本を片手に街に出よう -45ページ目

【読み物】虚飾の愛知万博

著者: 前田 栄作
タイトル: 虚飾の愛知万博

 出張ついでに寄ってみようかな~程度の興味で、情報でも仕入れておこうと思い書店をうろついていたら眼にとまり衝動買い。

 

 著者は愛知県出身。故郷を愛する故か?万博の矛盾を糾弾しつつも、是非愛知に来てくれ、という複雑な心境をのぞかせる主張である。


 内容はと言うと…暴露大会。利権やドタバタをこれでもかというくらいに陳列。まるでバブル期やゼネコン黄金時代のような、超バラマキ行政をぐりぐりと穿り出して語っている。

 問題点をこれでもか、と掘り下げることについてはかなり克明であり、第三者的に読めば面白おかしくも読める。が、テーマが既にやってしまったことなだけに解決策がなく、救いようがない。

#光文社のこのシリーズ、何となく問題をあおって終わるパターンが多いような…まあ興味深く読めるからいいけど。

#あと英語が混ざっている表記は自慢げに特徴だと主張しているがやめたほうが良い。ペーパーバックス(洋書の小説みたいなやつ)や横書きはいいんだけどな。

 最後は愛知県破産警告。愛・地球博ならぬ、愛知・窮迫だって。ウマイね!(感心している場合ではないけど…)

 

 愛知と言えばトヨタ。地元じゃトヨタ幕府なんて呼ばれているそうですね。いやあ今や日本の、いや世界の超優良企業になったトヨタに対して批判的とも受け取れる文章を書くのもある意味勇気が必要だったろうな。中部国際空港にそんな裏話があったのね。流石トヨタの世界戦略は抜け目がない。

 

 この本を読んだら、かえって万博に行きたくなる。

 実は超巧妙な手口のプロモーション企画本なのか?

渋谷 松川(東急東横店)

松川




 ちょっと早い11:00の昼食をとりに松川
へ。いわゆるデパート・レストラン街の中にある。


 本店
はセンター街の入り口脇で、若者の放射能を全身にあびつつも頑張っているが、こちらはデパート9Fだけあって落ち着いた雰囲気。




 うな重は藤¥3,150- 葵¥4,200-など、いくつもグレードが。違いは?素材も違うと思うのだが、どうも餌も違うみたいだ。なるほど、イイモン食わせているから高いのね。


 取り敢えず「桜」を頂く。フカフカで肉厚な鰻。タレも適度でよろしい。




 店員さんがずっとフロア内で仁王立ちしていたため写真撮影はためらったが、すでに4件目、カシャ!と大きな音を響かせながら撮影。




 しかし大いなる目的のためとは言え、鰻ばかり食って、カロリー過多かも…






鰻重 桜 ¥2,625-

【小説】イン・ザ・プール

著者: 奥田 英朗
タイトル: イン・ザ・プール

 先ず表紙。ニルヴァーナをもじった扉が目を引く。

 そして内容。軽い文体で、すらすら読める。

 

 ボンボンの精神科医、伊良部。読まないと彼の真の凄さは伝わらない。兎に角、現代に生きる我々が「なりたくてなれない」特異な存在。一見彼の言動は幼児レベルだが、本能のままに、ある意味核心をついた言動なのだ。

 そしてその伊良部のもとを訪れる患者達の、超爆笑治療ストーリーの数々。

 グラマー看護婦のお約束な対応が、物語に良いテンポを添える。

 

 爆笑だけではなく、実際に、自分は仕事柄うつ病になった部下などの対応をすることが幾度かあって、ちょこっと知識をつけたのだが、事例を見るとだいたい伊良部のように対応をしている。

 その素人ながらの経験から言えば、伊良部の対応は極端だが正しい対応である。

 心の病には、ミョーに深刻になって下手な考えをめぐらすよりも、休みたいなら休めば、いいんじゃない?的な発想が必要みたいである。逆にうつ病の相手に対して変に考えた回答をしたりすると「あんたにオレの何が判るんだよ!」という気持ちになり返って逆効果である。

 要はあれこれ考えすぎて脳が疲れている状態であるのに、考えようとするなよ、ということなんだろう。

#うつ病はIT業界には多いそうだ。生活が不規則になりがちであるし、何よりプロジェクトチームや受発注者双方など、人間同士相互協力しながら進めていく作業が圧倒的に多い、調査しながら進める作業の比率も高く先の見通しが立ちにくい、など、いざこざや悩み事が多いのだ。

 

 ストレスや悩みがたまってるかも、という人は一読の価値あり。特に自分は神経質かな、と思う人は。これを読んで「何だ。まあいいや、でよさそうじゃん!」と開き直れない人は重症かもね。

 

 

