テニプリ 逆ハー連載 Vol.20 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言


連載ですので続き物となっております。

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から先にお読みください。



七転び八起き  -Vol.20-



「意外だわ・・・・。」


立派な門構えの洋風チックな2階建てのお家。

彼の風貌からして和風の家を想像していただけに意外すぎて驚いてしまった。

普段着も和服で、縁側でお茶をすすってそうなイメージだったのにな・・・。


そんな事を考えながら、私は『yanagi』と書かせた表札の下にあるインターフォンを押した。





昨日は朝から晴天でとてもいい天気だった。

しかし午後になるにつれ雲行きが怪しくなり放課後には大雨となってしまった。

そんな日は早く帰るに限る。

テニス部だって今日は各自自主トレと言う事で、早々に帰ってしまった。

なのに私は運の悪い事に報道部の顧問に捕まり、

なぜか1年生の校外学習のしおり作りを手伝わされていた。

そう言えばうちの顧問1年の学年主任だった・・・。


何でこんな事を・・・と思いながらも、これで貸しを作っておくのも何かの役にたつかも・・・。

なんて腹黒い事を考えつつプリントを折っていく。

しかし単純作業というのはどうしてこうも眠りを誘うのか・・・。

ダメだダメだと言い聞かせながら指を動かしていたが、

おでこに痛みを感じたのを最後に、私は夢の世界へと旅立った。



目が覚めたのは顧問に揺り起こされてからだった。

時計を見ればもう7時!!え!?7時!?

窓の外は真っ暗で雨の音だけが聞こえている。

「あまりに遅いから見に来てみれば・・・。」って、顧問!!遅すぎだっつーの!!

もっと早く見に来てよ!!絶対忘れてたよね!?


作業はまだ途中だったけど、「後は先生がやるから早く帰りなさい。」との言葉に

「いや、当たり前でしょ?」と、言いそうになるのを堪えながら教室を後にした。


早く帰ろう。雨のせいか気温も低くて肌寒い。家帰ったら速攻お風呂だな。

何度体験してもなれない夜の廊下を走りながら靴箱までやって来て、はたと気付く。


「あ・・・・私傘持ってない・・・。」


朝は晴天だったのでまさか雨が降るとは思わなかった。

天気予報も30%くらいって言ってたし・・・。

溜息をつきながら空を見上げるが雨は止みそうにない・・・。


「どうしたものか・・・・・?」

「何がだ?」

「ひゃっ!!」


すぐ傍で声がしたと振り向けば、雨に濡れた傘を持った柳君が立っていた。


「柳君!?どうしたの?」

「俺は今帰りだ。お前こそなぜこんな時間まで学校にいる?」

「先生の手伝い?」

「なぜ疑問系なんだ?しかもこんな時間までか?」

「それは・・・・えっと・・・。」

「ふ。途中居眠りでもしていたのだろう。」


なんでわかんのー!?さすが柳君だ!!

私が驚いた顔をしていると、おでこをツンッと突かれ、

「赤くなっているぞ」と言われてしまった。

なるほど・・・。


「柳君こそ、今日は自主トレだったのに今帰り?」

「ああ。部室で資料整理をしていたらこんな時間になってしまってな。」

「そうなんだ。そりゃお疲れ様です。」
「それより、今日もバスで帰るのか?」

「うん、そう。」

「ではバス停まで送ろう。」

「え?いいの!?柳君電車でしょ?」

「気にするな。そう遠回りになるわけでもない。」


テニス部の取材を始めて帰りが遅くなる事が増えた。

そんな時は同じバス通学の精市君と帰る事が多い。

他のみんなは電車か自転車通学と聞いている。

そして駅はバス停とは反対方向にある。


いいのだろうかと悩んだが、せっかくの申し出だ。ありがたく受けよう。

しかしである・・・・・。私は傘を持っていない。


「あの・・・・それは嬉しいんだけど・・・実は傘持ってなくて・・・。」

「そんな事だろうと思っていた。少し狭いが入れなくはないだろう。」


そう言って自分の傘を少し上げて見せる。

何から何まで申し訳ない・・・・。

私は「ありがとうございます」と手を擦りながら柳君の横に並んだ。



世間ではこういうのを『あいあい傘』と言うのだろうか?

別に普通に並んで帰ってるだけ。ちょっと1つの傘に2人で入ってるだけ・・・。

そう思うのに妙な照れくささが湧き出てくるのはどうしてだろう?


