人生パンク道場 (角川文庫)  人生パンク道場    町田 康


 一つの質問に長い答えで15ページ。短いものは4行。どちらにも、いえ、すべての答えに町田氏のやさしさやまじめさが感じられます。こんなふうに視野が広がり深まるのなら、相談者も納得。すぐに解決とはいかなくても、忍耐強く考えて行動しようと思えたはずです。

 町田氏の小説でもそうですが、ギャグのような文章の中に散りばめられた美しい言葉の数々が心に沁みました。

 息子の進路に悩む父親への言葉。

『親が子に与えられる唯一のものは星を見て進むべき方向を知るための羅針盤。なるべく善きことをし、なるべく悪しきことをすな…。』
 あとがきの文。

「頼りない道案内であったが、しっかりと握った手だけは離さなかったという自負はある。」

何よりの答えですね。

 

 

矢村のヤ助 (かこさとし語り絵本 1) 矢村のヤ助 (かこさとし語り絵本 1)  加古 里子


 この本には、同じ作者なのに二通りの終わり方があるようです。わたしが読んだのは新しい方。

 民話には、そこで暮らしてきた人々の、子どもたちに伝えたい願いや戒め、そして楽しさが込められています。かこさんは戒めより、前向きに生きる力を伝えたいと思ったのでしょうか。

 最後の方、山鳥に手を合わせるおっかさんと、きっと口を結んだ一心に畑を耕すヤ助の、それぞれの思いが胸を打ちます。語りを聞いた女の子に

「山鳥さんを返して」

と泣かれた話もいいですね。読み聞かせの力を感じます。絵の力強さもこの話にぴったりです。


スロウハイツの神様(上) (講談社文庫) スロウハイツの神様(上)   辻村 深月

 
 初めての作家。なかなか物語に入っていけず、何度も住人紹介のページに戻ってしまいましたが、やがてひき込まれて閉じられなくなり、心地よいような、その陰に何か悲しいできごとが隠れていて怖いような気持ちで読み終えました。

 タイトルにある神様はどんな展開を用意しているのか、まったく予想できない状態で(下)に進みます。

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫) スロウハイツの神様(下)   深村 深月


 とてもすてきな物語に出合えたのだなあと、幸せな気持ちになれる作品でした。仲間を思う気持ち、創作への情熱、そして好きな人への打算のない愛。あゝ、こんなふうにつながっていたのかと展開の見事さにも感心しました。

「小説にできることって何だろう。」その答えの半分は、多分、読んだ側にあるのだと思います。そこにいる人に思いを巡らすように、そこにある作品に思いを巡らす…。そう、「結局愛だよね。」につきますね。 

 余談ですが、(上)で出てきた狩野の好きな映画『ミツバチのささやき』、わたしも好きなのでうれしかった!

サブマリン (講談社文庫) サブマリン  伊坂 幸太郎


 重く、答えの見えないテーマですが、陣内さんのおかげで人を嫌いにならず、希望の感じられる作品でした。

 「チルドレン」から10年ぶり。はた迷惑だけど、心の中にたっぷりの愛情を隠し持っている陣内さんはすてきな大人です。迷言も多いけど名言もたくさん。監察中の青年の家に行って発した言葉、

「友達が遊びに来ているんだろうが」

を読んだときには、こちらまで胸が熱くなってしました。

 深い海の中からゆっくり光のさす方へ…伊坂さんの思いが伝わってきます。

 


4こうねんのぼく (そうえんしゃ・日本のえほん) 4こうねんのぼく (そうえんしゃ・日本のえほん)  ひぐち ともこ


 大人は悲しくて下を向いてしまうけど、子どもはこんなに素直に未来を見つめるんですね。その素直さに胸が詰まります。4光年を旅して遡れば、4光年前のあの頃が見える…。わたしも何光年か前の星に行けたらと、星を見て祈ります。星の光にはたくさんの願いがこめられているんです。

 


百年の家 (講談社の翻訳絵本) 百年の家 (講談社の翻訳絵本)  J.パトリック・ルイス,ロベルト・インノチェンティ

 

