水底に潜水艇のごと寒鯉

 ( みなそこに せんすいていのごと かんごい )

先日疏水べりを散策している時に、ある橋の下に10匹近い鯉がじっと動かず屯しているのを見た。

 


 

この疏水には、一年通して数十匹の鯉が放流されているが、冬季は何か所かに集まっていて、あまり動かない。

 


 

体色が濃い灰色のものがほとんどなので、パッと見ると潜水艦が水中で待機しているようにも見える。

 


本日の掲句は、そんな印象を詠んだもの。中七は当初「潜水艦」としていたが、やや大げさなので「潜水艇」とした。

 


 

尚、「寒鯉」とは、寒の時期に水中でじっとしている鯉のことで、冬の季語になっている。他方「錦鯉」「色鯉」「緋鯉」などは夏の季語。

 


 

ところで、「鯉」とはどんな魚なのか。身近で見ていながら、あまりその実態を知らなかったので、Wikipediaなどを参考に要点を整理し、一度本ブログでも掲載したことがある。覚えておられる方もいると思うが、参考のため再掲したい。


 

● 鯉は、コイ目・コイ科に分類される魚で、比較的流れが緩やかな川や池、沼、湖、用水路などにも広く生息する淡水魚である。
● 食性は雑食性で、水草、貝類、ミミズ、昆虫類、甲殻類、カエル、他の魚の卵や小魚など、口に入るものならたいてい何でも食べる。
● 生命力は極めて強く、魚にしては長寿の部類で、平均20年以上、まれに70年を超す個体もある。鱗の年輪から推定された最長命記録は226年だとか。(信憑性は?)

 


 

● 日本のコイは大昔に中国から移入されたと言われていたこともあったが、琵琶湖など第三紀の地層から化石も発見され、古来日本に自然分布していたとされる。
● 錦鯉(ニシキゴイ)は、普通の鯉を観賞用に養殖した変種。黒以外のものを色鯉(イロゴイ)、特に赤い鯉を緋鯉(ヒゴイ)、色彩や斑点など、体色を改良されたものを錦鯉(ニシキゴイ)という場合もある。
● 錦鯉の育成は新潟県で19世紀に始まり、1914年の東京博覧会に出品されてから注目されることとなり、日本中で爆発的に広まった。現在は世界的にも注目され輸出されている。

 


 

「鯉」を詠んだ句は非常に多いが、以下には、特に「寒鯉」を詠んだものを選んで掲載した。


【寒鯉の参考句】
寒鯉を見て雲水の去りゆけり(森澄雄)
寒鯉の凝然たるを凝視せり(相生垣瓜人)

*凝然(ぎょうぜん):じっと動かずにいるさま。
寒鯉の居ると云ふなる水蒼し (前田普羅)
寒鯉の鬱々としてたむろせり (五十嵐播水)
寒鯉や石ともなれず身じろぎぬ (但馬美作)

 

 

*本記事は日時指定投稿したものです。昨日より一泊二日の小旅行に出かけてますので、コメントの返信等は30日以降になります。ご了承ください。