100s『世界のフラワーロード』感想&レビュー(2009年) | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。



●名盤です

まだ35年しか生きていないけど、生涯の名盤を挙げるとすれば、100sの『世界のフラワーロード』だなぁ。これ程安定した善意はここでしか聴けない。冴えわたるソングライティングも、100sにとっての「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を目指したという程良くサイケなサウンドも最高だし、玉田豊夢の(リズムは正確だが)もたつくようなドラムも人間味があって◎。

「サージェント・ペパーズ」がコンセプトアルバムであるように、『世界のフラワーロード』も、中村一義の生まれ育った街(小岩のフラワーロード)の“原風景”をテーマに制作するというコンセプトに沿って作られたアルバムになっている。中村一義のこれまでの人生を振り返って肯定するアルバムであり、アルバム全編に渡って鳴り響く祝祭感と人生の歓喜が聴き手を優しく包み込む。

前作『ALL!!!!!!』は個々のメンバーが自由に演奏した民主的なアルバムだったが、この作品は中村一義のエゴに忠実に作られた。その結果、完成度が高く、アルバム全体に統一性のあるアルバムになっている。しかし、中村一義が単独で作った作品と違うのは、スタジオミュージシャンも兼ねる名うてのバンドメンバー達の演奏のアイデアが取り入れられているということ。そのためか、中村一義単独で作られた中村濃度100%の作品よりもより開かれた空気を感じ取れる。

シングルの「モノアイ」「そりゃそうだ」はもちろんキャッチーな名曲だし、全体を三部構成にするコンセプト性も好き。一部は入り口となる煌めくポップソング集。二部は女性・警官・犬・卒業パーティの男性に扮する仮装ステージ。三部は深い…。「フラワーロード」で自分を捨てた親を思う箇所は何度聴いても感動する。

歌詞も金言や至言の宝庫だ。中村一義のパッションと博愛を感じる。特に、最後の曲「空い赤」の「のぞまない、何も。自分を生き通すだけ。」という歌詞には何度救われた気持ちになったことか。聴き手のそれぞれがそれぞれの状況に合った言葉を見つけて前向きな気持ちになれるだろう。生きる上での理想や夢がこのアルバムには詰まっている。

初めて中村一義や100sを聴く方、ソフトロック・ソフトサイケの良盤を探している方にお勧めのアルバムです。

評価★★★★★(星5つが満点)