イエスの『こわれもの』は、1971年11月26日にリリースされました(UK)
アメリカでは海賊盤が出回るのを避けるためにできるだけ遅滞なく発売しようとしたようですが、結局72年1月4日のリリースでした。
アルバムチャートで英国では7位、アメリカでは4位を獲得しています。
日本盤も72年だったと思いますが、自分が初めて買って聴いたイエスのアルバムでした。
1986年に欧州、米国、日本でCD化されていますが、欧米盤はすべて西ドイツプレスか日本プレス(松下電器製造)の「ターゲット盤」だったようです。この頃は全てLP用マスターをそのままデジタル変換マスタリングして使用していたと思われます。
これを書きながら「再発タイトルのうち最初に出たイエスのCD」は1986年の『危機』だけじゃなかったと気がつきました。訂正(追加)します。
米国盤CDは『危機』より『こわれもの』の方が先に出たことになります。
<<リマスター盤について>>
これまでのリマスター盤の経緯についてまとめてみました。
1993年にリリースされたアドヴィジョン・スタジオのマスターテープの箱をデザインしたボックスに入った米国限定盤(米国プレス / ゴールドディスク)が、おそらく『こわれもの』初のリマスター盤だと思われます。(82524-2)
「Digitally Remastered by Joe Gastwirt at Ocean View Digital」と記載があります。
わざわざマスターテープの箱のデザインを使用していることから、新たにアナログマスターテープからデジタルマスターを起こしたことが伺えますが、最後の『天国への架け橋 / リプライズ』を収録し忘れるというチョンボをやらかしています。
この後しばらくは、Joe Gastwirtのリマスターがレギュラー盤でも標準になりました。
1998年にHDCDフォーマットの日本盤初の紙ジャケが出ました。
聴きましたが、明らかに国内にある日本盤LP用のデュプリケイテッド・マスター(ダビングされたアナログ・マスターテープ)を使用したもので、音質は残念なものでした。
(2001年頃に日本盤紙ジャケ第二弾が出ましたが、しばらく前に聴かずに断捨離してしまったので音は確認できません)
2002年に『マグニフィケイション』を手掛けたTim Weidnerによる『こわれもの』の5.1サラウンド・ミックスのDVD-Audio盤がライノからリリースされています。同時に『マグニフィケイション』の5.1ch DVD-Aもリリースされました。
輸入盤国内仕様の日本盤も出ています。
当然マルチ・マスターを使ったのでしょうが、後のスティーヴン・ウィルソンのように、マルチから更に楽器を分離して抜き出すまでの作業はしていないと思われるので、比較的地味なサラウンド・ミックスになっています。
2003年にボーナストラックを追加したライノの「Expanded & Rmastered」盤が出ました。
『こわれもの』はスリップケースに入ったデジパック仕様でした。
これはエディ・オフォードのオリジナル・ミックスをDan Hersch とBill Inglotがリマスターしたもので、ハイレゾやアナログLP、MP3ダウンロードなども販売されました。
この音源は2009年の日本盤紙ジャケやボックスセット『Studio Albums 1969 - 1987』※ただしボーナスは無し(2013)などにも使われています。
このリマスター音源は現在でもレギュラー盤のスタンダードになっていますが、ライノ盤が出た後も、しばらくはJoe Gastwirt盤が廉価再発などでリリースされ続けていました。
2006年には、Mobile Fidelity Sound LabによるUltradiscIIシリーズのリマスターCDが出ています。(米国盤)
Shawn R. Brittonが同社の誇るGain 2 Systemを使ってオリジナル・アナログ・マスターからリマスターしています。2019年に45回転アナログ2枚組としても発売されました。
買っていないので失念していましたが、2011年にSACD(ハイブリッド盤)がワーナー・ジャパンから出ています。(WPCR-14167)
ガラスマスターの制作はSony DADC Japan。マスターの元音源はわかりません。
現在でも時折中古盤を店頭で見かけることがありますが、価格は高止まりしています。
2013年にはワーナー・ミュージック・ジャパンからSACD(デカジャケ)が出ています。
菊池功さんという方が24bit / 96kHzのマスターを使ってリマスタリングされています。
元マスターは日本版Wikiでは2002年のDVDオーディオのマスターであるとしていますが、2002年のDVD-Aは『こわれもの』しかリリースされていません。
元の24bit / 96kHzのマスターはDan Hersch & Bill Inglotによるハイレゾマスターじゃないでしょうか?
SACDフォーマットは、少なくともロックのフィールドでは当初期待されたほど普及しませんでしたね。ひとえにソフトが出なかったせいでしょう。自分も対応機器は持っていません。
2015年にはスティーヴン・ウイルソンによるリミックス(CD&ブルーレイ / CD&DVD-A)のPanegyric盤(ステレオ&サラウンドミックス)が出ました。
これはオリジナル・マルチテープから丹念に音を抜き出してリミックスするという驚きの労作でした。それ以前のステレオは全てエディ・オフォードのオリジナルミックスです。
拙宅の環境ではブルーレイ・オーディオが再生できませんでしたが、原因の切り分けは出来ていませんのでエラー盤かどうかは不明です。ただし他の4タイトルは問題なく再生できています。
DVD-Aの方でサラウンド・ミックスを聴きましたが、2002年のティム・ウェイドナーによる地味なサラウンド・ミックスと比較すると、よりサラウンドを強調した派手で面白いミックスになっています。
このSWステレオ・リミックスは海外ではオルト・ジャケットのアナログ・ボックスセットが出ましたが、日本では2019年の来日記念盤としてCDが発売されました。
2022年にはワーナー・ミュージック・ジャパンからMQAハイレゾ&ノーマルCD互換の紙ジャケ(「紙ジャケ最終章」)が出ました。
未聴ですが、『イエスの世界』をノンハイレゾで聴いた限り良好な音質でした。
マスターはSACDと同じだと言われているようですが、確証はありません。
ただハイレゾ・マスターの元を辿れば2003年のDan Hersch & Bill Inglotのハイレゾ・デジタルマスターではないかと推測しています。
もちろんリマスター時に音をいじっている可能性はあるかもしれません。
今年『ザ・イエス・アルバム』のスーパー・デラックス・エディションが出て、スティーヴン・ウィルソンの最新リミックス(ステレオ、モノ、ドルビー・アトモス・サラウンドほか)が収録されています。おそらく来年以降、『こわれもの』の最新リミックスがリリースされるのではないかと予想しています。
アナログがセットになっていて荷物も増えるし、「聴かないもの(アナログ、アトモス)は買わない」と決めました。でももしCDだけのバージョンが出たら少し自信がありません(苦笑)
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