コアトレーニング(コアスタビリティ)との付き合い方について | Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

日本で理学療法士として働いた後

オーストラリアでPhysiotherapist (理学療法士)になるために渡豪

そんな日々の中での気づき

オーストラリアの理学療法クリニックではピラティスが普及しており、多くの患者さん・クライエントがコアトレーニングのためにクリニックに訪れます。

基本的にコアトレーニングというと、腹横筋を収縮させ、ニュートラルスパイン(腰椎の前弯を減少させた)状態で上肢、下肢の運動を行うといったものが多く取り入れられていますが、その他にも本当にたくさんのバリエーションがあり、脊椎だけでなく、四肢の可動性を向上させるのに非常に有効だと感じています。

ですが、このコアトレーニングまたは「コアスタビリティ」という言葉がオーストラリアではよく使われていますが、この運動療法が果たして本当にその人にとって必要なのか・・・たまにそういった疑問が浮かびます。

僕が現在働いているクリニックでは「腰痛」によって来院される患者さんが大変多いのですが、他のセラピストが頻繁にコアが必要だということを耳にします。腰痛 = コアスタビリティの低下 といった考えは、近年の研究から推奨されているのは事実ですが、コアスタビリティの低下が腰痛の全ての原因ではない、ということも研究にて出てきているのも事実です。

僕が感じるところとしては、評価によって、その人の主訴を改善させる手段がコアスタビリティであれば全く問題はないと思います。ですが、何が問題かわからないので、とりあえずコアスタビリティのエクササイズを処方して経過を見るとなると、短期・長期的にみて改善がなければそれ以外の主訴の原因を探す必要があると思います。


今日診させていただいた新規の患者さんの話ですが、50代の男性で左の鼠径部に鋭利痛を訴えてこられました。その患者さんの話では、座骨神経と受診票に書かれており、3~4年前に同じ痛みがあり理学療法士を受診したことがあるとのことでした。その当時の治療としては、Prone で腰部のPAIVMの治療(前回の記事で少し触れた治療方法です)にて数回のセッションを終えた後に痛みが改善したとのことでした。

痛みが出る動作としては、仰向けで股関節の屈曲時に鼠径部に鋭利痛が出現しており、座骨神経痛と言っているのに痛みが鼠径部に出ているのは少しおかしいな…と思いながらさらに問診、評価を進めていきました。腰部のAROMでは若干の関節の硬さが左のL 3-S1 levelで認められましたが、全ての運動方向で同様の痛みは認められませんでした。さらに、PAIVM とPPIVMで腰部の評価を行ったところ同様の痛みは出現せず、過去の治療で腰部をモビライゼーションしたことによって改善したという機序に少し困惑を覚えながらもさらに評価を進めて行きました。

そこから、鼠径部に鋭利痛が走るということで、股関節のAROM/PROMを評価したところ、PROMでは問題ないがAROMの際に痛みが出現しており、股関節周囲筋の問題かな?と考え、細かい触診を行っていきました。腸腰筋、大腿直筋、内転筋群、縫工筋など念入りに触診するも同様の痛みを確認することはできず、筋硬結なども認められませんでした。

ここまできて、腰部、股関節などは全て痛みを再現することができず、次に評価をしたのが仙腸関節(SIJ)でした。Active SLRでは痛みが再現され、Compression にて痛み減少, distraction にて痛みが増強しており、その他のSIJテストでは全て陰性でした。通常はSIJが痛みの原因とされる場合、放散痛は臀部に出現することが多いのですが、今回のように鼠径部に出現するケースもあり得るのかなとまた一つ勉強になりました。

治療としては、compression にて痛みが減少しているということから、腹横筋の収縮を促して、ニュートラルスパインを保持した状態で股関節の屈曲を行ってもらったところ、痛みが消失。 本人も、少し筋肉の収縮を意識するだけでここまで変わるものなんだと大変驚いていました。(…実は患者さん以上に驚いていたのは僕であることは彼には秘密です。笑)

話が長くなってしまいましたが、こういった風に、時にはコアスタビリティが本当に必要な状況もありますが、それを見極めることができるかどうかは、やはり僕らの「評価」にかかっていると感じています。

まだまだ評価の正確性をこれからも磨いていきたいと思います。みなさんのなかで、他にはこういった評価もしてみたらどうかなどの意見があれば、ぜひ知識を共有してください!!

それでは今日も読んでいただきありがとうございました。