【小説】イン・ザ・プール | 本を片手に街に出よう

【小説】イン・ザ・プール

著者: 奥田 英朗
タイトル: イン・ザ・プール

 先ず表紙。ニルヴァーナをもじった扉が目を引く。

 そして内容。軽い文体で、すらすら読める。

 

 ボンボンの精神科医、伊良部。読まないと彼の真の凄さは伝わらない。兎に角、現代に生きる我々が「なりたくてなれない」特異な存在。一見彼の言動は幼児レベルだが、本能のままに、ある意味核心をついた言動なのだ。

 そしてその伊良部のもとを訪れる患者達の、超爆笑治療ストーリーの数々。

 グラマー看護婦のお約束な対応が、物語に良いテンポを添える。

 

 爆笑だけではなく、実際に、自分は仕事柄うつ病になった部下などの対応をすることが幾度かあって、ちょこっと知識をつけたのだが、事例を見るとだいたい伊良部のように対応をしている。

 その素人ながらの経験から言えば、伊良部の対応は極端だが正しい対応である。

 心の病には、ミョーに深刻になって下手な考えをめぐらすよりも、休みたいなら休めば、いいんじゃない?的な発想が必要みたいである。逆にうつ病の相手に対して変に考えた回答をしたりすると「あんたにオレの何が判るんだよ!」という気持ちになり返って逆効果である。

 要はあれこれ考えすぎて脳が疲れている状態であるのに、考えようとするなよ、ということなんだろう。

#うつ病はIT業界には多いそうだ。生活が不規則になりがちであるし、何よりプロジェクトチームや受発注者双方など、人間同士相互協力しながら進めていく作業が圧倒的に多い、調査しながら進める作業の比率も高く先の見通しが立ちにくい、など、いざこざや悩み事が多いのだ。

 

 ストレスや悩みがたまってるかも、という人は一読の価値あり。特に自分は神経質かな、と思う人は。これを読んで「何だ。まあいいや、でよさそうじゃん!」と開き直れない人は重症かもね。

 

 

BGM->Nirvana"Nevermind "1991

(これまた、お約束のご紹介ですね)