ピンク・フロイド(Pink Floyd)は,1970年1月10日英国ノッティンガムのノッティンガム大学公演を皮切りに,3月21日デンマークはコペンハーゲンのチボリコンサートホール公演まで,英国/欧州/北欧ツアーを行い,3月30日フランスはパリ郊外セーヌ=サン=ドニのル・ブルジェ空港での音楽祭(Le Festival Musique Evolution)出演後,4月9日ニューヨークのフィルモア・イースト公演を皮切りに北米ツアーを開始します.
 前年に何度か演奏されていた組曲 "The Man And The Journey" が色々な形で別の曲の一部で構成されたのに対して,1月10日から開始されたこのツアーでは "Atom Heart Mother" のプロト・タイプに当たる "The Amazing Pudding"(”Consequently” と紹介された時もあります)が披露される等,時期的にもステージ自体が実験的で重要な意味を持ったツアーでした.

 本CDは,上述のツアー終盤に差し掛かった 3月13日ドイツはベルリンのベルリン工科大学(アウディマックス)公演のオーディエンス録音を収録し Sigmaレーベルより 2008年にリリースされた 『 Richard, Are You Ready? (Sigma 15) 』 です.

 今回,再入荷に伴ってサブ・タイトル 「 Berlin 1970 」 が付与され 『 Richard, Are You Ready? : Berlin 1970 (Sigma 15) 』 となっていますが,ジャケット含めて 2009年リリース当時のままであり,便宜上判り易くする関係で付与したものでしょう.

 この日の音源は既発で 2001年に Hypedupレーベルから 『 The Injustice Of A Kaleidoscope Of Sound (HY1002-A/B) 』 としてリリースされているようですが,Sigma盤の方が世代が若く,クリアのようです.

 音像は若干遠く音が回っているような感じのする部分(”Cymbaline” 等)もあり,各パートの音のバランスは少し悪いですが,オーディエンス・ノイズも少なく,録音された年代を考えると高音質なオーディエンス録音です.

 この公演の ”Cymbaline” は,中間部に足音の SE(Sound Effects)は無く,コンパクトに纏められた感じの演奏となっています.
 そして,このアルバムのタイトルともなっており,リチャード・ライト(Richard Wright)が ”Atom Heart Mother" の前にハモンド・オルガンのサウンド・チェックに入り込んでしまった事から,ロジャー・ウォーターズ(Roger Waters)が 「 Richard, Richard, Are You Ready? 」 と冗談交じりに問いかける部分は,観客の笑いも誘い,ある意味微笑ましいようなシーンとなっています.

 メーカー情報では
 『1970年1月から3月にかけて行われたヨーロッパ・ツアーより、3月13日ドイツはベルリン公演を極上オーディエンス録音で完全収録。
 過去に本公演からBluesのみを収録した既発盤が存在しましたが、本盤は本編を含めたベルリン公演の全貌を1時間52分に渡って高音質で収録しています。疑う余地なくマスター・クオリティで収録されており、一部、劣化による音のよれやカットがある箇所もありますが、真の創造性に満ちたこの時期らではのパフォーマンスを、安定したムードいっぱいのヴィンテージ・サウンドで堪能することができます。
 クリアーで広がりのある透明感に満ちた優れたサウンドは素晴らしく、オルガンの響き、シンバルなどの音の美しさに思わず聴き入ってしまいます。オープニングのAstronomy Domineのイントロで、ロジャーのMCを遮るドイツ語の司会者のような人の声が一瞬聞えます。
 Careful With That Axe, Eugene の6:05 を前後とするテープ劣化、Cymbalineはヒスノイズの含有量に合わせて音質が微妙に変化しますが、音質は十分に良好です。A Saucerful Of Secretsは冒頭から情報量がめいっぱい入ったような強烈なサウンドで聴く者を圧倒します。ズーンという低音が凄い迫力で収録されており、中間のドラムパートもクリアーで迫力十分。9:30-9:58でのオルガンパートのテープ劣化が残念ですが、全体の中でも特に素晴らしいトラックであることは間違いありません。
 Embryo は音の粒立ちが素晴らしく、後半のギルモアのカモメのようなギターサウンドも非常にクリアーで、最高にドラマチックな演奏が楽しめます。「ファーストアルバムからのインストナンバー」という紹介で、先のCymbaline同様にこのツアーからセットインしたInterstellar Overdriveが演奏されます。5:04でのカットが残念ですが、14分に及ぶ変幻自在のパフォーマンスは圧巻です。
 16分の熱演を聴かせるSet The Controls For The Heart Of The Sun では4:30以降のコーラスパートが大きめに録音されており、その部分はまるでコーラン音楽のようでもあり、いつもと違った雰囲気のサウンドを聴く事ができます。9:56-10:20の幽玄サウンドのパートでの音劣化が残念ですが、それ以外は完璧に収録されています。「次のアルバムから・・・」というロジャーのMCに続いて、突然リックがオルガンのサウンドチェックに入ってしまい、その間、ロジャーがなんども「Richard, Are You Ready?」と、ジョークっぽく連呼するという、大変珍しい様子が2分以上に渡って収められています。(オルガンでパープルのBlack Nightみたいなメロを弾いたりします。)
 19分のAtom Heart Motherの原曲Amazing Puddingは最大の聴き所でしょう。中間のファイナルとは全く異なる展開部では、緊張感と創造性に満ちた演奏を聴く事ができます。エンディングパートの怒涛の盛り上がりは絶品です。緊張をほぐすようなBluesも大変クリアーなサウンドで収録されています。(エンディングに残された2秒間の妙なサウンドは何なのか不明です。)1970年ベルリン公演の決定版タイトルが200枚限定のプレスCDにてリリース決定です。