 荒れ地を拓き、家を建て畑を耕しコツコツと暮らしを組み立てる人々の素朴さと根気強さ。その暮らしを見守る石の家が静かに語ります。

「みんなが無邪気でいられた時間はすてきだった。でも、短かった。」 

 たくさんの人々が暮らしを営み、そこから旅立ち、亡くなっていきました。恐ろしい戦争もやってきました。それでも静かに佇む家。

 廃墟になった家が最後のページで華やかに蘇ります。新しい住人は、百年の歴史を知りません。新しい家にも百年の重い時間がまた訪れるのでしょうか。



[現代版]絵本 御伽草子 付喪神 (現代版 絵本御伽草子) [現代版]絵本 御伽草子 付喪神 (現代版 絵本御伽草子)  町田 康
 

 なるほど、こんなふうに世の中には意識と会話が生まれ、やがて分裂し戦いへと向かっていくのかと、賢いたちから教えられました。信仰や宗教がどうやって生まれるのか、権力を持つものから持たないものへの搾取の構造、そして、戦いの虚しさも、みんなたちに教えられました。ビームあびまくり。 

 賢いは、ときに形而下から形而上学的分野へと意識を高め、空を仰いでは自分を潰したくなったりします。恐るべし、物たち。恐るべし、町田氏。

 最後の2行「平成の今、何とかしなくては」は、ほど賢くないわたしには難しい宿題で、考え込んでいる間に令和になってしまいました。

 

 

        霧 写真を張り付けると、なぜか90度回転して横向きになってしまいます。

           諦めて文だけ。

          10連休! 娘夫婦はいつも通り出勤なので、わたしは孫といっしょ。

          子どもをみてくれる人がいない家庭はどうしているのか気にしながら

          あと2日。

          春休みと合わせて読書の進まない4月でした。

          

          

 

 

 

 


なでしこ御用帖 (集英社文庫) なでしこ御用帖   宇江佐 真理

 

 どんな時代にも、ちょっと枠からはみ出して、周りをはらはらさせながら元気に生きている女性はいるものですね。町人文化のおおらかさでしょうか。

 闇もあるけど、知恵と情で明るく進んでいく主人公の姿が、宇江佐さんの生き方と重なります。なでしこちゃんと呼ばれるくらいかわいいのに、胸の中で思い切り悪態つくところが楽しい。毎晩湯呑でお酒を飲んでいるところで、宇賀アナの顔が浮かんでしまいました^^。

 


十年屋 時の魔法はいかがでしょう? 十年屋 時の魔法はいかがでしょう?  廣嶋 玲子

 

 4年生の孫が「読んでみて」と貸してくれました。この本を読んで孫がどんなことを思ったのか、そちらの方が気になりましたが、全部おもしろかった!と言うので深追いせずにおきました。

 家族、恋人、友だちへの思いについて考えさせられる場面もありますが、執事の猫が賢くてかわいくて癒されます。イケメンの魔法使いがシビアなのもいいかもしれません。

 


道ばた猫ものがたり 道ばた猫ものがたり  佐竹 茉莉子

 

 外で生きる猫たちの暮らしは厳しい…。でも、どの猫にも個性があり、それぞれの物語があり、その物語に思いをはせると、ますます猫が好きになります。    

 体全体で何かを伝えようとしていて、その仕草や表情の愛おしいこと。悲しい猫からは言葉にならない悲しみが、のんきな猫からはほっとするような温かさが伝わってきます。外で会う猫たちとずっとお話ししたくなります。

 


希望荘 (文春文庫) 希望荘   宮部 みゆき

 

  ちょっとだけ困ったことにテレビドラマを見ていたので、主人公杉村氏の顔がずっと小泉孝太郎でした。「希望荘」というタイトルと一話目がそれほど怖い内容ではなかったので、このまま行くのかなと思っていたのですが、読み進めるうちにぞわぞわっとしてきました。

 知られたくない過去、すぐそばににある犯罪、貧困が生み出す憎悪や悲しみ。平凡に見える人間がふと吐き出す毒や陥る闇は、やはり宮部作品ならではの怖ろしさとおもしろさです。光の照らす社会と影になる社会をつなぐ杉村氏の、影にいる人々に向けるやさしいまなざしがいいですね。

友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」  友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」 山中 伸弥,平尾 誠二・惠子

 

 二人の考え方、生き方に感動し、山中先生が平尾さんを助けようと治療法を考えたり言葉をかけたりする場面では涙がこみ上げてきました。どんなに生きたかったか…。そして、どんなに助けてあげたかったか…。

