【中村一義 入門or再発見】10枚のアルバムからおすすめ曲を1曲ずつ紹介 | とかげ日記

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👆若い頃の中村一義さん。(問題があれば画像を削除するので、関係者の方々はコメント欄でお申し付けください。)

親しみやすいキャラクターだけど、天才と称されることの多い中村一義さん。彼の音楽は、僕の半生の伴走者です。今日はそんな中村さんの名曲をこれまでのオリジナルアルバム10枚から1曲ずつ紹介したいと思います!

(<略称>AL=アルバム)

#中村一義10枚から各1曲
「永遠なるもの」 ('97)
↑『金字塔』(1stAL)




ロッキング・オン社長の渋谷陽一が「10年にひとりの天才」と形容して鳴り物入りでデビューした彼。しかし、それは誇大広告ではなかった。宅録なのに(あるいは、だからこそ?)これほどまでに豊かに構築された音楽は聴いたことがなかった。1stでは「犬と猫」派も多いだろうが、博愛の感情が心に触れるように伝わる本曲を選んだ。

#中村一義10枚から各1曲
「そこへゆけ」 ('98)
↑『太陽』(2ndAL)




ジョンレノンのように自身と人間に真正面から向き合い、ポップに昇華する良曲の数々。その光でリスナーの僕のズルいところも晒されてしまうような恐怖もある。「魂の本」推しだが、ALの本質が強く露出した本曲を選曲。

#中村一義10枚から各1曲
「君ノ声」 ('00)
↑『ERA』(3rdAL)




僕の生き方の理想がこのALには詰まっている。偽善の入る余地を感じさせないシャープな作風だが、一本筋の通った"愛"がある。特にこの曲はスイートではないが優しさがあり、鋭い意思も相まって胸を打つ一曲だ。

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👆このアルバムを題材にしてこんなイカれたエッセイを書けるのは、よーよーしかいない🦑

#中村一義10枚から各1曲
「セブンスター」('02)
↑『100s』(4thAL)




中村さん名義だが、本作から7thAL『世界のフラワーロード』までバンド「100s」の演奏。本ALからは「キャノンボール」を選ぶ方も多そうだが、長きにわたり自分を支えてくれた本曲を選んだ。スマパン「1979」を彷彿とさせる、幻影のように淡く、かつ意思を伴った音像は"闇の中の光(希望)"の具現化そのもの。

#中村一義10枚から各1曲
100s 「やさしいライオン」('04)
↑『Oz』(通算5thAL)




中村さんの曲作りにも名うてのスタジオミュージシャンでもある楽器隊(100sメンバー)の演奏にも、ソリッドで天才的な完成度があるAL。彼が祖父を弔ったこの曲を通して、亡くなった肉親に心を寄せた記憶がある。

#中村一義10枚から各1曲
100s 「希望」('07)
↑『ALL!!!!!!』(通算6thAL)




前作から一転、ストレートなバンドサウンドを聴かせるAL。本曲は実力派が真正面から希望を歌えば名曲になる好例。「オレはオマエをずっと好きだぜ」という歌詞がこんなに風通し良く響く歌は他にある?

#中村一義10枚から各1曲
100s 「モノアイ」('09)
↑『世界のフラワーロード』(通算7thAL)




僕にとって衝撃の『金字塔』、心の支えの『ERA』、構築美の『Oz』としたら、このALは"もっとも心を通わせた"AL。本曲はおそらく彼唯一の女性目線の曲。タイト&スウィートな名曲です。

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100s『世界のフラワーロード』感想&レビュー(2009年)
👆(引用)「前作『ALL!!!!!!』は個々のメンバーが自由に演奏した民主的なアルバムだったが、この作品は中村一義のエゴに忠実に作られた。その結果、完成度が高く、アルバム全体に統一性のあるアルバムになっている。」

#中村一義10枚から各1曲
「きみてらす」('12)
↑『対音楽』(通算8thAL)




全曲ベートーヴェンの作品をモチーフにしたAL。濃厚で音楽的な名作にも関わらず、それに見合う評価を世間/批評家界隈で得ていないのは歯がゆいな。本曲を聴いてサビの温かな輝きにぶっ飛んでください。

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👆(引用)「遊ぼうよ…。聴いている自分も幼児に返ったようだ。懐かしくなる。音楽は、亡くなった者と対話することができる。この部分を聴くためだけにも、『対音楽』を買う価値はある。」

#中村一義10枚から各1曲
「ビクターズ」('16)
↑『海賊盤』(通算9thAL)




中村一義名義だが、彼のバンド"海賊" による演奏。広大な海を前にするような開放性と、初期からの持ち前の肯定性と結託したポップネスを特に感じるAL。本曲の歌メロのドラマチックな切実さは落涙必至。

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👆(引用)「ロックのオリジネイターからの影響を完全に咀嚼し、人によっては盗んでいるというほど自分のものにしている中村一義の音楽は、心の拠り所としても、かっこいい音楽としても、オリジネイターに負けないくらい音楽の源に迫っている。」

#中村一義10枚から各1曲
「愛にしたわ。」('20)
↑『十』(通算10thAL)




ラフなロック(ラフといっても恐ろしいほどに構築されているが)で深くエコーがかかった音。異次元な歌詞や曲名も含め、すぐには魅力は分からない点で彼のキャリアの中では異質なAL。だけど、本作品でしか味わえない謎の感動がある。本曲がALで一番推し。

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👆(引用)「しかし、この音像は、タフで重厚な中村一義の精神の表れなのだろう。「この哀しみをもう、忘れないだろうな。/今日、終わったこの日から、始めりゃいい。」(#1「叶しみの道」)と一曲目から歌い、哀しみを胸に留めつつ、前に進んでいく中村一義がそこにいる。」

<おまけ>
中村一義「春になれば」('24)
(シングル)




以上、アルバムの中の一曲を紹介してきましたが、最新作のこのシングル曲も、往年と変わらず素晴らしいのですよ。『金字塔』のアーティスティックで楽観主義なバイブス、『太陽』の親密な「うた」、『ERA』のシャープネス。皆そろっている。ポップに徹した一曲で、王道Jpop級のメロディのキャッチーさ。彼の音楽から離れていた方もぜひ!

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いかがでしたか?

中村さんの音楽の魅力が少しでも伝われば嬉しいです。デビューから直近まで、こんなにコンスタントに良曲/名曲を生み出せるアーティストは彼ぐらいだと個人的には思っています。