マキノ雅弘「人生とんぼ返り」の左幸子 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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.-左幸子
マキノ雅弘:人生とんぼ返り(昭30)日活

日活が「殺陣師段平」をもう一度撮れと言ってきたとき、マキノ雅弘は主演が森繁久彌ということで引き受けた。山田五十鈴は当時は松竹の専属で(五社協定で他社映画にはでることができなかったのだ)が「映画界から追放されてもかまわない」段平の妻“お春”役は、もう一度やりたいと駆けつけてくれた。このとき、段平の娘“きく”役に選ばれたのが左幸子で、段平が死を前に最後の気力を振り絞り(新国劇・沢田正二郎演じる国定忠次の)殺陣を娘に授ける。泣きながら教わった彼女は、力つき息絶えた段平をおいて南座に駆けつけ、段平のかわりに殺陣を教えるのである。

左幸子演じる“きく”は段平が他所の女に生ませた子どもなのだが、妻(山田五十鈴)の手前「さる極道の娘」といつわって育てられた。瀕死の段平に「わいが、おとっつぁんや!」と言わせたくて身悶えするシーンでは、藤山寛美に一座に彼女のような女優が欲しいといわしめたのだった。また、本当に涙を流しての演技に(マキノは)欲がでてしまい、沢正が「段平はあんたのお父さんだ」というくだりの、彼女の表情ワンショットに4時間もかけてしまったが、この作品によって助演女優賞を獲得した。

払暁、まさに障子が白むころあい、滂沱の涙で見終えたのでした。
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