BGM->Nirvana"Nevermind "1991

(これまた、お約束のご紹介ですね)

【小説】オルタード・カーボン

著者: リチャード・モーガン, 田口 俊樹
タイトル: オルタード・カーボン(全2冊)

 久々に「本」来の話題を。ただ今大ブレイク中のSF。既に映画化も決定している。


 27世紀、人間の精神そのものがデジタル化され、肉体が消えてもメモリーから別の肉体にダウンロードすることで永遠に生き長らえる事が可能となった。そんな時代に生きる元特殊部隊(エンヴォイ・コーズ=特命外交部隊)で、現在犯罪服役者のタケシ・コヴァッチは、ある日突然大富豪のバンクロフトから仕事の依頼を受ける…



○デジタル・ヒューマン


 先ず設定がイカす。人の心がデジタル化されバックアップされることで、何度でも別の肉体に乗換えながら生きている。日本が誇る傑作「攻殻機動隊」では流石に脳自身は生身であり、ゴーストと呼ばれる人間の魂は他に換えられないものであった。

 27世紀にもなると、なんてことはない、全てデジタル化が可能ということか。

 現に、主人公コヴァッチへの仕事の依頼というのは、バンクロフト卿が自らの自殺?の真相を究明してほしい、というもの。自殺をしてもバックアップ・メモリーから自らのクローン肉体に精神がダウンロードされ蘇る。但し記憶を一定時間置きにバックアップに転送することで整合性を保つ。自殺?の真相はそのバックアップタイミングの合間、失われた数十時間に謎のまま覆われている。つまり依頼は、自殺?をした後にバックアップから蘇った卿自身の「何故私は死んだのか?」という探究心からの依頼なのだ。うーん、穴はあるだろうが、上手い設定である。



○サイバーパンクにかけるスパイス=日本?


 タケシ・コヴァッチという名前からも推察できるように、サイバーパンクには今や定番のセットモノとなった、日本企業や日本文化のエッセンスが本作でも垣間見える。

 

 サイバーパンクでは、テクノロジーを極めたインプラントや人工臓器、機械化による身体能力の拡張、また本作のように脳(や精神)に何らかのテクノロジーを加えるなど、キリスト教などの宗教信仰が強い民族からはかなり度し難い(と思われる)事柄や設定について淡々と描写されることが多い。

 我が日本は(異論はあろうが)八百万の神ということで、欧米人から見たら多分かなり無節操というか、ぶっ飛んだ宗教倫理観なのであろう。日本人なら肉体の機械化、電子化ですらやりかねないぜ、というような。

 多分サイバーパンクものに日本がよく出てくるのはギブスンだけのせいではなく、このような欧米の日本観、日本人観が影響しているのではないか?(勿論単純に文化的にも不思議な存在だから、というのもあるだろうが)

 

 本作での日本は、ギブスンが描いたチバ・シティのように強烈なベタベタ描写ではなく、社会のベースに根ざすものとしてノスタルジックに登場する。このあたりの使い方は上手い。直接的なものを羅列するだけでは、ギブスンが魅せた世界を超えず、逆にその安易さにうざったさを感じたであろう。


 コヴァッチの住んでいたハーランズ・ワールド星はその昔、日本の「系列」が東欧の労働力を使って発展させた星である。人々の名前や、心をダウンロードして宿す肉体=スリーヴも、日本とスラヴの混血が多い。


 数百光年の彼方に植民星を造るべく飛び立つ日本企業群の宇宙船…かつて日本経済が頂点を迎えた1970年代~80年代、文字通り日本の商社マンは世界をまたにかける特殊外交部隊であった。無政府状態や極端に厳しい自然条件など「こんな危険なところ軍隊でもいかないよ」というようなところにも、日本の商社マンが商売に来たそうだ。

 ローマ帝国、大英帝国、そしてアメリカ帝国は軍産複合で世界を支配したが、我が日本は当時、商談という武器を手に、とほうもない量の金という実弾をまとって、一瞬だが世界を支配しつつあったのだろう。

 読みながら、そんな「失われた10年の前の、ノスタルジックな20年の栄光」を思い起こした。


#バブルという二度目の敗戦を味わい、社会全体が次の目標を定められずに、リスクを負うよりも物質的には豊かな現状に留まっていたい、まだ放漫な無気力を謳歌していたい、という雰囲気に包まれているのが今の日本である気がする。こうしてかつての日本にノスタルジーを感じること自体が、その証左なのだろう。

#本作から引用させてもらえば我々自身が「次のスクリーンに移る」必要があるのかも知れない。…おっと本題から外れすぎた。本の感想に戻らねば。


 