 人生は不条理だけど、その中で懸命に、まっすぐ生きた平尾さんの残したものは、ずっと人々の心の中で輝き続けるはず。「助けてあげられなくてごめん。」 大切な人を亡くしたとき、人が必ず抱くその思いをバネに、中山先生の研究がぜひ実を結びますように。
 


りかさん (新潮文庫) りかさん   梨木 香歩

 

 子どもと人形。それは遊び相手でもあり話し相手でもあり、いっしょの時間を過ごしながら感情移入してしまいそうです。お互いに。

 互いの思いが通じ合ったときに開かれるもう一つの世界へ、りかさんが連れて行ってくれました。主人公ようこは、本当はリカちゃん人形ともっと明るい世界に生きたかったようですが。人のそばにいる限り、市松人形にも青い目をした人形にも、人と同じようなできごとが起こり、喜びも悲しみもあるのでしょうね。桜染めをしているときにおばあちゃんがつぶやいた言葉。「ようこは媒染剤みたいな人になれるよ。」 梨木さんの作品には、ようこさんに似た人がよく登場している気がします。

フジ子ヘミング II ピアノがあって、猫がいて フジ子ヘミング II ピアノがあって、猫がいて


 ピアノと全く縁のない生活。ピアノを弾く友人が、フジコさんのノクターンが好き!といつも言うので、図書館で探してみました。いやいや、普通、曲の方を聴くでしょうと言われそう。

 薄くて雑誌テイストの本。、ちょっと物足りない感じですが、フジコさんが音楽はもちろん、人も動物も自然も大好きで、やさしくまっすぐな人だということが伝わってきました。 「演奏でまちがったっていいじゃない。機械じゃないんだから。」

 


ちょびと おねこおしょう ちょびと ねこおしょう  中野 みち子

 

 ねこばあさんことでんこさんの家で暮らす猫たちの、ちょっと不思議で楽しいお話です。猫たちがいきいきしていて個性的。そして、とても賢いんです。日々ねこをかわいがりながら、こんなすてきな物語を創り出すなんてと、ただの猫好きばあさんは感心してばかりでした。

 実はわたし、このでんこさんと知り合いなんです。いなくなっていた猫が何年かたって帰ってきたのよ~と聞いていたのですが、そのできごとがとてもほのぼのとした「プレゼント」に。猫たちのおしゃべりと、猫たちを呼ぶでんこさんのやさしい声が聞こえてきそうな6話の短編集です。

 


院内カフェ (朝日文庫) 院内カフェ  中島たい子

 
 中島たい子さん3作目。書店でじっくり見て買っているからか、3作ともわたしの体質に合っていました。院内カフェ。西洋医学の病院内にあるカフェですが、その雰囲気はどことなく漢方的。薬ではなく気持ちのありようが体にも影響を及ぼしているのでしょう。ここのコーヒーは体にいい!と信じている男性。わかります。わたしだって、病院内で出されるものは少なくとも体に悪いはずはない、と思っていますから。

 登場するどの人も重いものを抱えていますが、そこは院内カフェ。少しの間だけでもここで心を軽くしてくださいと、やさしさが沁みてきます。

 

 

ここ数年 桜を見ないふりして歩いてきました。

今年は自然に目が向けられるようになりました。

 

季節がめぐります。

 

 

 


異類婚姻譚 (講談社文庫)

 異類婚姻譚  本谷 有希子

 

 ありきたりな言い方をすれば、夫婦といえども、わかっているつもりでいても、ずっと深いところではわかっていないし、わからないふりをしているのかもしれません。考えるのは疲れるし…。不気味だという思いがやがて不憫さに変わり、何かが胸の奥に引っかかっているような感じで本を閉じました。時間がたって感想を書いている今、山の岩場の近くで可憐に咲いている花の姿が、とても寂しく浮かんできます。

 


きまぐれな夜食カフェ - マカン・マラン みたび (単行本) きまぐれな夜食カフェ - マカン・マラン みたび   古内 一絵

 

 今回はおいしそうな料理より、シャールの言葉や行動に深く胸を打たれました。毒だらけのアルバイト社員に真正面から向かって言った言葉、「若さや、治療しなくていい体がうらやましい」。やさしい笑顔の裏に隠している悲しみがあるからこそ、シャールは周りの人を大切にするのでしょうね。元後輩の離婚パーティに男装で決めて現れるなんて、何て素敵な思いやり。そして、老いた比佐子の誕生日を忘れずにいてくれるのも。

