民家という言葉が歴史上初めて出てきたのは鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡」とされている。伊藤ていじ氏が書いた「民家は生きてきた」(鹿島出版会)の中で、1186年”源行家は逃亡して和泉国小木の民家にかくれた”と紹介されており、また民家という言葉は本来役人が”年貢をとりたてる士民の家”として使われた言葉であり、支配階級層が被支配者の住居について軽蔑して使われていたが、現在は反対の意味となり、海外から来る外国人にとっては”ミンカ”は崇拝の対象であると書かれている。

日本人と外国人のレジャーに関する考え方は異なっており、日本人は観光を目的とし、地域の特色や名所に興味をもつが短期間しか滞在しない。外国人は長期間その地で実際に生活し文化や風土を体感しようとするいわゆる「ロングスティ」の傾向がある。古民家を保存活用するにしても、自宅を改修しながら住み継いでいくことはむろん、ロングスティの施設としてや、移住定住を促進し、地域で空き家として活用されていない古民家を活用することも重要である。

移住定住とは都市から地方へ移り住むこと、いわゆる「田舎暮らし」を指すが、田舎への移住定住は現在二極化している。完全に移住する場合と、平日は都会で働き、休日に田舎の家で過ごすいわゆる「二地域居住(にちいききょじゅう)」と呼ばれるものである。

国土交通省が平成20年実施した「二地域居住等の実態アンケート」によると、古民家に暮らしたいユーザーは年配層だけでなく、30代の働き盛りの若い世代にも浸透しており、二地域居住等の普及率は全国で4.4%・197万世帯(うち二地域居住が2.4%・109万世帯、移住・定住が2.0%・88万世帯)だが、平成30年の普及率は13%・545万世帯へ推移、関連する市場規模が平成20年の約1.5兆円が平成30年には約6.5兆円へと拡大すると予測している。

アンケートでは30歳から39歳で田舎暮らしをしたいと考えている人は57%と半数を超えており、その背景として、賃金の上がらない現代は都会での高い家賃で生活が圧迫されている人々が田舎暮らしへの憧れを増しているのかも知れない。

古民家が二地域居住としても今後活躍の場が広がっていくことが予測される。