「男の子は滅多なことで泣いては駄目だ。」

 

そういわれ続けて育ったわたしは当然、泣き虫なこどもでした。

でもさすがに、高校生になる頃はもう泣くこともなくなり、

親を見送った時も泣かなかった、立派なおとなになりました。

 

なのに、なぜ。

 

〝歳をとると涙もろくなる〟のは本当かもしれないと思ったのは、

ある日YouTubeから流れてきた、ユッコこと岡田有希子さんがうたうBelieve In You」何気なく聴いていたわたしの目から、はらはらと勝手に涙が流れ落ちた時でした。

 

Believe In You」はユッコさんのコンサートの終盤でうたわれる、ファンにとって大切な意味合いを持つ曲だったそうですね。そんなことは知る由もなかったわたしだけでなく、ユッコさんが空の上のひとになって30数年後にして彼女の魅力に気づいた、「遅れてきた中年」たちの涙腺を破壊するすごいパワーをこの曲は持っていると思うんです。

 

〝世界中の なつかしさ こめて あなたとまた 会う日まで I believe in you〟

 

なんというかこの歌詞が、とにかく沁みませんか?

どんどん深く彼女を想ってしまうんですよね。

 

というわけで「岡田有希子→Believe In You→落涙」と、自分の意思と無関係に身体が反応するようになってしまった、遅れてきた中年は当然困るのでした。

なにしろ狭い家でいきなりおっさんが目を潤ませていたら、家族の不審極まりないですもんね。

 

そこでわたしはユッコさんを聴きたくなったら、とあるラーメン屋に行くことにしました。そこは激辛が売りの、カウンターにティッシュの箱が並んでいるようなお店。

 

通い慣れないお客さんはたいてい汗と涙にまみれていますが、唐辛子の強烈な辛さに垣間見えるやさしい野菜の甘みと、変に胃にもたれず毎日食べたくなる素性の良さに、いつしか病みつきになってしまったわたし。

いつも混んでいて、さらにたいていのお客さんが目に涙を浮かべている?ここなら、悪目立ちせずに泣けそうだ…。

 

というわけで、わたしはそれからしばらく夜な夜な、激辛が売りのラーメン店のカウンターでユッコさんのうたごえを聴きながら麺をすすっては泣き、スープを飲んではむせて泣いていたというわけです、紛う方なく。

 

終電前のターミナル街。とある激辛ラーメン屋のカウンターで、ひとりイヤホンを耳にはらはらと涙をこぼしながらラーメンをすすっている中年がいたら、それはわたしかもしれません。

 

photo by yukikostarlight

 

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