 病気も老いもその立場にならなければわからない辛さがあるけど、だからこそ今を上機嫌に過ごす…。いい言葉です。

 


父からの手紙 (光文社文庫) 父からの手紙   小杉 健治

 

 平凡に見える生活もこんなに複雑に事件や犯罪と絡み合っているのかと思うと、自分が立っている足元もなんだか危ういものに見えてきます。道を踏み間違えさせるものは何でしょう。

 最後にたどり着いた答え、『人生の目的は財産、地位、名声などを得るためではない。~いかなる困難や試練にも負けずに生きていくことにある』そう言葉ではわかっていても、その答えにたどり着くまで、やはり人は迷ったり回り道をしたりしながら進んでいくしかないのでしょう。集団就職列車で都会にやってきた親たちの苦難。昭和が遠くなっていきます。



キツネとねがいごと キツネとねがいごと  カトリーン シェーラー

 

 好きだったものを全部なくして自分だけが永遠に生きていくことは、想像以上に虚しく寂しいもの。命あるものは、その時をせいいっぱいに生きて、最後は静かに終わりを迎えるしかありません。

 自然の摂理に逆らって老いたまま生きていくキツネの姿は切ないですね。ずっと待っていてくれた死神を呼んで、二人で抱き合っているときの表情はとても穏やかで安どしているように見えます。わたしもあんな顔で最期を迎えられたらと願います。

 


ぐるりのこと (新潮文庫) ぐるりのこと   梨木 香歩

 

 「もっと深く、ひたひたと考えたい。生きていて出会う様々なことを、一つ一つ丁寧に味わいたい。味わいながら、考えの蔓を伸ばしてゆきたい。」

と、語る言葉のそのままに、旅での出会い(人も動物も風景も文化も)、ニュースが伝えるつらいできごとなどについての考えがていねいに綴られています。その考えを咀嚼しながら読み、かなり時間のかかる読書になってしまいました。梨木さんの作品には、繊細さと強さがいっしょに編み込まれていて、こんなふうに考えたかったのだと、自分の中に埋もれていたものに気づかされます。

 


真夜中の太陽 (ハヤカワ・ミステリ) 真夜中の太陽   ジョー ネスボ

 

 「その雪と血を」に続く物語。

 読み進めるうちにスピードが加速され、ドキドキしながら一気に駆け抜けてしまいました。北の果ての光景が美しく、仲良くなった少年がかわいらしく、そして出会った男と女の交わすまなざしや言葉が熱く、最後のシーンはまるで映画を観ているようでした。説教師でありながら、神の教えに沿わない形になろうとも、娘の真の幸せを願った父親。約束を守り抜いた商売人の男。彼らを動かしたのは聖書の言葉ではなく、先住民族サーミ人の素朴な良心と知恵ですね。

 物語の続きに幸せが待っているのか、ちょっと不安は残りますが。

 


好日日記―季節のように生きる 好日日記―季節のように生きる  森下 典子

 

 今は2月。雨水を過ぎて春へと向かうころですが、この作品を読んでいる間、冬の章では冬に、春の章では春にと、作品の中の季節にいるようでした。そして、作者といっしょに先生のおうちにおじゃまして、静かで心地よい時間を過ごしているようでした。

 清楚な花、掛け軸の文言、季節感あふれる和菓子。何より、控えめだけど機知に富み、穏やかで温かい先生の言葉。

 ゆっくりとていねいにお茶と向き合ってきた作者の思いが、言葉ではなく本当に「季節のように」体を包み、美しい自然の一部となって瞑想の世界に導かれるような作品でした。

 


雪窓 雪 窓   安房 直子

 

 雪の夜は不思議です。雪が空から静けさをつれてきます。寒さと少しだけ温かさをつれてきます。歩いてきた道の記憶、遠い昔もつれてきます。もう戻らない幸せと寂しさをつれてきます。

 雪の夜は空に昇っていきたくなるけど、そばにやさしい友だちがいてくれると、心の中にポッと灯りがともり、ほんわかとした気持ちになります。
 


ねこはしる ねこはしる  工藤 直子

 

