最近の日本を見て思った事をAIに書いて貰いました
# 歯車の音
## 一
東京大学法学部を首席で卒業した日、
僕は確信していた。
この国を、より良い場所にできると。
財務省のキャリア官僚として
霞が関に足を踏み入れた春の朝は、
まだ希望に満ちていた。
人の役に立ちたい。
公共の利益のために働きたい。
そんな青臭い理想を、僕は本気で信じていた。
「田代、新しい税金の案を考えろ」
配属されて三ヶ月後、
上司の岡本審議官は毎朝、同じ言葉を繰り返した。
「はい」
僕は答える。それ以外の返事を知らなかった。
環境税の強化、デジタル課税、富裕層への追加課税。
書類の山を前に、
僕は夜な夜なエクセルの数字と格闘した。
だが、どの案を見ても、
そこに「人の役に立つ」姿は見えなかった。
あるのは、税収を増やすという冷たい数字だけだった。
「もっと取れるところから取れ。それが我々の仕事だ」
岡本審議官の言葉は、いつも簡潔で明確だった。
## 二
SNSが騒がしくなったのは、
僕が入省して二年目の秋だった。
「#財務省は日本を壊している」
「#緊縮財政をやめろ」
「#国民の敵は財務省」
タイムラインには、怒りの言葉が溢れていた。
コロナ禍で疲弊した国民が、僕たちに向けて叫んでいた。
だが、テレビをつけても新聞を開いても、
その声は一切報道されなかった。
「マスコミは我々の味方だからな」
岡本審議官は薄く笑った。
「専門家の先生方もそうだ。彼らは理解している。
財政規律の重要性を」
実際、テレビに出る経済学者たちは口を揃えた。
「国民の批判はお門違いです。
問題は政治家の決断力のなさにある」
「財務省は正しい提案をしているのに、
政治家が実行しないだけです」
だが、霞が関の廊下では、誰もがこう囁いていた。
「政治家なんて、所詮は素人だ」
「我々より頭の悪い連中を、
うまく操ればいいだけさ」
僕も、いつしかそう思うようになっていた。
国会議員は四年ごとに入れ替わるお飾りで、
本当にこの国を動かしているのは僕たち官僚なのだと。
## 三
「田代、また増税案だ。今度は消費税15%で頼む」
入省から五年。僕は完璧な歯車になっていた。
上司の指示を聞き、資料を作り、数字を整え、
政治家への説明資料をまとめる。
疑問を持つことはやめた。考えることもやめた。
ただ、指示された通りに動く。
人の役に立ちたいという思いは、
いつの間にか消えていた。
窓の外を見ると、霞が関の街並みが広がっている。
ここが日本の中枢。ここで僕たちが決めたことが、
一億二千万人の生活を左右する。
その重みを、もう感じることはなかった。
## 四
それは突然だった。
「官僚制度改革法案、可決」
ニュース速報が流れたのは、
いつもと変わらない火曜日の午後だった。
新しい政権は、本気だった。
キャリア制度の廃止、省庁再編、
人事制度の抜本的見直し。
これまで不可侵と思われていた官僚システムが、
一気に崩壊していった。
「まさか、本当にやるとは…」
岡本審議官の声が震えていた。
常に冷静だった彼の顔に、
初めて恐怖の色が浮かんでいた。
それから、すべてが変わった。
## 五
「あなたが、あの増税案を作った田代さんですか」
コンビニのレジで、店員がそう言った。
僕の顔は、週刊誌に載っていた。
「国民を苦しめた官僚たち」という特集記事と共に。
「違います」
僕は小さく答えて、店を出た。
だが、違うのだろうか。
確かに指示したのは岡本審議官だ。
決定したのは政治家だ。
だが、その資料を作り、理論武装をし、
実現可能性を示したのは僕だった。
職場でも、視線が痛かった。
「田代さんって、あの増税案に関わってたんですよね」
「結局、言われた通りに動いてただけでしょう」
「自分の頭で考えたことあるんですか」
新しく配属されてきた若手職員たちの目には、
軽蔑の色があった。
岡本審議官は、
早期退職して大手シンクタンクに天下った。
他の上司たちも、次々と組織を去っていった。
残されたのは、僕のような中堅官僚だけだった。
## 六
夜、アパートの部屋で、僕は空を見上げた。
これまで何をしてきたのだろう。
上司の指示に従い、資料を作り、数字を並べ、
増税案を正当化してきた。
それが仕事だと思っていた。
それが優秀な官僚だと信じていた。
だが、それは本当に僕がやりたかったことだろうか。
東大の卒業式で、僕は何を誓っただろうか。
「人の役に立ちたい」
遠い日の声が、耳の奥で響いた。
だが、今の僕には何もない。上司の指示もない。
従うべき命令もない。
自分で考え、自分で決める。
そんなことを、僕はこの五年間、
一度もしてこなかった。
机の上には、辞表の用紙が置いてあった。
サインすれば、すべてから解放される。
この白い目も、この重圧も、この問いも。
だが、ペンを持つ手が震えた。
辞めて、それから何をする?
僕は官僚以外の何者でもない。
上司の指示を実行する以外、何もできない。
窓の外で、東京の夜景が煌めいていた。
この街のどこかで、
僕が作った政策に苦しんでいる人がいる。
僕が数字として処理した「国民」が、生活している。
初めて、それが見えた気がした。
## 七
翌朝、僕は辞表を引き出しにしまった。
逃げても、何も変わらない。
これまで上司の歯車として動いてきた。
だが、これからは自分の意志で動くしかない。
たとえ周囲が冷たい視線を向けても、
たとえ何をすればいいかわからなくても。
人の役に立ちたい。
その思いが、本当だったのなら。
霞が関の朝は、いつもと同じように始まった。
だが、この朝、僕は少しだけ違う人間だった。
完璧な歯車ではなく、不完全な一人の人間として、
僕は歩き始めた。
何ができるかわからない。
何をすべきかもわからない。
だが、少なくとも、
もう上司の声だけに従うことはない。
自分の声を、聞く。
それが、僕の小さな、始まりだった。
(了)