なんとなく恥ずかしくて下を向いて歩いているとガシリと肩を抱き寄せられた。


「そんなに離れては肩が濡れるぞ。」

「へ?だ、大丈夫だよ!!」


右半身に柳君の体温を感じドキリとしてしまう。

そんな事されたら余計に緊張するじゃん!!

左肩に置かれた手もそのままで、顔が熱くなってきた。


「や、柳君。歩きにくいよ・・・。」

「何も照れる事はあるまい。」

「照れてないもん!!」

「ふ。弦一郎に押し倒されても平気だったのに、こんな事で照れるとはな・・・。」


待て待て待て待て~ぃ!!何で知ってんのぉぉぉぉぉ!?

えぇ~見てたの!?あの時見てたの!?まさかね?え?どう言う事ぉ~!?


「赤也の事は精市には黙っていてやろう。」


この人怖っ!!!

千里眼でも持ってんの!?

なんなんですか!?もう人間じゃないよね!?


「俺はそんな能力は持っていない。」

「私何も言ってませんけど・・・。」

「種明しをすれば簡単な事だ。弦一郎は懺悔のつもりで俺に

『お前を押し倒してしまった』と話したまでだ。

赤也はあの日のあいつの顔と機嫌のよさから考えればお前と何かあった事は明確だ。」


キング・・・懺悔って・・・・。

それにしてもさすがデーターマンだ。赤也君の顔や態度で何かあったと読んじゃうなんて・・・。

しかも今のって明らかに私を動揺させて確実な裏を取ろうとしたよね!?

やっぱ怖いよ!!

精市君以上に敵に回したくないな・・・・。


もう何を言っても墓穴を掘るだけのような気がして、

私はそのまま肩を抱かれて歩き、気が付けばバス停までやって来ていた。


バスはすぐにやって来て、私はお礼を言いながらバスに乗り込むと

「この傘を持っていくといい。」と、さっきまで一緒に差してきた傘を差し出された。


「だめだよ!!そしたら柳君どうやって帰るの?」

「鞄の中に折り畳み傘がある。」

「えぇ!?それならわざわざ送ってくれなくてもその傘貸してくれたらよかったのに・・・。」

「お前と二人で話せるいい機会だったからな。」

「あぁ・・・裏付け調査ね。」

「それと肩が少し濡れてしまったようだ。これを羽織って帰れ。」

「え?いいよ!それに私なんかより柳君の方が濡れてんじゃん!!」


鞄の中から取り出したオレンジのジャージを私に手渡そうとする柳君の肩は

制服が変色するほど濡れていて、私が濡れないように気遣ってくれていた事に初めて気付く。

だけど「これくらい大した事はない。」とジャージを広げ肩に掛けてくれた。


ちょうどその時注意を促す音が鳴り、柳君と私の間にドアが閉まった。


動き出したバスの窓に張り付くように柳君を振り返ると、

バスを見送るように立ち尽くす柳君の姿が見えた。


手にある傘を見つめる・・・・。

本当に折り畳みの傘を持っていたのだろうか・・・・?

もし持っていたとしても・・・あの濡れた肩のまま帰って大丈夫なのだろうか・・・?


肩に掛けられたジャージは冷えた私の体を包み込んでくれて温かい。

もうすでに遠く見えなくなってしまったバス停を見つめながら袖を通したジャージからは

石鹸の香りと微かに柳君の匂いがした・・・・。



次の日朝練を終えて教室に来たザッカル君に柳君の様子を聞くと

「なんか風邪引いたとかで休みらしいぜ。あの柳が珍しいよな。」なんて言うではないか!!


絶対私のせいだ・・・。やっぱり折りたたみの傘なんて持ってなかったんじゃないの!?

それに柳君の家まではたしか片道45分ほどだと聞いた事がある。

正確には44分と28秒らしいが・・・・。

もし傘を持っていたとしても45分もの間あの濡れた肩のままだったとしたら

風邪をひいてもおかしくないかもしれない・・・。


私は綺麗に洗濯したジャージと紺色の傘を目の前に1日悩んだ末、

放課後柳君のお見舞いに行く事を決意した。





そんなわけで、 こうやってお見舞いに来たわけである。


チャイムを押して出て来たのは、レースのエプロンをつけた

笑顔のカワイらしいフワフワパーマの女性。

多分柳君の母親だろう。

家にもビックリだがお母様にも驚きだ。絶対和風美人だと思ってたのにー!!

柳君は父親似なのだろうか・・・・・?