 工藤さんの野原には、たくさんの動物や植物たちが命の詩を奏でながら生きています。工藤さんは、ときに虫になったり、草になったり、風になったりして、彼らの言葉をわたしたちに伝えてくれます。命はこんなにキラキラしていて、楽しくてユーモラスですばらしいものですよと。 でも、ずっと野原にいると、命のはかなさも生きる厳しさも受けとめなくてはなりません。そんなときは少し寂しい…と。

 ねこのランも知りました。楽しいことも怖い思いも悲しさも。全部心にしまって、力いっぱい走ります。命のかぎり生きています。

 

 

 「好日日記」は、作者がお茶のお稽古に通った日々を綴ったもので、たびたび椿の花が登場します。

 茶室には一輪の花が似合いますが、わたしも椿の花が好きで、この季節よく飾ります。

ただ、わたしの椿は、前の森に誰にも手入れされることなく咲いているもの^^;。今は桃色の椿が盛りですが、もうすぐ赤い椿が咲きます。

 

 子どもの頃読んだ「誰も知らない小さな国」にも、大きな椿の木が出てきました。石牟礼さんの「椿の海の記」の椿も印象的でした。

 

  

大きな木です。開発で切られてしまうのもそう遠くなさそうです。 

画像が横になってしまいました。

 

 

実家の庭に父が植えた侘助。主がいなくなった庭にも、毎年たくさんの花が咲きます。
 

 

 


かもめ食堂 (幻冬舎文庫) かもめ食堂   群 ようこ

 


 10年以上も前に映画を観て満足し、本は読まなくてもいいかなと思っていたのですが、友人が貸してくれました。憧れの国フィンランドでの、これまたいいなあと憧れてしまうすてきな食堂。宝くじで道が開けるのはどうかと思うけど、自分の夢のためにけっこう着実に努力はしているんです。そこはさらりと表現。欲張らず、焦ったり落ち込んだりせず、自分にとって心地よいと思える道をゆったりと歩んでいく…。その雰囲気が読者にとっても心地よいのかもしれません。



丁先生、漢方って、おもしろいです。 (朝日文庫) 丁先生、漢方って、おもしろいです。  丁宗鐵,南伸坊

 

 伸坊さん、この本って、おもしろいです^^。聞き覚えのある漢方薬とその効能。なるほどと頷きながら楽しく読めました。薬だけでなく医者の考え方も含めて、西洋医学と漢方の違い、食べ物や体質と病気の関係、果ては政治と医学の関りまで、ユーモラスな表現でわかりやすく書かれています。

 やはり医食同源。食をはじめ、普段の生活習慣が大切だと再認識させられました。

 


女王さまの夜食カフェ - マカン・マラン ふたたび 女王さまの夜食カフェ - マカン・マラン ふたたび  古内一絵


1冊目を読んだときは、このお店に行って癒されたいと思いましたが、今回は、こんなやさしい料理を作って、誰かの疲れを取ってあげられたらと思いました。わたしの周りにいる人たちもそうですが、誰もが悩みや迷いを抱えて生きているんですよね。シャールも重いものを抱えていて、だからこそ人の悩みに温かく、ときに厳しく向かい合ってくれます。最後は自分で決めることだけど、疲れが取れればまた歩き出すことができる、誰かのために生きることが自分のために生きることにもなる。カフェを照らす月明かりのように、静かに心に沁みてきます。


      
ジーヴズの事件簿―大胆不敵の巻 (文春文庫) ジーヴズの事件簿―大胆不敵の巻   P.G. ウッドハウス

 

 一話目は落ちがわからず何回か戻っては読み直していたのであまり楽しめませんでした。諦めようかなとも思ったのですが、つい体育系の根性が出て…。

 人間関係がわかってくるとおもしろくなり、さてどんな解決法が待っているのかなと期待しながら読み終えました。しゃれた会話と、噛みつく犬と思われても最後は主人を守るジーヴズの機知がいかにも英国風。ジーヴズのいれてくれる元気になる飲み物、飲んでみたくなりました。

 


