本を片手に街に出よう -38ページ目

【小説】勇気凛々



高杉 良
勇気凛々

 小説、といっても実名小説で、自転車製造販売で有名な「ホダカ」の創業物語です。

 主人公、すなわちホダカ創業者の武田氏は最初は放送局の敏腕営業であったが独立心が強く一念発起してホダカを創立。それまでの人脈と放送局一にのし上がった営業力でイトーヨーカ堂との取引を勝ち取る。だがしかし肝心の商品は欠陥だらけで…

 米国進出失敗や、変な奴に騙されて子会社作ったものの大損失を出すなど、臨場感があって面白く読めます。
 さりげなく、イトーヨーカ堂の強さの一端が。

 創業と同時に奥さん代えてるところが微妙だが、これがまたものすごくいい奥さんだったみたい。奥さんの強力なサポートを得て、水を得た魚のように働く社長。
 前述のようなトラブルいろいろ。だが本になるような話ですから困難を乗り越えて会社はどんどん大きくなっていく。
 大きくなるにつれて、いろいろな能力・経験を持つ人が必要となってくるが、この辺の出会いが運というか、ほとばしる成功者のオーラなんでしょう。文章でもそのキャラクターの一端は垣間見えますが、こういう話は実際話している姿などを拝見しないと伝わりづらいですね。

 この本のハイライトの1つである上司からの葉書の言葉は起業家なら誰にでもあてはめることの出来る言葉です。

 新天地を求めて縦横の活躍に入った由、大賀の至り、君は社長たることに宿命を背負った男だ。
 ~
 始めはわが為に、やがて社会公共の為に。武田光司は男でござる。


 こんな言葉もらったら、確かにやるっきゃないという気持ちになっちゃうな。
 しかも、会食でちょっと顔合わせただけの常務からの言葉ってのに途方も無い意味がありますよね。見ている人は見ているっていうか。

 準備万端、いよいよ起業をしようという人はイキオイつけるのにいいかも知れませんね。

 漠然と起業しようと考えている段階では、小説として、それ以上に受け取らないほうが無難でしょう。努力なくして成功なし、成功には必ずワケがある!ってことで。


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【小説】地下鉄(メトロ)に乗って



浅田 次郎
地下鉄(メトロ)に乗って

 浅田ワールドってやつです。
 大立者で豪傑粗暴な父に反発していた主人公だが、ある日地下鉄の階段を昇るとそこは戦後の闇市。そして主人公は若かりし頃の父に会う。
 そこにいたのは主人公の知る父とは全く違う一面を見せる男だった…

 それにしても銀座線、昭和2年(1927年)開通ですよ。何となく戦後の高度成長期以降に育った身としては、戦前、それも結構な昔から高度な発展をとげた社会だったんだよね、ということを今更ながら感じる。
 ここに初代銀座線の超カワイイ!御姿が。黄色くてライトが1つ、鋼鉄製ボディにリベットがポチポチうってあってレトロ感たっぷり。
 この鉄骨は銀座線の特色だそうで、戦前の面影を残す赤坂見附駅や虎ノ門駅にはおんなじようにリベットポチポチ支柱が多数。
 この本に出てくる銀座線に会いたい方は地下鉄博物館へ。東京都・都営地下鉄葛西駅の高架下にあります。

 さて本作、別に上記のような地下鉄のうんちくを語るのが主旨な訳じゃなくて、地下鉄を舞台装置としたタイムトラベルものでもあり、ファンタジーでもあり、父と子、兄弟、男と女のヒューマンドラマでもある。

 自分の知らない家族や周囲の人達の営み、そして葛藤を目撃していく、何とも言えない、胸がつまる展開。自分が生まれる前の、父が一生懸命生きていた頃の輝き、自ら命を絶った兄の境遇を知ってしまった時の驚き…

 都合よくストーリー上重要な場面にTripするのではあるが、それを補ってあまりある数奇な人間関係の伏線が程よく絡まって、ラストに近づくにつれてぐっとくる物語を創り上げている。
 あの日の兄に何があったのか。出征する兵隊を送り出す新橋駅、敗走する満州での父の行動、そしてラストへ…号泣はしないけど、ところどころでほろ苦い涙をさそうシーンの連発。

 上野新橋淀橋といった主要都市(というか闇市)の描写、お約束の服部時計店など、作者の東京、しかも昭和の東京への思い入れが伝わってくる。
#今は改装されて綺麗ですが、昔の丸の内線中野坂上駅が日本軍秘密基地みたいな雰囲気で好きでした…ちょっと変ですかね?

