テニプリ 逆ハー連載 Vol.30   最終話 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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七転び八起き  -Vol.30-



約束の場所にはまだ彼の姿は見えなかった。


ホッとしたような・・・寂しいような・・・・。


早く逢いたい気持ちはあるけれど、この場所で今から想いを伝えるんだと思うと、

緊張で胸がバクバクと音を立てる。



もうすでに、自分だけがみんなに届いたメールの内容と違う事を知っているだろうか?

そしてそれが、なにを意味するのか気付いているだろうか・・・・・?


約束の場所で待ってる。と言った時点でもう答えはわかっているようなものだけど、

きっと何度もメールを読み直し、自問自答しているに違いない。




気持ちを落ち着かせよう見上げた星空の中に浮かんだ細い月は

まるで弧を描いて笑っている口のようで、彼の笑顔を思い出した。


彼を思うだけで胸が高鳴って、ドキドキする。

だけどそれ以上に、温かくて優しい気持ちになれる。


「好き」だと伝えたら、笑顔を見せてくれるかな?


気付くまでに時間がかかってしまったけれど、

気づいてしまえば落ちていくのはあっという間で、

初めて芽生えた恋心をうまくコントロールする事なんてできない私は

とめどなく湧き上がるこの想いを、ただ溢れかえらせている。

早く彼に逢って、この想いを伝えたい。

そして全てを受け止めて欲しい・・・・・・


「あ・・・・・。」



見上げた空から、白い雪が降ってきた。

フワフワと揺れながらきらめく雪に、思わず声をあげる。


いつも以上に寒いと思っていたけど、まさか雪が降るとは思わなかった。


そっと手を出すと、小さな結晶はあっという間に消えてしまったけれど、

次から次へと舞い降りる雪は、まるで私の溢れ出した想いの欠片のように思えた。


このまま降り積もればいい。

私の想いの様に・・・・・・



だけど、そんな私の思いとは裏腹に、少しづつ姿を消していく雪。

もう、今にもやんでしまいそうな雪に、

どうか彼が来るまでは・・・・

一緒に見れるまでは、やまないでと願う。



早く・・・・・


早く逢いに来て・・・・・




「・・・・・赤也君。」

「悠奈先輩っ!!」



私の呟きを消すように、大声で私の名前を呼ぶ赤也君の声が聞こえた。


人ごみをすり抜けながら、こちらに駆け寄ってくる姿に、私の全機能が停止してしまう。



あんなに逢いたいと思ったのに、心が震えて声にならない。

早く想いを伝えたいと思ったのに、頭が真っ白で、何も考えられない。



赤也君を目にした瞬間、想いを溢れ返らせていた心の器も弾けてしまい

溜めておく器を失くした心から流れ落ちた想いは、涙となって瞳から零れだす。


私の言葉を伝えるように・・・・

私の心を伝えるように・・・・



次々と零れる涙で視界は霞み、立っている足が震える。

言葉を発することもできずただ涙を流す私を、優しい温もりが包み込んでくれた。


見た目より柔らかな髪が私の頬をくすぐり、ふんわり香る赤也君の香り。



「夢じゃない・・・・。マジ嬉しい。」



私の存在を確かめるように、抱きしめる腕に力がこめられた。


愛しい想いが再び溢れる。


好きだ。

赤也君に逢って、その想いが強くなる。



―――好き


―――――赤也君が大好き



「好きだよ。」



泣いたせいか声が掠れてしまったけど、私が初めて口にした想い。

ゆっくりと顔を上げれば、驚いた顔をした赤也君が私を見下ろしている。


ちゃんと届いたかな?

しっかりと伝わったかな?


