Cornelius(コーネリアス)ライブ@六本木ヒルズアリーナ【TOKYO M.A.P.S】 | とかげ日記

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友人に誘われ、コーネリアスのフリーライブを観に六本木に行ってきました! TOKYO M.A.P.SというJ-WAVEが関わっている二日間のイベントの大トリです。これが無料だとは信じられない…



と、ここでライブの感想に入る前にコーネリアスについての総論を述べておきます。

コーネリアス(小山田圭吾)を語る上でサウンドの玄人で繊細な作りは外せないだろう。ミニマルなフレーズが繰り返される曲の繊細なテキスチャーも、職人的なミュージシャンである彼らしい。NHK Eテレで放送していた音源をもとにしたサウンドトラック『デザインあ 2』(2018年)のサウンドデザインほど、ストイックかつ豊かなデザイン的美学を感じる音楽はほかに見当たらない。

ミニマルといえば彼の『Point』(2001年)は昔、よく聴いていた。このアルバムに収録されている「bird watching at inner forest」は、曲名のとおり、SEで鳥のさえずりも聞こえてくるし、心の森の中でバードウオッチングしているような清らかな心象風景が伝わってくるミニマリズムの名曲だ。アンビエントに対する鋭い嗅覚は、坂本龍一のそれを想起させる。

だけど、個人的には、アルバム『Mellow Waves』(2017年)や、スーパーバンドの"METAFIVE"名義での曲など、一音一音への洗練された意識と歌ものとしてのメロウな魅力を両立する曲の方が好きだな。

METAFIVEは整理されてスッと耳に入ってくる音が特徴的だ。この"スッ"を極めている音楽性がスタイリッシュでアート的なのでぜひ聴いてほしい。また、コーネリアスが今年リリースした新曲の「変わる消える」と「続きを」も『Mellow Waves』から引き続き風通しの良さがありつつ、メロウかつドープで素晴らしい。

コーネリアスの作るメロウかつドープな音楽はリスナーを没入させる魅力に富んでいるし、音の化学者(cf.化学反応=ケミストリー)のように研究され尽くしたサウンドはまさに鑑賞に値する。没入と鑑賞、どちらの面でも優れているのがコーネリアスの強みの一つだ。

このように、僕は音楽を没入型と鑑賞型の二つの類型に分けることがある。もちろん、自分にとってはその類型でカテゴライズできても、他人にとっては当てはまらないことは多々あるだろう。そして、二つの類型の間には多様なグラデーションがある。人によって違う無限のカテゴライズが音楽と芸術を豊かにさせていくのだと思う。

Mr.Childrenの『名もなき詩』は没入型の筆頭だし(エモーショナルの極み)、先述したコーネリアス『デザインあ 2』はまさしく鑑賞型だ(最近のアーティストでいうと、長谷川白紙の作品とかそうだろう)。そして、没入型と鑑賞型の両面から聴けるのが『Mellow Waves』やMETAFIVEの音楽なのだ。

例の不祥事の件も世間はもう許してあげて良いのではないか(許すという表現は上から目線だけど)。被害者の当事者とは問題が解決しているみたいだし、イジメをしていたその時期からはだいぶ時間が経っている。昔は今と価値観が違うので(鬼畜系としてこうした暴力がホットなサブカルチャーであり、是とされていた時期があった)、今の価値観で非難するのも違和感がある。


さて、本日のライブの感想に入るけど、めちゃ素晴らしかったです! 洒落と風刺の効いた、バックでめくるめく流れるアーティスティックな映像と併せて、音楽の桃源郷がそこにはありました。

生ドラムもあるけど、打ち込みとの同期でここまでの創造性を感じさせるアーティストはそうそういない。堀江博久さんを始めとするサポートメンバーの演奏もキレとコクがありました。

レジェンドミュージシャン達の映像が次々と正面スクリーンに現れ、亡くなられた坂本龍一さんと高橋幸宏さんの姿も流れ、そこで観客から大きな拍手。あの瞬間の一体感はスゴかった。

あと、METAFIVEの名曲「環境と心理」も披露され、没入かつ鑑賞できる懐の深い音楽性に舌鼓を打った。カバーだけど、まさに原曲のようにスッと入ってくるサウンドだった。



昔、フリッパーズギターというバンドを一緒に組んでいた小沢健二が言葉によって伝えたいことがあるのとは違い、コーネリアスはサウンドに重きを置いている。言葉の意味性から離れ、しがらみのないサウンドそのものの持つ自由が輝いている。その姿勢は、今日のライブでも、最後の感謝の言葉以外MCなしである所に表れている。

不祥事でキャリアが傷ついても、音とシンプルな歌詞の言葉だけで実直な心構えを物語り、真っ当に音楽を続けていくアティチュードを示すだけの説得力のある素敵なライブだった。6月28日のニューアルバムも楽しみにしています!


コーネリアス TOKYO M.A.P.S 2023/05/06 セットリスト(👈"エコロ"さんのツイートからの拾いもの🙏)

1. Point of View Point


2. いつか / どこか
3. Audio Architecture
4. 変わる消える


5. Another View Point
6. COUNT FIVE OR SIX
7. I Hate Hate
8. Fit Song
9. Gum
10. 環境と心理
11. あなたがいるなら



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