蛸の扉 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 扉の前で二人の調査員達が話し合っていた。

 「『蛸』と書かれていますね。どういう意味でしょうか?」

 「きっと扉の向こう側の世界にはたくさんの蛸が生息しているのでしょう」

 「蛸以外の動物は棲息していないのでしょうかね?或いは、たくさんの種類の生物が棲息している中でも特に蛸の個体数が多いのでしょうか?」

 「個体数が相対的にかなり多い程度で扉にわざわざ蛸と書かれますかね?」

 「やはり蛸以外の動物が棲息していないのでしょうか?しかし、だとすると、この扉の向こう側に棲んでいる蛸は私達が知っている蛸とはまったくの別物ですよね。なにしろ、こちらの世界の蛸は他の動物を補食して生きているわけですから自分達だけでは生きていきないでしょう?」

 「たくさんの種類の蛸が生息していて蛸だけで豊かな生態系が構成されているのかもしれませんね」

 「それで、どうしますか?扉を開けてみますか?」

 「待ってください。この世界の向こう側はおそらく海ですよ。扉を開ければ膨大な量の海水がこちらの『扉の扉』の世界に雪崩れ込んでくるかもしれません。この世界の陸地面積が減る可能性もあるのですよ。この扉は開けないでおいた方が良いと思います」

 「そうですかね。他の扉を調査しましょうか?」

 「ええ」


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