村越三千男の野外植物の研究 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 野外植物の研究正・続(1873)植物学研究会編

 

明治40年に発刊された植物学研究会編集「野外植物の研究」正続で、掲載本は明治43年発行の修正8版(正)と4版(続)なのだが、植物学研究会の実質代表者にして編集に当たった村越三千男の名前は見あたらない。正編に石版刷が3葉、続編に2葉掲載されていて、あきらかに続編の仕上りがいい。

 

明治末頃に植物図鑑の出版が集中していて幾種類か発刊された。編集方法もいろいろで、この村越版ではまず季節別、観賞用、普通種、田んぼの作物といった分類になっている。他図鑑ではあいうえお順などというものもあるようで、科目ごとによって分けられているわけではない。

 

 野外植物の研究:扉

 

村越はいわゆる絵を描く編集人というにふさわしく、校訂は牧野富太郎に依頼してしている。この頃の村越と牧野は蜜月の間柄でいくつかの出版に牧野は携わっている。ただ大正末年に、出版社の都合で同時期に図鑑を出版することになり、関東大震災で原稿資料の大部をなくした牧野は満足のいく結果がだせず、その折は村越版が世間に迎えられた。以来二人の間は微妙になっていく。

 

 

記載部分はこんな感じ、植物画はどうやら木版彫りしたものを凸版にあてて印刷している。絵柄も単純でタイトルが「野外植物の研究」とあるごとくで、図鑑というには寂しい感じだ。しかし先ブログで紹介した「内外植物原色大図鑑」となると長足の仕上りで、戦前は牧野図鑑を差し置き村越の図鑑が普及したのだった。