霜の降りる前に〈上〉 (創元推理文庫) 霜の降りる前に〈上〉  ヘニング・マンケル


 刑事ヴァランダーシリーズですが、今回は娘のリンダを中心に物語が進みます。あれこれと悩みながら、30歳になろうとするときに、父親と同じ警察官への道を選んだリンダ。

 父親の仕事ぶりに感化されてという爽やかな雰囲気は微塵も感じられません。父と娘は確執の多い関係ですが、この親子はとくにひどい。二人とも口は悪いし怒りっぽいし…。もう少し穏やかに冷静に話し合えたら、事件の解決がいくらかでも早まるんじゃないかとやきもきしてしまいました。

 事件はこれまでの作品同様残忍で不気味。どきどきしながら一気に(下)へ向かいます。

 


霜の降りる前に〈下〉 (創元推理文庫) 霜の降りる前に〈下〉   ヘニング・マンケル


 神の名を借りた異常な犯罪にはどこにも救いがなく、我が子まで殺してしまうという悍ましい結末に。リンダの引き返すことを知らない捜査(?)に父親もハラハラしたでしょうが、読み手も十分ドキドキさせられました。

 事件は解決しても、悲しみや恐怖が終わるわけではありません。スウェーデンに冬が訪れ、人々は寒さに耐えるように、その悲しみにも耐えて生きていきます。そしてまた次の事件が起こり、次の悲しみが押しよせる…。そこでもうヴァランダー親子の活躍が見られないのは寂しいですね。チームのみんなに会えないのも。

 


雪女 (日本の童話名作選シリーズ) 雪女 (日本の童話名作選シリーズ) 小泉八雲


 何度も読み、孫にも寝る前に話してきた物語。伊勢英子さんの絵に惹かれて改めて読んでみました。1行目、「武蔵の国のある村に…」で立ち止まってしまいました。もっと北の雪深い地方の話だと思っていたのですが、民話なのであちらこちらで語り継がれてきたのですね。

 雪というよりは氷に近い冷たさと美しさ。そして、秘めた強さと愛。多分、雪女の思いは男を見張るためから徐々に男と暮らす楽しさへと変わっていったのでしょう。その暮らしを守れなかった男へのやりきれなさ。最後の雪空はただただ広く悲しく、胸が張り裂けそうです。

 

 

       1月、我が家にいる3匹の猫のうち、一番長生きすると思っていた猫が

       旅立ちました。画像は火葬した帰り道の青い空。

       ノラちゃんだったのですが、我が家にきて12年。

       抱っこが大好きでマイペースなお嬢さんでした。

 

                わたしのところへ来てくれてありがとう。

桜明けましておめでとうございます門松

 

 

お正月なのに暗めの画像で申し訳ない…。

 

天気図を見ると 日本中マーク

気持ちのいい青空が広がっています

静かでのどかなお正月です

 

月に一度の拙い読書の記録ですが

自分の頭と心の老化防止のために

今年ものんびりがんばろうと思っています

よろしくお願いいたします

 


イタリアのしっぽ (集英社文庫) イタリアのしっぽ   内田 洋子

 

 ペットや植物と人との関わりを描いた、物語のようなエッセイが15話。

 1話読み終える度に飼い主たちのやるせない事情に考え込んでしまい、すぐに次の話へと入っていけず時間がかかってしまいました。

 ちゃんと生活していても、人と人が心の襞の深いところまで理解し合うのは難しい…。そんなとき、言葉が通じなくても、いえ、言葉が通じないからこそ、ペットの方がわかってくれそうな気持ちになるのでしょうか。そんな人々を深い眼差しで見つめ、寄り添うように穏やかに描いた味わいのある作品です。

 


刑事マルティン・ベック 消えた消防車 (角川文庫) 刑事マルティン・ベック 消えた消防車  マイ・シューヴァル,ペール・ヴァールー


 1969年に刊行されたスウェーデンのミステリー小説。コンピューターも携帯電話も登場しません。代わりにヒトラー、ギリシャの独裁政権なんて言葉が登場し、記録はタイプライターで。

 刑事マルティン・ベックを中心に10名ほどの警察官たちが知恵を出し合い、反目し合い、私生活の悩みと向き合いながら不可解な事件の解決にあたります。最初と最後以外はどちらかというと地味な展開ですが、その地味さに味わいがあり、人間関係や会話の妙に惹かれて本が手放せませんでした。

 


目くらましの道 上 (創元推理文庫) 目くらましの道 上   ヘニング・マンケル

 

