2023年9月9〜28日 在宅介護 <抗がん剤治療2クール目休薬期間> 手術から7ヶ月目
この日は夕方からせん妄が激しくて、夫となかなか会話ができていなかった。
パットを替えるため夫に声をかけると激しく声を荒げて抵抗した。
夫「お前誰だよ、さわんじゃねーよ!!」
私「〇〇(←夫)の奥さんだよ!」
夫「いーや、違う。結婚してない」
私「じゃあ、誰が奥さんなの?どの人よ?」
夫「大学の・・・ 高校の・・・ 」
聞き取りづらくてよくわからなかったが、何か言っている。
私は、胸がザワザワした
病気のせいだから、とわかっているつもりでもつい腹が立って、反論してしまった。
「16年前に結婚したんだよ!〇〇(←夫)の奥さんは私だよ!」
夫「違う。お前とは結婚してない。じゃあ聞いてみろよ。電話かけろよ」
としつこく言うので、私も頭に血がのぼって怒りがおさまらない。
コレはもう誰かに電話を実際にかけないと夫も気が済まないだろうと思い、夫の両親へ電話をかけた。
「すみません、お義母さん、〇〇(←夫)が聞きたいことがあるらしいです」
お義母さんは、電話口を代わった夫からの思わぬ接触に「どうしたの、急に」と、喜びを隠せない。
夫は寝たきりになってから約7ヶ月ぶりに携帯を持って話した!(その姿には感極まった・・)
夫「俺の奥さんはだれ?」
聞き取りにくいので、何度も何度もお義母さんとやりとりする。
義母「なに言ってるの〜 〇〇ちゃん(←私)でしょ〜」
私は夫から携帯を代わってもらい、ことの発端を説明した。
「〇〇(←夫)が私とは結婚してないと言ってます。大学の後輩と結婚したと言ってます。なんか虚しくなっちゃいます・・・」と電話口でお義母さんへ愚痴をはく。
それを夫は聞いているのかいないのか、、、目をつむっている。
何度やり取りしても奥さんと認識してもらえなくて、私は疲れ果ててしまってその場を離れた。
私は飲み物を飲みながら、好きなテレビを見て、自分の心をいたわった。
涙が止まらない、どうしよう。。。
夫は私との思い出を忘れてしまっていても、私のことが好きなんだと思っていた。当たり前のように。
本当は、私じゃなくて他に好きな人がいたんだろうか?
その人のことが忘れられないのに、私と結婚したんじゃないだろうか?
もしそうだとしたらどうしよう。。。私との結婚生活は何だったんだろうか
あんなに仲良しで幸せだったのに、幻だったんだろうか
結婚16年目にしてこんな不安と絶望感を味わうと思っていなかった。
本当に本当に、とてもとても、辛かった。悲しかった。むなしかった。
あんなにかたく結ばれた私たちだったのに、、
脳の病気って本当に恐ろしい
それでも、介護を投げ出すわけにはいかない。胃ろうの時間になったので夫に声をかけた。
心を無にして、なるべく何事もなかったように。
夫はもう、さっきのことは忘れて穏やかになっていた。
病気による一時的な混乱だったのだろう。
私に向ける目も声も、優しい。いつもの夫だった。
私は涙をこらえて喉の奥が痛くなりながら、自分に言い聞かせる。
16年間の結婚生活は本当に幸せだったし、夫の愛情にも嘘を感じたことはない。
夫の一番はいつも私だった。
16年間の絆があるからこそ、私は夫を信じている。
あんなこと言ったのは、絶対に病気のせい。
こんなことで私の心は壊れない。大丈夫だよ、わたし。
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この日のことは、介護をしている日々の中で一番辛かった出来事です。
この日以降も、時々奥さんと認識してくれていない時はありますが、
最近は新たな絆を構築できていると感じます。
名前はほとんど呼んでくれないですが、特別な人と想ってくれていると思います。
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今日の夫の異世界語録
「あした、ほっかいどう行くじゃん?」
(え、そうなの?!いつ決めた?)
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重度認知症の夫が発する言葉は、いつも謎解き。それを私は「夫の異世界語」と心の中で呼んで、和ませてもらっています
いつか夫がいなくなって、涙が止まらなくなった時、これを見て笑顔になるきっかけにしようと思っています。
続きは4月13日(土)19時30ごろ更新します!
「車椅子でがんセンターへ。夫、大混乱!」