名前を名乗りお見舞いに来た旨を伝えると笑顔で迎え入れてくれた。

そのまま柳君の部屋まで案内してもらい、「どうぞ」と開け放たれた扉の中へと入ると

部屋の奥の壁に沿って置かれたベッドの上に半身を起こした柳君がいた。

お礼を述べ静かにドアが閉める。


「御加減はいかがですか?」

「責任を感じて見舞いにでも来たのか?」


これは嫌味なのだろうか・・・?

柳君ががどういうつもりで言ったのかはわからないが、

私は申し訳なさから「ごめんなさい。」と、頭を下げた。


「気に病む必要はない。休まなくてはならないほど悪いわけではない。」

「え?そうなの!?」


言われて見れば確かにそんなにしんどそうには見えないけど・・・。

それでも風邪を引かせてしまったとこに違いはない。

気に病むなといわれても「そうですか。」なんて言えるわけないよ・・・。


「折り畳み持ってるなんて嘘だったんでしょ?」

「・・・・さぁな。」

「・・・・ごめんね。そして本当にありがとう。」

「こうなる事を見越しての行動だ。お前が気にする事ではない。」


ん・・・・?こうなる事を見越して・・・・?

それって・・・どう言う意味だ・・・?


「それは風邪を引くとわかって・・・って事?」

「お前がこうして気に病み見舞いに来るだろうと見越してという事だ。」


はぃ~!?なんじゃそれ~!!

それじゃあ、私に見舞いに来させる為にわざわざ休んだんかい!?


「何の為に・・・?」

「こうして二人で離せる機会はそうないからな。」

「昨日の帰りにもそんな事言ってたけど・・・話そうと思えばいつでも話せるじゃん。」

「お前と二人でゆっくり話せたことがあったか・・・?」


言われてみれば・・・。

取材中なんかも必ず誰かが・・・ってほとんど精市君だけど・・・・いつもいたような・・・・?


「でもだからってわざわざ休む!?それに私がお見舞いに来なかったらどうすんのよ!?」

「お前が来る確立は97%だったからな。

来ないとするならば精市に足止された以外考えられない。」


どんな確立ぅ!?これって喜ぶべきなの!?

そんな薄情なやつじゃないって思ってもらえたと喜んでいいの!?


「なんかよくわかんないけど、まぁ、それほど風邪酷くないみたいでよかったよ。」

「ああ。普段より2度ほど高いだけだからな。」

「そっか・・・・。って、ええっ!?2度!?高いよ!!十分高いよ!!」


なんだこの人。平熱が36度だとしても2度も上がれば38度だよ!?

何でこんなに平然とした顔してんの!?

「休まなくてはならないほど悪くない」って言ったじゃん!!


「なんか柳君って不思議星人だよね。」

「不思議星人?ふ。面白い事を言う。」


全然面白くないけどね。

彼の笑いのツボも良くわからんな・・・。


「とにかく熱高いんだし横になりなよ。」


ベッドへ近づきマットを手でポンポン叩きながら寝るように促すと、その手をギュッと握られた。

熱のせいか手が熱い・・・。


「どうしたの?」

「お前の中で俺はまだ安全圏内という事か?」

「はぁ?何の事?」

「精市や柳生に触れられればお前は今のような反応では済むまい。」


確かに精市君や柳生君に手なんて握られたら飛んで逃げちゃうかも・・・。

だって身の危険を感じずにいられないんだもん・・・。

その辺柳君はまだ安心っていうか・・・・・


「柳君ってそういう事には・・・・・淡白そうなんだよね。」

「なに?」


こんなこと男の子に言っていいのか悩むけど、本当にそんな感じがする。

あまり年頃の男の子がよく読んでるエッチな雑誌とか興味なさそうだし。


「お前にはそう見えているのか?」

「私だけじゃないと思うけどね。」

「そうか・・・・・。」


あれ?怒っちゃった・・・・?

確かに褒め言葉じゃないかもしれないけど、悪い意味で言ったんじゃないんだけどな・・・。


「あ、あの・・・やなぎくん?」

「なら試してみるか?」

「え?」


むくりと起き上がった柳君が床に座った私の手を引きその胸に抱き寄せられたかと思うと

次の瞬間にはさっきまで柳君が寝ていたベッドの上に仰向けで押し倒されていた。


「や、柳君!?」

「俺はお前が思うよりずっと貪欲で強欲な人間だ。惚れた女に色欲の情くらいは抱く。

それに、こんな状況で平常心を保っていられるほど大人でもない。」


少し息の上がった柳君が肩を上下させながら告げた言葉が、私の脳内をぐるぐる回る・・・・。

開かれた瞳に見つめられ、体の全機能が止まったように動く事が出来ない。


柳君の瞳を見るのはこれで2回目だ・・・。

熱のせいか少し潤んだ瞳の奥で、欲情の色が滲んで見える。

彼がいつも瞳を閉じているのは・・・・平静さを失わない為なのだろうか・・・・?