驚いたまま顔のまま動かない赤也君になんだか笑が込み上げてきて、

指で涙を拭い、精一杯の笑顔を浮かべ、もう1度この想いを口にした。



「赤也君が好きです。私と付き合ってもらえますか?」


















ゆっくりと登っていく観覧車の中で、雪の舞う街を見下ろす。


吐き出す息は白く、指先はとても冷たいけれど、心の中はとても温かい。


向かい合って座っていた赤也君が、いつの間にか隣に来ていて、

冷たくなった手を包むように握り締めてくれた。



「どうして俺だったか聞いてもいいッスか?」

「どうして・・・?うーん・・・そういわれると難しいな・・・。」

「は?」

「これっていう決め手があったわけじゃないんだよね・・・。」

「えぇ!?」



すごくショックを受けたようにうな垂れてしまった赤也君に

「だけどね・・・」と言葉を続ける。



「この間のデートで、赤也君が言った言葉にすごく心が引っかかったの。」

「俺なんか言いましたっけ?」

「うん。『お詫びにアイス奢る』って言ったんだよ。」

「あぁ~。そういや「何のお詫び?」とか言ってましたね。」

「私、オバケ屋敷でキスしたお詫びかと思ったの。そう考えるとすごく悲しかった。

キスしたお詫びなんていらないって思ったの。」

「だから違うって言ったじゃないスか!」

「うん、嬉しかった。キスしたこと謝ったりしないって言われて嬉しかった。」



そう。あの日帰って何度も考えた。

どうしてお詫びと言われて悲しいと思ったのか。

どうして否定してもらって嬉しいと思ったのか。


答えはすぐに出た。


こんな簡単な事なんだと、あっけに取られてしまうほどだった。


そう。好きだから。

赤也君が好きだから。


他の人に、キスしたことゴメンって言われても、ショックなんて受けない。

謝らないで欲しいだなんて思わない。


それは赤也君だから嫌だったんだ。

なかった事になんてして欲しくないと思ったんだ。



「え・・・じゃぁあの日にもう答えは出てたんッスか?」

「まぁ・・・だいたいはね。」

「なんだよ!なら仁王先輩と幸村ブチョーのデートなんて必要ねーじゃん!」

「ぉ、落ち着いてよ!確かに答えは出てたけど、確信を持つために・・・って言うのかな?」



多分これが好きって事なんだとは思ったけど、絶対間違いない!って言い張れる自信もなかったんだもん。

でも仁王君と精市君とデートして、確信へと変わった。

すごく楽しい時間だったけど、ふとした瞬間に隣にいるのが赤也君だったら・・って思ったから。



なんだか納得いかないような顔をしている赤也君に、「ほら、もうすぐ頂上だよ!」と、声をかけた。



「そうッスね。」

「え?それだけ?」

「え?」

「約束は・・・・もういいの?」



別にそれをすっごく期待して待ってたわけじゃないけど、

せっかく二人で乗ったんだし・・・・

今さっき始まったばかりとはいえ付き合ってるわけだし?

ジンクスとやらを試してみたいじゃないですか?


私の言葉に「あぁ!!」と思い出した赤也君が「よくないっス!」と、身を乗り出してきた。



「これで別れたらジンクスは嘘だって事だね。」

「別れるとかありえねーし。」

「・・・・・うん。」



即答してくれた事が嬉しい。


近づいてくる赤也君の顔に、私はそっと瞳を閉じた―――




・・・・・・・。





「赤也君。携帯鳴ってるよ。」

「いいって。そんなの後で。」

「でも・・・・・なんか取った方がいいような気がするよ?」

「ッチ、誰だよ?・・・・って幸村ブチョー!?」



うん。そうだと思った。

だって危険信号が鳴りまくってたもん。



「あ、切れた・・・・。」

「かけ直したら?」

「・・・・後でかける。それより今は・・・・・・あぁ~!!!!」

「な、何!?」

「もう頂上過ぎてんじゃん!!!」



窓の外を見れば、頂上に違うワゴンが揺れている。


これって精市君の嫌がらせ?

いやいや・・・だってまさかちょうど頂上を見計らってとか・・・・・・精市君ならありえるかも・・・・?



背中を丸めて、すっかりいじけてしまった赤也君は、なんだか猫みたいで可愛い。

さっきちょっと男らしくてカッコイイと思ったんだけどな・・・。

でもどっちの赤也君も、私の大好きな人。



「赤也君。もう1週乗ろっか?」

「え?」



私の声に顔を上げた赤也君に、チュッと一瞬触れる程度のキスをした。



「今・・・」

「今度は頂上でしようね?」



また邪魔が入るかもしれないから、とりあえずは今ここで・・・。


1週といわず何度でも乗ればいい。

数日前の約束が・・・・・叶えられるまで何度でも・・・。




再び上昇していく観覧車を照らすように、夜空に七つの星が輝いていた―――



*****************************************


とりあえず完結で~す!!


終わりました~!!無事に完結させる事ができました~!!!

めちゃくちゃ嬉しいです!!

後は後日談と裏話を数本書く予定です。



さてさて、引っ張りまくって焦らしまくった最後のオチキャラは、赤也でした!!


ユッキーで始まってユッキーで締めたんで、ユッキーオチだと思われた方が多かったようですが

いや、あの流れなら普通はそうだと思いますが、あえて赤也オチという事になりました!


理由はですね・・・・・ただ赤也ブームから抜け出せなかっただけです!(爆)


みんな幸せにしてあげたかったんですがね・・・。ごめんね~!!


クイズの結果発表は別記事で書かせていただきます。

まだ集計できていませんでして・・・。すみません。

コメは全てちゃんと読ませていただいてますよー!!

お返事もちゃんとさせていただきますからもう少しお待ちください。



さて、30話(正確には30.5話)にわたる連載にお付き合いいただきまして、

本当にありがとうございました。


たくさんのコメや感想に支えられ、ここまでやってこれました。

面白いと言っていただけた事本当に嬉しかったです。

スランプに落ちた時、励ましのコメやプチメに勇気をもらいました。

私の体調を気遣ってくださったり、次回も楽しみにしてると言ってくださったり、

全ての言葉が私の活力となり、次への励みになりました。


ギャクハー連載は終わってしまいましたが、

これからも皆さんに少しでも幸せをお届けできるような夢を書き続けたいと思っております。


仁王連載が途中にもかかわらず、新連載を考えていたりするアホーですが

「また読んでやってもいいよ」と思われましたら、お付き合いいただけたら嬉しいです。


こんな私ではありますが、これからもどうぞよろしくお願いします!!




                                                 2008.12.26 雪萌