毎年書いてるわけじゃないですけど、この丸◯年シリーズも今日で9年になりました。毎年2月7日になると、日本を発った日のことを思い出します。こうやってみると、当時は色んなこと考えてたんだなぁってわかりますね。
そんな今日はスペシャルな1日になりました。カーティン大学で筋骨格系専門修士のクリニカルディレクターで、筋骨格系スペシャリストフィジオセラピスト(オーストラリアのスペシャリストについてもう少し詳しく知りたい方はこちらより)のティムと会ってきました。
彼は僕が今まで出会ったフィジオの中で一番だと思える人です。何を持って一番とするのかは難しいですが、自分の臨床的な疑問、わからないことがあれば一番最初に「ティムならどう考えるかなぁ」と頭に浮かびます。
それはおいておき、今日ティムと会ってきたのはカーティン大学で教えられているクリニカルリーズニングの基盤となっている Musculoskeletal Clinical Translation Framework (MCTF)の日本語訳をさせてもらえるということで、その話を進めてきました。
僕らが担当する患者さんにおいて、Biopsychosocial Model(生物心理社会的モデル)を知っているけど、じゃあ実際どのように使用すればいいのか、分かりにくい場合が多いかと思います。
例えば、この患者さん鬱傾向でイエローフラッグスがあるように思えるけど、実際どのようにそれがこの人の症状・病態に関係していて、それだけが問題なのか、この患者さんの生活習慣(睡眠、ストレス、運動量など)も影響するのか、他にはどういった要因を考慮しなければいけないのかなど、様々な疑問が浮かんでくると思います。
筋骨格系疾患だけど、人を対象とする僕たち理学療法士が考慮しなければいけない要因は幅広く、どこから初めていいのかわからないということもあるかもしれません。
そこで有用になってくるのがMCTFになります。以下の図は、その要約を表しています。
ここで全ての項目についての説明はできませんが、僕らが慢性痛などを有する複雑なケースを担当した時に、このようなことを考慮する必要があります。
患者さんの視点
o 何が問題と捉えているのか
o 機能的障害は何か
o ゴール・理学療法から期待することは何か
診断名
o 特異性疾患
o 非特異性疾患
o レッドフラッグ(骨折、腫瘍など)
障害のステージ
o 急性期
o 亜急性期
o 再発
o 慢性期
痛みの性質
o 侵害受容性
o 炎症性
o 神経障害性
o 機能的
o ミックス
痛みの特性
o 器質的 vs 非器質的
痛みの感受性
心理社会的要因(イエローフラッグス)
o 認知要因
o 情緒要因
o 社会的要因
仕事・職業関連(ブルー・ブラックフラッグス)
生活習慣
個人の全体的要因を考慮(健康状態、合併症など)
機能行動的障害
o 適合的 (Adaptive) vs 非適合的 (Mal-adaptive)
o 運動障害、コントロール障害、疼痛行動、ディコンディション
臨床判断
o 診断名
o 障害のステージ
o 重要な関連要素
このように、一人の患者さんでもそれぞれの関連要因が異なり、そのため腰痛の人にはこの治療さえ行えばいいとか、慢性痛の人にはイエローフラッグスだけに対して介入を行うというわけでありません。
今日ティムと話た時に、このe-bookを出版してからシンガポール、イタリアやスイスなどから、この本をPT大学の授業として取り入れたいという話をもらっているとのことでした。
今後、このように多くの要因を考慮した筋骨格系のマネジメントが世界的に主流になってくることは間違いありません。これは、今までの徒手療法に取って代わるというわけではなく、既存の概念や手技を活かすためのフレームワークと考えていただけるといいかと思います。
今年中の出版を目指しますので、楽しみにしていてください!!もし英語が読める人は、すでにibook storeで発売されていますので、ここからチェックしてみてください。
今後、このフレームワークをどのように実際に使うのかなどのブログも少しずつですがアップしていけたらと思います。
また、6月に日本でこのフレームワークを使用した腰痛評価や治療・マネジメントのセミナーを行わせていただく機会をいただきましたので、興味がある方は是非いらっしゃってください。
仙台の整体院Rootsを経営されている櫻井さんのホームページよりご確認ください。
櫻井さんのホームページ。
また、近年のエビデンスをどのように臨床に落とし込むのかといったところも難しい課題の一つではあるかと思います。それを学ぶのに素晴らしい機会を、山形済生病院の須賀さんが用意してくれているので、こちらも是非足を運んでみてください。
そんなこんなで、オーストラリア生活9年目に入りました。これからも自分が経験させてもらっていること、そういったことを日本の皆さんにシェアさせていただければと思います。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。