口語俳句集『年末年始』
〜口語体の作品集〜

これまでに詠んだ年末年始の作品集です

口語体・現代仮名遣い・現代的切れ字を
基本にして詠んだ句を集めました

お時間があるときに
よろしければご覧になってみてください


下記の文語体や歴史的仮名づかい・古典的切れ字を使っていないこともご確認ください

や・かな・けり・たる・たり・なる・なり・あり・をり・ぬ・べし・にて・らむ・けむ・とや・てふ・ゐて・ゐし・等々

また、口語体で俳句を詠むと俗・稚拙になるのかについても検証など行ってみてください

*作品はすべて既発表句です
*文語・口語の図を記事末に記しています



『年末年始』
口語体俳句

◇年末◇

さっそくに空を晴らして門松立つ

どのひともうしろすがたの年末よ

また一人湯をぬぎすてて冬至風呂

いちねんをいちにちずつよ掃納め

お歳暮よ贈りおくられつつわかれ

年の市暮れもだんだん押し詰まる

たちのぼる湯気鎮めつつ餅つきか

さいげつよ押し黙るとき年の暮れ

生きてきた余韻のなかよ除夜の鐘

いちねんのすべてが今に除夜の鐘


舞い舞って夜かぐらは子々孫々と

明けがたよ僧たちの大すすはらい

らい年へさらいねんへと餅伸びよ

しんしんと神むかえるか門松立つ

来年を見つめていれば降るゆきよ

やおよろずの神々の土地注連飾る

輪かざりよ三日ばかりをのこす年

初夢がきのうのようにとしのくれ

尊さは湯気ごとすする年越しそば

詣でるか明けにちかづく除夜の鐘


すこやかでいることこそよ年用意

飛んでゆく雲も師走ということか

引越しの部屋にのこして古ごよみ

めくる手よ文字目を覚ます古日記

灯の駅よ夜やみあかるく年惜しむ

談笑のいっぽんみちを柚子湯まで

坂よふとふりかえるとき年のくれ

ささ竹よ鐘のなかまですすはらい

だいぶつのいちねんの黙年のくれ

灯にれきし国にれきしよ除夜の鐘


ふるさとを深呼吸してとしのくれ

かえりみちはるばる日なた年の市

はやばやととし過ぎてゆく雲風よ

落ちかかる伽藍のかげよ煤はらい

御身ぬぐい経とともによ年のくれ

たたみ替え青いかおりが廊下まで

餅つきの臼だせ杵だせちからだせ

煤湯出て星がゆたかであることよ

撞く僧よ間をたっぷりと除夜の鐘

かなたまで町の屋根屋根除夜の鐘


ならぶ嶺雪をかさねてとしのくれ

舞い舞ってときをこえるか里神楽

神だなにかさねそなえよ餅をつく

数え日よ晴れ雨曇り晴れ晴れ晴れ

来る年をあきらかにしてこよみ売

かるがると重い日記を買い行くよ

輪かざりよ玄関の良いつらがまえ

ゆったりとたどりついたか大晦日

人の世にときおり夜明け年の火よ

じんせいよ一つにひびく除夜の鐘


注連飾る縁起かさねたおもたさよ

そらのした門松立ててかぜのおと

みずからにうなずくまでよ年惜む

工場よ掛けのこされてふるごよみ

早ばやと年過ぎて行くくやしさよ

国しんとしずまりかえり年越しか

年まもるこの町に灯がぽつぽつと

つぎつぎに今年をくべて年の火よ

舞う雪をつきふるわすか除夜の鐘

撞きついて今がむかしか除夜の鐘


◇年始◇

よこたわる八重雲からよ初日の出

伊勢神宮おおきな春の日だまりに

かしわ手が千も万もよはつもうで

てっぺんに富士あるそらよ正月凧

あいさつのいち語いち語が花の春

弾き初めようえへしたへと琴の爪

その前がひろくひらけてかがみ餅

めでたさよあかい日の出の雑煮椀

くびすすめあしをすすめて初鶴よ

このためのさんぽだったか福寿草


一人一人世にあらわれて初日の出

とんび鳴いて空ひろげゆく初山河

また一人鳩羽ばたかすはつもうで

はつがらす一の鳥居を飛び立つか

くりかえす日の入り日の出初神楽

一人住むひとりながらも雑煮の香

静じゃくを爪弾いてより琴はじめ

手に手によつぎつぎあがる正月凧

あすからをおもう初湯の湯気の中

ずっしりとおもく初星出そろって


初しののめ 初明り いま初日の出

これからを生きてゆく顔初日の出

踏みひらく一歩いっぽよ初もうで

初鳩か──あおぐ人らは空のした

ふたとってのの字の湯気よ雑煮椀

受け付けにいちりん挿しよ花の春

てんねんのしおひとつまみ七草粥

もち伸びていつまでとなくお正月

いまおなじ日ざしのなかよ福寿草

生きてこそかがみ開きの槌のおと


ちへいせんだんだん赤よ初日の出

まぶしさよ一羽二羽とぶ初日の出

あおぎ見て初鳶となるこころこそ

その起源めでたくわすれかがみ餅

伊勢えびのひげにもえんぎ節料理

天と地と鈴ふるおとよはつもうで

はととして羽ばたいてゆく元日が

そらよりもおもく大注連飾り垂れ

床を這う湯気ともどもに初湯出て

初星がおおきくひとつ暮れるまで




◯文語・口語の大まかな図

下記は、俳句における
文語・口語の大まかな図です

◇文語=文語体=古典語=古い時代の文体

◇口語=口語体=現代語=書き言葉
                                     ∟==話し言葉

◇仮名づかい    歴史的仮名遣い    現代仮名遣い



◯使用している切れ字について

この作品集では
現代的な切れ字の候補を使用しています

「現代切れ字 十八字(推奨)」
よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで
ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ


◯俳句の目標 

いま心にとめているもの
取り組んでいるものを挙げておきます

「表現の新と万象の真」「驚きと感動の詩」

「一新一真」「都市詠の探求」「一句新世界」

「ものごとの花」「沈黙の美」「内的宇宙」

「三物一句」「風情の継承」「平明深遠の詩」





いつも
ご覧いただき
ありがとうございます



*作品はnoteに投稿したものです

*解説について至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください

*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります



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