○愛すべきキャラ達


 さて本作は、ハードボイルドであり、ラブストーリーでもあり、サスペンスでもある。このような贅沢な雰囲気を作り上げている一つの功労者は、間違いなく粗暴ながらも情緒にあふれ、示唆に富んだ軽口を飛ばしながらもストイックに仕事に邁進する主人公、タケシ・コヴァッチであろう。確かにカッコいいです。どうやら欧米でも大人気のようで、タケシ・コヴァッチ・シリーズ第二弾が既に執筆中とのこと。

 他にも、ベイ・シティ(27世紀のサンフランシスコ)警察の敏腕女刑事クリスティン・オルテガは、キャリア・ウーマン的硬質さと一途な愛情の不器用な表現を併せ持つ魅力的なヒロイン?である。

 数百年も生き続けている老獪さを、富めるものだけが享受できる極上ボディから如何なく発散するバンクロフト夫人。そして老獪さを通り越して斜陽的ロマンチシズムを感じさせるバンクロフト卿。更に違った意味で永く生きた者の狡猾さを炸裂させるレイリーン・カワハラ。

 ハードボイルドアクションに花を添える殺し屋カドミン、トレップ。

 そしてサイバーパンク・サイドでは、他人の肉体にダウンロードされるというなんともいえない違和感を読者に伝えつつも、見事なハッキングで重要な役割を演じるエリオットが良い脇役を演じる。

 

 映画化の際は、誰が誰を演じるのだろう?

 まさかタケシ・コヴァッチ=キアヌ・リーブスは流石に今回ミスマッチであろう。

 この魅力的なキャラ達の配役を妄想するのも、また楽しい。


 愛する人が他人の肉体として蘇っても、また愛する人の肉体に他人の心が宿っていても、人は人を愛せるのか?

 永遠の命とは、永遠の苦しみと等価なのであろうか?それとも永遠の愛か?


 深い。確かに傑作だ。ニューロマンサー とは違った意味で、何度か読み返したくなった。

 


BGM->Vitalic"Ok Cowboy "2005

コンスタンティン

 

 The Matrix に続きシリーズ化&二匹目のドジョウになるか?

 たまたま映画の公開日に有楽町にてその日の仕事を終え、レイトショーを観た(ちょっと前の話ですが)。


 もともとはバットマンやスーパーマンで有名なDCコミックス社 に掲載されている漫画「ヘルブレイザー(HELLBLAZER) 」が原作。

 主人公は不健康で皮肉っぽいアンチ・ヒーロー、ジョン・コンスタンティン(キアヌ・リーブス)。

 表面上は超常現象などを調査するオカルト探偵だが、実は人間界に巣食っている悪魔と日夜戦っているのだ!

 というと聞こえが良いが、あくまで彼が戦う理由は自分のため。彼は煙草の吸いすぎで肺ガンとなり死期が近く、病気を消してもらうために取引をしたのだ。

 いつものように悪魔をぶったおす仕事をこなすが、何かいつもと違う…そのうちレイチェル・ワイズ扮する、謎の自殺を遂げた双子の妹の死の真相を探る刑事アンジェラ・ドッドソンと出会い、謎解きに付き合っている間に、善と悪、天国と地獄のバランスが崩れ、人間界に危機が訪れている事を知り…


 映像が綺麗。監督(フランシス・ローレンス)は音楽PV出身らしい。キャラが映える構図や動きが多いのもその出身故か?

 絵はそのままにしてバックにEvanescence を流して「アルバムのプロモ映像です」と言い張ってもOKっぽいような、アンダーワールドヴァン・ヘルシング に通ずるゴシックホラーの流れを汲む絵作り。

 PS2のゲームも発売予定らしい。最近は洋画もゲームやアニメとのメディアミックスが多いですね。本作も世界観といい出てくる小道具といい、ゲーム向きではある。

 ストーリーおよびキャラは原作ファンからは結構スカンを食らっているようだが、確かにもう少しハードボイルドなタッチでも良かったような?キアヌも途中からマジになり、善人に「成り下がって」しまった感が。アンチ・ヒーローというなら最後までもっと後ろ向きで人を食ったようなキアヌが観たかったぞ。


 レイチェル・ワイズはちょっとふくよかになりました?一応お色気サービスシーンもあるんだけど、全体的に印象は薄いです。


 絵的にはかなり綺麗なんですけどね…絵的には…やっぱビジュアルにこだわりすぎて、ストーリーとかキャラ作りはおざなりになっちゃったんですかね?


 結論。カッコいいキアヌを観たい人は必見。それ以外の人も、あくまで映像美を楽しみましょう。

 全米でも大ヒットにはならず。原作ファンの受けも悪くシリーズ化はビミョーですね。この辺が原作アリの辛いところです。

 さあ今度はブレイド3 に期待しよう。



BGM->Dead or Alive"Mad, Bad & Dangerous to Know "1986



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