テニプリ 逆ハー連載 Vol.24 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

連載ですので続き物となっております。

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七転び八起き  -Vol.24-




ズラリと並んだ色とりどりのスウィーツが卓上を鮮やかに彩っている。

どれも可愛らしくデコレーションされていて食べるのがもったいないくらい。


キラキラした眼差しで「どれにしようかな~?」なんて迷う私の隣には

今にもヨダレを垂らしそうなほど目をギラギラさせている丸井君・・・・・。



「ヨダレ落とさないでね。」

「んあ?何か言ったか?」

「何にも言ってない・・・・。」

「お前も早く選べよ!まだ何も乗ってねぇじゃん!」



そう言った丸井君のお皿には、はみ出て落ちそうなくらいケーキが乗せられている。

そんなに欲張らなくたって・・・食べ放題なんだよ?



「席で待ってっから早く来いよ!」

「うん。あ、先食べてていいよ。」

「マジで?・・・・って、いや・・・・お前が帰ってくるまで待ってる。」



別に待っててくれなくてもいいのに・・・。

急かされるようでゆっくり選べないじゃん。


だけど、きっとそれは丸井君なりの優しさなんだと思う。

せっかく一緒に食べに来たんだから、食べ初めくらいは合わせようと思ってくれてるんだろう。


座席の方を振り向くと、すでにフォークを構え

お皿に飛び掛りそうなほど身を乗り出している丸井君が見えた。

それでも、食べるのをグッと我慢して待ってくれている姿は

お預けを食らった犬みたいで、思わず笑ってしまいそうになる。


もうちょっと見ていたい気もするけど、あのまま待たせるのも可哀相なので、

私はとりあえず数種類のケーキをお皿に盛って、テーブルへと戻った。




「うっめー!!コレ食ってみろって。」

「後で取ってくるからいいよ。」

「いいから!!無くなるかもしんねーだろぃ?」



「バイキングなのになくならないでしょ?」そう言い掛けたけど

クリームがたっぷり乗ったケーキを突き刺したフォークを持ち、

満面の笑みを浮かべた丸井君が目に飛び込んできて、その言葉を飲み込んだ。


きっと自分がおいしいと思ったこのケーキを、私にも共感して欲しいのだろう。

「うん。おいしい。」そう言うだけで、絶対今以上の笑顔で「だろぃ?」とか言うはずだ。


だけど・・・・・この目の前に出されたフォークを私に食べろと?

だって・・・コレって俗に言う「あーん」だよ?

恋人同士がやってるのを見てウザイと思う光景ベスト10に入るあれだよ?

そんな恥ずかしい事できるわけない。



「ほら、食わねぇの?」

「いや・・・・じゃあ、ここに置いて。後で食べるから。」

「なんでだよ。今食べればいいじゃん!」



なぜだかムッとしたような顔になり、さらにフォークを突き出してくる。


え~なんでそんなに食べさせたいわけ?

いいじゃん。後で食べるって言ってんだし!!

「あーん」とかムリですからぁぁぁ!!


きっと丸井君はこの恥ずかしさがわかってないんだ。

なら同じ事してわからせてやる!!


同じように「あーん」なんてフォークを向けられたら、どんなに恥ずかしいかわかるだろう。

私はそう思って、自分のフォークに食べかけのショートケーキを乗せ

「ならコレ食べてみてよ。」と、丸井君の口元に持っていった。


パクッ。


・・・・・・・えぇ!?

た、食べたぁ~!?



「うん。うめぇ。さっき自分で食ったのよりさらにうめぇ!」



恥ずかしがって、私の気持ちに気付いてくれるはずだったのに、

それどころか何か喜んでるように見える!!



「な、な・・・な・・・・・。」

「じゃぁ次は原の番な。早く口開けろって!」



なんでぇ~!?

丸井君はこういうの平気なの?



「やだ・・・。無理。出来ない。」

「なんでだよ!?」

「恥ずかしいもん・・・・・。」

「1回だけだから。」

「何でそんなに食べさせたがるの?」



こんなに嫌がってるのに・・・。

それにこんな強引な丸井君はあまり見た事がない。

そこまでして食べさせたい理由でもあるのだろうか・・・?



「―――・・・だよ。」

「え?」

「俺の夢だったんだよ!」



何が~!?

顔は真っ赤で、拗ねたように顔を背けて口先を尖らせている丸井君。

え?・・・・・・えぇ~!?



「ゆ、夢って・・・・『あーん』が?」

「そうだよ!悪いか!?」

「わ、悪くはないけど・・・・。」

「好きな女とこういう事したいってずっと思ってたんだよ。」



す、すすすすすすす好きな女って~!?

それって・・・・・・私のこと・・・・・なんだよね?

だからあんなに必死に食べさせようとしてたって事?


平気そうにしてたけど、本当はすごい勇気を振り絞って言ってくれてたのかもしれない。

恥ずかしいって思ったのは、私だけじゃなかったのかも・・・・。



「あ、あの・・・。」

「ん?」

「・・・・・・1回・・・だけだからね。」

「え?」

「もう言わない!!聞こえなかったならこの話はおしまい!」

「わ、ちょ、待てって!!聞こえた!聞こえたから!!」



慌ててフォークを持ち、さっきと同じようにケーキを私の口元まで運ぶ。

だけどその手はよく見たら震えていて、丸井君も緊張している事がわかった。



「・・・・・パクッ。」

「・・・・・うまいか?」

「・・・・・わかんない。」



穴が開いちゃうんじゃないかと思うほど丸井君の視線を感じながら

「あーん」なんてして食べたケーキの味などわかるはずがない!!