 地下鉄で東京の街を巡りたくなる、そんな気分になる作品。


BGM->m-flo"BEAT SPACE NINE"2005

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Manifesto 2006

あけましておめでとうございます。

っていうキーワードを含む記事が全blogユーザの98%は書かれるであろう1月1日。

一年の計は元旦にあり。ということで2006年の計は…

鰻百選制覇!

やっぱコレだな。

旨いものを食ってこの不確定な時代を生き抜くって事で。

2006年は、どうせなら蕎麦とか酒とかラーメンとか、そんなのも加えちゃおう。

なんだか、食道楽blogになってゆく予感。

丸の内2

ミレナリオラスベガスにインスパイアされた?はたまたパチンコ屋の節税対策か?
数年前から話題の電飾イベント「東京ミレナリオ」に遭遇。

たまに一駅手前で降りて歩くことがあるんですが、今回は東京駅→有楽町というまさに"東京観光コース"になってしまい、キレーにハマってしまいました。

もともとは震災復興を祈ってイタリアかどっかのアーティストを呼んで始めた神戸ルミナリエを東京でもやったろうと始めたものらしいです。

しかしすごい人・ひと・ヒト。

景気回復!と言われ、何だか出歩く気分なんでしょうか。今年はアメ横もスゴイらしいし。

さてこのイベント、確かに綺麗なんですが…

実際は警備員がうじゃうじゃいて「道路には出ないでください~」とか「立ち止まらないで歩いてください~」とか「はい信号なんで止まってください~」とかまるでスーパーの大安売りの整理のごとく怒号が飛び交っている。

ぷっっと噴出してしまいます。何がミレナリオだよ!そんなに並びたきゃTDL行けよって感じ。

普段の、人気が少なくなった頃にコーヒー片手に散歩しながら、間接ライトアップされた丸の内のビル群を眺めてしんみり気分に浸るほうが気持ちいいぞ。

来年からは、東京駅舎の復元工事で暫くお休みだそうです。

どうせ何億もお金かけるなら、今後はもう少し日本的美を追求してかがり火とかどうですかね?え?あぶない?じゃ妥協してガス灯とか。
東京駅も昔に戻るんでしょ?どうせなら明治大正のロマン主義に回帰セヨ!

今後はもっと「不便だけど趣がある」が最高の贅沢になっていくだろう。
せっかくお金を儲けたら、物欲ばかりではく精神的豊かさにもお金と時間を使わないとね。これすなわち来年の目標です。

じゃ読んでくれた数少ない皆さん、良いお年を~

またまた売れっ子に

さなってしまい、年末だってのに仕事三昧…
おーい!誰かいないんか~
代わってください~

しかし2005年は節目の年だった(と後年呼ばれる)気がします…

政治は大きな路線変更(というか正常路線に戻った?)がありましたし、経済も新興勢力というか、欧米の資本家・投資家的な雰囲気をまとう「物言う株主」が出現しました。

社会では初の人口減となり、これから老齢化社会に本格的に突入。
JR脱線事故やアネハ、お隣韓国のES細胞捏造、中国の炭鉱事故多発や公害のように、目先の利益を追求しすぎたことによる歪みが一気に噴出したことも印象に残ります。

また、ヒルズ族によるメディア買収攻防に象徴されるように、既存マスメディアの斜陽化が露呈し、こういったblogなどのインターネットメディアを通じた「混沌としているが、コントロールされていない真実」が白昼のもとにさらされたことも、以前から始まっていた流れですが2005年に特に顕著になり花開いた感があります。

しかしバブル崩壊から今まで、長いリセッションでしたね~
言わば、戦後からずっと盲目的に続いてきた路線を修正するということだったのでしょうから、コレくらいの混乱は然るべきなのかも知れませんね。

今度はバブルになんかならずに地道に力強く続いていくことを祈りつつ、新しい日本で生きて行くために人生設計を考えよう!

取り敢えず明日も仕事だ!せめて元旦は休みたいぞ!