 

 

きっと世間はお正月気分なのに、そのような時でも自分のブログを最後まで読んでくれて、本当に感謝しています。直接お会いできた方も、SNSやブログを通じて知り合った方も、2017年もお世話になりました。2018年も充実した年になるように心からお祈りしています。

 

それでは皆様良いお年をお過ごし下さい。

 

江戸英明

 

 

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