 先進国スウェーデンの闇がみっちり詰まっていて怖ろしく、犯罪も人としての限界を超えていますが、捜査する刑事たちも心身ともに人間の限界を超えるほどの疲労感。読む方にも覚悟が要ります。

 さらに怖ろしい事件が起こるはずの下巻へ。

 


目くらましの道 下 (創元推理文庫) 目くらましの道 下   ヘニング・マンケル

 

 殺した側より殺された側の人間たちがどれほどひどい人間か、読み進むにつれて悍ましさは悲しみへと変わり、涙さえこみあげてきました。

 始めから犯人はわかっていて、しかも目の前にいる…。警部ヴァランダーの疲労と推理と迫ってくる危機とで、読む方も体力を消耗しそうなほどの重さ、そしておもしろさでした。

 ヴァランダーの、犯人を憎むのではなく、こんな犯罪が起きる国になってしまった社会のあり方に思いをはせるところが好きです。森と湖と福祉と人権の国。でも、そんな美しい恩恵がまったく届かないところで生きる人々への、作者の思いです。

 


去就: 隠蔽捜査6 (新潮文庫) 去就: 隠蔽捜査6  今野 敏

 

 以前、このシリーズを警察官の研修に、と書いたのですが、今回はすべての職業の管理職に読んでもらいたいなと思いました。どこを見て仕事をすればいいのか、どういう考えで行動すればいいのか、竜崎と同じにはできなくても、少しは参考してもらえそう。

 組織内の形式的な関係ではなく、いわゆる部下にあたる人たちに心から信頼してもらえることがどんなにうれしいことか。竜崎の危機に二人の部下が「感動した。」と言ってくれたときはジ~ンときました。

 シリーズをずっと読み続けてきて、次に竜崎が何を言うか、どう動くか、わかるようになりましたよ^^。

 


向田理髪店 (光文社文庫)  向田理髪店  奥田 英朗

 

 地方にある小さな町。のどか、というよりは、高齢化過疎化が進んで寂しい町が舞台です。こんな町、何にもないと思われそうだけど、どっこい人が生活している限り、中(?)なり小なりさまざまなことがあるんですよね。心がざわついたり悩んだり辛くなったり…。

 そんな町で暮らす人々の、縺れて絡んだつながりが、切なく温かく描かれていて、ホッとできる物語でした。親の世代も子どもの世代も、町を思う気持ちはいっしょ。そんな気持ちを穏やかにさりげなくまとめている理髪店の店長さんみたいな人、わたしの故郷にもいるような気がします。
 


家と庭と犬とねこ (河出文庫) 家と庭と犬とねこ   石井 桃子

 

 作者は1907年生まれ。明治から平成までの4つの時代を生き、2008年101才で旅だちました。それだけで今の日本とは違う暮らしがあったはずと容易に想像できます。でも、エッセイの内容は、その想像を超えたというか、かなり違うものでした。

 大変な時代、大変な環境の中でも、明るく前向きでいられたのは、幼い頃のきちんとした暮らしが土台にあったからでしょうか。日常や周りにある自然、友人やいっしょにいた猫と犬への思いが、温かく、素朴だけど童話のような色合いで、ときにユーモラスに描かれています。

 人の暮らし、一人の時間に大切なことを感じ、考えることができる一人でいても、音や映像に囲まれている生活をしていると、気づかないものもあるだろうなと考えさせられました。「さびしいときには、感受性が強くなり、まわりのものに心が開ける」、そういう時間を忘れがちです。

 


笑う猫には、福来る 猫の手屋繁盛記 (集英社文庫) 笑う猫には、福来る 猫の手屋繁盛記  かたやま 和華

 

 今年最後の読書です。宗太郎の許婚琴姫、宗太郎をててうえと慕う錆び猫の田楽、そして人見相の親子が中心となる三話。人のために働く宗太郎の姿を見て、自分も善行を積もうと奔走する琴姫と田楽がけな気でかわいくて、作品としても猫の手屋の稼業としてもスピンオフかなとにんまりしてしまいました。

 人見相の章では、親子のお互いを思う気持ちが胸をうちます。とくに迷子地蔵の話はじんときました。炬燵開き、御事始めなど縁起を担いだ江戸時代の風習等も楽しめます。

 笑う猫には、いえ、笑う門には福来ると信じて読書納めです。

 

     絵馬2019年 皆様にとって良い年でありますように