FRONTIERS その先に見える世界
80億人 人類繁栄の秘密 NHKBS 8/27放送
感想
人類の繁栄要素が「友好的」って、なんかあまりピンと来なかったが、番組が進むにつれてナットク。
特にショックだったのはネズミの繁殖実験。3000匹が楽に暮らせるエリアと十分な食料・水を用意しても2200匹をピークに結局全滅したという。
なんか示唆的、やなぁ・・・・
内容
2023年、人類は80億人に到達した。
今世紀中にも100億人を突破するとの予測。
なぜ人類は大繁栄したのか?
Chapter1 人類が持っていた知られざる性質
ヴァネッサ・ウッズ デューク大学 進化人類学部
類人猿や犬を観察して人間を考えている。
友好性に関する考察
エサを与える実験
中を直視出来ない容器におやつを入れる。
それを人が指さすと、犬はその容器に向かいエサを食べる。
単純に見えるが、他者を理解する高度な技術が必要。
人がおやつを食べる手助けをしている→理解している
相手の心を読む能力が異種間で存在するのは非常に珍しい。
チンパンジーでさえこの行動は不可能。
犬がこの能力を得たのは「自己家畜化」による。
家畜化→人に利益をもたらすための操作(人が関わる)
自己家畜化は、人間が関わらずに起きる過程。
犬は数万年前のオオカミの一部が、自ら変化し家畜化した。
同じ変化が人間にも起きている→ヒト自己家畜化
ボノボの生態研究がヒント(ボノボ:コンゴだけに生息)
チンパンジーとの共通祖先から進化。
チンパンジー側は食料が乏しい競争社会。攻撃性が高くなる。
ボノボ側はライバルなく食料豊富。争わず穏やかな種族になる。
・ボノボは見知らぬボノボにも食料を分け与える。
→自己家畜化が起こった事で友好的になり繁栄した。
ネアンデルタール人やデニソワ人等の他人類に比べ、社会的なネットワークが広がっている。
短世代で自己家畜化が起きる実験
ロシアで始まったギンギツネの飼育実験。
元々ギンギツネは攻撃的で人に懐かない。
始めたのは1968年。
条件は一つ→手を差しのべ、近寄るキツネを交配するだけ。
世代を重ねるごとにどんどん友好的になった。
56世代目には人の意思を理解しコミュニケーション可能に。
淘汰圧は「有効性」のみ。ホルモンにも変化が。
コルチゾール(攻撃性)の減少
オオカミは絶滅に瀕し、犬は大きく繁栄。
過密都市で人間が暮らせるのは友好性のため。
多くは満員電車、渋滞に我慢出来る。
Chapter2 苦境を乗り越えた人類の秘密
約6万年前にアフリカを出て世界中に広がった人類。
だが7.4万年前に大きなドラマがあった。
ジョン・カッペルマン テキサス大学 人類学部 名誉教授
現生人類の、ネアンデルタール人らとの僅かな違い。
最近エチオピアで発見された「シンファ・メテマ1」遺跡。
7.4万年前の人類の痕跡。火山噴火で出来たガラス片の出土。
同時代に噴火したトバ火山のものと判明。
噴煙が地球を覆い「火山の冬」をもたらした。
寒冷化によりホモ・サピエンスは大減少。
遺跡調査により、噴火前と後での生活変化が解明された。
矢じりの発見。当時狩猟や戦闘に使われ、広く普及。
噴火の前と後で使われ方に変化。魚を捕るのにも使われた。
気候変動により捕れるものの変化に、柔軟に対応した。
他の動物にはない特徴。
川が干上がる時に出来る、水溜まりの魚を取りつつ移動する「青いハイウェイ」による人類拡散のルートの可能性。
Chapter3 人類が絶滅危惧種だった!?
100万年前、人類か危機を迎えていた事が分かって来た。
ワンジー・フー マウントサイナイ医科大学 システム生物学
ゲノムデータ解析により、人類の深刻な人口減少を発見した。
人類の祖先が絶滅しかけた時期があった。
太古の人口を調べるためのソフト「フィットコール」を開発。
遺伝情報の中の突然変異は世代交代で、一定の確率で起こる。
1人に発生した突然変異は子孫に脈々と受け継がれる。この経路は突然変異の発生率や継承率を使って逆算すると、何世代前で変異が発生したかが分かる。世代ごとの変異の数を調べることで、遠い昔の人口規模を割り出すことが出来る。
左は遡る年数、右は人口。81,3万年前の人口が1280人!
100万年前、約10万人いたヒトの共通祖先が93万年前に大減少。これはほぼ絶滅に近い状態。野生のパンダより少ない・・・
この理由は寒冷化の影響。
この時期は氷河が拡大、地球規模の超寒冷化が起きていた。
人類はこの後に進化(危機を乗り越えた)
その時期のヒトの化石が極端に少ない。
その後多様な人類が発生、
火の利用で絶滅を回避した人類。
人類が火を使った最古の痕跡は79万年前(イスラエルの遺跡)
人口減少から回復したのは約81万年前。
我々が存在出来ているのは、とてもラッキーなこと。
今世紀中に100億を超える世界人口。
人類の繁栄はどこまで続くのか?
Chapter4 人類の行く末
人口増が懸念された1960年代アメリカである実験が行われた。
マウスに好きなだけのエサと水、環境を与えるもの。
どこまで数が増えるか→Universe25と命名
行ったのは生態学者 ジョン・B・カルフーン博士。
3000匹以上が快適に暮らせる装置。最初はオス、メスの4組。
600匹超で異変。マウス間で格差が生まれ暴力が頻発。
強いグループが場所を占有。弱いグループはスシ詰め。
暴力のオスに追われメスが育児放棄。子供は繁殖に無関心。
マウスは2200匹でピークを迎え、その後減少に転ずる。
子が産まれなくなり、開始から1780日で全滅した。
実験名の25は実験を行った回数。全て同様の結果だった。
岡田浩樹 神戸大学 国際文化学研究科
人類は一つの頂点を迎え、分岐点に差し掛かっている。
新たな選択肢は宇宙。新たな多様性が手に入る。
宇宙人類学の提唱。
近い将来月基地で人が暮らし始め、火星にも到達する。
移った場所で文化を作る。それは地球と異なるもの。
ポスト現生人類。
それを考えるのは我々の問題。