 ★beatleg誌 vol.97(2009年10月号)のレビュー要約です。ご参考まで。
 1970年3月から始まった短い欧州ツアーから、3日目のBerlin公演を収録。
 数箇所で音質のムラやレベルの急激な変化を確認できるが、この時期としては良好なオーディエンス音源が使用されている。当音源はマスターテープのデジタルコピーが流通しているため、本盤に使用された音源もそれと同一のものと推測される。
 この前日の公演は、メガレアな海賊盤『Big Pink』に収録されたHamburg公演。『Big Pink』収録曲は僅かに3曲で当日のコンサートの全容を知るにはほど遠いが、このBerlin公演と同様の演奏が展開されたのだろう。
 1970年に入ってから、彼らはブルースロックをベースとしたスタイルに大転換したわけだが、過渡期の弊害として、Gilmourのギターがまだ稚拙だという点が挙げられるだろう。覚えたてのブルースペンタで何とか乗り切っているという感じだし、「The Amazing Pudding」でのスライドギターはかなり厳しい。
 とは言え、彼らの真骨頂であるサイケデリックな異空間を瞬時に作り上げる手法は流石である。例えば「Cymbaline」の間奏部では、靴音のSEを利用して場内を歩き回るような仕掛けはなく、「The Man & The Journey」の「Sleep」に良く似たアレンジが展開される。そして、「Interstellar Overdrive」や「Set The Controls For The Heart Of The Sun」でも、エコーと様々なSEを組み合わせた効果を多用し、唯一無二の世界を作り上げている。
 しかし1971年にもなると、1960年代を引きずったフリーフォームでサイケデリックな展開は薄れてしまう。そのため、この1970年の演奏は創造力に溢れた最も面白い時期と言えるだろう。Disc 2の4でのちょっとした余興も楽しい。必携盤。』

Richard, Are You Ready? : Berlin 1970 (Sigma 15)
 
 Live at Audimax der Technische University, Berlin,GERMANY 13th March 1970

  Disc 1
   1. Astronomy Domine
   2. Careful With That Axe, Eugene
   3. Cymbaline
   4. A Saucerful Of Secrets

  Disc 2
   1. The Embryo
   2. Interstellar Overdrive
   3. Set The Controls For The Heart Of The Sun
   4. "Richard, Are You Ready?"
   5. Amazing Pudding
   6. Blues

 Cymbaline
 
 The Embryo
 
 "Richard, Are You Ready?"
 

[参考]
 The Injustice Of A Kaleidoscope Of Sound (HY1002-A/B)
 

Atom Heart Mother
原子心母



Atom Heart Mother
原子心母 [Analog]



Ummagumma
ウマグマ



Ummagumma
ウマグマ [Analog]



More
モア



More
モア [Analog]




 1970 1st European Tour Dates
  January
   10 The Ballroom,University of Nottingham,Beeston,Nottingham,UK
   17 Lawns Centre,Cottingham,Hull,UK
   18 Fairfield Hall,Croydon,UK
   19 The Dome,Brighton,UK
   23 Civic Hall,Wolverhampton,UK
      [Cancelled]
   23 Theatre des Champs-Elysées,Elysée,Paris,FRANCE
      [Broadcast On Europe 1 Radio]
   24 Theatre des Champs-Elysées,Elysée,Paris,FRANCE

  February
   02 Palais des Sports,Lyon,FRANCE
   05 Cardiff Arts Centre Project Benefit Concert,Sophia Gardens Pavilion,Cardiff, UK
   07 Royal Albert Hall,Kensington,London,UK
   08 Opera House,Manchester,UK
   11 Town Hall,Birmingham,UK
   14 King's Hall,Town Hall,Stoke-On-Trent,UK
   15 Empire Theatre,Liverpool,UK
   17 City Hall,Newcastle-upon-Tyne,UK
   22 The Electric Garden,Glasgow,UK
   23 McEwan Hall,University of Edinburgh,Edinburgh,UK
   28 Endsville '70,Refectory Hall,University Union,Leeds University,Leeds,UK

  March
   05 Studio B, BBC TV Centre,White City,London,UK
      [Line Up, BBC1 TV, Broadcast 13 March]
   06 Great Hall,College Block,Imperial College,London,UK
   07 University of Bristol Arts Festival - Timespace,Colston Hall,Bristol,UK
   08 Mothers,Erdington,Birmingham,UK
   09 City (Oval) Hall,Sheffield,UK
   11 Stadthalle,Offenbach,GERMANY
   12 Kleiner Saal,Auditorium Maximum,Hamburg University,Hamburg,GERMANY
   13 Konzert Saal,Technische Universität,Berlin,GERMANY
      [Two Shows]
   14 Grosser Saal,Meistersinger Halle,Nuremberg,GERMANY
   15 Niedersachsenhalle,Hannover,GERMANY
   18 Gothenberg,SWEDEN
      [Cancelled]
   19 Stora Salen,Stockholm Konserthus,Stockholm,SWEDEN
   20 Akademiska Foreningens Stora Sal,Lund,SWEDEN
   21 Tivolis Koncertsal,Copenhagen,DENMARK
   30 Le Festival Musique Evolution,Le Bourget,Aeroport de Paris,Siene St Denis,FRANCE

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#2019-12-24 #再入荷