市川哲史さんのコラムを読んでいたら、『危機』のスティーヴン・ウィルソン・リミックスに関する記述が出てきました。


一部引用させていただきます。

SWミックスは、冒頭の鳥のさえずりと川面の水音だけでいきなり驚く。

するとハイハットが凶器と化すビルブルのドラムさばきや、スクワイアの重戦車なのに足回りがトリッキーなベース・ライン、テンション高い音のはずなのに柔らかいハウ爺のカッティング、ウェイクマンのいろんな音と、どの楽器も誰のコーラスさえも空間の中でくっきり聴こえる。

そして各々の音数がどんどん増えてくるにしたがって、アンサンブルのグルーヴ感がどんどん加速するのだ」


SWのサラウンド・ミックスはしっかり聴きましたが、ステレオ・ミックスはろくに聴いていないことを思い出しました。(買って棚に入れて安心するアルアルです)


あらためて聴いてみました。

今回聴いたのはPanegyric盤ではなく、2019年の来日記念盤として出た国内盤CDです。

もう『危機』を聴くこと自体すごく久しぶりです。


たしかに各楽器やヴォーカルが、はっきり、くっきり聞こえますね。

はっきり聞こえすぎて、「危機」の終盤部でエディ・オフォードがオリジナル・マスターテープを切り貼りして繋いだところまでわかります。

中間部のリックのオルガンは前後の奥行きが広がって感じられます。(残響音?)

全体的に高音成分が増えていますが、少し耳について聴きにくいかもしれません。

正直最初に国内盤LPをリアルタイムで聴いた時の音はもう記憶にありませんが、きっともっとモコモコした音だったのでしょう。

それでも感動と驚きがありました。


SWのミックスはオリジナルをリスペクトした奇をてらわない比較的元作品に忠実なリミックスだとは思いますが、印象はやはり少し違います。

新鮮でヴィヴィッドな音ですが、このミックスが手放しでデフィニティヴ・ミックスだとまでは言えないと思いました。

刷り込まれた「脳内記憶」が強すぎて、オリジナル・ミックスはやはり捨てられません。

音より音楽が大事です。

SWミックスはステレオより、「色物」としてサラウンド・ミックスを聴くのが吉だと思いました。

けっしてディスる意図はありません。あくまでも個人の嗜好と感想です。


しかし、リリースから50年以上経って、まだ再発されたり、聴かれていること自体が驚きですね。

名盤は色褪せず、感動は衰えません。



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