日本と同じ潜在的核保有国に
鈴置（Suzu-oki）:
「韓国保守を代表するメディア」と自他ともに認める
朝鮮日報が社説で核武装を訴えました。
11月8日の
「AbseKoreaTrumpRipOffMoneySecurityPopulismOfMoon1
最後の段落を訳します。
・過去70年間、我々は韓国米国同盟を基軸に
北朝鮮・中国・ロシアの脅威を防ぎ、平和と発展を享受してきた。
だが、
「一度も経験することのなかった」米国大統領と、
「一度も経験することのなかった」国を作る
韓国大統領のポピュリズムが重なって、
あたかも津波が安全保障の防波堤を乗り越えてくる状況だ。
・今、米国ではほんの一部ではあるが、
韓国と日本の自衛的な核武装、
（米国との）核シェアリング、
（米国による）戦術核再配置などが公開的に議論されている。
危機の中に光を探さなくてはならぬ。
朝鮮日報は翌11月9日の社説
（韓国語版）で、さらに踏み込みました。
米国韓国原子力協定を改定し、
日本のようにウラン濃縮とプルトニウム再処理の権利を獲得する――
つまり、いつでも核兵器を開発できる体制を整えるべきだ、
と具体的な核武装への道のりを示したのです。
一気に5倍の分担金を要求
――なぜ突然、核武装を訴え始めたのですか？
鈴置（Suzu-oki）:
「米国に見捨てられる恐怖」に襲われたからです。
米国韓国は在韓国米軍の駐留経費の分担金の交渉に入りました。
そこで米国が韓国に分担金を
一挙に5倍に引き上げるよう求めていることが明らかになりました。
2019年の分担金は1年間で1兆389億ウォン
（現在のレートで8・97億ドル＝980億円）。
米国の来年以降分の要求額は年間47億ドルとも、
50億ドルとも報じられていますから、5倍以上です。
これを韓国政府が呑むとはとても考えられません。
2019年の分担金は前年比8・2%増でしたが、
それでも国民からかなりの反発の声があがりました。
今年の分担金が最終決着する少し前の1月25日に
「仮に、増額に応じないと在韓国米軍を撤収する、
と米国が言ってきたらどうするか」
と、ある世論調査が聞きました。
52・0％の韓国人が
「在韓国米軍が削減・撤収しようとも増額には反対」
と答えています。
一方、「増額を受け入れる」が30・7%、
「分からない・無応答」が17・3％でした
（「Korea'sLikeVenezuelaAdvancedConflictAntiVsProUS2
Korea'sLikeVenezuelaAdvancedConflictAntiVsProUS1
韓国の「ベネズエラ化」、反米派と親米派の対立で遂に始まる“最終戦争」
参照）。
しかし今回、米国は強気で、
本当に「呑まないと、在韓国米軍を削減する」
と脅しています。
先に引用した朝鮮日報の社説
「AbseKoreaTrumpRipOffMoneySecurityPopulismOfMoon1
（韓国語版）は
「米国の交渉代表は、米軍撤収・削減に関し
『トランプ（Donald Trump）ならやりかねないぞ』
と言ってくる。完全に脅迫だ」
と書きました。
「米軍追い出し」
を狙う文在寅（Moon Jae-in,문재인）
――露骨ですね。
鈴置（Suzu-oki）:
単なる脅しで終わりそうにないところがミソです。
トランプ大統領なら在韓国米軍の撤収に動いても不思議はない。
2018年6月の第1回米国北朝鮮首脳会談の後に
「すぐにではないが、在韓国米軍の兵士を故郷に戻す」
と語っています
（『在韓米軍撤収,米国が北朝鮮を先行攻撃できる体制は整った2
결국 '주한 미군'철수 호포가 울리면 미국이 북한을 먼저 공격 할 수있는 체제가 갖추
USforcesRetiringKoreaUSCantoAttackN-Korea2
――米軍が撤収したからと言って、
米国韓国同盟が消滅するとは限らないのでは？
鈴置（Suzu-oki）:
在韓国米軍の撤収は事実上、米国韓国同盟の消滅につながります。
この米国韓国同盟には自動介入条項がない。
米国の軍人が韓国に存在することが、
韓国が攻撃を受けた時に米軍が助けに来る担保となっているのです。
在韓国米軍の削減・撤収は
文在寅（Moon Jae-in,문재인）大統領も後押ししています。
現在、韓国軍の戦時作戦統制権は
米国軍の大将が司令官を務める米国韓国連合司令部が握っています。
文在寅（Moon Jae-in,문재인）政権は「国軍の独立」を名分に、
統制権の早期返還を求めました。
米国も韓国の要求を基本的には受け入れ
「韓国軍が十分な能力を保有することが確認された段階で移管する」
ことになりました。
統制権の返還に伴い、
連合司令部の司令官も韓国側が出すことになりますが、
そうなると在韓国米軍は大きく削減される可能性が大きい。
米国は「一定以上の規模の部隊の指揮は他国の軍人に任せない」
との原則を持つからです。
文在寅（Moon Jae-in,문재인）政権は任期が終わる
2022年5月までに統制権を返還するよう強く求めています。
でも、韓国軍には北朝鮮軍の動向を偵察する能力もないなど、
「独り立ち」は当分無理との見方が一般的です。
保守派にすれば、
文在寅（Moon Jae-in,문재인）大統領は
北朝鮮が核を持ったというのに米国軍を追い出す、
とんでもない指導者です。
朝鮮日報の社説の見出しに
「核がなくとも安保ポピュリズムの文」
とあるのはそれを指します。
クルド人も見捨てた米国だから…
――「米国が韓国を見捨てる」ことに話を戻すと……。
鈴置（Suzu-oki）:
韓国人にもっともショックを与えたのが、
米軍がシリアから撤収するとの今年10月の発表でした。
トランプ大統領は同盟関係にあった
シリアのクルド人勢力を見捨てたからです。
韓国人は「次は我々だ」と考えたのです。
朝鮮日報は10月11日、
「TrumpDisbeliefClanKurdCanYouSaySomeonElse Story?
트럼프 '혈맹 쿠르드族' 배신, 남 일이라 할 수 있나
トランプの『血盟のクルド人』への背信、他人の話と言っていられるのか」
（韓国語版）という見出しの社説を載せています。
裏切りを非難されたトランプ大統領は
「第2次世界大戦でクルド人は米国を助けなかったからだ」
と説明しました。
滅茶苦茶な言い訳ですが、その理屈から言えば、
韓国は真っ先に米国から見捨てられるべきです。
韓国は「米国を助けない」どころか
「米国を裏切り、中国の言いなり」になっています。
朝鮮日報の
「Don'tStandChinaSideSecretaryStatePressuresOpenly
（11月8日、韓国語版）で、以下のように報じました。
USseniorOfficiaSimultaneousPressureEconomyGSOMIA
・クラック（Keith Krach）国務次官は11月7日
（韓米外交当局がソウルで共催した韓国米国・官民経済フォーラムで）
「中国は米国の価値に敵対的であり、米国に否定的な影響を持っている。
韓国米国関係はインド太平洋地域の安全保障追求に重要な柱の役割だ」
と述べた。
・中国を露骨に批判しつつ、
対中国牽制策である
「インド太平洋戦略」に韓国が積極的に参加するよう要求したのだ。
韓国はインド太平洋戦略への参加を拒み、逃げ回っています。
この記事の見出し通り、
韓国は米国から中国側に鞍替えし始めているのです。