奥村晃作歌集。村越三千男の有毒植物図鑑 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 

図書館の除籍本棚から「奥村晃作歌集(2005)角川書店」を貰い受けてきた。奥村の歌については多くは知らないが、かつての前衛らしさが影をひそめた感じ。本歌集ではただただ淡々と日常や時事について作歌しているのみで作為の痕を留めない。アテネ五輪の女子マラソンについて

 

 長身のラドクリフ走り野口みずき陽を避くるがにその影走る

 

 全身が黒いケニヤのヌデレバがひたひた迫る野口みずきに

 

といった具合で、テレビ観戦する奥村の姿のほうが眼に浮かんできたりする。私みたいなシロートは31文字に様々ぎゅうぎゅうに詰め込みたくなるのだが、このような写メみたくユルく歌い捨てるのもアリかも。もうひとつ紹介しよう。

 

 皮の付く鶏胸肉に青ネギを載せてラップしレンジでチンす

 

 

 

 

村越三千男編:図解有毒植物と其注意(1929)玉井清文堂

 

現在、わが国の植物図鑑といえば牧野富太郎の名前が浮かぶばかりだが、戦前はこの村越三千男の知名度も負けずに高かった。あるいは一時村越の植物図鑑の評価が優ったこともあった。この「図解有毒植物と其注意」は「薬用植物図鑑」の別冊として玉井清文堂の依頼に応えたと緒言にある。

 

本の前半に20ページ81点の毒草図版が掲載され、その後のページに簡便な解説が附されている。図版はいずれも(6度刷前後の)石版刷、1ページ4点ほどの掲載、上製本ながらB6サイズのコンパクトな造りになっている。実用に使用されるべく編集されたものだろう。

 

村越三千男・消えた植物図鑑(myskip 2017.03掲載)