情報調査力のプロフェッショナル
「情報調査力のプロフェッショナル」ビジネスの質を高める「調べる力」上野佳恵 ダイヤモンド社 本体1500円
評価の分かれる本です。
タイトルに惹かれたものの、本だなな積読になっていたものをようやく読みました。
リサーチに携わっている者にとっては、ややかったるい内容です。
物語風の書き方のスタイルの部分⇒2~6章 も含めて。
しかし、大学を出てからの著者のリサーチ人生に興味を持てる人には、面白いものです。また、この手の情報提供が少なかっただけに、ノウハウ的部分⇒第一章「調べる仕組みとは」と
著者のこれまでのキャリア的部分⇒第7章「情報プロフェッショナルへの道」は、調査畑の人間にも興味を持って読める内容だと思います。
全編を通じてお勧めできる読者は、大学生などでリサーチに興味があって、自分のキャリアの候補として検討してみたいと思っている方々でしょう。ないしは、ビジネスでリサーチ会社等を使わねばならない人たち、失礼ながら初心者に近い方々には有益な情報を提供していると思います。
ということで、私の評価は☆4つ。
友人でリサーチに関係している辛口の批評家は、言下に「私は読まない。見出しだけ見れば内容判る」と言っておりました。
以上
ワーカーズキャピタルガイドラインの基本部分の紹介
以下は、連合のホームページから引用した、ワーカーズキャピタルガイドライン報告書の「肝」の部分である。
「ワーカーズキャピタル責任投資」の基本理念
(1)投資判断にESGといった非財務的要素を考慮する
(2)労働者(労働組合)の権利保護を考慮する
(3)過度に短期的な利益追求を助長させる行動を排除し、中長期的且つ安定した収益の確保に努める
(4)運用方針、または責任投資の手法を明示し、透明性の高い運用に努める
(5)投資先企業に反倫理的、または反社会的な行動がみられた場合、経営陣との対話や株主議決権行使など適正な株主行動をとる
(6)運用受託機関に対しても責任投資を求め、責任投資を資産運用における主流に(メインストリーム)していく
「ワーカーズキャピタル責任投資」のための行動指針
(1)ワーカーズキャピタルの所有者として有する責任と権限を認識し、ワーカーズキャピタルの運用方針の決定に参画する
(2)ワーカーズキャピタルの一方の拠出者である事業主との対話を行い、責任投資の手法を決定する
(3)ワーカーズキャピタルの運用方針、または責任投資の手法について明示し、運用受託機関の選定に参画する
(4)ワーカーズキャピタルが過度に短期的な利益追求を助長することにならないよう、適宜運用の監視を行う
(5)ワーカーズキャピタルの最も代表的な年金基金の運用に際しては、年金給付の財源を不当に毀損させないため、中長期的且つ安定した収益の確保を基本とした運用に徹することを運用責任者に求める
(6)ワーカーズキャピタルの株式等の投資に伴い、投資先企業の実質的な株主、あるいは資産所有者として、投資先企業に反倫理的、または反社会的な行動などがみられた場合、投資先企業の経営陣との対話や株主議決権行使など適正な株主行動あるいは資産所有者としての行動をとる。または運用受託機関等に、適正な株主行動あるいは資産所有者としての行動を求める
(7)ワーカーズキャピタルの運用方針、責任投資の手法、またはガイドラインを公表するなどを通して、労働者(労働組合)間の連帯を図る
以上
ワーカーズキャピタル責任投資をどう評価するか
2010年12月に連合が、「ワーカーズキャピタル責任投資」のための行動指針などを発表した。全文は、以下にあるので参照願いたい。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/kurashi/sekinin_toushi/data/20101216_workers_capital.pdf
(高く評価できる!!)
さて、この行動指針をどう評価するかであるが、社会的責任投資の普及を提唱してきた立場からは、極めて意義のある動きであると高く評価できる。
(連合が今回の動きに踏み出した背景)
これまで、労働組合や労働者は自らが拠出した資金がどのように運用されてきたか、極端にいえば「モノを言わない」資産保有者であった。
しかし、グローバリズムの進展は、富の集中や格差の拡大、途上国の児童労働や人権侵害、労働条件の悪化、環境破壊などの負の部分をもたらした。また、株主至上主義をかざした投資ファンドが、労働者をはじめとする多様なスーテークホルダーの利益を疎外し始めた。
一方、年金基金の運用においては、過度に短期的な利益追求する傾向が高まり、それが結果として労働者の利益に反する結果をもたらしたと認識している。
(連合の結論)⇒以下は、発表分からの引用
労働者(労働組合)はワーカーズキャピタルの所有者として、社会や環境に悪影響を及ぼす企業行動に加担する投資を排除し、公正な市場を確立する社会的責任を認識する必要があります。
今後、産業別労働組合、企業別労働組合は、ワーカーズキャピタルの所有者責任と権限に鑑み、その運用を委託するに際して、本ガイドラインに基づいた責任投資に取り組みます。
(今後期待されること)
今回のガイドラインに沿って、企業別組合や産業別組合がワーカーズキャピタルの所有者の観点から責任投資を推進すると宣言しているが、これがどの程度広がりを見せるかであろう。
今回のガイドライン報告書は、現在の責任投資に対する全般的な認識度・認知度の低さを考慮してか、かなり説明的に、ワーカーズキャピタルが責任投資に取り組むべきかの解説を海外の動向も踏まえて展開している。
まずもって、この内容を幅広い関係者に情報宣伝活動を展開していくことが第一義的に求められることであろう。とにかく、資産運用について、労働組合は問題意識がなかったのであるから。
さらに、連合の発表文には、今後、最大の年金基金である年金積立金管理運用独立法人(GPIF)などの公的年金にも責任投資への取り組みを働きかけていくとある。簡単なことではないと思うが、ぜひ、進めていってもらいたいものである。
(法制化へのうねりを)
もうひとつの観点は、上記したように「公的年金が責任投資に取り組むべき」とする立法化に向けての政治行動を展開してほしいことである。英国において、年金の責任投資が拡大した推進力となったのは、年金基金に責任投資の情報開示を法律で義務付けたことにあったことは周知の事実である。
(受託者責任問題は過去の遺物)
年金の関係者は、基本的に保守的である。今回の動きに対しても、消極的な対応が容易に想像される。この際、最も議論となるのが、受託者責任問題である。欧米においてさえ、受託者責任を「盾に」責任投資を回避してきた長い歴史があった。
しかし、本ガイドラインも触れているように、すでにこの問題は解決済みの問題である。社会的責任投資の源流であった宗教観・倫理観に基づいた手法は、確かに受託者責任に触れるリスクがあったが、現在、責任投資と呼ばれる手法はそういったものとは無縁であることを、理論武装して、関係者を説得していく努力が求められよう。
以上