官房長官や参議院議員会長などを歴任された青木幹雄先生のお別れ会が今日(29日)、都内で開かれました。

 20年ほど前、青木先生のご地元・島根県の隣、鳥取県に私が時事通信記者として勤務していた頃、中海や山陰自動車道などの課題をめぐり青木先生の力を感じる場面が多々ありました。謦咳に接するようになったのは私が参議院議員になってからでした。青木先生は既に国会議員を引退されていましたが、折に触れて私たち若手議員との懇談の機会をいただきました。選挙で選ばれる公職の中で最も任期の長い『参議院議員』としての重みと矜持について話してくださったことが今も胸に刻まれています。

 今日のお別れの会での尾辻秀久参議院議長の弔詞で、青木先生も参議院農林水産委員長を務められたことを知りました。私がお預かりしている職責について思いを新たにするとともに、歴史の批判に耐えうる仕事をしなければと心に誓いました。
 この数年にわたる懸案だった改正出入国管理・難民認定法が参議院本会議で与党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決成立しました。残る最大の課題の防衛財源確保法案においても、立憲民主党は委員長解任決議案や大臣問責決議案などで審議遅延を図るだろうと言われています。しかも、最後には内閣不信任案を出す構えのようです。

 ただ、奇異に感じるのは、「野党が内閣不信任決議案を出すことと衆院解散は関係ない」(安住淳・国会対策委員長)などと不信任を出しても衆議院解散・総選挙を行うべきではないとの考えを示されていることです。



 内閣不信任が可決された場合、内閣総理大臣は内閣総辞職か解散総選挙のどちらかを選択しなければいけません。内閣総辞職をしても、自民党が圧倒的な議席数を占めているので新たな自民党内閣が誕生することになります。立憲民主党は「岸田内閣に代えて別の自民党内閣を誕生させたい」と考えている訳ではないと思います。であるならば、野党として内閣不信任案を突き付けるということは「解散総選挙をしろ!」と言っているに等しいと思います。

 不信任を出すならば「自民党と立憲民主党、どちらが正しいか国民に聞くべきだ」と堂々と主張されるべきです。「不信任を提出しても与党に否決されるだけだから…」との思いが垣間見えるので、日本維新の会の馬場伸幸代表から「夏になれば盆踊りをするように会期末になれば不信任案を出すといった国会の慣例には全く協力する気はない」と指弾されてしまうのだと思います。

 私が政治記者時代、野党民主党も野党自民党も不信任案を提出する時は相当な覚悟を持って臨んでいました。「不信任は出すけど解散は困る」では野党第一党の体をなしていません。

 どの政党が国家を担う覚悟があるのかが分かる大事な局面を迎えると思います。
 出入国管理・難民認定法改正案が参議院法務委員会で賛成多数で可決しました。立憲民主党が委員長解任決議や法務大臣問責決議を出した影響で、委員会採決が1週間遅れました。解任決議も問責決議も過去最大の差で否決され、立法府としての意思は明らかでした。

 にも関わらず、採決の際に一部野党は委員会室に法務委員会以外の議員を大量に動員して議事の妨害を続けました。



 ついには実力行使に出る議員まで現れ、複数の方が負傷しました。



 自分の意見が絶対に正しいので、やむにやまれず実力行使に出た――。これはロシアの主張と同じです。意見が違うから政治の場で議論をし、結論を出さなければいけません。

 採決後の質疑で国民民主党の川合孝典参院幹事長が「委員会室がうるさくて何も聞こえない状況になるということは、議会、委員会運営のルールにもとる行為だと思うのでこの場で敢えて苦言を呈させていただきたい」と指摘されるなど、野党の中でも厳しい見方が広がっています。



 私が所属している委員会ではありませんが、出入国管理・難民認定法(入管法)改正案を審議している参議院法務委員会で与党が採決しようとしたら、立憲民主党が「審議は尽くされていない」と委員長の解任決議案を国会に提出しました。



 またか、という思いです。対決法案が国会にかかる度に野党第一党は「まだまだ審議する課題は残っている!」「採決をしようとするのは横暴だ!」と委員長解任決議案や所管大臣の問責決議案などを乱発して審議の引き延ばしを図ってきました。

 私が国会議員になった10年前、『審議が尽くされる日』と題したブログを書きました。



 このブログで私は次のように書いています。

物事はいつかは結論を出す必要がある。しかし、反対する人にとってはどれだけ議論しても十分でない。つまり「審議が尽くされていない」との主張は「私はこの法案の中身に反対です」という意味なのだと思います。審議を1時間で打ち切るような極端な場合を除いては議論の時間が問題ではないのです。野党の立場から言えば「政府・与党が強行に決めた」ではなく、「政府・与党に我々の主張が受け入れらなかった」との説明がより正確です。

 今回の参院法務委員会の事例もまさにこの通りだと思います。上記NHK記事によると、野党筆頭理事は「委員長の職権で採決を行うことは民主主義の崩壊だ」と話されているそうですが、まったく理解できません。野党が応じなければ永遠に結論を出せない方が「民主主義の崩壊」だと思います。杉久武法務委員長が「解任決議案の採決には毅然と臨みたい」と仰っていることに、同じく常任委員長を務める者として強く賛同します。明日の参院本会議で委員長の解任決議案を粛々と否決しなければいけません。

 今国会の会期末が3週間後に迫り、立憲民主党は他の委員長の解任決議案や大臣の問責決議案を次々に出してくるのではないかとも言われています。主要政党の中では立憲民主党と共産党以外の党はこうした動きとは距離を置いているようです。政党同士、考えが違うのは当然です。互いが歩み寄れるよう最大限努力した上で、「最後は賛否を超えて結論を出す」という文化を国会に根付かせていかなければいけません。
今朝の毎日新聞。
来週、予算案が成立したら、「予算委員会は当面予定されておらず、国会は『開店休業』に近い状態になる」。

 予算成立後は各委員会で法案などの審議が会期末まで続くにも関わらず。。。この記事は「政府追及や政局にしか興味がありません」と言っているに等しいと思います。普段は「政策中心の政治を!選挙を!」と主張しているのに。

 こんな記事を書く記者も記者なら、通してしまうデスク(編集担当次長)の見識も疑われると思います。私が記者時代に接していた毎日新聞の記者には優秀な方もたくさんおられました。政府与党の批判でも結構ですので、読み応えのある記事を期待したいと思います。最も歴史のある全国紙として。