梅雨が明ければ…
2010・6・29~和歌山・串本町~
強く、そして美しい。僕の中では、一、二を争う甲殻類のお気に入りであるフリソデエビだ。岩礁の隙間をのぞいてみると、少し大きめの個体がいた。こちらがカメラを向けると、大砲で攻撃されると思ったのか、レンズに向かって前進してくる。フリソデエビの特徴と言えば、掌部の大きなハサミ。和服の振袖の柄にしていることが和名の由来だ。その2つのハサミをグルングルン振り回して威嚇しては、時にシールドのようにして自身の身を守る姿勢を見せる。何もしませんよ~。大丈夫ですよ~。そんな声を掛けたが、最後まで威嚇をやめなかった。梅雨真っただ中の日本だが、もうすぐ暑い、暑い夏がやってくる。フリソデエビの涼しげな体を見ていると、夏祭りを思い浮かべてしまうのは僕だけだろうか。ああ、花火が見たい。
悲しい姿…
2010・6・29~和歌山・串本町~
まるで歌舞伎役者のように胸ひれを広げて気持ちよさそうに泳いでいるクマノミ君。でも、よ~く見てみると、どこかおかしいと思わないだろうか?そうだ。顔の右半分が真っ黒なのだ。地元ガイドの間では「阿修羅」だとか「ハーフ&ハーフ」と呼ばれているらしい。クマノミたちが棲んでいるイソギンチャクをのぞいてみると、1匹だけ顔が違うので、すぐに判別できた。
通常は上の写真のように左右対称で白いのだが、突然変異だろうか「阿修羅」は右半分だけ黒い。人間と同様だが、魚もそれぞれ顔はさまざま。しかし、このように明らかにおかしな皮膚を持つ生きものを見ると、悲しい気分になるのは僕だけだろうか…。カメラを持つ身としては最高の被写体なのだが、この時だけは「いつかはみんなと同じように、皮膚も変色してほしい」と祈った。
擬態化中の擬態化
2010・6・18~高知・柏島~
自慢じゃないが、目の良さには自信がある。30歳後半に突入したいまでも、視力は右1・5、左2・0ある。海の中でも、遠目から生きものを探すのは得意なのだが、この生きものだけは分からなかった…。ガイドさんとマンツーで潜った柏島でのダイブ最終日。ハゼを撮り終わった後、ガイドさんのところにいくと、海藻を懸命に撮っていた。ガイドさんも指示棒で差してくれているのだが、目の前で見ていても、しばらく分からなかった。よ~く見ると、かわいいお目々を発見。タツノイトコだった。弱肉強食の厳しい海の世界。擬態化して身を隠す生きものは数多くあれど、これだけ完全に擬態化しているものは初めてだった。なんせ、ゆらゆら動いて、海藻そのまんま。すぐに分からなかったのは初めてだけに、めっちゃ悔しかった…。
あっという間だったマクロワールド・柏島でのダイブ。潜ることができたのは、広~い海のほんの一部だったが「すごい!!」のひと言だった。黒潮も入り、温帯地方にいる生きものなら、ほぼ確認できているという。カラフルなシーンも多いし、カメラ派ダイバーなら絶対に潜るべき海。最後に見たオレンジ色のコケギンポも「また来いよ!!」と声を掛けてくれているように聞こえた。


