2017年を振り返る | Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

日本で理学療法士として働いた後

オーストラリアでPhysiotherapist (理学療法士)になるために渡豪

そんな日々の中での気づき

今年も残り1日となりました。オーストラリアでは全くお正月前といった雰囲気もなく、いつもと変わらない1日を過ごしています。

 

今年は、カーティン大学での大学院の授業・実習も終わり、無事に修士課程を終了することができました。つい先日には、いつもお世話になっている岩田研二さんと第二回オーストラリアスタディーツアーを開催することができました。その内容についてはこちらからご覧ください。

 

 

 

この数年は、本当に多くのことを学び、実際の臨床での取り組みも変わりました。筋骨格系専門終始のコースを2年に分けて学んだのですが、やはり、自分の中で一番の収穫となったのは、クリニカルリーズニングの幅が広がったことではないかと思います。

 

もちろん、徒手療法では頸部、胸椎、肋骨、腰部などのマニュピュレーションや、モーターコントロール障害に対する治療戦略、そして慢性腰痛の分野で有名なピーター・オサリバン先生に直々に教わることができたことも、自分の人生の中で有益な時間となりました。

 

彼の治療で有名な認知行動療法 (Cognitive Functional Therapy)は、慢性腰患者に対して有効であるといった論文もいくつか出ており、注目が集まってきています。その中でも彼がズバ抜けてすごいなと思ったことはそのコミュニケーション能力の高さでした。

 

患者との対話の中で、本当に多くの要因を探り、それらから考えられる全体像を組み立てていく。

 

そして、彼のスタイルはセラピストとして上から物を言うのではなく、患者自らその答えにたどり着くように導いていくスタイル。これは臨床で挑戦しているのですが、本当に難しいです。

 

これらの慢性痛に有用な問診スタイルの一つとして、 Motivational Interviewing (動機づけ面接)というものがあります。

 

この中にはもちろん多くの要素が含まれているのですが、中でも Reflective Questioning という相手に自問してもらうようなスタイルは、行動変容が必要な認知行動療法において重要なポイントとなっています。

 

一例として、慢性腰痛を有する患者が痛みの原因が「腹筋が弱いせいだ 」と考えていたとします。その場合、「どうしてそのようにお考えですか?」といった質問を投げかけることによって、患者自身が思っている Belief (問題がどこにあるのか、何が原因なのかと患者自身が信じていること)を確認することができます。

 

他にも、ストレス、うつ、不安、睡眠障害といった要因(イエローフラッグスと呼ばれるもの)を理解した上で、

いつそれが問題になるのか、いつその話を患者に持ちかける必要があるのか

そういったことを学べたことが大きな収穫となりました。

 

患者さんの中には急性期・慢性期を問わず症状の改善(Symptom relief)を求めてくる人ももちろんいます。慢性痛の患者さんが全て根本治療を最初から求めているわけではないことも、多くの失敗の中から学びました。

 

これがどういうことかというと、急性痛の場合は症状の改善が優先的で、慢性痛を有する人は今まで様々な治療を受けてきて、ただ単に短期的な症状の改善だけではなく、根本治療を求めている人が多い、と自分の中で勝手に解釈してしまっていたことです。そのため、慢性痛を有する患者さんに対して症状の改善といったところを少しおろそかにしてしまったことも反省点の一つです。

 

僕らが何か新しいことを学んだ時、とりあえずやっては見るものの、失敗するたびに自分がやり慣れている方法へと戻りたくなるのが人間の心理だと思います。そこで、やめずに続けることができるか。

 

おそらく、新しいことに挑戦している間に多くの患者さんをがっかりさせてしまったことは事実ですが、それでも少しずつ新しいスタイルが確立しつつあるのは確かです(問診に関する、より詳しい内容については、現在書籍の一部を担当させて頂いています。来年中には出版されると思いますので、追って報告させて頂きます)。

 

このように、臨床に直結しやすいことを学べるというのは、カーティン大学で筋骨格系専門修士の特徴だと思いますが、ここで出会った全ての素晴らしい先生達が口を揃えていっていたことは、

 

ここで終わりではなく、ここからがスタートです。

 

といった言葉でした。本当にその通りで、僕らが学んだことは日々変化しています。常に新しい知識や研究が発表され、ここで終わりではなく、これら自分が学んだことをさらに深めていけるように日々精進していければと思います。

 

 

自分が学んだことをもっと知りたいという方に、6月に帰国した際にお話しさせていただける機会をいただきました。今のところ、仙台の日程は決定しました。仙台で整体院Rootsを経営されている櫻井さんのホームページでご確認下さい(こちらから)。

 

そして、山形済生病院の須賀さんが、「徒手的介入を輝かせる英語論文の読み方」という勉強会を予定しております。これは、世界の最新の知識というのは多くが英語論文で発表されているという事実をもとに、新しい知識を手に入れようとしても、「あぁ英語かぁ・・・」といって諦めてしまいそうな人たちには是非知ってもらいたい内容となっています(こちらから)。

 

 

きっと世間はお正月気分なのに、そのような時でも自分のブログを最後まで読んでくれて、本当に感謝しています。直接お会いできた方も、SNSやブログを通じて知り合った方も、2017年もお世話になりました。2018年も充実した年になるように心からお祈りしています。

 

それでは皆様良いお年をお過ごし下さい。

 

江戸英明