「わかんないってなんだよ?」

「恥ずかしすぎて味なんてわかんないよ!」

「ならもう1回食え。」

「1回だけって言ったでしょ!!」



あんなのもう1回なんて絶対無理なんだから!

恥ずかしさを誤魔化す様に自分のケーキを食べようとして、その手を止めた。


そう言えばこのフォークって・・・・・さっき丸井君が・・・・。

って事は・・・・・。


慌てて丸井君を見れば、「ちぇっ。うまいって言えよな・・・。」なんて言いながら

さっき私が食べたフォークで普通にケーキを食べている!


いや、あーんってする前にも丸井君が食べてたわけで・・・・・

私のフォークも私が食べてたのを丸井君が食べたわけで・・・・・

もうその時点でお互いに間接・・・・・ってヤツをしたって事なんだけど・・・。

え?「・・・・・」って何って?それは自分で考えてください!!



「フォーク取って来る。」

「なんで?」

「だって・・・・・・。」

「なんだよ!?俺が口付けたフォークじゃ食えないって?」

「そ、そう言うんじゃなくて・・・・・。」

「じゃぁなに?」

「その・・・・・食べる度に思い出して恥ずかしいんだもん。」

「はぁ?」



悪いですか!?

目の前にその相手がいる状態で平然と食べたりなんて出来ない!!

口を付けるたびに「さっきこのフォークで丸井君が・・・」って考えちゃうんだもん!!



「お前、仁王や赤也達とキスしたんだろ!?」

「ちょ、そんなデカイ声で言わないでよ!!」

「それでも普通にあいつらと接してんじゃん!?」

「それはそうだけど・・・・。」

「そんでなんで間接キスくらいでそこまで照れんだよ?」



そんな事聞かれてもわかんないよ・・・・。

それに、普通にするよう心がけてただけで、まったく平気だったわけじゃないし・・・。



「新しいフォーク取ってくんのはダメだかんな!」

「えぇ~!?」

「食う度に俺を思い出すってんなら、尚の事取替えさせれるわけないだろぃ?」



「俺の事で頭いっぱいにしながら食え。」なんて悪戯っぽい笑みを見せながら、

ケーキを食べだした丸井君に、頭がクラクラとしてきた。



「自分で食えねぇなら食べさせてやろうか?」

「いい!!食べるよ。食べればいいんでしょ!!」



半ばやけくそ気味に、ケーキにフォークを突き刺して、かき込む様に口いっぱいに頬張っていく。

考えるな・・・。考えたら手が止まる!!



「原ってやっぱ面白れぇよな。」

「ほぇ?」

「一緒にいて飽きないって言うか・・・・。」

「そ、そう・・・・?」

「ああ。・・・・・俺、かなりお前のこと好きだわ。」

「~~~!!??」



今サラッと告白された~!?

ちょっと待ってよー!!

前はあんなに遠まわしな告白だったのに、なんで急にこんな直接的な告白すんの!?

しかもケーキ食べてる最中とか!!


むせそうになって、急いで紅茶を喉に流し込みながら胸を叩くと、

丸井君が優しく背中を撫でてくれて、バクバクとなる心臓がさらに大きく鳴り響き

頭から湯気が出てしまいそうなほど顔が真っ赤に染まっていく・・・・。



「なぁ、原。」



恥ずかしさで俯く事しか出来ない私に、優しく語りかけてくる丸井君。



「クリスマスさ、その日限定のケーキが出るんだって。」

「へ?」



何を言われるのだろうと、ドキドキしていたらケーキの話で気が抜けてしまった。

告白したと思ったら次はケーキの話?

それは私を落ち着かせようとしてなのかどうかはわからないけれど、

丸井君らしい話題に、つい俯いていた顔を上げ丸井君の顔を見てしまった。



「二人で食いに来れたらいいな。」



目が合った瞬間、丸井君の口から出てきた言葉に

胸の奥を突き抜かれた様な痛みが走る。


声は聞いた事がないほどに真剣で、だけど目の前の丸井君の顔は

その声とは裏腹に、とても優しく微笑んでいた。



「ケーキとって来るわ。」



照れ隠しのようにその場を慌てて離れて行く丸井君の背中を見つめながら

「もう、おなかも心もいっぱいで食べれそうにないよ・・・・。」と、呟きを落とす。


だけどもし・・・・クリスマスに一緒に食べに来れたなら、

その時は一緒に全制覇できたらいいな・・・・・。もちろん限定のケーキも。




それはケーキよりも甘く・・・


だけど少しほろ苦い・・・・。


そんな3つ目の約束。


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3人目はブンちゃーん!!


実はあみだくじでは、3人目別の人だったんですが

その人じゃどうしても甘くなりそうになかったんで、

4人目だったブンちゃんと入れ替えちゃいました(笑)


どうですか!?

シリアス続きでしたが甘くなりましたか!?

私は書いてて背中が痒くなりました(笑)


「青いよ!!君達~!」

って、言いたくなる様なお話ではないでしょうか?(そうでもない?ww)