瞳が開かれた時・・・・それは押さえ込んだ理性が解き放たれる時なのかもしれない・・・。


なぜ・・・?どうして・・・・?


そんな事私が聞きたいくらいだ・・・。

だけど、ゆっくりと近づく柳君の顔を背ける事もせず、

私はそのまま熱い息を吐きだす唇を、自分の唇で受け止めた・・・・。


「抵抗もせず受け入れるという事はこの先へ進んでもいいということか?」

「この先・・・・て・・・・?」

「ふ・・・・。言わなくてはわからないか?」


意地悪な事を言われているのに、その笑みさえも色っぽくて見惚れてしまう。


「お前はこちらが動かない限り何の反応も見せないのに、

刺激を与えた途端、驚くような態度に出る。」

「わかんないよ・・・。そんな事言われても・・・。」

「無意識か・・・。仕掛けたつもりが逆に囚われる・・・まさに魔性・・・。」


魔性・・・・?

そんな事言われた事などない。

平凡な人生を歩んできた。

恋さえもした事のない私がまさか魔性だなんて・・・。


この状況に・・・そして柳君の言葉に戸惑いを見せずにいられない。

だけど柳君は薄く微笑みを浮かべ、さらに私に追い討ちをかける。


「俺の熱がお前を侵す事が出来るか・・・・。それとも逆にお前の熱に侵されるだけか・・・。」


これは何かの呪文なのだろうか・・・?

柳君の熱が私を侵す・・・・?


触れ合う肌から柳君の熱が私を熱くさせていく。

それを侵すというのなら・・・もうすでに侵されている・・・。


だけどその含蓄のあるような言葉。

柳君の瞳がそれだけではないと・・・もっと深く感受しろと訴える・・・。


「柳君・・・・。」


何かを言わなければ・・・。

そう思うのに・・・名前を呼ぶことしか出来ない・・・・。


「そんな目で俺を見るな・・・止まれなくなるぞ。」

「柳く・・・っん・・・・。」


もうしゃべるなとでも言うように塞がれてしまった唇。

柳君の汗ばんだ手が私の手に絡まる・・・。

そして・・・・・熱く燃えるような舌も・・・私の舌に絡まっていく・・・。


赤也君の時とは違う滑らかな舌の動きに、体の奥が痺れていくような感覚・・・。

これが本当のキスと呼ばれるものなのだろうか・・・・?


喉の奥から漏れた自分の声に、恥ずかしさで逃げ出そうとすると

「これ以上は何もしない。だから俺を拒むな。・・・・・・せめて今だけでも。」

と、甘く掠れた声で囁き落とし、口付けを繰り返す・・・。


繋がれた手に力が入り、深く深く私を求めるように熱を注ぎ込まれる・・・。


ダメだ・・・・早く逃げ出さなければ・・・。

このまま落ちていって・・・いいはずがない・・・。

だけど腕に力が入らない・・・・。


その目に・・・・その声に・・・その吐息に・・・・その唇に・・・・。

全てが・・・・奪われていく・・・・・。




赤く染まったカーテンが、月明かりに照らされる頃、

穏やかな寝息を立てる柳君の腕を抜け出し、

私はふらふらした足取りで家路へと着いた。


どうやって帰ったのか・・・・その間の記憶はほとんどないけれど、

ただ・・・冷たい夜風の中で、唇だけが熱かった事だけは覚えていた・・・・。


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熱があるとエロを書きたい衝動に駆られませんか?(ならねぇよ!)


悠奈はなんか最低な女になってきましたね・・・。ww

あっちへフラフラ・・・こっちへフラフラ・・・。

だってみんなといっぱいイチャイチャさせたいんだもん!!←


あ、なんだかエロチックに書いてますけどヤッてませんから!!(ウォイ!!)

キスだけですよ。

まだ中学生ですからね。(笑)


なんだか気が付けば20話突入してしまったようですね。

ずっとお付き合いくださっている皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。


出来ればこのまま永遠に逆ハーウハウハ人生を歩んでいきたいところですが

そういうわけにもいきませんのでね。はい・・・。(当たり前)

そろそろ終盤に向けて走り出したいと思います。

30話くらいを最終話にできればいいかな・・・?(予定は未定です。ww)