当時わたしのバッグには、
いつも必ず薬が入っていました。
解熱鎮痛剤、胃腸薬、
下痢止め。
朝出かけるときに、
まず最初に確認するのは
「おくすりポーチが
ちゃんと入っているかどうか」。
もし忘れたら、
途中で家に戻るほど大事。
化粧ポーチや、携帯よりも
大事なもの。
これさえ持っていれば安心。
まるで、おくすりポーチが
お守りのように
なっていたんですね。
旅行や出張の準備も同じ。
まず、最初にチェックするのは
メイク道具ではなく、
お薬の有無です。
もしものときに、
ちゃんと対応できるか
日数分の量が十分あるか。
もし、足りないことに
気づいたら、
速攻ドラッグストアへ。
旅行先でも、まず探すのは
観光地よりドラッグストア!
ということもありました。
旅行は楽しみなはずなのに、
心の半分は
「体調が崩れたら…」
頭痛がおきたりしないかな
胃の調子、悪くならないかな
と、いつも体調が
気にかかる。
もはや、体調が悪くなる
前提で物を考えるように。
友達からランチや
お茶に誘われても、
いつも迷いました。
「もし当日体調が
悪くなったら迷惑を
かけてしまう…」
「せっかくの
楽しい時間なのに、
途中で帰ることに
なったりしたら悪い…」
そんな思いが先に立ち、
結局、断ることも。
断った後、ほっとするものの
でも、やっぱり行くことに
したらよかったかなぁ。
当日、案外大丈夫かも。
やっぱり、行くって
言ってみようか、いやでも
もう1度断ったし…
なんか、ホント
気持ちまで、はっきりできなく
なってきたなぁ…
周りの人から見たら、
わたしは「体が弱い人」だと
思われていたかもしれません。
わたしは、この「体が弱い」
と、言われたり
思われたりするのが
死ぬほどいやでした。
好きでこんな体質に
なったわけでもないのに
まるで自分が
「欠陥品」のように
思えてしまう。
「なんでわたしだけ
こんな体質なんだろう」
「みんな元気なのに、
どうして自分だけ…」と、
自分を責める日々。
毎日悩みすぎて
心も体も
疲れ切っていました。
ちょうど、そのころは
起業して自宅でエステサロンを
やろうと準備していた頃でした。
フェイシャルサロンに7年、
ホテルの
ブライダルエステに2年、
トータルで9年の経験も
ありましたし
自分の思う
「隠れ家的サロン」を
やりたいと思ったのですね。
(当時、おうちサロンとか
隠れ家サロンという言い方が
流行っていた)
ベッド1台、スチーマー1台、
自宅の1室をサロンにして
商材を仕入れる代理店とも
契約して
自分の思うサロンづくり
自分の思うエステメニュー
パンフやご案内はがき
名刺もを作りながら
これから、自分の仕事を
思うように、自由にできる!
と、わくわくしながら
仕事を辞めたはずなのに…
起業の準備どころか
自分の体調が不安定で
毎日病院めぐり。
収入もないのに
医療費ばかりにお金が
かかる。
自宅サロンに必要なものは
もうどんどん送られて
くるのに
どうしよう…
この先、できるのだろうか…
それでも、どうにか
がんばって、自宅サロンを
オープンしました。
考えようによっては
自宅なのだから
自分の体調に合わせて
予約を入れることもできるし
最初から
そんなに人もたくさん
くるわけではないし
大丈夫、大丈夫…
何度も、そう
言い聞かせてきましたが
いやでも、そんな甘い考えで
仕事していいのか?
という疑問もありました。
やがて
「わたしは本当に
このままでいいのだろうか」
という不安の方が
日に日に大きくなり…
薬に頼る日々は、確かに症状を
一時的に抑えてくれるけれど、
それは根本的な解決では
ありません。
薬が効く時間が終わると、
また同じ不調に襲われる。
繰り返すたびに、
「このまま一生、
薬に頼り続けるのかもしれない」
という恐怖が頭をよぎりました。
特に旅行や出張のときは、
心の中で葛藤が
繰り返されました。
楽しみにしていた予定でも、
朝から
「体調が悪くなったらどうしよう」
と心配し、出発前から疲れる。
車や電車に乗るたびに、
「薬は持ったか」
「お腹の調子は大丈夫か」と
確認し続ける。
心からリラックスできる
瞬間はほとんどなく、
常に緊張状態にありました。
自分の体調も心配。
自宅サロンも心配。
お金のやりくりも心配。
ああ、なんでこんなことに
なったんだろう?
人は、体が弱ると心も弱る。
自己否定の気持ちや
妙な孤独感が重なり、
もう投げやりになってしまう
こともありました。
「どうせ、私の人生は
うまくいかない。
しょせん、こんなもんなんだ。」
と苦しくなることも、
しょっちゅう。
今、思えば
まだ、何も始まってないし
何の不利益もでてないのに
薬に頼る生活が、
身体だけでなく
心まで支配していたのです。
それでも、なにかどこかで
諦める、やめるということも
できませんでした。
何とかしたい、もっと自由に、
体も心も軽やかに過ごしたい。
せっかくここまで
準備してきたのに
好きなことを好きなように
できる仕事なのに
やめたくない。
だけど、
どうしたらいいのか分からない。
そんな日々をもんもんと
過ごしているうちに
なぜか、ふと、こう思ったのです。
「本当に、
自分が元気になる
方法ってないのだろうか?」
「この世の中にあるもの
全部調べ切ってないよね?」
「もしかしたら、意外な所に
解決策が落ちてるかも?」
「病院の治療や薬だけが、
方法ではないのかも…?」
自分の体を理解し、
薬に頼らずに
元気に過ごせる方法が
あるのではないか?と
少しずつ考え始めるように
なったのです。
こうして、薬が手放せない
生活に苦しみながらも、
「何か根本的に変える方法を探そう」
という気持ちが
わたしの中で芽生えていきました。
それが後に、
東洋医学との出会いにつながり、
体も心も少しずつ軽やかになっていく
道の第一歩となったのです。