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あなたの「学園天国」は、フィンガー5?それともキョンキョンこと小泉今日子さん?
…とは無関係な話なのですが。
ついこの間、わたしにとって「楽園」のような「天国」のような、素敵な一夜があったのです。
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若い頃世話になった先輩から、十数年ぶりに呑みに誘われた。
行きつけのBARがある、一緒にいかないかと。
待ち合わせた駅裏の古い居酒屋で、焼き鳥を片手にビールとハイボールで軽く喉を潤して。
「マスターにこの時間に行くから、って言ってたけど過ぎちゃったな。まあいいや、夜は長いから」
程よく酔いが回った先輩が腕時計を見ながら言うのを聞いて、慌てて追加のハイボールのオーダーを取り消すわたし。つい話が弾んで呑みすぎちまったが、今夜のお楽しみはこれからだ。
「お腹も満たされたし、そろそろ行きますか」
その居酒屋からさらに先の、小さな吞み処が並ぶ薄暗い路地をしばし歩く。
ほどなく、古びた雑居ビルの入り口に置かれた小さな看板が目に入った。
〝岡田有希子ファンの店 rememBAR FAIRY〟
の手書き文字が、小さな照明にうっすらと浮かんでいる。
世に昭和歌謡BARは数あれど、ユッコこと岡田有希子さんに特化したお店はこちらが唯一だそう。実はこの先輩はユッコさんのリアルタイムファンで、この店のオープン時からずっと通っているらしい。そんなお店の存在も知らずにこのブログを書き散らしていたわたしは、やっぱりドアホだった。
二階への急な階段をゆっくり登り、重いドアを開けると。
あの頃使われていたであろう、等身大パネルのユッコさんが笑顔で出迎えてくれた。
ドアの向こうはポスターやイラスト、グッズなどユッコさんゆかりのアイテムで埋め尽くされた、どことなく洞窟を思わせる空間だった。初めて来たのに、なぜか懐かしい。
洞窟の奥に輝く大きなモニター。流れている映像はもしかして、あの〝Heart Jack〟コンサート?
時の流れを感じさせない、まるで目の前にあの日のユッコさんがいるようなクリアな画質と臨場感あふれるうたごえ。これは嬉しい!一気にあの時代に還った気がする!!
6〜7人も座れば満席の小さなカウンターの奥から、柔和な瞳が印象的な長髪のマスターがわたしに「うち初めてですよね。合言葉をお願いします」
え、合言葉?聞いてない!どうしよう?隣の先輩はニヤニヤするばかり。
「ユッコさんが香港で食べたゼリーは、なんの味だったでしょう?」
「?…ぼ、墨汁??」
「はい正解で〜す!ドリンク1杯サービスしますね♡」
店名と同じ〝FAIRY〟という名前の1杯。
緑茶割りカクテルにも妖精の魔法がかけられているのだろうか?
うっとりするほど、美味しい。
いつもはマスターと客、一対一がほとんどというこの店に、今夜はなぜかお客が続いて。それは賑やかに。
「おおミスター、会いたかったよお!」
常連客みんなから〝ミスター〟と呼ばれている先輩。聞けば若い頃自称していた〝ミスターピュア〟から来ているニックネームらしい。
そんな先輩、ミスターが常連さんをわたしに次々紹介してくれる。彼も彼女もみんな、普段は〝孤独なユッコファン〟なんだ。場が盛り上がらないわけがない。
グラスを空けながら笑ったりしんみりしたり、忙しく楽しいひとときはあっというまに過ぎ、〝Believe In You〟をBGMにお別れを。
「わたしさん、また来てね!」
いつのまにかみんなから〝わたし〟と呼ばれることになったわたし。
いまのマスターは2代目。残念ながら先年なくなられた初代マスターは、こう言っていたそう。
「いつでもユッコさんの曲が流れ、ユッコさんの映像が迎えてくれる。孤独なユッコファンどうし知り合いになったり、お酒を吞みながらのんびり話ができる、そんなBARがやりたかったんです」
ユッコファンにとってまさしく楽園、まるで天国のようなこの店の存続を願った2代目は、昼に別の仕事をしながら夜はこうして店を開けているとのこと。いい話だ…。
〝rememBAR FAIRY〟またぜひ行きましょう、ミスター。
駅裏の居酒屋にてビールと焼き鳥でお腹を満たせば、さあ準備OK!
この店の重いドアは夢の国の扉だった。
開けばきっと今夜も、ユッコさんとユッコフレンズの笑顔が待っている。
本文に登場する人物やお店は、すべてわたしの妄想からうまれたフィクションです。実在の人物やお店とは一切関係ありません。
photo by yukikostarlight